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第五章 ヒーラー 追憶篇《第一部》
第65話「刺客」
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次の日の朝、ディンのホームにエルザの姿は無かった。どうやら出掛けているようだ。
ここまで上がってくるの大変だったのに、あいつ一人でまた上がってこれるのだろうか……。
ルクスのやつは……
「……居るな」
俺の隣で未だ眠っていた。
それも凄く気持ち良さそうに満足した顔で。
「よし……少し走るか」
剣術の特訓以来激しい運動はしていない。
昨日はルクスと少ししたが。
俺はランニングをすることにした。
神木と呼ばれる木の頂上に位置するここは、
ハッキリ言ってかなり広い。ランニングにはもってこいの場所だ。
俺はベッドから起き上がり、シャワーを浴びた後、外へ出る。
「……よし、やるか」
俺はこの神木の上を走る。
「はっ……はっ……」
走っていて感じた。体力が明らかに増している。レイラと居た時の俺は三十分と走ることすら出来なかった。しかし今は違う。これも姿が変わった影響なのだろうか。
……
…………
………………
二時時間くらい走ったと思う。目の前に折れた木の枝が落ちていた。
「……久しぶりに剣の真似事でもしてみるか」
俺は落ちていた木の棒を剣に見立て、素振りをする。
「はっ! はぁっ!!」
やはり馴染む。俺が今手にしているのは、真剣でも無ければ、木刀や竹刀でも無いただの木の枝だ。にも関わらず、まるで以前から持っていた様な、そんな感覚だ。
「…………不思議だ」
「――私が居ない間でも剣術を学ぶ意欲には感心するな」
「……エルザ、お前居たのか」
「ああ……少し眠れなくてな。この近くを走っていたのだ」
いつからだよ……にしても二時間程走ってた俺と1度もすれ違わないって、どれだけ広いんだここは。
「どれ、久しぶりに私が指南してやろうか?」
「いや……やめておく。お前は手加減を知らないからな」
「ハッハッハッ! ではやめておこう!」
うん……? なんかエルザらしくないな。
いつもなら、俺が嫌がってもお構い無しって感じなのだが。
今日はやけに控えめだな。
「……なにかあったのか?」
「いや……なにもない。……私も負けてられないと思ってな」
「そうかよ……なら教えてくれ久しぶりに」
「……ああ。構わんぞっ!」
俺はすぐに後悔した……。
俺とエルザの野外剣術修行が終わった頃、丁度ディンが帰ってきた。
「君たち朝から元気だねー!」
「……はぁ……はぁ……ああ……そうだな……」
「アスフィ! 体力が落ちているんじゃないか?」
「うるせぇ……お前みたいな体力バカじゃねぇんだ……」
「あっははは! やっぱり君たち面白いね! ……あ、そうだ! これお土産だよ!」
体力が増したと思っていた。いや、確かに以前と比べたら増したのは間違いない。だが、エルザと比べること自体が間違っているのだ。それ程までに彼女は化け物じみた体力だ。
ディンが、地面に倒れ空を見上げる俺に何かを手渡してきた。
「……パン?」
「そうっ! ここのパン美味しいんだよねぇ~! はい、エルザもどうぞ!」
「あ、ああ、ありがとうディン」
パンか……久しぶりだな。
ミスタリスにいた頃はよく食べていたっけか。
そういえば、ゼウスとアイリスなにしてんだろ。
全然帰ってこないな。
「なぁ、ゼウスとアイリス知らないか?」
俺はディンに聞いてみることにした。
どうせ、神同士なんか企んでるんだろうが。
「ゼウスとアイリスなら帰ったよ!」
「……なに? ……あいつら勝手に……」
「……まぁ許してあげなよ。彼女たちもさ、色々あるんだよ」
色々ね……こっちだって聞きたいこと色々あったんだがなぁ。まぁ、居てもどうせ盟約が、とか言って教えてくれないんだろうけど。
「で、ディンは何しに俺たちの所へ? パンを届けに来ただけじゃないだろ」
「うん! 実はね、君たちに……いや、エルザに話があるのさ!」
「……私にか?」
ディンは今まで見たことがない程、真剣な顔だった。
エルザもまたそれに応え真剣に聞く。
「……エルザ、君に刺客がやってくる」
「……なに? エルザに?」
「君の祖父、エルブレイドは戦神アレスと同格だった。それ故に決着のつかない戦いを披露した」
あの戦神アレスと戦って決着が付かないだと……?
