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第七章 フィー 幻想世界開幕篇《第二部》
第99話「手がかり」
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生徒二百五十六人が行方不明。その校内に張り出された記事から導き出した答えは――
「ここは俺が居なくなった後の時間軸……」
生徒が行方不明になった後という事は、亜久津の言っていた通りの事が起きたということ……つまり、校舎に生徒が居ないのは登校していないのではなく、登校出来ないということか。
二百五十六人、か。恐らく全校生徒では無いはず。とすると、今は休校って所か。
「……現状を大体把握した。戻るぞセリナ」
「もういいでありんすか?」
「ああ、もうここに用はない」
懐かしい気持ちよりも吐き気がする。ここに長居する理由は無い。
「――君たち! 誰だね! 今は休校中だぞ!」
……担任の松岡。亜久津の話では俺が行方不明になったにも関わらず、何とも思わなかった教員の一人。もう過ぎたことだし、いいけどな。
「……すみません。コスプレして入ると気分が高揚するかなって思いまして」
我ながらなんという言い訳だよ。
「……今は立ち入り禁止だ。そもそも君たちは誰だね。警察に通報するぞ」
どうやら松岡のやつ、俺に気付いてはいないみたいだな。コスプレのような格好をしているとはいえ、自分の教え子の顔が分からない担任が居るか? どれだけ俺に関心が無かったのかが伺えるな。
「……セリナ、なんとかしてくれ」
こんな所で警察に捕まる訳にはいかない。他力本願スタイルだ。
「残念ながら今のわっちにそんな力は無いでありんす」
「……お前まじで使えねぇな」
「君たち、そこを離れるんじゃないぞ。今通報するから」
そんなこと言われて素直にその場に留まるやつが居るかよ。
「逃げるぞ! セリナ!」
「了解でありんす」
「おいコラ! 待ちなさい!!」
……
………
……………
「はぁ……はぁ……疲れたぁ」
「少し休憩するでありんす」
俺たち二人とも肉体派じゃ無いからな。走るのは苦手だ。
「……よし、俺の要件は済んだ。お前はどこか行きたいところとかあるか?」
「……もう十分でありんす」
「なんだよ、もういいのか。なら帰るぞ。帰ったらちゃんとマキナを元に戻せよ?」
「分かっているでありんす」
おい、オーディン。もうコイツは満足みたいだ。もういいぞ。
………………………………おい、聞いてんのか?
《――やぁ、ケンイチくん》
またお前か……今度は何の用だ。
《まさか君の方からこっちに来るとはね? 》
来たくて来た訳じゃない。色々と事情があるんだ。
《ふ~ん、あっそ。興味ないけど》
そんなことより、オーディンに代われ。今お前と話している暇は無い。
《へ~そんなこと言うんだね。……うん、ちょっと意地悪しちゃおうかな》
……なに?
《君そこから出たいんだろ? 》
ああ。
《帰さないことに決めたよ》
はぁ? 何言ってんだお前。
《じゃ、頑張ってね~! アヒャヒャヒャヒャヒャッ! 》
おい! ちょっと待て『アンノーン』!!
…………最悪だ。
「悪い、セリナ。帰れないみたいだ」
「……そうでありんすか」
「やけに素直だな。帰れないんだぞ?」
「わっちにとってはどこも同じでありんすからね。ここで暮らしていくのも良きでありんす」
俺は全然良くねぇっつの。
***
それからオーディンに何度も話しかけてはみたが、応答は無い。
どうやら本当に帰れないみたいだ。
「…………もう暗くなってきたな。家に帰るか」
「フィーさんのあの家でありんすか?」
「ああ……行くとこねぇしな。一応家族にはバレない様に窓から入るがな」
俺の部屋は二階にある。窓の鍵は何かあった時の為にといつも開けてある。それがまさか今日初めて役に立つとは思わなかったが。それに金もないし、どこかホテルに泊まるって事も出来ねぇしな。
「いくぞ」
「……了解でありんす」
夜は人が少ない道を選んで歩く。セリナの格好は夜とはいえ流石に目立つ。もう今更って感じだが。
……
…………
………………
「……ここから登れる」
俺は二階の窓に梯子を掛けた。俺専用の梯子である。妹と喧嘩をして家の鍵を閉められた時用に隠してあった梯子だ。妹との喧嘩は日常の一コマだったから倉庫に常備してあるのだ。
俺とセリナは梯子を登って部屋に入った。
「……ふぅ……なんとか無事入れ――」
「え……お兄ちゃん?」
「…………やべ」
妹に見つかってしまった。夜だから家に居るのは分かっていたがまさか俺の部屋で鉢合わせするとは思わなかった
「どこに行ってたの! 心配したんだよ!?」
黒目で黒髪ショートの一つ下の妹。ご近所でも可愛いと評判の妹。友達は一人作れば百人出来る、を座右の銘にしている妹。
そんなジャージ姿の妹に俺は鉢合わせしてしまった。
「…………悪い。てかお前なんで俺の部屋にいるんだ」
「そ、それは………って待って。その露出度高めのコスプレお姉さん誰」
「初めまして、わっちはビャッコ・セリナというでありんす」
「……はぁ? ビャッコ? 何言ってんの……ねぇ、その頭の痛い女だれお兄ちゃん」
まずい。どう言い訳しようか。なにか言い訳は無いか……?
