攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
80 / 282
第五章 ヒーラー 追憶篇《第一部》

第70話「先客」

しおりを挟む
 俺達は母さんの元へ向かう。
 
「ここからだとどれくらいだ」
「……ここからコルネット村までは歩いてだと二週間はかかるかと……」
「うむ、そうだろうな」
 
 二週間か……そんなに待てないな。一刻も早く向かわなければ行けない。
 
「エルザのパトリシアも使えないしな……どうしたものか」  
「――なら僕の『虎車』なんかどうだい?」
 
 その声、その顔は見覚えのある獣人だった。白い耳に白い顔。もふもふとした毛が生えている二足歩行の猫。
 
「王子キャルロット……」
「久しぶりだねエルザ女王」
 
 顔を合わすなりいきなり睨み合いが始まる始末……。
  
「今はそんなことをしてる場合じゃないキャルロット。何の用だ」
「おっとそうだったね。君たちにプレゼントだ。今の君達が一番必要としているモノを届けに来たんだよ」
 
 そう言うキャルロットの後ろには、二頭の虎が居た。
 
「行くんだろ? だったらこの虎達を使うといい。二頭しか居ないからどっちかは相乗りになるけどね」
 
 王子キャルロットの申し出は有難い……だが、
 
「何故俺たちの場所が、目的が分かった?」
「……君に持たせている赤い欠片・・・・、覚えているかい?」
 
 赤い欠片……ああ確か『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』のリーダーが持っていたっていうコレのことか。
 
 俺は懐からキャルロットから手渡された赤い欠片を取り出した。
 
「……これがなんなんだよ」
 
 俺が取り出した瞬間、それを見たエルザは顔を引き攣らせた。無理もない……自分の父親を殺した者が持っていたものだ。エルザにとってはあまり見たいものでは無いだろう。
 
「その赤い欠片は発信機の様なものでね、君たちの声と場所が筒抜けなのさ」
 
 なんだと!? コレが発信機……いや待て、であれば受信機となる物があるはずだ。
 
「……この赤い欠片の情報を受信するものを持っているな? キャルロット」
  
「………ご名答。実は僕も赤い欠片を持っていてね。これはあの時・・・拾った物だ。用にね」
 
 キャルロットもまた赤い欠片を取り出し、見せてきた。 
 
「……そうか。まぁ今回はそれによって助けられたんだ、何も言わない。だが、次怪しい真似をしたら息の根を止める。覚えておけ、キャルロット」
「……分かったよ、そんな怖い顔をしないでくれ。僕はいつだって市民の味方さ」
「……感謝する、王子キャルロット」
「ありがとうございます、王子キャルロット」
 
 俺たちは虎に跨る。
 
 ルクスは真っ先に俺の後ろに着いた。エルザは何も言わなかった。
  
「ではご武運を」
  
 キャルロットはそう言い、虎に乗って帰って行った。
  
「……アスフィ、王子キャルロットには気を付けろ」
「分かっている」
「アイツは昔からよく分からん奴だった。私はそんなアイツが少し怖かったのだ」
 
 あのエルザでもそう思うのか。俺もアイツはあまり信用してはいない。ルクスはよく分かっていない様子だ。
 
 だが、今回助けられたのは間違いない。
 
 今はそんなことより――
  
「行けっ!」
 
 その一言で虎は走る。まずは母さんの無事を確認するのが優先だっ!
  
 歩いて二週間だと、この『虎車』なら一週間もかからないはずだ。
 
 俺たちはコルネット村まで『虎車』を走らせた。
 途中野営を挟み、『アスガルド帝国』で調達したパンを食べ、なるべく急いで走る。虎は相変わらず早い。
 これなら俺たちが想像していたより早く着きそうだ。 
 
 そして―― 
 
「…………着いた」
  
 あれから三日は経った。本来二週間かかるところを三日だ。
 夕焼けがとても綺麗だ。ここまで早く来れたのはあの猫のお陰だ。キャルロットには感謝だな。 
 
 にしても懐かしい空気だ………。ここに来るのも久しぶりだな。本当はレイラと一緒に帰ってきたかったが……ごめんな。 
 
 と、おれはある違和感に気付く。
 
「………………なんだこれ」
「死体……ですね」
「……うむ、この格好は」
 
 黒いフードを被った者の大量の死体。
『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』達だ。 
 
「どうしてこんな所にコイツらが居るんだ」
 
 俺たちの緑豊かな小さな村は、真っ赤な鮮血で染め上げられていた。その傷を見るに一撃で殺られている。相当な手練にやられたようだ。
   
「……来ましたか」
 
 俺達の知らない者がそこに立っていた。黒の着物を来た女。一瞬見蕩れそうになるくらいの美貌。しかし、俺がそう思ったのも一瞬だ。何故なら、彼女の頭には禍々しい黒い角が生えていたからだ。
 
「――誰だ!」
「初めまして、私の名前はハクと申します。以後お見知りおきを」
 
 ハク? 聞いたことがないな。こいつも神かなんかか?
 
「これはお前がやったのか」
「いえ、私が来た時には既にこの有り様でした。恐らく腕利きの剣士がやったのでしょう」
 
 腕利きの剣士...……なるほど、父さんか。
 この村で腕利きの剣士といえば父さん以外居ない。
 ここで母さんを『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』から守っていたのか……たった一人で……最終的に自らが『呪い』に染まることになってまで……。
  
「お前は何をしに来たのだハクとやら」
「……エルザ嬢、私はお前達と遊んでこいと命を受けました」
「誰からだ」
「……さぁ、誰でしょう?」
 
 ハク……なんだこの異様なオーラは。黒髪の女、ハクは俺達に続ける――
 
「私はお前達相手に負ける気はなどありません。特にアスフィさん。あなたの対策はバッチリですから」 
 
 対策……そうか俺の魔法を事前に対策する何かを持っているってことか。試しにやってみるか。
  
 「『消失する回復魔法』」ヴァニシングヒール 
 
「…………やれやれ、だから効かないと言っているでしょう」
  
 やっぱりそうかよ……さてどうしたものか。このハクとやら強いな。今、魔法を唱えて分かった。こいつから生気を感じ無い。
  
「……お前の魔法は生命いのちに干渉するものと聞いています。私にそれは効きません。なぜなら――」
 
 ハクは着物で隠れた手を口元に当て言う。
 
「――私は既に死んでいますから」 
 
 アスフィの天敵が現れた。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...