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第五章 ヒーラー 追憶篇《第一部》
第70話「先客」
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俺達は母さんの元へ向かう。
「ここからだとどれくらいだ」
「……ここからコルネット村までは歩いてだと二週間はかかるかと……」
「うむ、そうだろうな」
二週間か……そんなに待てないな。一刻も早く向かわなければ行けない。
「エルザのパトリシアも使えないしな……どうしたものか」
「――なら僕の『虎車』なんかどうだい?」
その声、その顔は見覚えのある獣人だった。白い耳に白い顔。もふもふとした毛が生えている二足歩行の猫。
「王子キャルロット……」
「久しぶりだねエルザ女王」
顔を合わすなりいきなり睨み合いが始まる始末……。
「今はそんなことをしてる場合じゃないキャルロット。何の用だ」
「おっとそうだったね。君たちにプレゼントだ。今の君達が一番必要としているモノを届けに来たんだよ」
そう言うキャルロットの後ろには、二頭の虎が居た。
「行くんだろ? だったらこの虎達を使うといい。二頭しか居ないからどっちかは相乗りになるけどね」
王子キャルロットの申し出は有難い……だが、
「何故俺たちの場所が、目的が分かった?」
「……君に持たせている赤い欠片、覚えているかい?」
赤い欠片……ああ確か『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』のリーダーが持っていたっていうコレのことか。
俺は懐からキャルロットから手渡された赤い欠片を取り出した。
「……これがなんなんだよ」
俺が取り出した瞬間、それを見たエルザは顔を引き攣らせた。無理もない……自分の父親を殺した者が持っていたものだ。エルザにとってはあまり見たいものでは無いだろう。
「その赤い欠片は発信機の様なものでね、君たちの声と場所が筒抜けなのさ」
なんだと!? コレが発信機……いや待て、であれば受信機となる物があるはずだ。
「……この赤い欠片の情報を受信するものを持っているな? キャルロット」
「………ご名答。実は僕も赤い欠片を持っていてね。これはあの時拾った物だ。君と僕用にね」
キャルロットもまた赤い欠片を取り出し、見せてきた。
「……そうか。まぁ今回はそれによって助けられたんだ、何も言わない。だが、次怪しい真似をしたら息の根を止める。覚えておけ、キャルロット」
「……分かったよ、そんな怖い顔をしないでくれ。僕はいつだって市民の味方さ」
「……感謝する、王子キャルロット」
「ありがとうございます、王子キャルロット」
俺たちは虎に跨る。
ルクスは真っ先に俺の後ろに着いた。エルザは何も言わなかった。
「ではご武運を」
キャルロットはそう言い、虎に乗って帰って行った。
「……アスフィ、王子キャルロットには気を付けろ」
「分かっている」
「アイツは昔からよく分からん奴だった。私はそんなアイツが少し怖かったのだ」
あのエルザでもそう思うのか。俺もアイツはあまり信用してはいない。ルクスはよく分かっていない様子だ。
だが、今回助けられたのは間違いない。
今はそんなことより――
「行けっ!」
その一言で虎は走る。まずは母さんの無事を確認するのが優先だっ!
歩いて二週間だと、この『虎車』なら一週間もかからないはずだ。
俺たちはコルネット村まで『虎車』を走らせた。
途中野営を挟み、『アスガルド帝国』で調達したパンを食べ、なるべく急いで走る。虎は相変わらず早い。
これなら俺たちが想像していたより早く着きそうだ。
そして――
「…………着いた」
あれから三日は経った。本来二週間かかるところを三日だ。
夕焼けがとても綺麗だ。ここまで早く来れたのはあの猫のお陰だ。キャルロットには感謝だな。
にしても懐かしい空気だ………。ここに来るのも久しぶりだな。本当はレイラと一緒に帰ってきたかったが……ごめんな。
と、おれはある違和感に気付く。
「………………なんだこれ」
「死体……ですね」
「……うむ、この格好は」
黒いフードを被った者の大量の死体。
『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』達だ。
「どうしてこんな所にコイツらが居るんだ」
俺たちの緑豊かな小さな村は、真っ赤な鮮血で染め上げられていた。その傷を見るに一撃で殺られている。相当な手練にやられたようだ。
「……来ましたか」
俺達の知らない者がそこに立っていた。黒の着物を来た女。一瞬見蕩れそうになるくらいの美貌。しかし、俺がそう思ったのも一瞬だ。何故なら、彼女の頭には禍々しい黒い角が生えていたからだ。
「――誰だ!」
「初めまして、私の名前はハクと申します。以後お見知りおきを」
ハク? 聞いたことがないな。こいつも神かなんかか?
