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第四章:真実への扉、動き出す世界
第四十二話:聖女の決意と新たなる試練
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深い眠りから覚めた俺は、心身ともに回復しているのを感じた。久々にぐっすりと眠れたおかげか、頭も冴えている。
「……よし、いくか」
団長に報告を済ませ、次の行動をどうするか考える。魔王の魂片の浄化、そして残る七つの魂片の回収。やるべきことは山積している。
まず、俺は聖女セレナに会うことにした。彼女なら、魔王の魂片、そして勇者の魂についての情報を持っているかもしれない。
それに、団長からも「聖女殿下も貴様の帰りを案じていた」と言われていたし、顔を見せておくのが筋だろう。
俺は騎士団本部から聖女が滞在する聖堂へと向かった。聖堂は王都の中心に位置し、清らかな空気に満ちていた。
聖堂の扉を開けると、そこはステンドグラスから差し込む柔らかな光に包まれ、厳かな空間だった。奥には祭壇があり、聖女セレナが静かに祈りを捧げていた。
「聖女様、アルスです。ただいま戻りました」
俺の声に、セレナがゆっくりと振り返った。彼女の顔には、安堵の表情が浮かんでいた。
「アルス様!ご無事でしたか……! 私、本当に心配で……」
セレナは、俺に駆け寄ると、その小さな手で俺の腕をそっと掴んだ。
彼女の瞳は、安堵の涙で潤んでいた。
(心配してくれてたのか……可愛いな)
俺は思わず照れてしまう。
「ご心配おかけしました。なんとか無事生還できました」
俺は、アシュレイ団長にした報告と同じく、古の神殿跡と北の古城での出来事を簡潔に説明した。
特に、アビス・ゴーレムの撃破と、魔王の魂片が勇者の魂の一部であったという衝撃の真実を伝えた。
俺はマジックバッグから、回収した三つの魔王の魂片を取り出し、セレナに見せた。
セレナは、魔石を前にして顔色を変えた。
「これは……! この禍々しい魔力……! そして、微かに感じる、聖なる……力……?」
彼女は、魔石に手をかかざし、目を閉じた。その表情は、苦悶と驚きに満ちている。
(……何か分かればいいが)
「アルス様のお話、信じがたいことですが……この魔石が語りかけてきます……。闇に染められ、嘆き苦しむ、古の魂の叫びが……」
セレナの瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
「まさか、魔王の魂片が、勇者様の……。これを浄化するには、膨大な聖なる力が必要です……。しかし、私には……まだ……」
セレナは、悔しそうに唇を噛んだ。
彼女の力だけでは、現状では魂片を浄化できないというのか。
「聖女様、何か手掛かりはありませんか? 隠れ里の伝承で、『星の光を集めし剣』と『地の底より湧き出ずる聖なる雫』が、闇の力を封じるのに必要だと言われていましたが……」
俺は、隠れ里で得た情報を聖女セレナに伝えた。
セレナは、その言葉にハッと目を見開いた。
「『星の光を集めし剣』と『地の底より湧き出ずる聖なる雫』……!? それは、古の聖典に記されている、『勇者の遺産』のことです!」
セレナの声に、確信の色が宿っていた。
「聖典には、勇者様が魔王を封印する際、その力を二つの聖なる遺産に分散させたと書かれています。一つは、天よりの光を宿す聖剣、もう一つは、地の底から湧き出る聖なる泉の雫……。それが、この世界のどこかに隠されている、と……」
(やっぱり、繋がってたのか!)
俺の予想は当たっていた。隠れ里の伝承は、単なる言い伝えではなく、真実を語っていたのだ。
「聖女様、その遺産はどこにあるか、聖典に記されていませんか?」
「それが……詳細な場所までは記されていません。ただ、聖剣は、最も星に近い場所、そして聖なる雫は、最も深い闇に覆われた場所に隠された、とだけ……」
セレナは、残念そうに首を振った。
「しかし、アルス様がその『聖なる雫』を既にお持ちだとは……! それは、まさしく勇者様の力が、今、この世界に必要とされている証拠です!」
セレナの瞳に、強い光が宿った。
「アルス様、この魂片を浄化するため、そして勇者様の魂を完全に解放するためには、『星の光を集めし剣』が不可欠です。私も、持てる全ての力で、その剣の場所を探します!」
彼女の決意に、俺の心も奮い立つ。
「ありがとうございます、聖女様。勿論俺も、その剣を探します」
「アルス様……! 貴方がこの世界にもたらした希望の光は、計り知れません。しかしどうか、ご自身の身も大切にしてください。貴方は、この世界の希望なのですから……」
セレナは、俺の手にそっと自分の手を重ねた。
その温かい感触が、俺の心にじんわりと染み渡る。
(希望、か……。モブの俺が、ねぇ)
聖女との会談を終え、俺は聖堂を後にした。
やるべきことは明確になった。
「星の光を集めし剣」を探す。それが、次の俺の使命だ。
だが、どこから手掛かりを探せばいい?
「最も星に近い場所」……それは、この世界のどこを指すのだろうか。
山頂か? あるいは、空に浮かぶ島のような場所か?