エルザのじいちゃんヤバいだろ。
「……だからなんなのだ」
「その戦神アレスが君を見つけた。ほら、戦っただろう?」
「どうしてそれを!?」
「まぁ私たちには分かるのさ! ……でね、戦神アレスが負けたんだよ」
「いや、それは俺が――」
「もちろん知っている。けど、他の神はそうはいかないだろうね。戦神アレスが負けた。それだけで十分なのさ」
なんだよそれ……はた迷惑ってもんじゃないぞ。
あっちから来といてよ。
「それをなぜ私たちに教える。ディン、君は神だろう? 立場的に私達にそれを教えるのはまずいのではないか?」
「まぁね! でも、エルブレイドとは……ま、友達? みたいなもんでね! その娘である君を簡単に死なせる訳にはいかないんだよね! 端的に言うと………あまりいい気分じゃないのさ。それに私、アレス嫌いなんだよね」
ディンは本心からそう言っているように見えた。
神は人間をなんとも思ってないのではなかったのか……?
それにしても、アレス嫌われすぎだろ。アイリスも同じこと言っていたぞ。
「ま、そういうわけでさ! 頑張ってね! 私たち神は干渉出来ないからさ!」
頑張ってね! って言われてもどうしろって言うんだよ。
《『お前が守れ』》
(またお前か……一体なんなんだ。消えたと思ったら出てきたり)
なんだよ一言言って終わりか。
「……アスフィ、私たちの旅も急いだ方が良さそうだ」
「あ、ああ……それは分かるが『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』の手がかりはまだ何も見つかってないぞ? ……それにお前、剣いいのかよ」
伝説の剣とかいう胡散臭いものを探していたエルザだったが――
「ああ、剣はもういい……それどころじゃないからな。私が死ぬ前にこの旅を終わらせよう」
なんだよそれ……不吉なこと言うなよ。
「……エルザは死なないし、俺が死なせはしない」
「ハッハッハッ! ……ありがとうアスフィ」
「そっか! 君たちあの子達を探してるんだね」
あの子達……?
「……あの子達って?」
「君たち言っていたじゃないか! ユピテルって!」
「何か知ってるのか!!?」
「あの子達はマキナを信仰しているからね! マキナに聞けば分かるよ?」
いや、教えてくれそうになかったぞ……。
「うむ、それがそうもいかないのだディンよ」
「どうして?」
「そのマキナとか言うやつは話してくれそうになかった」
「ああそうだぞ、エルザの言う通りだ」
「………それは君たちが話を聞こうとしてなかったからじゃないの?」
なに? 俺たちが話を聞こうとしてなかった?
それはまるで、聞けば教えてくれるみたいな言い方じゃないか。
「マキナは教えてくれるよ。絶対に。盟約に関わるものは教えてくれない……いや、教えられないんだっけ……まぁいいや!つまりね、それ以外なら教えてくれる。得にフィー。君ならね」
「……俺はアスフィだ」
「うん、君じゃない。分かってんだろ? フィー」
「………………ああ」
「……アス……フィ?」
(おい! なんで今出てくんだ! 変われ!!)
