つつ(憑憑)

九文里

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宿貰い

元人(もとひと)

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 男は、片手に燕を握ったまま、首をもたげて梁のヤモリを見て動かない。
 その様子は、男とヤモリが会話している様にも見えた。
 暫くすると、男は燕を離し、ヤモリもそそくさと何処かへいってしまった。
 燕は、そのまま空へ飛んで行った。

 それっきり男は、何も話さなくなったので、三人はその場から離れた。

「あれは、もしかしたら、昔大勢の人間を殺した事があって、逃げていたんじゃないかな」
「その間、爬虫類や虫ばかり食べてたんだろう。空き家に隠れてたんなら、ヤモリぐらいしか食うものがなくて、そればっかり食ってたんじゃないか」
「そのうち段々と人間離れしてきたんだろう、ものの怪化しているみたいだ」
「ヤモリに変化してきているなら家につくのも分かるし」
 玄人は、夏実と楓香に語った。

「どうすれば追い払える?」
 夏実が玄人に尋ねた。

「残念ながらいい方法は、思いつかない。下手に刺激すると人殺しも平気でやるかもしれないな」

 楓香は絶望的な気分になった。

「今は近づかない事だ。出て行く様に説き伏せられたらいいが」

「おじいちゃんなら何とか出きるんじゃない?」
 夏実が玄人に言った。

「そうだな、父ならできるかもな。頼んでみよう」

 夏実の祖父の仁栄は、霊に憑かれた人を何人も助けた事がある人物である。その方面では玄人よりも遥かに実力は上だった。

 夏実は、くれぐれもあの男には近づかない様に楓香に言って別れた。
 
 それから数日が過ぎたある日、男がいる門の前を撫子は箒で掃いていた。しばらくの間、放っていたので落ち葉が溜まっていた。堪えきれず掃除をしていたのだった。
 そこにジャケットを着た一人の老人が現れた。
 門の男は老人の雰囲気に、ただならぬものを感じたが、勤めて平静を装った。
 老人は夏実の祖父、勝淞寺の住職の仁栄である。
 
「夏実がお世話になっています。祖父の仁栄と言います」
 仁栄は撫子に挨拶をした。

「まあ、夏実ちゃんのお祖父様」
 撫子はおじぎを返した。

 そこに楓香が学校から帰って来た。門の前に母と老人が立っているのを見つけて、母に何かあったのかと思い駆け寄った。

 仁栄は、夏実の祖父であることを楓香に話すと言葉を続ける。
「残念ながらこいつは私では、追い払えませんな」

「そんな」
 楓香は、夏実の祖父に期待していたので、その落胆は大きい。

「あら、燕が」
 撫子が天から滑空して来る燕に気付く。

 次の瞬間、楓香と撫子は驚いた。
 燕が巣に入る前に男にフンをかけたのだ。
 その様子を見ていた仁栄は、男の態度がおかしいのに気がつく。
 男はフンをかけられても全然、怒る気配が無い。全く無視して動じ無いのだ。
 巣の中には燕が二匹いた。雄と雌のつがいである。その内の一匹が巣から顔を出して仁栄を見ると、巣から飛び出て仁栄の肩に留まった。
 そして、しきりにさえずっている。まるで語りかけてるようだった。
 仁栄には、燕が何を言いたいのかは分からなかった、が一人だけ燕の言葉が分かるかも知れない人物を知っている。

 そして、童士を連れて来るように夏実に携帯電話で連絡をいれた。
 
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