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第四章 ヒーラー 模索篇 《第一部》
第53話「戦神」
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『炎城ピレゴリウス』に向かう事になった俺達。
しかし、まだ終わらない――
俺たちはアイリスに別れを告げ、『水の都フィルマリア』を離れ、歩き出す。
「ルクスよ、方向はどっちなのだ?」
「えっと、この地図を見る限り西ですね」
「西か……うむ、わからん」
お前今までどうやって冒険者していたんだよ。仮にもS級だろうが。
「ここからだとかなり遠いですね……一ヶ月はかかります」
「え……まじかよ」
「伝説の剣があるのだ! 仕方あるまい」
また歩くのかぁ……。それも一ヶ月ときた。エルザは伝説の剣があるなら、と張り切っている。どっかで馬車でも無いものだろうか。
――そんなことを考えていた次の瞬間
後ろで『水の都フィルマリア』が大きな音を立て崩壊した――。
「うむ!? 何事だ!?」
「これはどういう事でしょうか!?」
「おいおい、もう終わったんじゃないのか」
『水の都フィルマリア』、そこは水上都市では無くなり、
ただの大きな湖となった。その湖の中心にはアイリスの姿がった。水の上に立っている。
だが、アイリスだけではない。もう一つ人影がある。
「誰だあいつは?」
俺は『水の都フィルマリア』があった湖へと急ぐ。
そこに居たのは水の上に立つ神々しく輝くアイリス。
そしてその前にはもう一人。男の影だ。
赤いハチマキに赤と黒の鎧。手には大きな槍を持っている。
この男もまた、水の上を立っていた。いや、立っているというより浮いていた。
『アイリスよ。あまり人間に入れ知恵をするな』
『入れ知恵、ですか? わたくしがいつ人間に入れ知恵をしたというのでしょうか』
『俺はそんな事を言いに来たのではない。……そうかあいつがそれか』
『戦神アレス、あなた何をする気ですか?』
あいつらは一体なにを喋っているんだ? あの男からは全く殺気を感じない。
アイリスが街を維持出来ないほどということは、あの男もやはり神なのだろうか。
『俺たちは人間に干渉しない。それがゼウス・マキナとの盟約だろう』
『……そんな事もありましたか』
『俺達が干渉すれば、この世界は人間のものではなく、俺たち神のモノになる。そういう話だっただろう』
『……分かりました。次からは干渉しないとしましょう。ですので、もうわたくしの街に来ないで頂けますか?』
『ああ、分かった。ここにはもう二度と来ない。………だがそれは別として――』
「………………がはっ……え?」
なんだ……これ? 俺に何をした……あの男。
アレスと呼ばれるその男は、俺に向かって槍を投げた。その槍は俺の腹を貫通し、再びアレスの元へと戻っていく。
『――アスフィさん!? 戦神アレス!! あなたなにを!?』
『俺は人間には干渉しない。だが、あれは例外だ。あいつからは嫌な感じがする。早めに処分しておいた方がいい』
腹が熱い……
「『ハイ……ヒール』」
………………まじか。傷が治らない……くっそここ最近、俺の魔法が効かない相手ばかりだ。嫌になってくる……。
エルザとルクスが俺の元に駆け寄り、穴が空いた俺の腹に手を当てる。
「アスフィ! しっかりしろ! ……ルクス! はやく回復を!」
「今やっています! ……なんで!! なんでですか! 回復しません!」
俺の回復が効かないんだ。ルクスの回復が効く訳ないだろ……。
そんな問答をしている俺達に戦神アレスとやらが、俺たちに言う。
『無駄だ。俺の槍で付いた傷は回復不可だ。諦めろ』
くっそ……なんてチートだよ……アイリスといい、神ってやつはどいつもこいつも。
ダメだな……これは終わった。レイラ……母さん……ごめんな。
二人を目覚めさせることは出来なかった。だけど、その代わりに、会いに行けるかもしれない。レイラ……もし会えたら今度はちゃんとしよう。キスだけじゃない……こと……を。そして、謝らせてくれ……。
「――アスフィィィィィィィ」
「アスフィ……そんな……アスフィの回復でも癒せないなんて……ありえません」
エルザとルクスは取り乱す。
『当たり前だ。神の力に抗える訳が無いだろう』
「……ルクス、やるぞ」
「…………はい、勝てなくてもやれるだけのことは!」
二人は覚悟を決めた。
『小娘ども、俺とやる気か? 死ぬぞ?』
『アレス? わたくしもおりますよ?』
『……ポセイドンよ、神同士の争いは不死故に、決着が付かない。知っているだろう』
『ええ。ですが、彼女達まで死なせる訳にはいきませんので』
『良かろう。小娘ども戦神アレスが相手をしてやる』
***
ここは何処だ? 真っ暗で何も見えない。……そうか俺はあのアレスとかいう奴が投げた槍に貫かれて死んだのか。くっそ……レイラも母さんも居ないじゃないか。ここは天国じゃ無いのか? それとも地獄か? ……いや、母さんはまだ眠りから覚めないだけで生きているのか。でも、レイラはどこだ?
