攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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第三章 ヒーラー 愛の逃避行篇 《第一部》

第37話「不穏」

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コルネが魔獣をなぎ倒した後、しばらく歩いた……。
どうやらこの先もう少し歩くことになるらしい。
その間、魔獣は絶え間なく出現していた。

ルクスは凄いな……この魔獣達を一人で倒して進んでいたのか。
と、関心しているとコレイとコルネは村長の話をした。

「村長は言っていました客人、以前この森を破壊した者がいると」

「そういえば言っていましたね姉様」

コレイの発言に頷くコルネ。
どうやらコレイ……胸が大きい方が姉のようだ。
コルネ……胸が小さい方が妹のようだな。

「へぇ~そんな者が居たのか……ん?」

と俺は気付く。森を見渡すと所々が焼けていた。
草が生えているところと生えてない部分があったのだ。
それも露骨にハッキリと。俺は誰の仕業か大体想像がついた。

「これまさか……」

「……仕方ありません。私は一人だったのですから」

まだ誰がやったのか俺は言っていないのにも関わらず、
ルクスはあっさりと白状した。
なるほど、以前やらかしたというのは、これのことか。
トレイがやめてくれと言う理由が分かった。

「……仕方ありませんよ。ついクセで」

というルクス。どうやらあの上級魔法は昔のクセらしい。
ルクスの上級魔法である『爆炎の嵐(ファイアーストーム)』は、レイモンドの真似をして使った魔法だ。

それ故に、レイモンドと旅をしていた時はこの魔法ばかり使っていたそうだ。その後、一人で旅をしていた時も……。
そりゃ確かにこんな魔法各地で放っていたら『白い悪魔』の異名も広がるってもんだ。

