錬金術師の性奴隷 ──不老不死なのでハーレムを作って暇つぶしします──

火野 あかり

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新たな世界

第十二話 海水浴

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「とりあえずこんなもんか……」

 絶海の孤島──城とは違う場所だが──に俺たちは来ている。
 真っ白な砂で覆われた、何もない島だ。
 見渡す限り周囲に人影はない。それどころか島もない。完全に俺たちだけだ。

 三人──レーム、イチカ、ニムは砂で遊んだりしている。俺が行くまで海には入らないようにと指示してあるからだ。一応危険はないと確認済みではあるものの、目に入るところで過ごしていてほしかった。

 俺はと言うと日差しよけの小さな小屋にも近いものを作っている。
 小屋の地面はそのまま砂で、屋根と椅子、机があるだけのものではある。
 照りつける直射日光と、砂に反射する光を少しでも防ぐためのものである。
 この日光の強さはほとんど城に引きこもっている俺には厳しいものがあるのだ。
 別に吸血鬼というわけではもちろんない。

 大体完成したころ、三人の方を見るとレームを除く二人は砂に埋められていた。

 顔だけが出ていて、その表情は楽しそうなものだ。

 埋められることの何が面白いのかと聞きたいが、三人は楽しそうなのでそのままにしておく。せっかくの海だ。水を差すべきではないだろう。周りは水だらけだが。

 彼女たちからすれば何もかもが新鮮なのだと思う。
 海自体は城からでも見えるが、その景色は断崖絶壁の荒れ狂うものだ。
 こんな風に穏やかな海など見たこともないのである。

「三人とも、休憩場所ができたぞ」
「お疲れ様です。ご主人様」

 レームがこちらの方にやってきてゆっくり頭を下げる。
 イチカとニムも同じようにしようとしているようだが、埋もれた砂の重みで動けないらしく、ばたばたとしていた。

「あー、二人は大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。はしゃいでいるだけですから」

 レームは微笑んでいるが、後ろから覗く二人──ニムは「助けて……」と小さく声を上げていた。

「助けてって言ってるが……?」
「もう、仕方ないですね……」

 二人でイチカとニムを掘り返す。出てきた二人は砂だらけだった。
 服のまま埋められていたようで、開いているところから砂が入ったのであろう、イチカはすごくむず痒そうにしていた。

「レーム姉、埋めすぎ……最初は楽しかったけど、動けないことに気づいて焦ったよ……」

 最近のニムはレームのことを≪レーム姉≫と呼ぶようになった。イチカのことは変わらずイチカと呼んでいる。

 三人は仲が良く、俺は時折居場所がないような気さえするときもある。だが、そんな三人を見ているとき、自分の心が癒されていると思える。
 自分でも知らないうちに微笑んでしまうのだ。
 俺の人生において今が一番幸せなのかもしれない。だから、俺はこの幸せを守るために尽力する。

 そんなこともあってなんとなく、今日は海水浴に来てみたのである。
 理由としてはニムに外の世界を見せてやりたかったのと、たまの気分転換だ。
 こうでもしないと城にこもり切って性行為に夢中になってしまうからである。
 ちょっとした実験でもある。

 ニムが来てからというもの、朝も夜も関係なくなってしまった。
 昼はニム、夜は三人全員の相手をする生活が続いているのだ。
 以前はそれほどでもなかったイチカは、対抗意識からか毎日やってくるようになった。
 睡眠を必要としない体ではあるものの、精神の安定のために最低限睡眠は欲しい。これはもはや習慣なのだから。

 時間の感覚があいまいになり、限界まで疲れ切って、それをエリクサーの力でごまかしているような、そんな生活が続いている。
 本来ならば俺以上に三人の方が疲労は残るはずではあるものの、そんな様子はみじんもない。

 淫乱の構造を導入していないはずのニムが一番淫乱だった。
 創造主である俺にもわからないことがあるといういい例だ。

 ニムは一度発情し始めると無尽蔵だ。俺が腰を動かせなくなるほどに疲労してしまうと、上に乗り、自分が疲れ果てるまで腰を振り続ける。
 喘ぎ方は獣のようで、舌足らずなしゃべり方で大声を上げながら何度も何度も絶頂し、全身から液体を垂れ流している。
 普段の様子からはかけ離れた姿のため、多少見慣れたはずのイチカは今でも少々引いたような表情を見せる。
 一方、レームは嬉しそうにその様子を見ており、精神年齢の違いを見せつけていた。

 イチカとニムには大きな知能レベルの差はない。
 それでも、レームだけは別格だった、
 レームは俺の妻として、俺と大差ないレベルの知性を与えている。
 最初はレーム以外の人造人間を作る気がなかったからだ。それに、俺の研究助手としてデザインされているからである。
 俺の理解者として、そして理想の妻として。
 多少の制限こそつけたものの、基本的な思考力のレベルは並みの人間をはるかに凌駕したものがある。
 彼女の思考力は賢者の石すら届きうるレベルなのだ。
 単純なレベルで言うなら俺とそん色ない。それも、賢者の石の生成に至った頃の自分と大差ないほどに。