『――レイラはここには居ない』
誰だ!?
『俺は――』
ん? なんて言ってるんだ?
おい、聞こえないぞ! 何て言ってるんだ!!
『やはり言えない、か』
こいつはなんなんだ? 真っ白な人型をした何かが俺の前に立っていた。
まさか、俺の中にずっと居た何かか……?
『……お前は死んだ』
そんなことは言われなくても分かっている。
俺が聞いているのは誰かということだ。
『盟約により俺の正体は言えないようだ』
盟約……? なんだよそれ。
俺はそんなものを結んだ覚えは無いぞ。
『お前が結んだんじゃない。俺が結んだんだ』
誰とだよ。
『……この世界の神とだ』
また神か……そんなもん勝手に結んでんじゃねぇ! 俺はその神にやられたんだぞ!
『戦神アレスか……一応言っておくが、俺が盟約を結んだのはアイツじゃないぞ?』
そんな事はどうでもいい! 何なんだあいつは! 回復が出来なかったぞ!
『そういう力だ。アレスも言っていただろう。アイツの槍に傷付けられた傷は回復出来ない。神にはそれぞれ固有の力がある』
それはアイリスが水を操れるのと同じようにか?
『そうだ。この世界の理を超越する力だ』
通りで勝てないわけだ……。
『水の都フィルマリア』に来てから三人もの神に会ったぞ。
神にはなかなか会えないんじゃなかったのか。
『お前は神に目をつけられているんだろうな』
でも死んだ今、もう俺には関係ない。
お前が誰か知らないが、さっさとレイラに会わせてくれ。
流石の俺もそろそろレイラの胸が恋しくなってきたよ。
『ハッ! お前はそういうやつだったな……いや、俺なのか……まぁいい』
何言ってんだ。お前は天国への案内人なんじゃないのか?
『お前はまだ死んでいないぞ』
何を言ってるんだよ。死んだからここに居るんだろ。
『ここはお前の……ふむ、なんと言えばいいんだ?』
俺が知るか!!
『精神世界……? のようなものだ。つまりまだ死んではいない』
なら早く俺を戻せ。エルザとルクスが戦ってるはずだ……。
あいつらが俺を置き去りにして逃げるとは思えない。
正直、勝ち目がないから逃げて欲しいところだが。
『そうだな。神には勝てない。あいつらは死なないからな』
死なないって……反則だろそれ。
『反則なのはお前もだろ? お前の力。不思議だとは思わないか』
…………。
俺は何者なんだ。知っているなら教えてくれ。
『お前は―――――――やはりダメか』
盟約か……。誰と結んだんだその盟約。
『それも言えない。神、としかな』
めんどくさいな。どうでもいいから早くしてくれ。戻すのか戻さないのか。
何も教えてくれない『お前』と話してても埒が明かない。
『教えたくても教えられないんだ。だがまぁ、それもそうだな。何れ分かる事だ。……だが今戻った所でまたここに戻るだけだぞ?』
死ぬ、とは言わないんだな。
『……』
じゃあどうしろって言うんだよ。
『俺にその体を貸せ。一時的でいい』
体を貸す? どういう事だ。
俺の体をお前に貸してどうするんだよ。
『――俺が戦神アレスを倒す』
神は死なないんじゃないのかよ。
『神は死なないが、ダメージを向けない訳じゃない』
ん……? どういう事だ?
