転生したら、まさかの脇役モブでした ~能力値ゼロからの成り上がり、世界を覆すは俺の役目?~

水無月いい人(minazuki)

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第五章:禁書庫の深淵、解き放たれる真実

第四十五話:解かれた封印と星への羅針盤

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俺は、シャドウ・レイスの精神攻撃に耐えながら、古き封印箱の魔法陣に【光の加護】を帯びた掌を押し当てた。

すると強烈な光の魔力が、箱に描かれた複雑な魔法陣へと流れ込んでいく。

キィィィィィン……!

箱から甲高い音が響き、魔法陣が眩い光を放ち始めた。闇の魔術と聖なる魔術が絡み合った封印が、俺の【光の加護】と【魔力操作】によって、ゆっくりと解除されていく。

『……やめろ……!』
『……解放するな……!』

シャドウ・レイスたちが、さらに激しい精神攻撃を仕掛けてきた。頭痛がひどく、視界が歪む。体中の魔力が逆流するような不快感に襲われる。

「くっ……!」

アシュレイ団長が、俺を庇うようにシャドウ・レイスの幻影と交戦している。彼の剣は幻影達をすり抜けるが、その動きは彼らの精神攻撃によって鈍くなっていた。

「アルス! 無理をするな!」

団長の叫び声が遠くに聞こえる。
俺は、全身の力を振り絞り、さらに魔力を集中させた。

(あんたが無茶してるってのに、俺が無茶しないでどうするんだよ……!)

パキィン!と、乾いた音が響いた。

(よし……!解けた)

古き封印箱に描かれた魔法陣が、ひび割れ、砕け散った。
そして、鎖が音を立てて外れ、箱の蓋がゆっくりと開いた。

箱の中から、まばゆいばかりの光が溢れ出した。
その光は、周囲に満ちていたシャドウ・レイスの幻影を照らし、彼らは悲鳴を上げて後退していく。

『──グルアアアアアアアア!』

光は、禁書庫の闇を払いのけ、まるで夜空の星々のように瞬いていた。

シャドウ・レイスたちは、光に触れることを恐れるかのように、次々と闇の中へと溶け込み、姿を消していった。

静寂が戻った禁書庫で、俺は荒い息を整えた。
【危機察知】の警告が収まり、次第に頭痛も和らいでいく。

「さて……箱の中身はなんだろなっと」

箱の中には、古びた羊皮紙の巻物と、手のひらサイズの小さな羅針盤が収められていた。

羅針盤は、真鍮製で、中心には小さな水晶が埋め込まれている。その水晶は、箱から溢れた光と同じく、微かに星のように瞬いていた。

俺は、巻物と羅針盤を手に取った。
【鑑定】スキルが、その情報を読み取る。

【アイテム名:古地図の断片(星示す方角)】
【概要:数百年前の動乱で失われたとされる古地図の一部。特定の条件で『星の光を集めし剣』の場所を示す】

【アイテム名:星の羅針盤(勇者の導き)】
【概要:『星の光を集めし剣』の隠し場所を示す羅針盤。夜空の星の配置と勇者の魂の残滓に共鳴し、剣の場所を指し示す】

(これだ……! これが『星の光を集めし剣』の手掛かりだ!……うぷっ……吐き気が……アイツらの精神攻撃のせいか)

俺は何とか耐え、古地図の断片と星の羅針盤を握りしめ、喜びを噛み締めた。

アシュレイ団長が、俺に近づいてきた。

「アルス、よくやった! だが、無茶し過ぎだ!……しかし、貴様のその力は一体……」

団長は、驚きと感嘆の眼差しで俺を見ていた。

「そんな事より団長。この箱の中に、探していた古地図の断片と、羅針盤がありました」

俺は、団長に二つのアイテムを見せた。
団長は、羅針盤の中心で瞬く水晶を見て、目を見張った。

「これは……まさか、王家の伝承にある『星を示す導き』の羅針盤か!? 失われたとされていたはずだが……」

団長の声には、興奮が混じっていた。

「そして、この古地図の断片。これで、『星の光を集めし剣』の場所が分かるかもしれません」

俺は、すぐに古地図の断片を広げてみせた。
羊皮紙には、古びた文字と、見慣れない地形が描かれている。

しかし、これだけでは、どこを示しているのか全く分からない。
羅針盤も、今はただ静かに瞬いているだけだ。

(特定の条件で場所を示す、か……)

俺は、星の羅針盤をじっと見つめた。
そして、【ユニーク能力:勇者の魂の残滓】が、羅針盤の水晶に微かに共鳴しているのを感じた。

(共鳴……している?)