「…………アレだ。ネットで出会った」
「お兄ちゃんがとうとう彼女出来ないからって出会い系を使い始めた!?」
やっぱり俺は嘘が苦手らしい。
でもまぁ、とりあえずそういうことにしておこう。
「そんなことより早く出ていけ楓」
「はぁ!? 心配してあげたのに何その言い草! お父さんもお母さんもしてたんだよ!?」
やっぱり心配掛けていたのか。俺の部屋を出ていこうとする妹の手を俺は掴んだ。ここで行かれてはマズイ……!
「待て、父さんと母さんにはまだ言わないでくれ!」
「はぁ? なんで? すごく心配してるんだよ!? 自分の息子が生きてるって教えてあげなきゃダメでしょ!」
「……頼む楓。今は……今だけは内緒にしてくれ。いずれ俺から話すから」
「……お兄ちゃんがそれでいいならいいけど。でも! ちゃんと後で言うんだよ?」
「ああ、必ず」
「…………じゃあ、楓は部屋に戻るから」
楓は自分の部屋に帰って行った。
「……いい妹君でありんすね」
「そうだな……いつも喧嘩ばかりしていたが大事な妹だ」
再び俺とセリナは二人きりになる。二人だと少し狭い部屋に感じるかもしれないが、休むならここしか無い。
「……さて、これからについて考えるぞ」
「そうでありんすね」
まず『アンノーン』の手によって俺の記憶から創られた幻想世界に帰れなくなった。それに伴いオーディンとも連絡が取れない。オーディンと連絡が取れない以上、帰る手段が無い……。
「……やはりこの世界に存在する『アンノーン』を見つけ出すしかないのか」
「『アンノーン』でありんすか?」
「ああ、帰れなくなった原因を作ったやつだ。そいつがこの世界のどこかに居るはずだ」
「どこにいるのか分かるでありんすか?」
「……それが分からないから困ってんだよ」
くっそ……どうすればいいんだ。『アンノーン』については俺の名前を知っている人物ということくらいしか手がかりが無い。
この世界で俺の名前を知っている人物……学校の者しか考えられない。その中でも教師か生徒か。
教師の可能性もあるが、生徒の確率が高いだろうな。それも行方不明になった二百五十六人では無い者。行方不明になった二百五十六人は俺の幻想世界に居る筈だ。全校生徒が何人居るのかも把握しなければならないか。その中の二百五十六人を省いた者の中から順に調べていく……これはかなり大変だなぁ。
「……セリナ。これは思った以上に骨が折れるぞ」
「わっちは帰れなくてもいいでありんすが」
「お前は良くても俺は帰らないと行けない。まだあの世界でやらなければならない事が山ほどある。こんな所で道草食ってる場合じゃねぇんだ」
俺はセリナに言い放つ。セリナは何とも興味無さそうな顔だ。
こいつにとってはどこも同じ場所なんだろうな。俺はこのニセモノの日本よりあの世界に置いてきた物の方が大きい。マキナに、ルクス、エルザ。そしてレイラ……。
「よし、まずは全校生徒の把握からだ」
「……すぅ……すぅ」
こいつ……俺のベッドで気持ちよさそうに眠ってやがる。勝手に使いやがって。
……俺はどこで眠ればいいんだ。
眠れない俺は今後について考えていた。
「全校生徒が何人いるのか…………あ、そうか」
俺は気付いてしまった。
「楓に聞こう」
楓なら何か知っているかもしれない。同じ高校に通うアイツなら。
「え? 知ってるけど、急にどしたのお兄ちゃん」
俺はいきなり重要な手がかりを得た。
「ここは俺が居なくなった後の時間軸……」
生徒が行方不明になった後という事は、亜久津の言っていた通りの事が起きたということ……つまり、校舎に生徒が居ないのは登校していないのではなく、登校出来ないということか。
二百五十六人、か。恐らく全校生徒では無いはず。とすると、今は休校って所か。
「……現状を大体把握した。戻るぞセリナ」
「もういいでありんすか?」
「ああ、もうここに用はない」
懐かしい気持ちよりも吐き気がする。ここに長居する理由は無い。
「――君たち! 誰だね! 今は休校中だぞ!」
……担任の松岡。亜久津の話では俺が行方不明になったにも関わらず、何とも思わなかった教員の一人。もう過ぎたことだし、いいけどな。