《『いや、少し話すだけだ』》
「……久しぶりだなオーディン」
「うん! 久しぶり! 元気にしてた?」
「ああ、一応な」
「君も災難だね! そんなとこに……器が可哀想だろ?」
「そうだな……悪いと思ってる。既に生まれた時から俺の影響を受けていた……」
(お前ら何喋ってんだ……)
「まぁそれもマキナとの盟約だもんね! 仕方ないね!」
「ああ……だから一ついいか」
「なに?」
「オーディン、お前の思い通りにはいかないぞ? 俺達は必ず目的を果たす。レイラも母さんもエルザも守る……そしてなにより、マキナを救う」
「…………出来るものならやってみなよフィー」
「その言葉忘れんじゃねぇぞ」
(くっそ……なんなんだよ)
「………………はぁ……疲れた、俺は寝る」
「うん! おやすみアスフィ」
「おい! アスフィ! 待て!」
「……追いかけたいなら行きなよ剣王の娘」
「…………言われなくとも」
「はぁ…………嫌な役回りばっかりだよ……ねっマキナ。あの時の君もこんな想いをしていたのかな」
ここまで上がってくるの大変だったのに、あいつ一人でまた上がってこれるのだろうか……。
ルクスのやつは……
「……居るな」
俺の隣で未だ眠っていた。
それも凄く気持ち良さそうに満足した顔で。
「よし……少し走るか」
剣術の特訓以来激しい運動はしていない。
昨日はルクスと少ししたが。
俺はランニングをすることにした。
神木と呼ばれる木の頂上に位置するここは、
ハッキリ言ってかなり広い。ランニングにはもってこいの場所だ。
俺はベッドから起き上がり、シャワーを浴びた後、外へ出る。
「……よし、やるか」
俺はこの神木の上を走る。
「はっ……はっ……」
走っていて感じた。体力が明らかに増している。レイラと居た時の俺は三十分と走ることすら出来なかった。しかし今は違う。これも姿が変わった影響なのだろうか。
……
…………
………………
二時時間くらい走ったと思う。目の前に折れた木の枝が落ちていた。
「……久しぶりに剣の真似事でもしてみるか」
俺は落ちていた木の棒を剣に見立て、素振りをする。
「はっ! はぁっ!!」
やはり馴染む。俺が今手にしているのは、真剣でも無ければ、木刀や竹刀でも無いただの木の枝だ。にも関わらず、まるで以前から持っていた様な、そんな感覚だ。
「…………不思議だ」
「――私が居ない間でも剣術を学ぶ意欲には感心するな」
「……エルザ、お前居たのか」
「ああ……少し眠れなくてな。この近くを走っていたのだ」
いつからだよ……にしても二時間程走ってた俺と1度もすれ違わないって、どれだけ広いんだここは。
「どれ、久しぶりに私が指南してやろうか?」
「いや……やめておく。お前は手加減を知らないからな」
「ハッハッハッ! ではやめておこう!」
うん……? なんかエルザらしくないな。
いつもなら、俺が嫌がってもお構い無しって感じなのだが。
今日はやけに控えめだな。
「……なにかあったのか?」
「いや……なにもない。……私も負けてられないと思ってな」
「そうかよ……なら教えてくれ久しぶりに」
「……ああ。構わんぞっ!」
俺はすぐに後悔した……。
俺とエルザの野外剣術修行が終わった頃、丁度ディンが帰ってきた。
「君たち朝から元気だねー!」
「……はぁ……はぁ……ああ……そうだな……」
「アスフィ! 体力が落ちているんじゃないか?」
「うるせぇ……お前みたいな体力バカじゃねぇんだ……」
「あっははは! やっぱり君たち面白いね! ……あ、そうだ! これお土産だよ!」
体力が増したと思っていた。いや、確かに以前と比べたら増したのは間違いない。だが、エルザと比べること自体が間違っているのだ。それ程までに彼女は化け物じみた体力だ。
ディンが、地面に倒れ空を見上げる俺に何かを手渡してきた。
「……パン?」
「そうっ! ここのパン美味しいんだよねぇ~! はい、エルザもどうぞ!」
「あ、ああ、ありがとうディン」
パンか……久しぶりだな。
ミスタリスにいた頃はよく食べていたっけか。
そういえば、ゼウスとアイリスなにしてんだろ。
全然帰ってこないな。
「なぁ、ゼウスとアイリス知らないか?」
俺はディンに聞いてみることにした。
どうせ、神同士なんか企んでるんだろうが。
「ゼウスとアイリスなら帰ったよ!」
「……なに? ……あいつら勝手に……」
「……まぁ許してあげなよ。彼女たちもさ、色々あるんだよ」
色々ね……こっちだって聞きたいこと色々あったんだがなぁ。まぁ、居てもどうせ盟約が、とか言って教えてくれないんだろうけど。
「で、ディンは何しに俺たちの所へ? パンを届けに来ただけじゃないだろ」
「うん! 実はね、君たちに……いや、エルザに話があるのさ!」
「……私にか?」
ディンは今まで見たことがない程、真剣な顔だった。
エルザもまたそれに応え真剣に聞く。
「……エルザ、君に刺客がやってくる」
「……なに? エルザに?」
「君の祖父、エルブレイドは戦神アレスと同格だった。それ故に決着のつかない戦いを披露した」
あの戦神アレスと戦って決着が付かないだと……?
