攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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第八章 フィー 幻想大戦篇《第二部》

第108話「造られし故郷、終演」

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 エーシルが日本に現れ、殺戮さつりくを行った……それによって生まれた『アンノーン』という組織。やはり、繋がっていたのか。日本とあの異世界は。オーディンが俺の記憶を元に作り出した異世界。あの中に俺の記憶で見たものがあった。そこにあるはずが無いもの。
 
 …………東京タワー。
 
 オーディンは俺にヒントを残していた……? なぜ東京タワーがあるのかと思っていたが、オーディンは異世界と日本は繋がっていると俺に伝えたかった。
 
 そうだろ……? オーディン。
 
 《………………》
 
 まぁ、答えられないよな。そんな事今更出来れば、こんな回りくどい事はしないよな?

 言えない事情がある……。だが、どうにかして俺に伝えたかった。
 
 お前を疑った事、悪いと思ってるよ。
 
 《………………いいよ》
 
 オーディンの寂しげな声が聞こえた気がした。

 ***

「私達が敵対する必要が無いことが分かったかい? そもそも意味が無いんだよ」
「……だったら俺たちをここから出せ」
「そもそも君たちの為なんだよ……? 私達はある人から頼まれて君達をここに閉じ込めているに過ぎない。言わば安全処置さ。今の日本は危険だ。まぁ、私達の本体は死んでるし帰る手段がそもそも無いんだけどね――」
 
 フタバは淡々と話を続けた。
 
「かと言って、君達を向こうの世界に戻してもダメだ。私達は神を殺す。一匹たりとも逃さない。そんな所に君達を戻す訳には行かないだろう?」
「……つまり、お前達『アンノーン』は俺達を助けたいと言いたいのか?」
「そうだよ?」
 
 嘘をついている様には見えない。それが余計に腹が立つ。
 
「有難い申し出だが、俺たちは戻るぞ」
「なんで? 君の故郷は日本であってあっち・・・じゃないでしょ?」

 異世界も日本も等しく俺の故郷。二つの世界で生まれたのが俺だ。

「……俺は向こうに置いてきたものが沢山ある。それを大切にしたい。日本に帰るのはそれを取り戻してからでもいい」
「…………ふーん。あっそ。まぁ、私達には関係ないね。私はただ、頼まれただけだし。私個人としては、ハッキリ言って君達なんてどうでもいい」
 
 本当にハッキリだなこいつ。
 
「そんなこと言われてもここから出さないけどね」
「それは頼まれたから、か?」
「そうだよ?」
「……そいつは誰だ」
神田かんだ 真希まき。私の親友だよ」
 
 また神田か。誰なんだそいつは。
 
「……お前、金の為じゃないのか? まさか親友から賄賂でも貰って今回の件を請け負ってんのか?」
「そんな訳ないでしょ? バカなの?」
 
 うぜぇ……こいつの性格が段々分かってきた気がする。
 
「私がお金を貰っているのはまた別の人。今それは重要じゃない」
「で、その神田ってやつはなんなんだ。なぜ俺達を守ろうとする?」
「正確には君だよ。ケンイチくん」
 
 俺……? 俺個人ということか?
 
「君が好きだからじゃない……?」
「はぁ? 俺がクラスのやつらからどう思われてたか知ってんのか?」
「……知らないよ。私別のクラスだったし。聞いてもあの子答えてくれないし」
「なら、その神田ってやつに会わせろ。俺が直接聞く」
 
 それが一番早いだろう。
 
「……ダメだ。あの子がそれを望まない」
「なんだよ、俺のことが好きなんだろ? だったら会ってやる。本当に好きなら普通喜ぶだろ」
「好きかどうかは知らないけど、本当に大切だから望まないんだよ」
 
 意味が分からん。
 
「神を憎んでいるのは私達『アンノーン』だけ。あの子は関係ない。あの子から頼まれているのは、ケンイチくんを死なせるなって事だけ」
「……なら簡単だ。俺は向こうに戻っても死なない」
「でも、私達の邪魔をするでしょ?」
「俺はマキナやルクス、エルザ……俺の知る大切な人達が生きていればそれでいい」
「うわ~酷いねそれ……でも残念。例外は無い。神は等しく殺す。絶対に。なんとしてでも。…………特にエーシル。奴だけはね」
 
 エーシルに関しては同感だが、マキナが殺されると言うなら見過ごせない。あいつは俺の大事なモノだ。
 
「だったら交渉決裂だ。戦闘開始だ。……エルザ!」
 
 俺はエルザに声をかける。
 
「うむ? なんだ? もういいのか?」
 
 エルザは黙って俺達の会話を聞いていた。
 
「……出番だ」
「……うむ、待っていたぞ」
 
 エルザは再び剣を抜く。
 
「はぁ……やれやれ。結局こうなるのか」
「悪いな、俺達はなんとしてでも向こうに戻らせてもらう」
「……いいよ、かかって来なよ。あの子に言われているのは、君を死なせないという事だけだからね。その他はどうでもいい」
 