「……すみません。コスプレして入ると気分が高揚するかなって思いまして」
我ながらなんという言い訳だよ。
「……今は立ち入り禁止だ。そもそも君たちは誰だね。警察に通報するぞ」
どうやら松岡のやつ、俺に気付いてはいないみたいだな。コスプレのような格好をしているとはいえ、自分の教え子の顔が分からない担任が居るか? どれだけ俺に関心が無かったのかが伺えるな。
「……セリナ、なんとかしてくれ」
こんな所で警察に捕まる訳にはいかない。他力本願スタイルだ。
「残念ながら今のわっちにそんな力は無いでありんす」
「……お前まじで使えねぇな」
「君たち、そこを離れるんじゃないぞ。今通報するから」
そんなこと言われて素直にその場に留まるやつが居るかよ。
「逃げるぞ! セリナ!」
「了解でありんす」
「おいコラ! 待ちなさい!!」
……
………
……………
「はぁ……はぁ……疲れたぁ」
「少し休憩するでありんす」
俺たち二人とも肉体派じゃ無いからな。走るのは苦手だ。
「……よし、俺の要件は済んだ。お前はどこか行きたいところとかあるか?」
「……もう十分でありんす」
「なんだよ、もういいのか。なら帰るぞ。帰ったらちゃんとマキナを元に戻せよ?」
「分かっているでありんす」
おい、オーディン。もうコイツは満足みたいだ。もういいぞ。
………………………………おい、聞いてんのか?
《――やぁ、ケンイチくん》
またお前か……今度は何の用だ。
《まさか君の方からこっちに来るとはね? 》
来たくて来た訳じゃない。色々と事情があるんだ。
《ふ~ん、あっそ。興味ないけど》
そんなことより、オーディンに代われ。今お前と話している暇は無い。
《へ~そんなこと言うんだね。……うん、ちょっと意地悪しちゃおうかな》
……なに?
《君そこから出たいんだろ? 》
ああ。
《帰さないことに決めたよ》
はぁ? 何言ってんだお前。
《じゃ、頑張ってね~! アヒャヒャヒャヒャヒャッ! 》
おい! ちょっと待て『アンノーン』!!
…………最悪だ。
「悪い、セリナ。帰れないみたいだ」
「……そうでありんすか」
「やけに素直だな。帰れないんだぞ?」
「わっちにとってはどこも同じでありんすからね。ここで暮らしていくのも良きでありんす」
俺は全然良くねぇっつの。
***
それからオーディンに何度も話しかけてはみたが、応答は無い。
どうやら本当に帰れないみたいだ。
「…………もう暗くなってきたな。家に帰るか」
「フィーさんのあの家でありんすか?」
「ああ……行くとこねぇしな。一応家族にはバレない様に窓から入るがな」
俺の部屋は二階にある。窓の鍵は何かあった時の為にといつも開けてある。それがまさか今日初めて役に立つとは思わなかったが。それに金もないし、どこかホテルに泊まるって事も出来ねぇしな。
「いくぞ」
「……了解でありんす」
夜は人が少ない道を選んで歩く。セリナの格好は夜とはいえ流石に目立つ。もう今更って感じだが。
……
…………
………………
「……ここから登れる」
俺は二階の窓に梯子を掛けた。俺専用の梯子である。妹と喧嘩をして家の鍵を閉められた時用に隠してあった梯子だ。妹との喧嘩は日常の一コマだったから倉庫に常備してあるのだ。
俺とセリナは梯子を登って部屋に入った。
「……ふぅ……なんとか無事入れ――」
「え……お兄ちゃん?」
「…………やべ」
妹に見つかってしまった。夜だから家に居るのは分かっていたがまさか俺の部屋で鉢合わせするとは思わなかった
「どこに行ってたの! 心配したんだよ!?」
黒目で黒髪ショートの一つ下の妹。ご近所でも可愛いと評判の妹。友達は一人作れば百人出来る、を座右の銘にしている妹。
そんなジャージ姿の妹に俺は鉢合わせしてしまった。
「…………悪い。てかお前なんで俺の部屋にいるんだ」
「そ、それは………って待って。その露出度高めのコスプレお姉さん誰」
「初めまして、わっちはビャッコ・セリナというでありんす」
「……はぁ? ビャッコ? 何言ってんの……ねぇ、その頭の痛い女だれお兄ちゃん」
まずい。どう言い訳しようか。なにか言い訳は無いか……?
