攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
72 / 282
第五章 ヒーラー 追憶篇《第一部》

第64話「愛に魅せられて」

しおりを挟む
「じゃあ改めて、私の正体を聞いてみちゃおっかなー!」
 
 椅子に座りニコニコしながら言うディン。
 
「もちろん、もう罰ゲームは無いから安心してね!」
 
 罰ゲーム……二度としたくないものだったな。 
 そういえば、ルクスやエルザはなんて答えたんだろうか……?
 王では無いとするとやはり『神』と答えるのが正解だったか?
 
「……私は神と答えました」
「なに!? ……神じゃないのか!?」
 
『神』と答えたルクスは不正解だった……?
 だとしたらなんだ?
 
「……オーディン」
「正解だよ! 私はオーディン! ってね!」
「オーディン……ですか……神の名称を当てるなんて無理です」
 
 ルクスは頬を膨らませ、不満げに言う。
 
 だが、ルクスの言う通りだ。神の名称を当てるなんて不可能だろ。……いや待て、エルザは一人正解した。
 あいつはなんて答えたんだ!?
 
「……エルザ、お前はなんて答えたんだ」
「私は創造神・・・と答えた」
「……なんでそんな言葉がピンポイントで浮かんでくるんだよ」
「ヒントなら沢山あったぞ」
 
 ヒント? そんなものあったか……?
 ディンにはアイリスのような違和感はなかった。
  
「神木……これを見た瞬間私はディンを神だと確信した」
 
 
 と、エルザは説明する。
 
 そしてエルザは続ける――
 
「他にも、こんな高い所に一人で住んでいることや、私より小柄でありながら私以上のパワー。そんな人間がいるはずが無いだろう」
 
 ……たしかに。言われてみればそうだった。
 少なくともルクスは『神』だと気付いていた。
 分からなかったのは俺だけだったのか。アイリスのような違和感を感じなかったから、その選択肢は無かったな……。
 
 これがアイリスの言っていた、神の中には正体を隠すのが上手いってやつか。それとも俺が鈍感すぎたのかもな。
 
「にしてもエルザはなんで、オーディンだと分かったんだ?」
「私もオーディンの名前までは知らなかったよ。創造神と答えただけだからな」
「うん! 私も迷ったよ? でもまぁいっか! って! 大正解というより、正解って感じかな!」
 
 そんなガバガバ判定ならもう『神』でも正解でいいだろ。
 ルクスがなんか可哀想だ……。
 
「創造神……私はおじいちゃんからよく話を聞いていた」
「なにをだ?」
「創造神という神が〝人類を創った〟と」
「……なに?」
 
 エルザは衝撃の発言をする。 
 
「私のおじいちゃんは物知りだったのだ。創造神は人類を創りこの世界に新たな命を生み出したと……そう言っていた」
 
 ディンが人類を作った……?
 ……いや、アイリスも瞬時に街を創れるんだ。
 いつかの時、俺はアイリスに聞いたことがあった。
 人類も神が創ったのかと……俺の予想は当たっていたのか。
 
「だがそれだけじゃディンが創造神と分からないだろう?」
「そうだ。だから私は迷った。『神』と答えるべきなのかな。……私はここに来る道中、冒険者を観察していた」
 
 観察……?
 
「この『アスガルド帝国』には色んな人種がいる。ヒューマン、獣人、ドワーフ、竜人……極めつけは、あの森・・・に引きこもりがちなエルフまでいた」
 
 エルフまでこんな所にいたのか。気付かなかった……。
 そういえばエルフの姉妹、コルネとコレイは元気だろうか。
 
「……私はここでおじいちゃんの話を思い出したのだ。まさか『アスガルド帝国』にいる者はディンが創造したのでは無いかと。確信はなかったがな」
「……そうか。流石の観察眼だなエルザ」
「私には考えが至りませんでした」
「うむ、私もおじいちゃんの話がなければルクスと同じ結果だったろう」
 
 エルザのおじいちゃん何者だよ……。
 
「エルザの言うことは大体合っているよ! だけど、不正解!」
「なに!? どこか間違っていたのだ!」
「君は『アスガルド帝国』にいる者全員を私が創造したと考えているよね! それは違う! 私が創造したのはほんの十人程度だよ! その後、子を産む者や、外から来た者たち……そうして増えていったのさ! 私だって何でもかんでも創造していい訳じゃないからね……他の神との話し合いの元行われたものだよ!」
 