エルザのじいちゃんヤバいだろ。
「……だからなんなのだ」
「その戦神アレスが君を見つけた。ほら、戦っただろう?」
「どうしてそれを!?」
「まぁ私たちには分かるのさ! ……でね、戦神アレスが負けたんだよ」
「いや、それは俺が――」
「もちろん知っている。けど、他の神はそうはいかないだろうね。戦神アレスが負けた。それだけで十分なのさ」
なんだよそれ……はた迷惑ってもんじゃないぞ。
あっちから来といてよ。
「それをなぜ私たちに教える。ディン、君は神だろう? 立場的に私達にそれを教えるのはまずいのではないか?」
「まぁね! でも、エルブレイドとは……ま、友達? みたいなもんでね! その娘である君を簡単に死なせる訳にはいかないんだよね! 端的に言うと………あまりいい気分じゃないのさ。それに私、アレス嫌いなんだよね」
ディンは本心からそう言っているように見えた。
神は人間をなんとも思ってないのではなかったのか……?
それにしても、アレス嫌われすぎだろ。アイリスも同じこと言っていたぞ。
「ま、そういうわけでさ! 頑張ってね! 私たち神は干渉出来ないからさ!」
頑張ってね! って言われてもどうしろって言うんだよ。
《『お前が守れ』》
(またお前か……一体なんなんだ。消えたと思ったら出てきたり)
なんだよ一言言って終わりか。
「……アスフィ、私たちの旅も急いだ方が良さそうだ」
「あ、ああ……それは分かるが『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』の手がかりはまだ何も見つかってないぞ? ……それにお前、剣いいのかよ」
伝説の剣とかいう胡散臭いものを探していたエルザだったが――
「ああ、剣はもういい……それどころじゃないからな。私が死ぬ前にこの旅を終わらせよう」
なんだよそれ……不吉なこと言うなよ。
「……エルザは死なないし、俺が死なせはしない」
「ハッハッハッ! ……ありがとうアスフィ」
「そっか! 君たちあの子達を探してるんだね」
あの子達……?
「……あの子達って?」
「君たち言っていたじゃないか! ユピテルって!」
「何か知ってるのか!!?」
「あの子達はマキナを信仰しているからね! マキナに聞けば分かるよ?」
いや、教えてくれそうになかったぞ……。
「うむ、それがそうもいかないのだディンよ」
「どうして?」
「そのマキナとか言うやつは話してくれそうになかった」
「ああそうだぞ、エルザの言う通りだ」
「………それは君たちが話を聞こうとしてなかったからじゃないの?」
なに? 俺たちが話を聞こうとしてなかった?
それはまるで、聞けば教えてくれるみたいな言い方じゃないか。
「マキナは教えてくれるよ。絶対に。盟約に関わるものは教えてくれない……いや、教えられないんだっけ……まぁいいや!つまりね、それ以外なら教えてくれる。得にフィー。君ならね」
「……俺はアスフィだ」
「うん、君じゃない。分かってんだろ? フィー」
「………………ああ」
「……アス……フィ?」
(おい! なんで今出てくんだ! 変われ!!)
《『いや、少し話すだけだ』》
「……久しぶりだなオーディン」
「うん! 久しぶり! 元気にしてた?」
「ああ、一応な」
「君も災難だね! そんなとこに……器が可哀想だろ?」
「そうだな……悪いと思ってる。既に生まれた時から俺の影響を受けていた……」
(お前ら何喋ってんだ……)
「まぁそれもマキナとの盟約だもんね! 仕方ないね!」
「ああ……だから一ついいか」
「なに?」
「オーディン、お前の思い通りにはいかないぞ? 俺達は必ず目的を果たす。レイラも母さんもエルザも守る……そしてなにより、マキナを救う」
「…………出来るものならやってみなよフィー」
「その言葉忘れんじゃねぇぞ」
(くっそ……なんなんだよ)
「………………はぁ……疲れた、俺は寝る」
「うん! おやすみアスフィ」
「おい! アスフィ! 待て!」
「……追いかけたいなら行きなよ剣王の娘」
「…………言われなくとも」
「はぁ…………嫌な役回りばっかりだよ……ねっマキナ。あの時の君もこんな想いをしていたのかな」
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