「…………アレだ。ネットで出会った」
「お兄ちゃんがとうとう彼女出来ないからって出会い系を使い始めた!?」
やっぱり俺は嘘が苦手らしい。
でもまぁ、とりあえずそういうことにしておこう。
「そんなことより早く出ていけ楓」
「はぁ!? 心配してあげたのに何その言い草! お父さんもお母さんもしてたんだよ!?」
やっぱり心配掛けていたのか。俺の部屋を出ていこうとする妹の手を俺は掴んだ。ここで行かれてはマズイ……!
「待て、父さんと母さんにはまだ言わないでくれ!」
「はぁ? なんで? すごく心配してるんだよ!? 自分の息子が生きてるって教えてあげなきゃダメでしょ!」
「……頼む楓。今は……今だけは内緒にしてくれ。いずれ俺から話すから」
「……お兄ちゃんがそれでいいならいいけど。でも! ちゃんと後で言うんだよ?」
「ああ、必ず」
「…………じゃあ、楓は部屋に戻るから」
楓は自分の部屋に帰って行った。
「……いい妹君でありんすね」
「そうだな……いつも喧嘩ばかりしていたが大事な妹だ」
再び俺とセリナは二人きりになる。二人だと少し狭い部屋に感じるかもしれないが、休むならここしか無い。
「……さて、これからについて考えるぞ」
「そうでありんすね」
まず『アンノーン』の手によって俺の記憶から創られた幻想世界に帰れなくなった。それに伴いオーディンとも連絡が取れない。オーディンと連絡が取れない以上、帰る手段が無い……。
「……やはりこの世界に存在する『アンノーン』を見つけ出すしかないのか」
「『アンノーン』でありんすか?」
「ああ、帰れなくなった原因を作ったやつだ。そいつがこの世界のどこかに居るはずだ」
「どこにいるのか分かるでありんすか?」
「……それが分からないから困ってんだよ」
くっそ……どうすればいいんだ。『アンノーン』については俺の名前を知っている人物ということくらいしか手がかりが無い。
この世界で俺の名前を知っている人物……学校の者しか考えられない。その中でも教師か生徒か。
教師の可能性もあるが、生徒の確率が高いだろうな。それも行方不明になった二百五十六人では無い者。行方不明になった二百五十六人は俺の幻想世界に居る筈だ。全校生徒が何人居るのかも把握しなければならないか。その中の二百五十六人を省いた者の中から順に調べていく……これはかなり大変だなぁ。
「……セリナ。これは思った以上に骨が折れるぞ」
「わっちは帰れなくてもいいでありんすが」
「お前は良くても俺は帰らないと行けない。まだあの世界でやらなければならない事が山ほどある。こんな所で道草食ってる場合じゃねぇんだ」
俺はセリナに言い放つ。セリナは何とも興味無さそうな顔だ。
こいつにとってはどこも同じ場所なんだろうな。俺はこのニセモノの日本よりあの世界に置いてきた物の方が大きい。マキナに、ルクス、エルザ。そしてレイラ……。
「よし、まずは全校生徒の把握からだ」
「……すぅ……すぅ」
こいつ……俺のベッドで気持ちよさそうに眠ってやがる。勝手に使いやがって。
……俺はどこで眠ればいいんだ。
眠れない俺は今後について考えていた。
「全校生徒が何人いるのか…………あ、そうか」
俺は気付いてしまった。
「楓に聞こう」
楓なら何か知っているかもしれない。同じ高校に通うアイツなら。
「え? 知ってるけど、急にどしたのお兄ちゃん」
俺はいきなり重要な手がかりを得た。
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