攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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第八章 フィー 幻想大戦篇《第二部》

第109話「幻想人」

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 どういう事だ……!? セリナによって眠らされていたマキナが居ない!
 
 おい、オーディン! お前何か知らないか?
 
 《多分、自力で起きたんじゃない? 》
 
 何……? 自力でだと? そんな事可能なのか!?
 
 《そこにいる狐女の力は日本の幻想世界に行ったことで、一時的ではあるけど力を失った。……つまり、効果が切れたんじゃないかな! 知んないけどね! 》
 
 セリナは自力で起きることは不可能と言っていた。
 となると、オーディンの言う通り効力が切れたと見るべきか。
 
 《ま! 私は知らないし、直接そこにいる狐女に聞いてみた方がいいと思うよ! 》
 
 分かった。そうする。
 
「……聞こえているでありんすよ、オーディン」
 
 《ありゃ、スピーカーモードのままだった! 》
 
 お前……。
 
 《ま! 聞こえてるならそれでいいや! フィーに教えてあげて! 》
 
「……教えてと言われても、オーディンの言う通りでありんす。わっちの力は日本に行ったことで一時的ではあるものの失われていたでありんすよ。……わっちもこんな事初めてだから言われて初めて気付いたでありんす」
「そうか」
 
 となると、マキナは起きるべくして起きたのか。しかし、待ってくれていればいいものを……俺達の帰りを待てなかった? あるいは何者かに襲撃されたとか。後者なら助けに行くべきだ。アイツが死んだら俺は……。
 
 《多分それは無いんじゃない? 》
 
 どうしてそんなことが言える。
 
 《だって今のマキナは全盛期のゼウス・マキナだよ? けがれのない正真正銘のゼウス・マキナ》
 
 穢れ? ……撤回しろオーディン。向こうでもマキナは穢れてなんていない。
 
 《ごめんごめん! そんな怒んないでよ! 》
 
 ……ゼウス・マキナ、か。こっちのマキナには色々と聞きたいことがある。答えてくれるかは分からないが。
 
 オーディン、マキナの居場所分からないか? お前はこの世界の管理者だろ?
 
 《まぁ分からないことは無いけど……》
 
 なら教えてくれ。
 
 《うーん》
 
 なんだ? 何かあるのか?
 
 《マキナを探すのは簡単なんだけどさ……》
 
 もったいぶらず早く言え。
 
 《マキナは今、戦ってるんだよね》
 
 ……何? 誰とだ。
 
 《………………君が良く知る王子とさ》
 
 
 王子……? 俺が良く知る王子……そんなの一人しか居ないじゃねぇか。
 
 
「キャルロット……」
 
 ***
 
 俺達はフォレスティアに向かうことにした。
 正確にはフォレスティアがあった場所。今はもう、この幻想世界にフォレスティアは存在しないからだ。
 
「……おい! セリナ! コイツらどうにかしてくれ!!」
「そんなことわっちに言われても知らないでありんす」
 
 俺の前に次々と、露出の激しい遊女が現れる。
 
「お兄さんカッコイイですね。……今晩私とどうですか?」
「悪い、急いでるんだ!」
 
 俺は立ち塞がる遊女を次々と払い除け、走る。
 
「……おい、アスフィよ。お前、本当にアスフィか?」
「はぁ? なんだよ急に」
「その、言いにくいのだが……アスフィはもっとこう、スケベというか」
 
 失礼なやつだな……否定はしないが。
 
「今はそんな状況じゃない。マキナの命が掛かってるからな」
 
 恐らく負けはしないだろう……。この幻想世界のマキナは全盛期のゼウス・マキナだ。誰よりも強い。その筈だが……心配だ。
 相手は王子キャルロット。フォレスティアの王だ。その強さはエルザに匹敵する。いや、それ以上かもしれない。あの猫は初めて会った時からどこか胡散臭いものがあった。
 
「……キャルロットは信用出来ない」
「それについては私も同感だ」
「わっちだけ仲間はずれでありんすね。それ程までにそのキャルロットという人物は只者じゃないでありんすか?」