『死にたくなるまで苦しませる、それだけさ』
だが、やつには俺の魔法は効かなかった。アイリスと戦った時も俺の魔法は効かなかった。だからお前に俺の体を貸した所で効かないと思うぞ。
『……盟約を誓ったのはお前じゃない。俺だ』
は? 何の話してんだよ。今、そんな話してないんだよ!
『つまり、簡単に言えば俺とお前じゃ出力が違う』
出力? ……お前の魔法だと通じるってか? 俺の魔法は通じないのに?
『そうだ。お前が持つ不思議な力は〝盟約の力〟だ。お前が無理でも、俺なら通じる』
あーもう勝手にしろ! 俺は疲れた……少し寝る。使いたきゃ好きに使え。
『……安心しろ、またすぐ返すさ』
***
エルザとルクス、アイリスは戦神アレスと激しい戦いを繰り広げていた。とは言え、ほぼアイリスとアレスの戦いだ。エルザとルクスはその中に入る事すら出来ずにいた。
「――待たせたなエルザ、ルクス」
「アスフィ!!?」
「アスフィよ! 生きていたのか!!」
『なんだと!? 馬鹿な!! 俺の槍だぞ!!?』
『あら、なんだか面白くなって来ましたね……ふふっ』
さ、そろそろ大人しくしてもらおうか。
「『消失する回復魔法(ヴァニシングヒール)』」
『何……息が……』
「どうだ? 辛いだろ? 戦神アレス」
『く……俺は神だ……殺せるとでも……?』
「殺しはしないさ。どうせ出来ないしな。だから、そのまま苦しんでもらう。永遠にな」
(おおー! こいつやるな! 戦神アレスに効いてるぞ。でも、なんで俺の魔法は効かないのにこいつのは効くんだよ……納得出来ねぇ)
『良いざまですね、戦神アレス?』
『ポセイドン……力を……貸せ。あれを生かしてはおけん。俺に……力……を』
『嫌です。わたくしはあなたが嫌いなので、アレス』
『ポセイ……ドン貴様……』
喉に手をやり、もがき苦しむアレス。助けを求めるも、アイリスはそれを拒否する。
(いいぞアイリス……もっと言ってやれ!)
そして暫くもがき苦しみ――
『………………分かった……もう手を出さん……』
「本当か? なら……そうだなぁ………ゼウスに誓え」
『…………分かったゼウスに……誓う』
「まぁそれなら仕方ない」
(おいおい、もうやめるのかよ。もう戦神アレス襲ってこないのか?)
……
…………
………………
「アスフィ! 大丈夫か!!」
「アスフィ! 心配しました! 私のヒールが効かなかったので」
エルザとルクスがアスフィの元へと駆けつけた。
「久しぶりだな…………これも久しぶりの感触だ」
「……あの……なぜ今私の胸を揉んだんですか?」
「……久しぶりにな」
(おい何してんだお前! アレス倒したんなら早く体返せ!)
「…………うるさいな、少し待て」
「アスフィ? どうかしましたか?」
「……アスフィ……でいいんだよな?」
(……エルザは相変わらず鋭いな。俺じゃないと分かるのか?)
