転生したら、まさかの脇役モブでした ~能力値ゼロからの成り上がり、世界を覆すは俺の役目?~

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
17 / 152
第三章:王城の闇と真実への探求

第十六話:騎士団長の秘密と王女の面影

しおりを挟む
意識が浮上すると、まず消毒液の匂いが鼻を衝いた。瞼を開けると、そこは清潔な白い天井。

どうやら野戦病院のようだ。体中に残る疲労感と、魔力枯渇の不快感が、昨夜の激戦が夢ではなかったことを教えてくれた。

「目が覚めたか、アルス」

声のする方を見ると、ライオネルが俺のベッドの傍らに座っていた。その顔には、深い安堵の色が浮かんでいる。

「ライオネルさん……」

俺は掠れた声で言った。

「馬鹿者! 無茶をしおってからに! しかし……よくやった。お前の放ったあの炎がなければ、我々は危うく全滅するところだった」

ライオネルはそう言って、俺の頭を優しく撫でた。彼の言葉に、俺は頬が熱くなるのを感じた。

最弱モブだった俺が、こんな風に感謝される日が来るとは。

「シャドウナイトは……」

俺は尋ねた。

「お前の魔法で怯んだ隙に、アシュレイ団長が追撃を加えた。奴を完全に仕留めきることは出来なかった……だが深手を負い撤退していった」

ライオネルの言葉に、俺は安堵のため息を漏らした。やはり、俺の一撃は有効だったのだ。

ただし、討伐とはいかなかったか。
奴はいずれまた必ず来る。今回はアシュレイが無事だっただけマシだと思うべきだ。

彼はこの物語において重要な戦力だ。

「戦況はどうなりましたか?」

「おかげで、魔物の群れは一時的に退却した。だが、またすぐに来るだろう。奴らは、あのシャドウナイトによって統率されていたようだからな」

ライオネルは険しい顔で言った。彼の言葉通り、「影」の存在が魔物を操っていたのだ。

その時、病室のドアが開き、アシュレイ団長が入室してきた。彼の顔からは疲労が見て取れるものの、その目は依然として鋭い。

「目が覚めたか、アルス殿」

アシュレイ団長が、ベッドの傍らに立つ。その視線は、ライオネルとは異なり、やはり俺の深奥を探るような鋭さがあった。

「団長……」

俺は身を起こそうとしたが、ライオネルに止められた。

「まだ休んでいろ」

「……あのシャドウナイトを退けたのは、貴殿の魔法だったな」

アシュレイ団長が、そう切り出した。彼の声には、僅かながら驚嘆の色が混じっている。

「はい……」

俺は素直に認めた。

「あの魔法は、尋常ではない。並の魔術師では、あのような高位の魔族を怯ませることなどできん」

アシュレイ団長はそう言うと、俺の目の色をじっと見つめた。その視線は、まるで何かを確認するかのように。

「……貴殿は、以前、王女殿下を助けた子供か?」

団長の言葉に、俺は内心で息を呑んだ。やはり、あの時のことは、彼の耳にも入っていたのか。

しかし、なぜ今、このタイミングでその話をするのだろう?

「いいえ、存じ上げません」

俺は再びとぼけることにした。

すると、アシュレイ団長は、静かに首を振った。

「誤魔化す必要はない。私が直接、確認した」

彼の言葉に、俺は目を丸くした。直接確認した? いつの間に?

「王女殿下は、あの時、助けられた子供の顔を覚えていなかった。だが、その瞳の色は、はっきりと記憶していたそうだ。……『夜空のような黒い瞳』だったと」

アシュレイ団長は、俺の黒い瞳をじっと見つめた。
【共感性】スキルが、わずかに反応する。彼の言葉には、嘘偽りがなかった。

「貴殿のような子供が、この王国内で、その特異な瞳の色を持ち、さらに強力な魔法を行使できるなど……ありえない偶然だ」

アシュレイ団長はそう言い放つと、静かに口を開いた。彼の声は、一段と低いものになった。

「……私の家族も、過去に魔物に襲われたことがある。その時、私を救った者がいた。その者の瞳も、貴殿と同じ、漆黒の色だった」

アシュレイ団長の言葉に、俺は衝撃を受けた。
まさか、彼がそんな過去を抱えているとは。そして、彼を救った人物も、俺と同じ「黒い瞳」だったと?

これは、ゲームの攻略情報には一切載っていない、アシュレイ団長の隠された過去だ。
【知力】が、高速でこの情報とゲーム知識を照合する。

ゲームでは、アシュレイ団長は常に冷徹で完璧な騎士として描かれていたが、彼にもそんな秘密があったのか。

「その者は、その時、私にこう言った。『この世界の未来は、まだ決まっていない』と」

アシュレイ団長の視線が、再び俺に向けられた。その目には、強い光が宿っていた。

「そして、貴殿だ。過去、私も経験したことのない、謎の魔物の出現。そして、それに対応できる、貴殿のような『特異な存在』。……やはり、貴殿は、あの時の者と、何らかの関係があるのか?」

アシュレイ団長は、俺の答えを待っていた。
俺は、どう答えるべきか、迷った。
転生者であることを明かすわけにはいかない。だが、彼を欺き続けるのも限界がある。

俺は、意を決して、答えることにした。

「……俺は、この世界の真実を知っています。そして、この世界の未来を変えたいと、そう思っています」

俺は、嘘をつかなかった。転生者であることは伏せたが、自分の目的ははっきりと伝えた。

アシュレイ団長は、俺の言葉に、何も言わなかった。
ただ、その表情は、僅かに驚きに染まっているように見えた。

「……そうか。だが、貴殿の力は、まだ未熟だ。もし、本気でこの世界の未来を変えたいのならば、もっと力をつけなければならない。そして、それを成すには多くの困難が待ち受けているだろう」

アシュレイ団長は、そう言うと、俺に背を向けた。

「貴殿のことは、私が責任を持って面倒を見よう。だが、今後は、私の指示に従ってもらう」

彼の言葉は、一方的な命令だった。
しかし、その言葉の裏には、俺への「敬意」と、そして「期待」が込められているように感じた。

俺は、アシュレイ団長と、彼の過去の秘密、そしてこの世界の裏側に、深く関わっていくことになったのだ。

「はい、団長」

俺は力強く答えた。
モブの成り上がり物語は、いよいよ核心へと突き進んでいく。

この世界の真実とは何か。そして、アシュレイ団長を救った「黒い瞳の人物」とは誰なのか。
物語の謎は深まるばかりだ。

「……誰なんだそいつは」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...