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宿貰い
燕の告白
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童士は門の梁に乗っている燕の巣を指し示す。
「この門の持ち主は、あの巣の主の燕なのです」
撫子の方に向き直す。
「御当主様は、去年、燕の雛が巣から落ちて、猫に食べられそうになったところを助けませんでしたか?」
「ええ、猫が雛に飛びかかるところをすんでのところで箒ではたいて助けました」
「あっ、そう言えばそんな事、あったわね。何で知ってるの?」
楓香も思い出したが、なぜその事を童士が知ってるのか、まだ飲み込めていない。
「その時、御当主は雛を巣に戻す折、『この屋根の下があなたの場所』と言いました」
「あら、そうだったかしら」
「その際に門の持ち主は、その雛に代わったのです」
「そして、今年、その雛は成長して帰って来ました。それがあの梁に巣を作った雄の燕です」
「まあまあ、そうなのね。お帰り」
「あっ、もしかしてさっきお母さんにお辞儀をしてたのって、お母さんに助けてもらったお礼を言ってたの?」
楓香は、何となく分かってきた。
「ところが、彼が此処に帰って来ると、見知らぬ男が門を占拠している。彼は怒って男に出ていくように言いました」
「しかし、男は燕が何を言いたいのかはだいたい分かったものの、燕が勝手に言ってることで、確証も無いので燕を食ってしまおうと彼を捕まえたのです」
「そこに現れたのがヤモリです。そのヤモリは去年、御当主が燕の雛に門を譲るのを見てました。そして、今回男が燕を捕まえた時に現れて、男に既に門の持ち主は燕になっている事を伝えたのです」
「ほぼヤモリ化していた貴方は、ヤモリの言葉は分かりますよね」
童士は男に向かって言った。
楓香が思い出した様に言う。
「そう言えば、あの時ヤモリがいて、お母さん、挨拶してたわ。
気持ち悪かったから覚えてる」
夏実も口を挟んでくる。
「確かにこの前、男が燕を捕まえた時、ヤモリが現れて男に何か話してるみたいだった。その後、男は燕を手から離した」
「だから貴方は、燕を殺すわけにはいかなかった。彼から門を譲受けないと、此処を貴方のものにする事が出来ないから」
「つまり、貴方が当主から『ここが貴方の場所』と言われる前に、燕さんが貴方と同じ様に『この屋根の下は、貴方の場所』と言われていたのです。だからあなたの流儀でいくと此処はあなたが来た時は、既に燕さんが此処の主でした」
「だから、門の持ち主でもない富貴家の当主から門を貰う事は出来ませんよね」
童士は、男を見上げてキッパリ言った。
「これで貴方が此処に居られる理由が無くなりましたね。出ていってください」
男は、黙って童士を見ていた。
童士の話しを聞いていた夏実達も男を見つめた。
やがて男は「分かった」と言って門の中から一歩足を踏み出すと、門の中から出て来た。そして、撫子に一礼すると背を向けて歩いていった。
(凄い、頑なに出ていかなかったのに、こんなにあっさり出ていくなんて。)
楓香は、男の後ろ姿を見送って胸を撫で下ろす。
「だけど、生き霊も憑依するのね。まして鳥の生き霊なんて」
夏実が祖父の横で呟いた。
「よっぽど言いたかったんだろうな」
仁栄が夏実に応える。
「童、ご苦労様」
夏実が童士の頭を撫でる。
「何か、変な感じでした。燕が頭の中に入って来て一体になったみたいでした」
童士が夏実を見上げる。
「ありがとう夏実。だけどこの子って何者なの?」
楓香は、夏実に話しかける。
「童士は市子なのよ。また今度詳しい話しはするわ」
仁栄は撫子に挨拶をすると、家路に着いた。そのあとを夏実と童士も付いて行く。
夏実達を見送った後で、楓香はハッと思い出した。
私の1000円はどうなるの。
「この門の持ち主は、あの巣の主の燕なのです」
撫子の方に向き直す。
「御当主様は、去年、燕の雛が巣から落ちて、猫に食べられそうになったところを助けませんでしたか?」
「ええ、猫が雛に飛びかかるところをすんでのところで箒ではたいて助けました」
「あっ、そう言えばそんな事、あったわね。何で知ってるの?」
楓香も思い出したが、なぜその事を童士が知ってるのか、まだ飲み込めていない。
「その時、御当主は雛を巣に戻す折、『この屋根の下があなたの場所』と言いました」
「あら、そうだったかしら」
「その際に門の持ち主は、その雛に代わったのです」
「そして、今年、その雛は成長して帰って来ました。それがあの梁に巣を作った雄の燕です」
「まあまあ、そうなのね。お帰り」
「あっ、もしかしてさっきお母さんにお辞儀をしてたのって、お母さんに助けてもらったお礼を言ってたの?」
楓香は、何となく分かってきた。
「ところが、彼が此処に帰って来ると、見知らぬ男が門を占拠している。彼は怒って男に出ていくように言いました」
「しかし、男は燕が何を言いたいのかはだいたい分かったものの、燕が勝手に言ってることで、確証も無いので燕を食ってしまおうと彼を捕まえたのです」
「そこに現れたのがヤモリです。そのヤモリは去年、御当主が燕の雛に門を譲るのを見てました。そして、今回男が燕を捕まえた時に現れて、男に既に門の持ち主は燕になっている事を伝えたのです」
「ほぼヤモリ化していた貴方は、ヤモリの言葉は分かりますよね」
童士は男に向かって言った。
楓香が思い出した様に言う。
「そう言えば、あの時ヤモリがいて、お母さん、挨拶してたわ。
気持ち悪かったから覚えてる」
夏実も口を挟んでくる。
「確かにこの前、男が燕を捕まえた時、ヤモリが現れて男に何か話してるみたいだった。その後、男は燕を手から離した」
「だから貴方は、燕を殺すわけにはいかなかった。彼から門を譲受けないと、此処を貴方のものにする事が出来ないから」
「つまり、貴方が当主から『ここが貴方の場所』と言われる前に、燕さんが貴方と同じ様に『この屋根の下は、貴方の場所』と言われていたのです。だからあなたの流儀でいくと此処はあなたが来た時は、既に燕さんが此処の主でした」
「だから、門の持ち主でもない富貴家の当主から門を貰う事は出来ませんよね」
童士は、男を見上げてキッパリ言った。
「これで貴方が此処に居られる理由が無くなりましたね。出ていってください」
男は、黙って童士を見ていた。
童士の話しを聞いていた夏実達も男を見つめた。
やがて男は「分かった」と言って門の中から一歩足を踏み出すと、門の中から出て来た。そして、撫子に一礼すると背を向けて歩いていった。
(凄い、頑なに出ていかなかったのに、こんなにあっさり出ていくなんて。)
楓香は、男の後ろ姿を見送って胸を撫で下ろす。
「だけど、生き霊も憑依するのね。まして鳥の生き霊なんて」
夏実が祖父の横で呟いた。
「よっぽど言いたかったんだろうな」
仁栄が夏実に応える。
「童、ご苦労様」
夏実が童士の頭を撫でる。
「何か、変な感じでした。燕が頭の中に入って来て一体になったみたいでした」
童士が夏実を見上げる。
「ありがとう夏実。だけどこの子って何者なの?」
楓香は、夏実に話しかける。
「童士は市子なのよ。また今度詳しい話しはするわ」
仁栄は撫子に挨拶をすると、家路に着いた。そのあとを夏実と童士も付いて行く。
夏実達を見送った後で、楓香はハッと思い出した。
私の1000円はどうなるの。
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