「ああ、俺だよ」
「……そうか、分かった」
「あの……私の胸を揉んだ件、なかったことにされたんですが……それにしてもアスフィ? お腹の傷が……」
腹部の大きな穴は完全に塞がっていた。傷跡は無い。しかし、ローブに空いたその穴が、その痛々しさを証明していた。
『――流石ですね……アスフィさん? アレスを撃退するとは』
アレスは既に姿を消していた。
「俺にかかれば神なんて敵じゃないってことだ」
『それはわたくしもですか?』
「……どうだかな。お前がやる気なら俺はやるだけだ」
(おい、今のアイリスは敵じゃないぞ)
「…………はぁ……少し内野がうるさいんで、俺は寝る」
『そうですか……ではわたくしのホームへどうぞ』
アイリスは両手を掲げると、ものの数秒で『水の都フィルマリア』を創り上げた。
『さぁ、どうぞ。わたくしのホームへ。案内しますよ、アスフィさん?』
***
戦神アレスを撃退した俺達は再び、休息の為『水の都フィルマリア』へと足を運ぶのだった。
しかし、まだ終わらない――
俺たちはアイリスに別れを告げ、『水の都フィルマリア』を離れ、歩き出す。
「ルクスよ、方向はどっちなのだ?」
「えっと、この地図を見る限り西ですね」
「西か……うむ、わからん」
お前今までどうやって冒険者していたんだよ。仮にもS級だろうが。
「ここからだとかなり遠いですね……一ヶ月はかかります」
「え……まじかよ」
「伝説の剣があるのだ! 仕方あるまい」
また歩くのかぁ……。それも一ヶ月ときた。エルザは伝説の剣があるなら、と張り切っている。どっかで馬車でも無いものだろうか。
――そんなことを考えていた次の瞬間
後ろで『水の都フィルマリア』が大きな音を立て崩壊した――。
「うむ!? 何事だ!?」
「これはどういう事でしょうか!?」
「おいおい、もう終わったんじゃないのか」
『水の都フィルマリア』、そこは水上都市では無くなり、
ただの大きな湖となった。その湖の中心にはアイリスの姿がった。水の上に立っている。
だが、アイリスだけではない。もう一つ人影がある。
「誰だあいつは?」
俺は『水の都フィルマリア』があった湖へと急ぐ。
そこに居たのは水の上に立つ神々しく輝くアイリス。
そしてその前にはもう一人。男の影だ。
赤いハチマキに赤と黒の鎧。手には大きな槍を持っている。
この男もまた、水の上を立っていた。いや、立っているというより浮いていた。
『アイリスよ。あまり人間に入れ知恵をするな』
『入れ知恵、ですか? わたくしがいつ人間に入れ知恵をしたというのでしょうか』
『俺はそんな事を言いに来たのではない。……そうかあいつがそれか』
『戦神アレス、あなた何をする気ですか?』
あいつらは一体なにを喋っているんだ? あの男からは全く殺気を感じない。
アイリスが街を維持出来ないほどということは、あの男もやはり神なのだろうか。
『俺たちは人間に干渉しない。それがゼウス・マキナとの盟約だろう』
『……そんな事もありましたか』
『俺達が干渉すれば、この世界は人間のものではなく、俺たち神のモノになる。そういう話だっただろう』
『……分かりました。次からは干渉しないとしましょう。ですので、もうわたくしの街に来ないで頂けますか?』
『ああ、分かった。ここにはもう二度と来ない。………だがそれは別として――』
「………………がはっ……え?」
なんだ……これ? 俺に何をした……あの男。
アレスと呼ばれるその男は、俺に向かって槍を投げた。その槍は俺の腹を貫通し、再びアレスの元へと戻っていく。
『――アスフィさん!? 戦神アレス!! あなたなにを!?』
『俺は人間には干渉しない。だが、あれは例外だ。あいつからは嫌な感じがする。早めに処分しておいた方がいい』
腹が熱い……
「『ハイ……ヒール』」
………………まじか。傷が治らない……くっそここ最近、俺の魔法が効かない相手ばかりだ。嫌になってくる……。
エルザとルクスが俺の元に駆け寄り、穴が空いた俺の腹に手を当てる。
「アスフィ! しっかりしろ! ……ルクス! はやく回復を!」
「今やっています! ……なんで!! なんでですか! 回復しません!」
俺の回復が効かないんだ。ルクスの回復が効く訳ないだろ……。
そんな問答をしている俺達に戦神アレスとやらが、俺たちに言う。
『無駄だ。俺の槍で付いた傷は回復不可だ。諦めろ』
くっそ……なんてチートだよ……アイリスといい、神ってやつはどいつもこいつも。
ダメだな……これは終わった。レイラ……母さん……ごめんな。
二人を目覚めさせることは出来なかった。だけど、その代わりに、会いに行けるかもしれない。レイラ……もし会えたら今度はちゃんとしよう。キスだけじゃない……こと……を。そして、謝らせてくれ……。
「――アスフィィィィィィィ」
「アスフィ……そんな……アスフィの回復でも癒せないなんて……ありえません」
エルザとルクスは取り乱す。
『当たり前だ。神の力に抗える訳が無いだろう』
「……ルクス、やるぞ」
「…………はい、勝てなくてもやれるだけのことは!」
二人は覚悟を決めた。
『小娘ども、俺とやる気か? 死ぬぞ?』
『アレス? わたくしもおりますよ?』
『……ポセイドンよ、神同士の争いは不死故に、決着が付かない。知っているだろう』
『ええ。ですが、彼女達まで死なせる訳にはいきませんので』
『良かろう。小娘ども戦神アレスが相手をしてやる』
***
ここは何処だ? 真っ暗で何も見えない。……そうか俺はあのアレスとかいう奴が投げた槍に貫かれて死んだのか。くっそ……レイラも母さんも居ないじゃないか。ここは天国じゃ無いのか? それとも地獄か? ……いや、母さんはまだ眠りから覚めないだけで生きているのか。でも、レイラはどこだ?
