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EP.003 動き出した物語

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今日は、エミルの十歳の誕生日。

ユミルは、兄であるエミルに何をプレゼントしようか悩んで決めれずに居たので、モードレッドに相談しに隣の屋敷に訪ねに来ていた。


「もーどれっどさーん!」

「あらん?珍しいわねぇ、貴女が此所に来るなんて?明日は、雨かしら?」

「なにげに、ひどいです」

「まぁ、いいわ……中に入りなさいな」

「はーいっ」


モードレッドは、ユミルを屋敷に招いて周りを見てから中に入り扉に鍵を掛けてから、ユミルをリビングへと案内する。


「で?俺に、何の用かしら?」

「あのねっ、おにーちゃんのじゅっさいのたんじょうびだから……プレゼントをわたしたいのっ」

「ふーん……」

「それで、なにをあげたらいいのか……わからなくて……」


モードレッドは、ユミルをソファに座らせてからお湯が入ったポットとカップを用意して、テーブルの上にカップを置いてからココアの粉末を入れてからポットを使って、お湯を入れてスプーンで掻き混ぜる。


「あの、きいてます?」

「んー?はい、ココアよ」

「あ……、ありがとうございます……」

「そうねぇ、エミル坊やが喜ぶ物ねぇ……?基本的に、貴女が渡せば何でも喜ぶんじゃないかしらぁ?」


ユミルはココアを飲みながら、目の前で話をしているモードレッドを観察していた。

ユミル的には、何故モードレッドが自分と接触しようとしたのか分からなくて何時も悩んでいる。


「敢えて、形が残るようなものをあげたら……?どうしたのかしら、そんなに見つめて?」

「え、あ?いえ……」

「ふふっ、そうねぇ……どうせ、俺が何故嬢ちゃんと接触しようとしているか……それが、気になるのかしら?」

「!?」

「ふふっ、……図星みたいねぇ」


モードレッドが軽く笑っていると、ユミルは恥ずかしいのか頬を染めて顔を背けている。


「そうねぇ、……それは……貴女の中が気になるかしらぁ?」

「えっ?」

「その禍々しいぐらいに、此方に牙を向けて……いつでも、喰い殺そうとしている存在が気になっているのよねぇ」

「っ……!?」


モードレッドは、目を細めながらユミルを見ていてユミルは目を逸らす事が出来なかった。

モードレッドは、ユミルの力を理解していたのである。


「ふふっ、気になるけども……下手には、探れそうにないものねぇ……レックスが、五月蝿いだろうしぃ?」

「……」

「それと、もう1つだけ気になっているよねぇ?」

「もうひとつ?」


モードレッドは、ユミルに近寄るとユミルの耳元で“気配が、女の子らしくないのよ”と言うとユミルは慌ててモードレッドから離れると同時に、二人の間に刀が刺さっていて横を見てみると満面な笑顔をしているレックスが立っていた。


「モードレッド?」

「あらん?早いオカエリねぇ?」

「なんで、此処にユミルがいるんだ!あれほど、手を出すなとっ」

「とうさん、かんちがいだからー!そうだんに、のってもらっていたのー!」


ユミルは慌ててレックスの腰に抱きつき、今にもレックスがモードレッドを殺しそうな勢いなのでレックスを止めようとする。


「相談……?」

「そう!そうだん!ほら、きょうはおにーちゃんのじゅっさいのたんじょうびだからっ!なにをあげたらいいのか、わからなくてっ」

「そ、そうか……」


レックスはユミルの言葉に、やっと落ち着けたのか刀を腰に身に付けている鞘に戻してからユミルの頭を優しく撫でる。


「本当に、親バカねぇ?レックス」

「五月蝿い、お前も子持ちになれば分かる事だ」

「そんな相手、俺には居ないわよ~」

「とりあえず、ユミル?一緒に、帰ろう?」


レックスは、ユミルを抱き上げるとユミルはモードレッドの方をチラッと見てみると、モードレッドは何処か寂しそうな感じが見えた。


(どうして、あんな表情をしていたんだろう?そういえば、ゲームでは深くモードレッドの話を見てないな……)

(殆ど、メインシナリオしかやってなくてキャラシナリオとか一部しかやってなかったっけ?)


ユミルとレックスは、小さな市場へとやってくるとレックスはユミルを地面に下ろすとユミルは、出店に出されている装飾品を見つける。


「何か、良いのを見つけたかい?」

「うーん……」
 

ユミルは沢山の装飾品を見つめて、何れがエミルが喜ぶのかを見定めているとシンプルなペンダントを見つける。

そのペンダントは、淡い虹色の石が嵌めてあるシンプルなペンダントである。


「とうさん、これにする!」

「ん、わかったよ」


レックスは店の人に、そのペンダントを言って会計をしてから受け取りユミルに手渡すとユミルは嬉しそうにしている。


「おにーちゃん、よろこんでくれるかな?」

「エミルなら、ユミルからの誕生日プレゼントなら喜んでくれるさ」

「だと、いいなぁ~!」






その日の夜、リビングで集まってエミルの誕生日会をしていた。

エミルは、何処か恥ずかしそうにしながらも嬉しそうにしている。


「おにーちゃん、じゅっさいのたんじょうび!おめでとうっ!これ、プレゼントっ!」


ユミルは、淡い水色のラッピングに青いリボンが付いた袋をエミルに手渡すと、エミルは驚いた表情をして恥ずかしそうに頬を染めながらも嬉しそうに笑っている。


「ありがとう、ユミルっ」

「おにーちゃん、なんでないているのー?なきむしさーん」

「う、うるせぇっ!嬉しいからに、決まってるだろっ」

「ふふっ、本当に仲がいいわね……エミルとユミルはっ」


家族の皆で、エミルの十歳の誕生日を祝っていて皆が嬉しそうに笑っている。

だが、そんな幸せが長く続くわけがなかったのだ。


それは、突然としてやってきた。


村は燃えさかり、村の人々が泣き叫んでいる声がしてレックスとヴィオラは各々の武器を持って外に出る際に、エミルとユミルを先に裏口から逃がしていた。

村を襲ってきたのは、この世界の最大都市として存在していた“セフィロトガーデン皇国”の黒い騎士団の集団だった。


「ユミル、ちゃんとついて来いよ?」

「う、うんっ」
 

エミルとユミルは、レックスに言われた通りに裏口から逃げ出して裏手の渓谷へと逃げて来ていた。

その渓谷は、素人では通るのは辛い道となっているがエミルとユミルはレックスの手伝いでよく訪れていた。


「村が、燃えてる……」

「とうさん、かあさん……だいじょうぶかな?へいきかな?」

「二人とも、強いから大丈夫だっ」

「うんっ……」


ユミルはエミルに励まされたが、この胸騒ぎを感じて安易に安堵を感じては居られなかった。

そして、頭の中では物語が動き出した可能性を考えていた。


(そうなれば、レックスとヴィオラは死ぬ可能性を考えておいた方がいいよな?)


そう考えていると、二人の後ろから足音がして二人して振り向くと数名の黒い騎士が現れて殺されると感じていた。

だが、エミルがユミルを守ろうとレックスに託されたダガーを抜いて応戦したのだが、体格差もあるためダガーは弾かれてしまうと蹴られてしまう。


「おにーちゃんっ!」

「っ……」




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