攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
74 / 282
第五章 ヒーラー 追憶篇《第一部》

第65話「刺客」

しおりを挟む
 次の日の朝、ディンのホームにエルザの姿は無かった。どうやら出掛けているようだ。

ここまで上がってくるの大変だったのに、あいつ一人でまた上がってこれるのだろうか……。
 
 ルクスのやつは……
 
「……居るな」
 
 俺の隣で未だ眠っていた。
 それも凄く気持ち良さそうに満足した顔で。
 
「よし……少し走るか」
 
 剣術の特訓以来激しい運動はしていない。
 昨日はルクスと少ししたが。
  
 俺はランニングをすることにした。
 神木と呼ばれる木の頂上に位置するここは、
 ハッキリ言ってかなり広い。ランニングにはもってこいの場所だ。
 
 俺はベッドから起き上がり、シャワーを浴びた後、外へ出る。
 
「……よし、やるか」
 
 俺はこの神木の上を走る。
 
「はっ……はっ……」

走っていて感じた。体力が明らかに増している。レイラと居た時の俺は三十分と走ることすら出来なかった。しかし今は違う。これも姿が変わった影響なのだろうか。 

……
…………
………………
 
 二時時間くらい走ったと思う。目の前に折れた木の枝が落ちていた。
 
「……久しぶりに剣の真似事でもしてみるか」
 
 俺は落ちていた木の棒を剣に見立て、素振りをする。
 
「はっ! はぁっ!!」
 
やはり馴染む。俺が今手にしているのは、真剣でも無ければ、木刀や竹刀でも無いただの木の枝だ。にも関わらず、まるで以前から持っていた様な、そんな感覚だ。 

「…………不思議だ」 
「――私が居ない間でも剣術を学ぶ意欲には感心するな」
「……エルザ、お前居たのか」
「ああ……少し眠れなくてな。この近くを走っていたのだ」
 
 いつからだよ……にしても二時間程走ってた俺と1度もすれ違わないって、どれだけ広いんだここは。
 
「どれ、久しぶりに私が指南してやろうか?」
「いや……やめておく。お前は手加減を知らないからな」
「ハッハッハッ! ではやめておこう!」
 
 うん……? なんかエルザらしくないな。
 いつもなら、俺が嫌がってもお構い無しって感じなのだが。
 今日はやけに控えめだな。
 
「……なにかあったのか?」
「いや……なにもない。……私も負けてられないと思ってな」
「そうかよ……なら教えてくれ久しぶりに」
「……ああ。構わんぞっ!」
  
 俺はすぐに後悔した……。 
  
 俺とエルザの野外剣術修行が終わった頃、丁度ディンが帰ってきた。
 
「君たち朝から元気だねー!」
「……はぁ……はぁ……ああ……そうだな……」
「アスフィ! 体力が落ちているんじゃないか?」
「うるせぇ……お前みたいな体力バカじゃねぇんだ……」
「あっははは! やっぱり君たち面白いね! ……あ、そうだ! これお土産だよ!」

体力が増したと思っていた。いや、確かに以前と比べたら増したのは間違いない。だが、エルザと比べること自体が間違っているのだ。それ程までに彼女は化け物じみた体力だ。
 
 ディンが、地面に倒れ空を見上げる俺に何かを手渡してきた。
 
「……パン?」
「そうっ! ここのパン美味しいんだよねぇ~! はい、エルザもどうぞ!」
「あ、ああ、ありがとうディン」
 
 パンか……久しぶりだな。
 ミスタリスにいた頃はよく食べていたっけか。
 
 そういえば、ゼウスとアイリスなにしてんだろ。
 全然帰ってこないな。
 
「なぁ、ゼウスとアイリス知らないか?」
 
 俺はディンに聞いてみることにした。
 どうせ、神同士なんか企んでるんだろうが。
 
「ゼウスとアイリスなら帰ったよ!」
「……なに? ……あいつら勝手に……」
「……まぁ許してあげなよ。彼女たちもさ、色々あるんだよ」
 
 色々ね……こっちだって聞きたいこと色々あったんだがなぁ。まぁ、居てもどうせ盟約が、とか言って教えてくれないんだろうけど。
 
「で、ディンは何しに俺たちの所へ? パンを届けに来ただけじゃないだろ」
「うん! 実はね、君たちに……いや、エルザに話があるのさ!」
「……私にか?」
 
 ディンは今まで見たことがない程、真剣な顔だった。
 エルザもまたそれに応え真剣に聞く。
 
「……エルザ、君に刺客がやってくる」
「……なに? エルザに?」
「君の祖父、エルブレイドは戦神アレスと同格だった。それ故に決着のつかない戦いを披露した」
 
 あの戦神アレスと戦って決着が付かないだと……?
 エルザのじいちゃんヤバいだろ。
 
「……だからなんなのだ」
「その戦神アレスが君を見つけた。ほら、戦っただろう?」
「どうしてそれを!?」
「まぁ私たちには分かるのさ! ……でね、戦神アレスが負けたんだよ」
「いや、それは俺が――」
「もちろん知っている。けど、他の神はそうはいかないだろうね。戦神アレスが負けた。それだけで十分なのさ」
 