『――レイラはここには居ない』
誰だ!?
『俺は――』
ん? なんて言ってるんだ?
おい、聞こえないぞ! 何て言ってるんだ!!
『やはり言えない、か』
こいつはなんなんだ? 真っ白な人型をした何かが俺の前に立っていた。
まさか、俺の中にずっと居た何かか……?
『……お前は死んだ』
そんなことは言われなくても分かっている。
俺が聞いているのは誰かということだ。
『盟約により俺の正体は言えないようだ』
盟約……? なんだよそれ。
俺はそんなものを結んだ覚えは無いぞ。
『お前が結んだんじゃない。俺が結んだんだ』
誰とだよ。
『……この世界の神とだ』
また神か……そんなもん勝手に結んでんじゃねぇ! 俺はその神にやられたんだぞ!
『戦神アレスか……一応言っておくが、俺が盟約を結んだのはアイツじゃないぞ?』
そんな事はどうでもいい! 何なんだあいつは! 回復が出来なかったぞ!
『そういう力だ。アレスも言っていただろう。アイツの槍に傷付けられた傷は回復出来ない。神にはそれぞれ固有の力がある』
それはアイリスが水を操れるのと同じようにか?
『そうだ。この世界の理を超越する力だ』
通りで勝てないわけだ……。
『水の都フィルマリア』に来てから三人もの神に会ったぞ。
神にはなかなか会えないんじゃなかったのか。
『お前は神に目をつけられているんだろうな』
でも死んだ今、もう俺には関係ない。
お前が誰か知らないが、さっさとレイラに会わせてくれ。
流石の俺もそろそろレイラの胸が恋しくなってきたよ。
『ハッ! お前はそういうやつだったな……いや、俺なのか……まぁいい』
何言ってんだ。お前は天国への案内人なんじゃないのか?
『お前はまだ死んでいないぞ』
何を言ってるんだよ。死んだからここに居るんだろ。
『ここはお前の……ふむ、なんと言えばいいんだ?』
俺が知るか!!
『精神世界……? のようなものだ。つまりまだ死んではいない』
なら早く俺を戻せ。エルザとルクスが戦ってるはずだ……。
あいつらが俺を置き去りにして逃げるとは思えない。
正直、勝ち目がないから逃げて欲しいところだが。
『そうだな。神には勝てない。あいつらは死なないからな』
死なないって……反則だろそれ。
『反則なのはお前もだろ? お前の力。不思議だとは思わないか』
…………。
俺は何者なんだ。知っているなら教えてくれ。
『お前は―――――――やはりダメか』
盟約か……。誰と結んだんだその盟約。
『それも言えない。神、としかな』
めんどくさいな。どうでもいいから早くしてくれ。戻すのか戻さないのか。
何も教えてくれない『お前』と話してても埒が明かない。
『教えたくても教えられないんだ。だがまぁ、それもそうだな。何れ分かる事だ。……だが今戻った所でまたここに戻るだけだぞ?』
死ぬ、とは言わないんだな。
『……』
じゃあどうしろって言うんだよ。
『俺にその体を貸せ。一時的でいい』
体を貸す? どういう事だ。
俺の体をお前に貸してどうするんだよ。
『――俺が戦神アレスを倒す』
神は死なないんじゃないのかよ。
『神は死なないが、ダメージを向けない訳じゃない』
ん……? どういう事だ?
