攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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第九章 アスフィ 交流篇 《第二部》

第123話「炎城へ」

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 コルネット村に突如現れたオーディン。そんな彼女とアスフィの会話についていけないアイリス。
 
「……さて、君たちさアリアを探しに来たんだよね。ここにアリアは居ないよ」
「…………そうですか。では行きましょう、アイリス」
「え? もう、よろしいのですか?」
「はい、僕はもう満足しました。母さんも居ないのであればここにもう用はありません」
 
 アスフィはオーディンに背を向け歩き出した。
 そんなアスフィにオーディンは――
 
「待ちなよ」
「……まだ僕に何か用ですか?」
「こんな雑談をしに君たちの元に現れたんじゃない。私だって暇じゃないんだよ。『アンノーン』の居場所が分かったよ」
「……そうですか」
「興味ないの? マキナもそこに居るかもしれないんだよ?」
「僕にとってマキナはそれ程重要じゃないので」
「…………ふ~ん。君、本当にアスフィなのかい?」
「僕は僕です。さぁ行きましょう、アイリス」
 
 ……本当にアスフィなのか、か。僕って一体何なんだろうね。
 
「……あの、オーディン」
「なにかな、人間」
「その言い方はやめてください。わたくしにはアイリスという名前があります」
「あっそ……で、なに? アスフィを追いかけなくていいの? 早くしないと置いてかれるよ? 今の彼ならやりそうだけど?」
「……直ぐに追いつきます。その前に一つだけ――」
 
 アイリスはオーディンに近付き、肩に手を置いた。
 
「なにを」
「わたくしはお兄様やルクスお姉様を守る為なら、なんだってやります。あなたがわたくしの知るオーディンでは無いのは分かりました。だから一つだけ忠告を――」
 
 アイリスはオーディンの耳元で囁いた。
 
「Μην μπαίνεις εμπόδιο」
「………………………分かったよ」
「……分かればいいのです……では」
 
 アイリスはアスフィの元へと走っていった……。
 
「……全く、怖いよね。メンヘラはさ」

 ***
 
 アスフィとアイリスはコルネット村を離れ、次なる場所を考えていた。
 
「どこへ行くのですか、アスフィ」
「そう……ですね……一度休もう……かと」
「……なんだか調子が悪そうですね」
 
 アスフィは頭を押えていた。

「えぇ……ちょっと――がぁぁ!?」
「どうしたのですか! アスフィ!」
「……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 
 《マキナを追え》
 
「……知らない……僕はそんなものに興味は――がぁぁぁっ!?」
 
 《マキナを追えと言っている》
 
「……はぁ……僕が……何故…………」
「アスフィ……? さっきから誰と……まさか!! お兄様ですか!?」
「黙ってて下さい、アイリス!」
「いいえ、黙りません! お兄様……! 起きて下さい! わたくしはここです!」
 
 アイリスはアスフィの体を揺らし叫ぶ。
 
 ……
 …………
 ………………
 
「………………はぁ……大人しくなりましたか」
「…………お兄様……どうして」
 
 アイリスは膝から崩れ落ちた。彼が帰ってきた、そう思った。しかし、彼女が望んでいた者は帰ってこなかった。
 
「……僕はまだやらなければならない事があります。それはマキナを救う事でも『アンノーン』を倒すことでもない。僕が狙うのはエーシルただ一人。あの時、奴を逃がしてしまった僕が責任を取らなければならないのです……」
 
 アスフィは自分の中の自分に言い聞かせる様に呟き、立ち上がった。
 
「…………エーシルを狙う理由はわたくしにも分かります。しかし、居場所が分かるのですか?」
「いいえ、ハッキリとした居場所は分かりません。彼は姿を隠すのが上手ですから。だけど、予測は立てられるんです」
「……予測?」
「はい、エーシルは力を求める怪物。そこに強大なエネルギーがあると感じた瞬間、飛び付いてくるでしょう」
「その強大なエネルギーと言うのは……?」
「――僕です」
 
 アスフィは自信に満ちた表情でアイリスに言う。その発言にアイリスは腑に落ちない。
 
「……あなたは回復しか出来ないのでしょう? 強大なエネルギーとはまた違うじゃありませんか」
「エネルギーと言うと、少し違いますかね。分かりやすく言うと『神力』です」
「…………『神力』、ですか。……え? あなたが?」
「僕は『神の子』アスフィ・シーネット。神の恩寵を賜りし者。……アイリス、君と同じ・・です」
 
 アイリスはアスフィが何を言っているのか理解した。自分と同じ境遇、同類なのだと……。
 
「……あなたもまた、力を受け継いだのですね」
「はい、ただしアイリスと違う点は……僕の場合、『神力』を持ち合わせてはいません」
「……どういうことでしょう」
「僕は『神力』ではなく『神体じんたい』。神の力を遺伝子として受け継いでいるんです」
「それはつまり、神の力は行使出来ないという事ですか?」
「はい、そうなります。しかし、『神』という性質は同じです。いずれエーシルは僕の所へ必ずやってきます。『略奪』をしに」
 
 ――アスフィは歩き出す。
 
「では行きましょう、アイリス」
「どこへです?」
「『炎城ピレゴリウス』へ。エルブレイドに会いに行きます。彼もまた、エルザに会いたいと思いますので」
「…………分かりました、参りましょう」

 二名の亡骸を抱え、『炎城ピレゴリウス』へと足を運ぶ二人であった。
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