攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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新章 NEO: Rebirth

Re:第十七話【道化と龍神と少年と】

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ここに一人の道化とかつて龍神と呼ばれた者が居た。

無機質な荒野を、二つの影が歩いていく。

「……何か食べますか?」

道化が静かに問いかける。

しかし、その隣を歩く影は何も応えない。ただ、無言のまま歩き続ける。

「…………」

(無視ですか。まぁ、それもいいでしょう)

道化は気にした様子もなく、仮面の下で小さく笑った。

やがて、そんな二人の前に、一人の少年が現れた。

「……止まりなさい、ハク」

道化が告げると、影――ハクと呼ばれた者が動きを止める。

そして、少年と対峙する。

「……君は?」

少年の瞳には、まだ純粋な光が宿っていた。

「僕はアスフィ……です」

「……ほう、アスフィ……アスフィ・シーネットですか」

道化の口元が、仮面の下で微かに歪む。

「え……そうです……けど。なぜ僕の名前を?」

少年――アスフィは、戸惑いを隠せずにいた。

その問いに、道化は内心で思考を巡らせる。

(……この様子だと、混じる前の純粋なアスフィ・シーネットのようですね。となると、誰かがアスフィ・シーネットを連れて行った?成長する前のまだ幼い……いや、赤ん坊の時からでしょうか)

目の前の少年は、彼が知る"アスフィ"とは異なっていた。

何かが違う。

まるで、"別の可能性"を歩んだ者のように――。

「……あの、あなたは?」

「私は道化」

「どう……け? それがあなたの名前ですか?」

「そうです。それよりも少年、どうしてこんなところへ? それに、そのフードは……?」

「……先生に怒られちゃいました。……このフードはその先生に頂いたものです」

「そう……ですか。その先生とやらの名前は?」

「えっと……確か……カエデ? と聞いたことがあります。僕も詳しくは知りません。先生は……自分のことをあまり喋らない人でしたから」

(なるほど、ルクスですか。何がしたかったのでしょうか。彼女の意図が読めない)

道化の目が細められる。

それは興味と警戒が入り混じった、静かな眼差しだった。

やがて、彼はゆっくりと仮面に手をかけ、それを外した。

「……この仮面は、この世界に貴方が複数生まれるのを防ぐために着用しているものです。今のあなたには分からないでしょうけれど」

「僕が……複数?」

「ええ、そうです。貴方が元凶、すべての始まり。ですから彼女……あなたの先生はそうならない為に、予めそのタネを摘んでおいたのでしょう。開花するのを回避するために……まぁ、今の君に言っても仕方ありませんが」

道化の声には、どこか諦めと嘲笑が混じっていた。

少年は、そんな彼をまっすぐに見つめながら呟く。

「その顔、どうしたんですか?」

「……これは、歴戦の傷跡です」

道化はニチャリと笑った。

「……と、カッコよく言いたいところですが。これはそうですね……”後悔の執念”に取り憑かれた道化の証です」

過去を背負う者の微笑みだった。

けれど、その微笑みの裏には、深い闇が渦巻いていた。

「まだ……痛みますか?」

少年の言葉に、一瞬だけ道化の目が揺れる。

(やはり嫌いだ……アスフィ・シーネット)

その無垢な瞳。純粋すぎる問いかけ。  
まるで、過去の誰かが目の前にいるようで――。

「行きますよ、ハク」

道化は、まるで振り払うかのように立ち上がり、歩き出した。

「…………」

ハクは無言でその後をついていく。

だが、次の瞬間――。

「……ハク、何をしているのです」

静寂を破ったのは、ハクの言葉だった。

「この子、連れて……いきます」

龍神ハクが、ここに来て初めて口を開いた。

「……そうですか。勝手になさい」

道化は、ため息をつきながら肩をすくめる。

(またタチが悪いものを私は拾ってしまった……ハクといい、この少年といい。なんの因果なのか)

けれど、彼の歩みは止まらない。

かつて龍神と呼ばれた者と、純粋な少年アスフィと共に。

新たな"歪な道"を歩み始める。

そして――。

道化の視線が、遠くを見つめる。

「さて、我が妻……レイラ」

その名を呼ぶ声は、静かで、どこか切ないものだった。

「今助ける。待っていて下さい」

――これは、過ちを繰り返さないための"再演"。

それがどのような結末を迎えるのかは、誰にも分からない。

ただ、道化は仮面を外した。

この世界でそれが何を意味するのかは、まだ未知数のまま――。
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