ゲーム知識には、そんな場所はなかったはずだ。
俺は、王都の喧騒の中を歩きながら、今後の行動をどうするか考え始めた。
そして、ふと、アシュレイ団長との会話を思い出した。
「国王陛下にも、この情報を伝えなければならない」
……もしかしたら、国王陛下なら、何か知っているかもしれない。
「聞いてみる価値はあるか」
「……よし、いくか」
団長に報告を済ませ、次の行動をどうするか考える。魔王の魂片の浄化、そして残る七つの魂片の回収。やるべきことは山積している。
まず、俺は聖女セレナに会うことにした。彼女なら、魔王の魂片、そして勇者の魂についての情報を持っているかもしれない。
それに、団長からも「聖女殿下も貴様の帰りを案じていた」と言われていたし、顔を見せておくのが筋だろう。
俺は騎士団本部から聖女が滞在する聖堂へと向かった。聖堂は王都の中心に位置し、清らかな空気に満ちていた。
聖堂の扉を開けると、そこはステンドグラスから差し込む柔らかな光に包まれ、厳かな空間だった。奥には祭壇があり、聖女セレナが静かに祈りを捧げていた。
「聖女様、アルスです。ただいま戻りました」
俺の声に、セレナがゆっくりと振り返った。彼女の顔には、安堵の表情が浮かんでいた。
「アルス様!ご無事でしたか……! 私、本当に心配で……」
セレナは、俺に駆け寄ると、その小さな手で俺の腕をそっと掴んだ。
彼女の瞳は、安堵の涙で潤んでいた。
(心配してくれてたのか……可愛いな)
俺は思わず照れてしまう。
「ご心配おかけしました。なんとか無事生還できました」
俺は、アシュレイ団長にした報告と同じく、古の神殿跡と北の古城での出来事を簡潔に説明した。
特に、アビス・ゴーレムの撃破と、魔王の魂片が勇者の魂の一部であったという衝撃の真実を伝えた。
俺はマジックバッグから、回収した三つの魔王の魂片を取り出し、セレナに見せた。
セレナは、魔石を前にして顔色を変えた。
「これは……! この禍々しい魔力……! そして、微かに感じる、聖なる……力……?」
彼女は、魔石に手をかかざし、目を閉じた。その表情は、苦悶と驚きに満ちている。
(……何か分かればいいが)
「アルス様のお話、信じがたいことですが……この魔石が語りかけてきます……。闇に染められ、嘆き苦しむ、古の魂の叫びが……」
セレナの瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
「まさか、魔王の魂片が、勇者様の……。これを浄化するには、膨大な聖なる力が必要です……。しかし、私には……まだ……」
セレナは、悔しそうに唇を噛んだ。
彼女の力だけでは、現状では魂片を浄化できないというのか。
「聖女様、何か手掛かりはありませんか? 隠れ里の伝承で、『星の光を集めし剣』と『地の底より湧き出ずる聖なる雫』が、闇の力を封じるのに必要だと言われていましたが……」
俺は、隠れ里で得た情報を聖女セレナに伝えた。
セレナは、その言葉にハッと目を見開いた。
「『星の光を集めし剣』と『地の底より湧き出ずる聖なる雫』……!? それは、古の聖典に記されている、『勇者の遺産』のことです!」
セレナの声に、確信の色が宿っていた。
「聖典には、勇者様が魔王を封印する際、その力を二つの聖なる遺産に分散させたと書かれています。一つは、天よりの光を宿す聖剣、もう一つは、地の底から湧き出る聖なる泉の雫……。それが、この世界のどこかに隠されている、と……」
(やっぱり、繋がってたのか!)
俺の予想は当たっていた。隠れ里の伝承は、単なる言い伝えではなく、真実を語っていたのだ。
「聖女様、その遺産はどこにあるか、聖典に記されていませんか?」
「それが……詳細な場所までは記されていません。ただ、聖剣は、最も星に近い場所、そして聖なる雫は、最も深い闇に覆われた場所に隠された、とだけ……」
セレナは、残念そうに首を振った。
「しかし、アルス様がその『聖なる雫』を既にお持ちだとは……! それは、まさしく勇者様の力が、今、この世界に必要とされている証拠です!」
セレナの瞳に、強い光が宿った。
「アルス様、この魂片を浄化するため、そして勇者様の魂を完全に解放するためには、『星の光を集めし剣』が不可欠です。私も、持てる全ての力で、その剣の場所を探します!」
彼女の決意に、俺の心も奮い立つ。
「ありがとうございます、聖女様。勿論俺も、その剣を探します」
「アルス様……! 貴方がこの世界にもたらした希望の光は、計り知れません。しかしどうか、ご自身の身も大切にしてください。貴方は、この世界の希望なのですから……」
セレナは、俺の手にそっと自分の手を重ねた。
その温かい感触が、俺の心にじんわりと染み渡る。
(希望、か……。モブの俺が、ねぇ)
聖女との会談を終え、俺は聖堂を後にした。
やるべきことは明確になった。
「星の光を集めし剣」を探す。それが、次の俺の使命だ。
だが、どこから手掛かりを探せばいい?
「最も星に近い場所」……それは、この世界のどこを指すのだろうか。
山頂か? あるいは、空に浮かぶ島のような場所か?
ゲーム知識には、そんな場所はなかったはずだ。
俺は、王都の喧騒の中を歩きながら、今後の行動をどうするか考え始めた。
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……もしかしたら、国王陛下なら、何か知っているかもしれない。
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