「村長はルクス様を監視するようにも言っていました」

「言っていましたね姉様」

「……すみませんでした」

コレイとコルネに言われ謝るルクス。
どうやら、監視は俺だけじゃなかった。

村長はルクスがまた森で上級魔法を放つ事がないようコレイとコルネをついて行かせたようだな。

「ドンマイ!ルクス!」

「……あなたもですよ、客人」

「そうですよ、客人」

そうしてしばらく俺たちは森の中を歩いた。
もちろん道中魔獣が出てきた。いつものアイツらだ。

どうやらいつもの犬型の魔獣は『一角獣ケルベロス』という名前らしい。黒い体に頭の青白く光る角が特徴的だ。
コイツらは個々は強い訳では無いが、群れると厄介だという。

「では、ここらで休みましょう客人」

「そうですねコルネ。では私の出番ですね」

妹のコルネが休もうと提案してくる。
気づけば夜になろうとしていた。

もうそんなに経つのか……俺たちは結構歩いたみたいだ。
そしてコレイが背中に背負っていた麻製の風呂敷を広げだした。

その風呂敷は物凄く大きいものだった。

「よくこんな大きいの背負っていたね」
「姉様は力持ちですから」

と小さい胸を揺ら……すことはなく自慢げに言う妹のコルネ。
そのなかには食糧や麻で出来た寝袋なんかが入っていた。
流石はエルフだ。大自然を有効活用している。

だが、食糧と言ってもほとんどが木の実だ。
その中には何かの獣のモノらしい謎の肉もあった。
俺は気になって聞いてみた。

「これ何の肉?」

「兎の肉です客人」

「おおー!熊じゃない!!」

「アスフィは熊肉に飽きていましたからね……」

「いや、ルクスの料理は美味しかったよ!?そんな顔しないでよ!」

ルクスは少し落ち込んでいた。
もちろんルクスの料理は絶品だった。
レパートリーも色々考えて作ってくれていた。

だが、一週間毎日熊肉というのは流石に飽きるというものだ。そんな中の兎の肉だ!久しぶりの熊肉じゃないと聞き俺はつい、はしゃいでしまった。

「しかし客人、あまり食糧は多くありません。ここからは長いですから、食べる配分は調整しないとなりません」

「そうですよ客人」

姉のコレイがそう言い妹のコルネが頷く。この光景は何度も見た。

コルネはどうやら姉コレイの言うことに頷く役割らしい。
楽だな胸の小さい方は。

「そうなんだ……ちなみにあとどれくらいで着くの?」

「そうですね……あと一週間くらいでしょうか」

と答えるルクス。……え、そんなにかかるの……?
俺たちがミスタリスを出てから既に1週間が経っていた。
レイラたちは元気にしているだろうか。

迷惑かけて……いるのはエルザだろうな。あのお嬢様に迷惑かけられていないだろうか。俺はすごく心配になってきた。

「いえ、この調子で行けば三日程で着くでしょう客人」

「……え、そうなの?」

「姉様の言うことに間違いはありません客人」

「……まぁ私は一人でしたから。確かにこの調子で行けばそのくらいで着くかも知れませんね」

そうなんだ。なんだ三日くらいなら全然大丈夫だ。
一週間と聞いてから三日と聞くと短く感じる……不思議だ。

集めて来た小枝に火をつけ焚き火を囲う俺たち。
もちろん火をつけてくれたのはルクスである。

「では、寝ることにしましょう客人。見張りは必要ありません。魔獣は火が苦手です。この森に魔族や魔物といった類は出ませんから」

どうやら魔獣は火が苦手らしい。
もちろん俺は初めて知った。魔物には関係ない話だとの事だが、この森には何故だが知らないが魔物は出ないらしい。

その理由はエルフである二人も知らないようだ。
そもそも魔物と魔獣が何故出現するのか不明だ。
それはまだこの世界でも明かされていない謎の一つである。

そうして俺たちは、姉のコレイが持ってきた麻の寝袋でそれぞれが焚き火の炎に照らされ眠る……。 

…………俺は目が覚めた。なんだか眠れない。

「……眠れないなぁ。レイラが心配なのかな俺」

「……心配性ですね、アスフィは」

「なんだルクスも起きていたのか。まぁな、ずっと一緒に居たんだ。とは言っても出会ったのは十歳の頃だから、まだ2年だが」

俺とレイラは俺が十歳の頃に出会って、以来ほぼ毎日ずっと一緒にいる。そんなレイラと離れて一週間。
不安になるのも無理は無いだろう。

レイラも同じ気持ちだと嬉しいな。

「……アスフィがもし嫌じゃないのなら……一緒に寝ますか?」

「寝る」

「そ、即答ですね!?」

当たり前だ。誰でもないルクス本人からの誘いだ。
断るわけが無いだろう。何を言ってるんだこいつは。
この麻の寝袋はそこそこ大きい。

小柄なルクスと子供の俺なら二人寝るくらいの余裕はある。
俺は自分の寝袋から出てルクスの寝袋に入った。

「はぁ……あったけぇ」

「そうですか、それなら良かっ…………アスフィ、さりげなく私の胸に触れないでください」

あれ……気づかれた!?レイラと野営した時にも抱き合って寝たことがあったけど、バレなかったのに!!

いや、もしかしたらレイラにもバレていたのかな……。
また今度会って、仲直りしたら聞いてみることにしよう。

俺たちは眠りについた。

***

「客人、起きてください」

「不埒な客人起きてください」

コレイとコルネは俺を起こしに来た。ってだれが不埒だよ。

「……起きましたか、では行きましょう客人」

「行きますよ客人」

「え、もういくの?あとちょっとだけ……」

「アスフィ早く起きてください」

あれ!?ルクスまで!?随分と早起きだな。
俺はルクスの寝袋で一人寝ていたみたいだ。

いつの間にかルクスは寝袋から出ていた。
仕方ないので俺も寝袋から出ることにした。

「おはよう、みんな早いね」

「明るい内に行く方が安全なのです客人。夜の森は危険なので」

「姉様の言う通りです。流石の私達でも夜だと迷う可能性があります客人」

なんだそうなのか。……じゃあ行くとしますか。
こうして俺たちはまた歩き出す。またしても道中魔獣が現れる。だが今回出てきたのは今までの犬型の魔獣ではなかった。

「こいつはなんていう魔獣なの?」

俺がそう聞くとルクスが答えた。

「……こいつは『銀色の熊(シルバーベア)』です」

「へぇ、なんか見たまんまだね」

銀色の毛をした熊だ。
だが、野生の熊とは違うらしい。

「『銀色の熊(シルバーベア)』の毛は鉄のように硬いです。物理攻撃は効きません」

ルクスが教えてくれた。……え、じゃあどうすんのよ。
エルフ姉妹は不思議そうな顔をしていた。

「……なぜ、どうしてこんなところにコイツが!?」

「姉様!私の槍ではコイツを倒せません!逃げましょう!」

どうやらエルフ姉妹にはコイツを倒す手段が無いみたいだ。
困ったなぁ……そう思っているとルクスが――

「仕方ありません、私が倒しましょう」

「それは……」

ルクスが魔法の詠唱の準備を始めた。
手にはどんどん魔力が集まっていき光り輝く。

「待ってルクス!……俺がやる」

「アスフィ!?」

「客人!?」

「姉様これは!!」

確かにコイツを倒せるのはルクスの魔法なんだろう。
だが、ルクスに魔法を撃たせるのはマズイ。
エルフ姉妹もそんな顔をしていた。

だから俺がやるしかない。それが一番早い……それにどっちみちこの後面倒なことになる。それなら俺がルクスの分を請け負うとしよう。

――俺は前に出る。

「『死を呼ぶ回復魔法(デスヒール)』」

そう唱えると、『銀色の熊(シルバーベア)』は静かに倒れる。
……
…………
………………

俺は武器を向けられていた。エルフの姉妹に。
……まぁそうなるよな。

「客人、あなたは何者ですか!あなたからは不吉なオーラを感じます!」

「姉様!こいつマズイです!やりましょう!」

はぁ、またこの展開か……。分かりきっていたことだ。
だが、森が焼け野原になるよりはマシだろう。

「違います二人とも!アスフィは敵ではありません!武器を下ろして――」

「敵じゃないよ俺は。君たちを助けただろ?武器を下ろしてくれ。俺はただの子供だよ」

「そんな訳があるか!何だこの不気味な力は!!」

「姉様の言う通りです!」

ま、そうなるよな。
だが、ここまできて引き下がる訳には行かない。
それにこの子達には世話になった。手を出す訳にも行かない。

「分かった武器を向けたままでいい」

俺は二人に向かって両手を挙げたまま続ける――

「ただし、フォレスティアまでは案内してくれ……頼む……母さんの『呪い』について国王に聞かなくてはならないんだ」

「アスフィ……」

「……どうしますか姉様」

「…………分かりました。助けて頂いたのは事実です。しかし、警戒は今まで以上に強くさせて頂きます」

良かった。分かってくれたようだ。

「それでいい……僕の言うことを聞いてくれてありがとう、助かるよ」

「……姉様何なんですかこの者は……」

「私にも分かりません」


コレイとコルネの警戒は強くなったものの、
こうして俺たちは三日間歩き続け、遂にフォレスティアに到着した。


この一週間後、フォレスティアに居る俺たちに一通の手紙が届いた。送り主はエルザからだ。

そこには『救援求む』という内容そして――


レイラの訃報が綴られていた。
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