 他の神……その中にはゼウス・マキナ……
 彼女も含まれているのだろうか。
 
「でもやっぱり、エルザは正解したね! 私の読み通りだよ! 流石は剣王エルブレイドの娘だね!」
「…………ああ、素直に喜んでおくことにするよ」
 
 エルザの祖父は剣王だったのか。
 なんか凄そうな肩書きだ。
 
「さて! 暗くなってきたし今夜はここら辺にしよう!」
「あれ? そんなに経っていたんですか?」
「うむ、二人は随分と長い間眠っていたぞ」
「そうだったのか……全然気付かなかった」
「時間はたっぷりある! この話の続きはまたいずれするとしよう! ……君たちにはそれを聞く権利があるからね。……私は少し用事があるから出るよ! 君たちはここを自分の家だと思って好きに使っていいからね! 風呂トイレ完備の私自慢の家だからね!」
 
 とディンは会議があると言い、そそくさと家を出て行った。
 なんだよ会議って。俺たちは取り残されてしまった。
 
 
「……好きに使ってもいいと言われたので、私はシャワーを浴びたいです」
「俺は少し休むよ」
「アスフィ……体洗ってくれないのですか?」
 
 え、急に何言ってんだルクスのやつ。頭でも打ったのか?
 
「……ルクス、お前ディンに何かされたのか? なにを魅せられたんだ?」
「………とてもいい夢でしたよ。大好きな人と友のいい夢です」
 
 ルクスは笑いながらそう言うのだ。
 俺は本気で可愛いと思ってしまった……。
 
「うむ、ではルクスの体は私が洗おうではないか!」
「え、ええ? エルザがですか?」
「嫌なのか?」
「………仕方ないですね、洗わせてあげます」
 
 こうしてエルザとルクスは風呂に向かった。
 なんだかいつもより仲が良く見えた気がした。
 
 *** 
 
 《『なあ』》
 
 《『なぁおいって!』》
 
(なんだようるせーな。疲れてるんだ。邪魔するな)
 
 《『覗かねーのか?』》
 
(……ああ)
 
 《『バカやろう! 覗かないでどうするよ!』》
 
(俺はまだ死にたくないんだよ)
 
 《『相手がオーケー出してんだ! 一緒に入れよ!』》
 
(どうしてそうなる)
 
 《『ルクスは……それを求めてるぞ』》
 
(はぁ……黙ってろ。俺は少し寝る)
 
 《『ちっ、わからず屋な野郎だな……』》 
 
 
 俺は夢を見た。
 
 彼女……マキナとの大切で楽しかったあの頃の日々。
 マキナ……お前はまだ俺の事を覚えてくれているのだろうか。
 あの日の出来事を……忘れられないあの日の事を。
 お前が忘れても、俺は必ず覚えてるからな……マキ……ナ。
 
 ……
 …………
 ……………… 
 
「………マキ……ナ」
「私はルクスです」
「……え、なんでルクスがここに……?」
「ダメですか?」
 
 ベッドで寝ている俺の横で一緒に寝ているルクス。
 ディンからは一人一人部屋が与えられた。
 俺は自分の部屋で眠っていた……なのに何故ルクスが?
 
「何してるんだよルクス」
「……私は夢を見ました」
「ディンのか」
「はい、とても幸せな夢です。アスフィが居てエルザが居て……レイモンドにも謝ることが出来ました」
「……そうか」
 
 レイラの事か。ルクスはずっと一人で罪悪感を感じていたんだろう。ルクスはそういうやつだ。
 
「アスフィとの日々は楽しいものでした」
「……そうか」
「……夜は激しかったですけど……そ、それも含めて幸せでした」
「お、おう……そう……だったのか」
 
 ルクスの夢の中の俺何してんだよ。自制しろバカヤロウ。
 何もしてない俺がなんだか恥ずかしくなってくるだろう……。
 
「………エルザと約束したんです」
「なにをだ?」
「勝負をしようと」
「……そうなのか」
 
 俺は何の? とは言わなかった。流石にそこまで俺もバカじゃない。相手が、ルクスが俺に好意を持ってくれていることくらい分かる。
 
「はい……ですがここに来て思いました。私は悪い子です。なので勝負は放棄します」
「え? それって負けるってことじゃないのか?」
「いえ、勝ちます」
 
 ん~わからん。勝負を放棄してなんで勝つんだよ。
 
「まぁ頑張れよ、勝負は勝負だからな」
「はい、応援ありがとうございます」 
 
「好きですアスフィ」
  
 ルクスが俺の唇に口付けをする。
  
「……ずっと好きでしたよ。だから今日は私だけにを下さい」
 
 
 ルクスは本気の顔だ。ここで茶化すことも出来る……ただそれはルクスの覚悟を、気持ちを踏みにじることになる。 
 
 
「………分かった」  
「…………今日の僕は……アスフィだけのものだよ? だから好きにして………いいよ?」
 
 *** 
 
 次の日、俺はエルザに怒られ……なかった。
 いつもの様に空気を読まずに部屋に入って邪魔しに来ることもなかった。
 
 それがまたレイラが居ないんだと再認識させられる。
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...