「これはお前がやったのか」
「いえ、私が来た時には既にこの有り様でした。恐らく腕利きの剣士がやったのでしょう」
腕利きの剣士...……なるほど、父さんか。
この村で腕利きの剣士といえば父さん以外居ない。
ここで母さんを『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』から守っていたのか……たった一人で……最終的に自らが『呪い』に染まることになってまで……。
「お前は何をしに来たのだハクとやら」
「……エルザ嬢、私はお前達と遊んでこいと命を受けました」
「誰からだ」
「……さぁ、誰でしょう?」
ハク……なんだこの異様なオーラは。黒髪の女、ハクは俺達に続ける――
「私はお前達相手に負ける気はなどありません。特にアスフィさん。あなたの対策はバッチリですから」
対策……そうか俺の魔法を事前に対策する何かを持っているってことか。試しにやってみるか。
「『消失する回復魔法』」
「…………やれやれ、だから効かないと言っているでしょう」
やっぱりそうかよ……さてどうしたものか。このハクとやら強いな。今、魔法を唱えて分かった。こいつから生気を感じ無い。
「……お前の魔法は生命に干渉するものと聞いています。私にそれは効きません。なぜなら――」
ハクは着物で隠れた手を口元に当て言う。
「――私は既に死んでいますから」
アスフィの天敵が現れた。
「ここからだとどれくらいだ」
「……ここからコルネット村までは歩いてだと二週間はかかるかと……」
「うむ、そうだろうな」
二週間か……そんなに待てないな。一刻も早く向かわなければ行けない。
「エルザのパトリシアも使えないしな……どうしたものか」
「――なら僕の『虎車』なんかどうだい?」
その声、その顔は見覚えのある獣人だった。白い耳に白い顔。もふもふとした毛が生えている二足歩行の猫。
「王子キャルロット……」
「久しぶりだねエルザ女王」
顔を合わすなりいきなり睨み合いが始まる始末……。
「今はそんなことをしてる場合じゃないキャルロット。何の用だ」
「おっとそうだったね。君たちにプレゼントだ。今の君達が一番必要としているモノを届けに来たんだよ」
そう言うキャルロットの後ろには、二頭の虎が居た。
「行くんだろ? だったらこの虎達を使うといい。二頭しか居ないからどっちかは相乗りになるけどね」
王子キャルロットの申し出は有難い……だが、
「何故俺たちの場所が、目的が分かった?」
「……君に持たせている赤い欠片、覚えているかい?」
赤い欠片……ああ確か『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』のリーダーが持っていたっていうコレのことか。
俺は懐からキャルロットから手渡された赤い欠片を取り出した。
「……これがなんなんだよ」
俺が取り出した瞬間、それを見たエルザは顔を引き攣らせた。無理もない……自分の父親を殺した者が持っていたものだ。エルザにとってはあまり見たいものでは無いだろう。
「その赤い欠片は発信機の様なものでね、君たちの声と場所が筒抜けなのさ」
なんだと!? コレが発信機……いや待て、であれば受信機となる物があるはずだ。
「……この赤い欠片の情報を受信するものを持っているな? キャルロット」
「………ご名答。実は僕も赤い欠片を持っていてね。これはあの時拾った物だ。君と僕用にね」
キャルロットもまた赤い欠片を取り出し、見せてきた。
「……そうか。まぁ今回はそれによって助けられたんだ、何も言わない。だが、次怪しい真似をしたら息の根を止める。覚えておけ、キャルロット」
「……分かったよ、そんな怖い顔をしないでくれ。僕はいつだって市民の味方さ」
「……感謝する、王子キャルロット」
「ありがとうございます、王子キャルロット」
俺たちは虎に跨る。
ルクスは真っ先に俺の後ろに着いた。エルザは何も言わなかった。
「ではご武運を」
キャルロットはそう言い、虎に乗って帰って行った。
「……アスフィ、王子キャルロットには気を付けろ」
「分かっている」
「アイツは昔からよく分からん奴だった。私はそんなアイツが少し怖かったのだ」
あのエルザでもそう思うのか。俺もアイツはあまり信用してはいない。ルクスはよく分かっていない様子だ。
だが、今回助けられたのは間違いない。
今はそんなことより――
「行けっ!」
その一言で虎は走る。まずは母さんの無事を確認するのが優先だっ!
