攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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第八章 フィー 幻想大戦篇《第二部》

第110話「語る」

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 フォレスティア跡地を目指して『楽園』を出た俺達。
 誘惑ばかりの遊郭だった。しかし、マキナやレイラを想えばどうって事はない。
 
「なぁ、走っていけばフォレスティアまであとどれくらいで着くんだ?
「大体三日はかかるのではないか?」
「そんなにか……」
 
 いや、それもそうか。『楽園』に来た時はマキナの飛行で来る事が出来た。今はそのマキナが居ない。徒歩以外の手段がない。
 
「なるべく急ぎで行くぞ」
 
 ……ん? 待てよ? セリナは『神力』を持ってるじゃないか!
 
「おい、セリナ! お前の力で徒歩より早く移動出来る手段はないのか!?」
「残念ながら、わっちの『神力』にそのような物は備わってはありんせん」
 
 ……神力も万能じゃないってことか。俺が見てきた神は殆どが枠から外れた奴ばかりだったから、それが当たり前だと思っていたのだが。
 
「しかし、アスフィよ。このまま徒歩で行って間に合うのか?」
「……仕方ないだろ。他に手段がないし」
 
 せめてこの世界のルクスがこの場に居てくれれば、龍神の呪文を教えて飛んでもらう事も出来たんだが。
 
 《なんだい、移動手段に困っているのかい? 》
 
 ああ、なにか無いか? オーディン。
 
 《転送くらいなら出来るよ》
 
 そうか、転送か…………ん? 今転送って言ったか?
 
 《うん! 》
 
 ……なぜもっと早くに言わねぇんだバカ。
 
 《ああー! バカって言ったね!? じゃあもう転送してあげないよ? 》
 
 分かった分かった。転送が使えるならさっさと俺達を転送してくれ。
 
 《転送って言っても座標を確認する時間が必要だから、少しだけ時間貰うよ? 》
 
 ……どれくらいかかる?
 
 《ん~そうだね、三時間は欲しいかも! 》
 
 そんなにかかるのか!? ……いやでも、徒歩で行くよりかマシか。
 
 《そもそも君達の現在地を確認する必要もあるしね! 》
 
 まさかお前、俺達の現在地知らないのか?
 
 《うん! だってここは私が創造した世界とはいえ、元となった世界が広大だからね。今まで音声だけしか聞こえていなかったんだよ》
 
 分かった。三時間で頼む。俺はエルザ達に事情を説明する。
 
 《うん! 了解だよ! 》
 
 ……いや、待て。お前がスピーカーモードで教えてやってくれよ。それならわざわざ俺から説明する必要ないしな。
 
 《えー、二度も説明するのめんどくさいよ》
 
 分かった……俺からしておく。じゃ、頼んだぞオーディン。
 
 《うん! 任せてフィー》
 
 ……
 …………
 ………………
 
 俺はエルザとセリナにオーディンとのやり取りを簡単に説明した。エルザはよく分からん! と、途中から座り込み剣の手入れをしていた。分かるように説明した筈なのだが、一体何が分からんのか俺にも分からん。

 ……さて、三時間暇になったな……どうするか。
 
「そうだ! アスフィよ、いい機会だ。この場で自己紹介でもしようじゃないか!」
「……は? なんで今更自己紹介なんだよ」
「私はそこのセリナという人物をあまり知らない。というか全然知らん!」
「説明してやっただろ?」
「それだけじゃ足りない。……私はまだ信用していないからな。こう見えても私は結構疑い深いのだ」

 本当にこう見えてなんだよな、
 しかし、困ったなぁ。セリナについては俺が知る限りの事は全てエルザに話してやったし……。
 
「フィーさん、わっちはいいでありんすよ。……いえ、させて欲しいでありんす。わっちの事を信用してくれるのはとても有難いでありんすが、フィーさんもまだわっちのことを完全に信用した訳じゃないでありんしょう?」
 
 ……確かに。オーディンが言っていた『幻想人』じゃないという事についても気になる。こいつは幻想世界の住人じゃない外部の人間。……そもそも人間なのだろうか。
 
「……分かった。セリナが良いなら俺も構わない。では各自、自己紹介の時間にするとしよう」
 
 これから共にする仲間だ。いつまでかは分からない。だが、セリナもそれを了承したという事は、少なくとも今は俺達のことを仲間と思っているという事だろう。
 
「うむ! 助かる! では、話を切り出した私からさせて貰おう! 私は……」
 
 ……
 …………
 ………………
 
 こうしてエルザは今までの境遇を全て語った。生い立ちから俺達と出会ってからの事まで全て……。
 
「…………………………長い」
「なぬ!?」
「いや、長ぇよ。三時間もあるんだから時間余ると思うだろ。お前だけでもう二時間半も経過してんだよ」
「うむ……そんなに経っていたのか」
 
 もちろん時計なんて無いから体感だ。
 
「……俺はいい。特に面白い話でもないしな」
「わっちはフィーさんの話も気になるでありんすよ」
「分かった。また時間がある時にでもする。まずはお前の話が先だセリナ。この中でお前が一番謎だからな」
「……分かったでありんす」
「一応言っておく。自己紹介をしたいと話を切り出したのはエルザだが、お前もまたそれを了承した。何が言いたいか分かるか?」
「……嘘偽りない事実を述べよ、でありんすか?」
「そうだ。エルザも事実のみを話した。八割くらいどうでもいい事だったが、残りの二割は俺も知っている話だった。……流石にそこまで長話にする必要は無い。コイツはアホだ、その点は真似しなくていい。ただそれでお前が嘘をつくなら不公平という話だ。もちろんいずれ俺も嘘偽りない自己紹介をさせて貰うつもりだから安心しろ」
 
 そう俺が釘を刺すと、セリナは無言で頷いた。
 
「時間もないので、少し省略させて貰うでありんすよ。……では始めるでありんす」
 
 こうしてビャッコ・セリナは自らを語る――。
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