 なんだよそれ……はた迷惑ってもんじゃないぞ。
 あっちから来といてよ。
 
「それをなぜ私たちに教える。ディン、君は神だろう? 立場的に私達にそれを教えるのはまずいのではないか?」
「まぁね! でも、エルブレイドとは……ま、友達? みたいなもんでね! その娘である君を簡単に死なせる訳にはいかないんだよね! 端的に言うと………あまりいい気分じゃないのさ。それに私、アレス嫌いなんだよね」
 
 ディンは本心からそう言っているように見えた。
 神は人間をなんとも思ってないのではなかったのか……?
それにしても、アレス嫌われすぎだろ。アイリスも同じこと言っていたぞ。
 
「ま、そういうわけでさ! 頑張ってね! 私たち神は干渉出来ないからさ!」
 
 頑張ってね! って言われてもどうしろって言うんだよ。
 
 
 
 《『お前が守れ』》
 
(またお前か……一体なんなんだ。消えたと思ったら出てきたり)
 
 なんだよ一言言って終わりか。
 
「……アスフィ、私たちの旅も急いだ方が良さそうだ」
「あ、ああ……それは分かるが『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』の手がかりはまだ何も見つかってないぞ? ……それにお前、剣いいのかよ」


伝説の剣とかいう胡散臭いものを探していたエルザだったが――
「ああ、剣はもういい……それどころじゃないからな。私が死ぬ前にこの旅を終わらせよう」
 
 なんだよそれ……不吉なこと言うなよ。
 
「……エルザは死なないし、俺が死なせはしない」
「ハッハッハッ! ……ありがとうアスフィ」
「そっか! 君たちあの子達を探してるんだね」
 
 あの子達……?
 
「……あの子達って?」
「君たち言っていたじゃないか! ユピテルって!」
「何か知ってるのか!!?」
「あの子達はマキナを信仰しているからね! マキナに聞けば分かるよ?」
 
 いや、教えてくれそうになかったぞ……。
 
「うむ、それがそうもいかないのだディンよ」
「どうして?」
「そのマキナとか言うやつは話してくれそうになかった」
「ああそうだぞ、エルザの言う通りだ」
「………それは君たちが話を聞こうとしてなかったからじゃないの?」
 
 なに? 俺たちが話を聞こうとしてなかった?
 それはまるで、聞けば教えてくれるみたいな言い方じゃないか。
 
「マキナは教えてくれるよ。絶対に。盟約に関わるものは教えてくれない……いや、教えられないんだっけ……まぁいいや!つまりね、それ以外なら教えてくれる。得にフィー。君ならね」
「……俺はアスフィだ」
「うん、じゃない。分かってんだろ? フィー」
「………………ああ」
「……アス……フィ?」
 
(おい! なんで今出てくんだ! 変われ!!)
 
 《『いや、少し話すだけだ』》
 
「……久しぶりだなオーディン」
「うん! 久しぶり! 元気にしてた?」
「ああ、一応な」
「君も災難だね! そんなとこに……器が可哀想だろ?」
「そうだな……悪いと思ってる。既に生まれた時から俺の影響を受けていた……」
 
(お前ら何喋ってんだ……)
 
「まぁそれもマキナとの盟約だもんね! 仕方ないね!」
「ああ……だから一ついいか」
「なに?」
「オーディン、お前の思い通りにはいかないぞ? 俺達は必ず目的を果たす。レイラも母さんもエルザも守る……そしてなにより、マキナを救う」
「…………出来るものならやってみなよフィー」
「その言葉忘れんじゃねぇぞ」

(くっそ……なんなんだよ) 
 
「………………はぁ……疲れた、俺は寝る」
「うん! おやすみアスフィ・・・・
「おい! アスフィ! 待て!」
「……追いかけたいなら行きなよ剣王の娘」
「…………言われなくとも」
  
 
「はぁ…………嫌な役回りばっかりだよ……ねっマキナ。あの時の君もこんな想いをしていたのかな」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...