攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
23 / 282
第二章 ヒーラー 王国篇 《第一部》

第21話 「レイラ・セレスティアⅡ」

しおりを挟む
レイラは、人探しの旅に出た。
アスフィと共に。

その道中、一人の老人に出会った。名を、ゲンじい。
 彼はレイラに黒曜石で作られたショートソードをくれた。
いや、厳密にはアスフィに渡したものだったのだが……
 ――結果として、レイラが受け取ることになった。

 ◆◆◆

「アスフィ、剣だけじゃダメ」

「え?」

「杖がない。ヒーラーなのに杖がない」

アスフィは、杖も持たずに旅を続けようとしていた。
レイラはそれが気に入らなかった。
 魔法使いにとって杖は重要な存在だ。
無くても魔法は使える。
だが、あるのとないのとでは雲泥の差がある。

 「別の杖じゃダメなの?」

「ダメだ。母さんの杖がいい」

頑なに譲らないアスフィに、レイラはため息をついた。

 「……どうして?」

「母さんがずっと大切にしてた杖だから」

 レイラは、ほんの少し羨ましいと思った。
家族を大切に思う気持ちを、純粋に抱けることが。

 「でも、もう無いじゃん……諦めようよ」

 「……分かった。諦めるよ」

 そう言いながらも、アスフィの表情はどこか寂しそうだった。
 レイラはふと、母がしてくれたことを思い出した。
あの人は、ろくでもない母だったけれど、
レイラが落ち込んだとき、決まってこうしてくれた。
 アスフィの頭を、そっと胸に引き寄せた。

 「……柔らかい……」

 「……」

 「あいたっ!!」

 「えっち」

 バシンッと軽く頭を叩いた。
 (こんなことで喜ぶんだ……でも、少し恥ずかしいよ)

 ◆◆◆

その後、師匠がアスフィの母の杖を見つけた。
 だが、その杖は――
 ボロボロだった。
カビだらけで、真っ二つに折れていた。
 レイラは「もうダメだ」と思った。
師匠も、「諦めろ」と言った。

 けれど、アスフィだけは違った。
 あれほど傷んだ杖を、
アスフィは両手でそっと握りしめ、魔力を注ぎ込んだ。
 その瞬間、杖が淡い光に包まれた。

腐食した部分は消え、真っ二つだった杖が、元通りになっていく。
 レイラは言葉を失った。

 (……すごい)

 アスフィは凄い。
改めて、そう思った。
 杖の先端には、美しい緑の宝石が光っていた。
 こうしてアスフィは、彼の「大切な杖」を手に入れた。

  ◆◆◆

それからしばらくの旅路。

ミスタリス王国に向かう途中、何度も魔獣と遭遇した。
魔獣が出るはずのない裏道を選んだはずなのに。
 そのたびに、レイラは剣を振るい、アスフィは『ヒール』をかけた。

 アスフィの回復魔法は、傷だけでなく疲労までも癒やしてくれる。
 (アスフィはもっと自分を評価するべきだよ……)
 レイラはそう思いながらも、本人には言わなかった。
 ◆◆◆

夜。

レイラはアスフィと並んで焚火にあたっていた。

 「アスフィも女の人が好きなの?」

 「もちろん大好き……ゴホンッ! 程々に好きだよ」


 (嘘だ)

 「ウソツキ。この前、えっちなことしたじゃん」

 「し、してない! そんな嘘はやめてもらおう!」

 「じゃあ、アスフィはしたくないの?」

 「……したくないわけでもない」

 「そうなんだ」

 レイラは、ふと考える。
 亜人族は発情期を迎える。
レイラにも、いつかその時がくる。
 母は――年中発情期だった。
 その時、レイラの相手はアスフィなのだろうか?

  ◆◆◆

夜が更けるにつれ、冷え込みが厳しくなってきた。
アスフィは震えながら提案する。

 「レイラ……寒いから、一緒に寝よう?」

 「……え?」

 「いや、ちがっ! 変な意味じゃなくて! 命に関わるし!」

 「……仕方ないね」

 レイラは、アスフィと抱き合って眠ることにした。

 (アスフィ、時々もぞもぞ動く……)
 (……やっぱり、えっちだ)
  ◆◆◆

――そして、最悪の日が訪れる。

 ◆◆◆

朝。
 レイラが目を覚ますと、鎧の男たちに囲まれていた。
 騎士団を名乗る一団。

 「俺たちは、ミスタリス王国騎士団だ」

 そう名乗る男たちに、レイラは違和感を覚えた。

 (おかしい。騎士団なのに、礼儀がない)

 そして、決定的だったのは――

 (……進んでる方向が、ミスタリスじゃない)

 「ねぇ、おじさん達。本当にミスタリス王国に向かってるの?」

 男の一人が、薄く笑った。

 「……嬢ちゃん、勘がいいな」

 (やっぱり……!)

 騎士団ではない。
この男たちは――盗賊だった。

 「アスフィ!! こいつら騎士団なんかじゃ――」

 「動くな」

 首筋に冷たい刃が当たる。
 「剣を抜いたら、お前の手足は切り落とす」

 ◆◆◆

服が剥がされる。

 (……やだ……助けて……アスフィ……)

 その時――

 「おまえーーー!!!!!」

 轟くような怒声。

 「レイラに手を出したらどうなるか分かってんだろうなぁ!!??」

 アスフィが、見たことのない形相で叫んでいた。
 盗賊たちが襲いかかる。
 しかし、次の瞬間――

 「『ヒール』」

 光が走る。
 その光を浴びた盗賊は、
目や口から血を吹き、地面に倒れた。

 「『ハイヒール』」

 ドス黒い魔力が、アスフィを包む。その瞳は、赤黒く染まっていた。

 「『死を呼ぶ回復魔法(デスヒール)』」

 そう唱えた瞬間、盗賊の首領、ハンベルは眠るように倒れた。
 そして――アスフィも、力尽きるように崩れ落ちた。

 ◆◆◆

これは、レイラにとって悪夢のような一日だった。
 そして、この日を境に――
 レイラは、アスフィに 少しの"恐怖" を感じるようになった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...