「一先ず陛下に報告だ。そして、この羅針盤と地図の使い方を、もう少し調べる必要がある」

俺と団長は、禁書庫を後にし、国王陛下への報告に向かった。

(……国王陛下は俺達に何か隠している)

俺は確信した。

---

国王陛下は、古地図の断片と星の羅針盤を見て、感嘆の声を上げた。

「これは……まさしく、伝承に記されし『勇者の導き』の羅針盤! そして、失われた古地図の断片……! アルス、貴様は、我々が失われたと諦めていた希望を、再びもたらしてくれたのだ!」

国王陛下は、興奮を隠せない様子で、俺の肩を力強く叩いた。

(痛い痛い、もう少し力を加減してくれ……)

俺の思いは届かず国王は続ける──

「この羅針盤と地図の分析を、王家直属の魔術師団に命じる。最優先で解析させよう。貴様は、しばらく王宮で休むと良い。必要な物資や情報は、惜しまぬ」

国王陛下の言葉に、俺は安堵した。専門家が分析してくれるなら、心強い。

(……ただ……気になるな)

---

王宮での数日間は、束の間の平和だった。
俺は、騎士団の訓練場を借りて、スキルレベルの向上に励んだ。

今のままじゃいつ死んでもおかしくないと思ったからだ。

「俺はまだまだ弱い。ここまで生きて帰ってこれたのは、小賢しく立ち回れているだけで、俺が強くなった訳じゃない……慢心するな社畜」

そう自分に言い聞かせる。

訓練の内容は主に、【光魔法】と【魔力操作】の連携を意識し、より効率的な魔力運用を模索するというものだ。

【体力:11.5 → 12.0】
【魔力:11.5 → 12.0】
【筋力:10.5 → 11.0】
【敏捷:10.5 → 11.0】
【器用:10.5 → 11.0】
【知力:13.5 → 14.0】
【自己回復:2.5 → 3.0】
【光魔法:3.5 → 4.0】
【魔力操作:6.5 → 7.0】

全体的にステータスが底上げされ、【光魔法】と【魔力操作】が大きく伸びた。これは、今後の戦いにおいて、大きな武器となるだろう。

「……今日はこれくらいでいいか」

そろそろ解析結果が出るはずだ。


──そして、数日後。魔術師団の団長から、古地図の解析結果が報告された。

「アルス様、星の羅針盤と古地図の断片を解析した結果、ある場所が浮かび上がりました」

「ほんとですか!それは一体どこですか!?」

魔術師団長の顔には、確信と、そしてかすかな緊張が浮かんでいた。

「……それは、『天空の浮遊島』と呼ばれる場所です」

天空の浮遊島……!

やはりゲームには出てこない場所だ。

「最も星に近い場所」という言葉に、まさか本当に空に浮かぶ島があるとは。

「浮遊島へは、王都の北東に位置する『古の竜の山脈』の最深部にある、特別な転移魔法陣を使わなければ到達できません」

魔術師団長は、さらに続けた。

「しかし、その転移魔法陣は、数百年前の動乱でその場所が失われ、機能も停止しているとされていました。この古地図の断片は、その転移魔法陣の場所と、再起動のための情報を示しています」

(ついに、場所が分かった……!けど……)

俺は、喜びと、そして新たな戦いへの覚悟を胸に抱いた。

「古の竜の山脈」……。名前からして、一筋縄ではいかない場所だろう。

だが、「星の光を集めし剣」が、そこにある。

「ここまで来たら行くしかないだろ」

俺はそう決心した。
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