『死にたくなるまで苦しませる、それだけさ』
だが、やつには俺の魔法は効かなかった。アイリスと戦った時も俺の魔法は効かなかった。だからお前に俺の体を貸した所で効かないと思うぞ。
『……盟約を誓ったのはお前じゃない。俺だ』
は? 何の話してんだよ。今、そんな話してないんだよ!
『つまり、簡単に言えば俺とお前じゃ出力が違う』
出力? ……お前の魔法だと通じるってか? 俺の魔法は通じないのに?
『そうだ。お前が持つ不思議な力は〝盟約の力〟だ。お前が無理でも、俺なら通じる』
あーもう勝手にしろ! 俺は疲れた……少し寝る。使いたきゃ好きに使え。
『……安心しろ、またすぐ返すさ』
***
エルザとルクス、アイリスは戦神アレスと激しい戦いを繰り広げていた。とは言え、ほぼアイリスとアレスの戦いだ。エルザとルクスはその中に入る事すら出来ずにいた。
「――待たせたなエルザ、ルクス」
「アスフィ!!?」
「アスフィよ! 生きていたのか!!」
『なんだと!? 馬鹿な!! 俺の槍だぞ!!?』
『あら、なんだか面白くなって来ましたね……ふふっ』
さ、そろそろ大人しくしてもらおうか。
「『消失する回復魔法(ヴァニシングヒール)』」
『何……息が……』
「どうだ? 辛いだろ? 戦神アレス」
『く……俺は神だ……殺せるとでも……?』
「殺しはしないさ。どうせ出来ないしな。だから、そのまま苦しんでもらう。永遠にな」
(おおー! こいつやるな! 戦神アレスに効いてるぞ。でも、なんで俺の魔法は効かないのにこいつのは効くんだよ……納得出来ねぇ)
『良いざまですね、戦神アレス?』
『ポセイドン……力を……貸せ。あれを生かしてはおけん。俺に……力……を』
『嫌です。わたくしはあなたが嫌いなので、アレス』
『ポセイ……ドン貴様……』
喉に手をやり、もがき苦しむアレス。助けを求めるも、アイリスはそれを拒否する。
(いいぞアイリス……もっと言ってやれ!)
そして暫くもがき苦しみ――
『………………分かった……もう手を出さん……』
「本当か? なら……そうだなぁ………ゼウスに誓え」
『…………分かったゼウスに……誓う』
「まぁそれなら仕方ない」
(おいおい、もうやめるのかよ。もう戦神アレス襲ってこないのか?)
……
…………
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「アスフィ! 大丈夫か!!」
「アスフィ! 心配しました! 私のヒールが効かなかったので」
エルザとルクスがアスフィの元へと駆けつけた。
「久しぶりだな…………これも久しぶりの感触だ」
「……あの……なぜ今私の胸を揉んだんですか?」
「……久しぶりにな」
(おい何してんだお前! アレス倒したんなら早く体返せ!)
「…………うるさいな、少し待て」
「アスフィ? どうかしましたか?」
「……アスフィ……でいいんだよな?」
(……エルザは相変わらず鋭いな。俺じゃないと分かるのか?)
「ああ、俺だよ」
「……そうか、分かった」
「あの……私の胸を揉んだ件、なかったことにされたんですが……それにしてもアスフィ? お腹の傷が……」
腹部の大きな穴は完全に塞がっていた。傷跡は無い。しかし、ローブに空いたその穴が、その痛々しさを証明していた。
『――流石ですね……アスフィさん? アレスを撃退するとは』
アレスは既に姿を消していた。
「俺にかかれば神なんて敵じゃないってことだ」
『それはわたくしもですか?』
「……どうだかな。お前がやる気なら俺はやるだけだ」
(おい、今のアイリスは敵じゃないぞ)
「…………はぁ……少し内野がうるさいんで、俺は寝る」
『そうですか……ではわたくしのホームへどうぞ』
アイリスは両手を掲げると、ものの数秒で『水の都フィルマリア』を創り上げた。
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その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
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