歩いて二週間だと、この『虎車』なら一週間もかからないはずだ。
俺たちはコルネット村まで『虎車』を走らせた。
途中野営を挟み、『アスガルド帝国』で調達したパンを食べ、なるべく急いで走る。虎は相変わらず早い。
これなら俺たちが想像していたより早く着きそうだ。
そして――
「…………着いた」
あれから三日は経った。本来二週間かかるところを三日だ。
夕焼けがとても綺麗だ。ここまで早く来れたのはあの猫のお陰だ。キャルロットには感謝だな。
にしても懐かしい空気だ………。ここに来るのも久しぶりだな。本当はレイラと一緒に帰ってきたかったが……ごめんな。
と、おれはある違和感に気付く。
「………………なんだこれ」
「死体……ですね」
「……うむ、この格好は」
黒いフードを被った者の大量の死体。
『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』達だ。
「どうしてこんな所にコイツらが居るんだ」
俺たちの緑豊かな小さな村は、真っ赤な鮮血で染め上げられていた。その傷を見るに一撃で殺られている。相当な手練にやられたようだ。
「……来ましたか」
俺達の知らない者がそこに立っていた。黒の着物を来た女。一瞬見蕩れそうになるくらいの美貌。しかし、俺がそう思ったのも一瞬だ。何故なら、彼女の頭には禍々しい黒い角が生えていたからだ。
「――誰だ!」
「初めまして、私の名前はハクと申します。以後お見知りおきを」
ハク? 聞いたことがないな。こいつも神かなんかか?
「これはお前がやったのか」
「いえ、私が来た時には既にこの有り様でした。恐らく腕利きの剣士がやったのでしょう」
腕利きの剣士...……なるほど、父さんか。
この村で腕利きの剣士といえば父さん以外居ない。
ここで母さんを『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』から守っていたのか……たった一人で……最終的に自らが『呪い』に染まることになってまで……。
「お前は何をしに来たのだハクとやら」
「……エルザ嬢、私はお前達と遊んでこいと命を受けました」
「誰からだ」
「……さぁ、誰でしょう?」
ハク……なんだこの異様なオーラは。黒髪の女、ハクは俺達に続ける――
「私はお前達相手に負ける気はなどありません。特にアスフィさん。あなたの対策はバッチリですから」
対策……そうか俺の魔法を事前に対策する何かを持っているってことか。試しにやってみるか。
「『消失する回復魔法』」
「…………やれやれ、だから効かないと言っているでしょう」
やっぱりそうかよ……さてどうしたものか。このハクとやら強いな。今、魔法を唱えて分かった。こいつから生気を感じ無い。
「……お前の魔法は生命に干渉するものと聞いています。私にそれは効きません。なぜなら――」
ハクは着物で隠れた手を口元に当て言う。
「――私は既に死んでいますから」
アスフィの天敵が現れた。
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