「ご主人様! 海に入りましょう!」

 イチカがいつも以上に高いテンションで俺にしがみ付いてくる。
 こうしていると完全に子供だ。
 レームの子供にしては大きいが。

 全員がまだ服を着た状態だ。
 ただ、レームを含めて全員が目の前に見える青く澄んだ海に興味を示していた。

 砂の半分ほどはサンゴの残骸なのだろう、白い、星形のものが多い。
 裸足の裏に当たる感触が少し痛く、それでいて新鮮なものだった。

「見てください! 青いですよ、綺麗ですよ!?」

 ニムが俺の手を引っ張り海の方へ誘導する。
 人間のいない地域だからなのだろう。海は青く、それでいて近づくと緑のようにも見える。水の透明度は高く、汚れていない。
 前を歩くニムの髪色のように柔らかそうな、そんな青だ。
 太陽光の七色の中で青だけは吸収されずに拡散してしまう色だから、なんて面白くないことを考えてしまう。

「綺麗だな。どうだ? 気分転換になったか?」

 ニムは最近の自分の痴態を思い出したのか、顔を真っ赤にしてこちらを見る。

「もしかして、そういう意図だったりします? 海って」
「そういう意図? 昼間から盛り続けるのもどうかとは思ったが……」
「やっぱりご迷惑、ですよね……」
「いや、迷惑というわけではないんだが──俺も満足はしているしな」
「その、私、したくなったら我慢できないみたいで……」
「……知ってる」
「ごめんなさい……」
「謝ることはないぞ。ただたまにはこういう気分転換も必要かと思ってな。ずっとベッドの上にいると根を張ってしまいそうだからな」

 ニムは恥ずかしそうな顔をした後に、一転、笑顔に変わる。
 考えても無駄だと思ったのだろう。その考えは間違いではない。俺に甘える分には一向にかまわないのだ。
 ただ、ニムの考えるようにそういう意図がある。
 要するに、退屈だから性行為に溺れるのでは? と考えたのだ。

「さぁ、みんな。入ってもいいぞ。危ないからあまり奥の方には行くなよ。こういうところは急に深くなるからな」

 俺の掛け声に合わせ、三人は服を脱ぎ海に向かう。
 当然全裸だ。水着というものも考えたが、その程度のことで買い物に行くのは危険を高めるだけだと判断した。そしてなにより、恥ずかしい。
 どちらにせよ見慣れた姿だ。ニムに関しては服を着ている方が新鮮に思えるほどに。

 事故が起きる危険はほぼない。俺がいるのだから。いざというときは周囲の水を消滅させてしまうつもりだ。
 危険な生き物に関しては周囲一帯に侵入防止の障壁を展開している。入ってこれるのは小魚なんかの危険性のないものだ。
 実際、少々危険な動物くらいでは彼女たちを傷つけるには至らない。
 見た目はともかく、人間よりもはるかに強い存在なのだから。

 人間に対しては、そもそもこの島自体を認識できないようにしてある。
 現代の魔術師──俺を除いて──では看破などできるはずもない。
 何もない島ではあるものの、新旧織り交ぜた防衛網で保護されているのだ。
 王城などであってもここまでの警備は不可能だと断言できる。

 かなり過剰な警備ではある。
 本来こんな島にそれほどの危険はない。
 危険があるとすればそれは俺たちそのものだ。

 俺が持つ賢者の石。そして人造人間という存在していないはずの者たち。
 どんな国家も人物も。存在が知れればどんな手段を講じても奪いに来るだろう。
 賢者の石というのはそれだけの価値を秘めているものだ。
 魔術師としては二流か、それ以下の俺が世界を相手取ることすら可能なほどの武力を保持しているのは、他ならぬ賢者の石のおかげなのだから。

 俺のように不老不死になることもできるし、人造人間は兵士としても優秀だ。人間よりもはるかに強い体で従順、その上知能まで高いのだ。
 それに性的な使い方もある。今の俺がまさにそのような状態ではあるが、そういう需要は当然あるだろう。

 だからこそ、危険を回避するのは当然なのだ。
 あの時の二の舞は御免だ。
 俺だってあんな思いをしたいとは思わないし、レームたちにも味あわせたくない。

 三人が遊んでいるのを見ながら、俺は椅子に座ってのんびりする。
 一応は周囲の警戒をするも、特に危険なものは感じない。
 普段は壁に囲われているため、周囲が広々としている空間の居心地には違和感があるものの、悪い気はしない。
 肺に入ってくる空気は澄んでいて、どことなく埃っぽい城とは大きく違う。
 塩辛い風は肌に張り付くようで、多少の不快感こそあるものの心地いい範囲だ。

「結構いいものだな……」

 日差しの方へ──上へ視線を向け、呟く。もっとも、屋根で直接は見えない。

「魚でも獲ってみるか」

 魚は普段食べるものではない。
 レームでさえ食べたことのない食材だ。
 俺自身そこまで好きでないということも理由ではある。生臭さが苦手なのだ。そのため城周辺で獲れるのがわかっていても、イマイチその気にはなれない。
 ただ、せっかくの海だ。
 彼女たちに今まで食べたことのないものを食べさせてやりたい。

「これが親ばかっていうやつかな……」

 これくらいの幸せを感じてもいいだろう。
 少しくらい、いいだろう。
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