「「胡散臭い野郎だ」」

「……ハモる程でありんすか」
 
 俺達がピンチの時にいつもタイミング良く助けてくれた。それについては感謝している。だが、どうにも胡散臭い。何か隠している、そんな気がする。
 
「あああもう! 邪魔だ! どけっ!」
「そこまで嫌なら私が切り伏せようか?」
「……そこまでじゃないからやめろ」
 
 エルザが一瞬腰の剣に手を掛けたが、流石に止めた。こんな所で殺人騒ぎは辞めて欲しい。
 そんなやり取りをしている間にようやく出口が見えてきた。
 
「ちょっと待つでありんす」
 
 セリナが立ち止まった。
 
「おい、早く行くぞ! 時間がねぇ!」
「別れの挨拶を」
 
 セリナは後ろを振り返り、遊女達に別れの挨拶をするようだ。
 
「皆聞いて欲しいでありんす。わっちは少しの間出掛ける。帰ってくるかもしれないし、帰ってこないかもしれない……そんな旅でありんす。皆には辛い思いを沢山させてしまった……名ばかりではあるこの『楽園』の王として、皆に伝えたい事がある。……ありがとう」
 
 そう言うと、セリナは遊女達に頭を下げる。
 
「……さぁ、行くでありんす」
「お前、しっかりこの国のリーダーしてんだな」
「リーダーなんてそんな大層なものではないでありんすよ……ただ、この『楽園』に住み始めた最初の一人というだけでありんす」
 
 遊女達はセリナの言葉に反応する訳でも無い。ただ、じっとセリナの後ろ姿を見つめていた。
 
「悲しいもんだな。誰も何も言わないなんて」
「……いいえ、あれは幻想。言わないのでは無く、言えないのでありんすよ」
 
 ……どういう事だ?
 
 《私から説明しよう! 》
 
 解説者オーディン、よろしく頼む。
 
 《うむ、くるしゅうない! 》
 
 エルザの真似はいいから早く言え。
 
 《全くフィーはつれないなぁ! この幻想世界はね、私が作ったんだよ》
 
 そんなこと今更言われなくても分かってる。
 
 《でね、私が作ったって事は、私が知らない人物はイメージで作ってるんだよね! 》
 
 イメージ、か。それは俺の記憶からなんだろ?
 
 《そう! この幻想世界はフィーの記憶を元に作った世界。つまり、フィーも私も知らない人物は正確に作れないんだよ! 》
 
 なるほど……イメージってそういうことか。
 
 オーディンも俺も知らない人物は全てオーディンの勝手なイメージで作った。
 
 あの場で返す言葉をプログラムされてないってことか。
 
 《君たちの言葉で言うならそうだね! 》
 
 でも、セリナは何でそれを知ってるんだよ。こいつもお前が作ったんじゃないのか?
 
 《いいや、そこの狐女は私が創造した者じゃないよ。そうだね……『幻想人・・・』とでも言おうか。この幻想世界ではどうやら私が作った『幻想人』じゃない者が何人か混じっている……君のクラスメイトの様にね! 》
 
 マジかよ。クラスの連中以外にもまだ居るのか。その事をセリナに聞いても答えてくれるだろうか。
 いや、こいつは答えてくれないな。そもそも、セリナがなぜ『神力』を有しているのかすら謎だ。
 
 《それについては答えられるよ》
 
 本当か!
 
 《うん! 狐女は外部から力を貰った様だね》
 
 外部……? それは元々持っていた訳ではなく、後から手に入れた力ってことか?
 
 《そうなるね》
 
 そんな事が出来るのか……俺も欲しいなそれ。
 
 《あはは! まぁそりゃ欲しいよね! 『神力』はその名の通り神に相応しい力だ。なんでも出来るとさえ思わせてくれるそんな力……》
 
 お前はエーシルから『神力』を奪われたんじゃないのか? エルザの話では、お前は今も向こうで俺の世話をしてくれているようだが?
 
 《世話と言う程の物じゃないよ! 私がしたいからしてるだけ! 私は確かに、エーシルに『神力』を奪われたよ》
 
 なら、何故こんな真似ができる? 幻想世界を創るなんてそれこそ神の御業だろ?
 
 《私は純粋な神だからね! 》
 
 なんだよそれ。その言い方だとまるで純粋じゃない奴・・・・・・・が居るみたいじゃねぇか。
 
 《だからそう言ってるんだよ》
 
 どういう事だ。意味が分からんぞ。
 
 《これ以上は言えない》
 
 おい! ここまで言ってそれは無いだろ!
 
 《まぁ、いずれ知る事になるよ! ……君がこの先もマキナを愛するならね》
 
 そんなことわざわざ言わせるな。
 俺はこれからもずっとマキナを愛してる。
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