 《待ちたまえ!! 》
 
「……誰だい?」
「…………この声……お前、オーディンか?」
 
 《そうだよ! どう? タイミング最高じゃなかった? 》
 
「最悪だ」
「ふーん。神オーディンか。ねぇ、どこにいるの? 殺してあげるから隠れてないで出てきなよ」
 
 《おお! 怖! ごめんね! それは出来ないよ》
 
「…………じゃあなんの用?」
 
 《この世界を終わらせに来た……よ! 》
 
 おい、どこの漫画の赤髪だ。
 
「というか何の用だオーディン!」
 
 《だから言ったでしょ? この世界を終わらせに来たんだって! 》
 
「ふーん。……私達はここまでか」
 
 《『アンノーン』諸君。残念だったね! 私の世界に干渉出来たことは褒めてあげるよ! ……でもね、あまり神を舐めないことだよ? 君達に殺される程、神は弱くない》
 
「それは私達のセリフだよ。神を相手になんの対策もなくこんな事言ってると思ってるの?」
 
 《……………………》
 
「おい、黙るなよ! なんか言い返せよ!」
 
 《…………いやだって、その通りだなと思って》
 
「バカなの?」
「……そうみたいだ」
 
 《とにかく! この世界は終わらせる! 》
 
「終わるってことは、俺たちは俺の記憶で造られた異世界……もう一つの幻想世界に戻るってことか?」
 
 《そうだよ! 元々この日本は朝倉あさくら 佳奈かなのイメージで作った偽物の日本だからね。彼女が記憶しているだけの世界を再現したものだ。それが終わるだけのこと。君達はフィーの幻想世界に戻るのさ! 》
 
 朝倉は転移者……転移した後の日本を知らない。だからこの日本は平和だったのか。フタバの言う通り俺達転移者が消えた後、エーシルが日本を襲撃したのであれば、転移者である朝倉は当然それを知らない。
 
「オーディン、こいつらはどうなる」
 
 《『アンノーン』の諸君には元の世界に帰ってもらうよ》
 
「元の世界……? こいつらは殺されて肉体がないらしいぞ? どこに帰るっていうんだよ」
 
 《私達が居る世界だよ。君は知らないかもしれないけど、既に『アンノーン』とは交戦状態だ。だからさ、フィー。私たちを……マキナを助けてよ》
 
「待て! 時間は止まってるとか言ってなかったか!?」
 
 《どうやら『アンノーン』の中には不可能を可能に出来る者が居るみたいだね。私が止めていた時間を少しばかり動かした。だから今はもう、もたもたしている時間は無い。早く目覚めてよね! フィー! 》
 
「じゃ、私達は帰るよ、ハジメ」
「は、はい! フタバさん!」
 
 ……
 …………
 ………………
 
「楓、ありがとうな」
「いいよ、お兄ちゃんにまた会えたしね!」
「もし良かったらお前もこっちに来ないか?」
「…………それは嬉しいんだけど、私行けないんだよね。あはは」
「どうしてだよ! お前は本物の楓だ! 俺の妹で生意気な妹だ!」
「最後のは要らないよね……私が本物になれたのは彼女・・のお陰だから……私は行けないんだよね。もしさ、またお兄ちゃんの妹になれたらその時は、ちゃんと愛してね……お兄ちゃん」
「おい――」
 
 空間が終わる瞬間。何度も見た白い空間だ。
 
「かえでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
 
 ――楓の姿が消えた。
 
 《…………大丈夫、また会えるよ》
 
 …………本当か?
 
 《うん! 約束する! 神は嘘をつかない! 》
 
 ……お前がそこまで言うなら分かった。信じてやる。
 
 《うん、ありがとう》
 
 白い空間にヒビが入り始める。世界が終わる瞬間だ。
 
 何度観てもこの光景には慣れないな。
 
 《ええー? 神秘的で良くない? 》
 
 あんなことが無ければそう思う事も出来たろうな。
 
 マキナ……必ず救ってやる。レイラ……必ず生き返らせてやる。
 母さん……必ず見つけ出してやる。
 
 《じゃみんなまた後でね! 》
 
 ひび割れた白の空間から光が溢れ出す。
 
 そしてヒビが終わった瞬間、辺りは真っ白な光に覆われた。

 ……
 …………
 ……………………
 
「………………戻ってきたのか」
「……そうみたいでありんすね」
「うむ、ここがアスフィの頭の中か」
 
 俺とセリナ、エルザの三人は幻想世界へと帰ってきた。エルザはやって来たという方が正しいか。

 てか頭の中とか言うなよ……。
 
 《さっきぶりだね皆! 》
 
 お前なぁ。そんな簡単に出てきていいのか?
 
 《まぁ今は大丈夫なのだよ! 》
 
 俺たちはクラスメイトが軟禁されている部屋に帰ってきた。
 
 クラスメイトは俺達が急に空間から現れたもんだから驚いている。
 
「さぁ、戻ってきたぞ。と言ってもまだ幻想世界だが」
「わっちのわがままで長旅にさせてしまって申し訳ないでありんすフィーさん」
「いいってことだ。その代わりお前には働いてもらう」
「働く……でありんすか?」
「ああ、お前ここなら力使えるだろ。この世界のエーシルを倒す。お前も手伝え」

 エルザと俺だけじゃ心許ない。こいつが入ればエーシルに勝つ事も難しくは無いはずだ。
 
『……分かったでありんす。フィーさんはわっちの夢を叶えてくれたでありんすからね。そのエーシルとやらの討伐に協力するでありんす』
「おい、いいのかアスフィ!?」
「構わない。セリナの事は今信用した」
「今だと!?」
 
 セリナは悪いやつじゃない。マキナを眠らせた。しかし、眠らせた後なにもしなかった。無抵抗のマキナに。
 
 おれはそれがセリナの優しさだとそう思った。
 
「……あと、もう一つ約束だ。今すぐマキナを起こせ」
「分かったでありんす」
 
 俺達は今も尚眠り続けているであろうマキナを起こす為、眠っている彼女の場所へと足を運ぶ。
 
 ……
 …………
 ……………………
 
 ない。

 ないないないないない! どういう事だ!?
 
「マキナが……居ない」
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