攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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新章 第二幕 【NEO: Divergence】

Re:第二十五話「マキ&スドウ」

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──そして時間は少し戻る。

「おい見ろ、マキ!」

「どうしたのスドウくん」

 マキとスドウ。制服姿の二人組は、ゼウス・マキナを探し、この奇妙な世界を正すために行動していた。

 そうは言っても、今の二人は心許ない存在だった。  
 かつて持っていた力も、今はない。  
 制服姿でただ歩くしかない、無力な少年と少女にすぎない。

 それでも、どこか呑気な空気が流れていた。

「これって……」

「足跡、だな。それも人間のものじゃない……まさかとは思っていたが」

 スドウの声に、マキは素直に首をかしげる。

「どういうこと?」

「……魔獣がいるってことだよ」

「そうなんだ」

 あまりにあっさりとした反応に、スドウは肩を落とす。

「そうなんだ、じゃねえよ……」

 無邪気なマキに、思わず呆れを隠せない。  
 だが、そんなやり取りもこの二人らしかった。

「だって我……じゃなくて、私が居るから問題ないよ」

「……はぁ。お前は相変わらずだな。……今の自分の姿、ちゃんと見てみろ」

 言われてマキは自分を見下ろした。

 制服。  
 それが今の彼女たちのすべてだった。

「目が回った」

「……制服なんだよ、俺たち。だから、多分……力は無い」

 静かにスドウは現実を突きつける。

「え?それってもうビリビリ出せないの?」

(お前の中ではあれ、ビリビリだったのかよ……)

 思わず心の中でツッコミを入れる。

「そうだ。ビリビリも、飛行も無理。つまり移動手段は……徒歩ってわけだ」

「面倒だね」

「そうだな。面倒で済めばいいが……ただの人間が魔物や魔獣に勝てると思うか?」

(……勝ててゴブリン一匹ってところだ)

「……無理かな」

「詰みだな。……俺たちは元々、そういう人間だ。今までが異常だっただけだ」

 スドウの言葉は現実的だった。

 それでもマキは、屈託のない笑顔で言った。

「でも、須藤スドウ 剣一ケンイチ。なら出来る」

「何を根拠に──」

「須藤剣一の剣術は“世界が与えたものじゃない”」

「──っ」

 その一言は、スドウの胸に刺さる。

(俺の剣は……この世界の理を超えている?)

 そう、どこかで自分でも理解していた。

「正直、一般人相手なら勝てるが、魔獣相手じゃどうなるか分からねぇ。……残念だがな」

「ううん、スドウくんならいける」

 両手でガッツポーズをとるマキ。

 スドウはその無邪気さに苦笑した。

「…………はぁ。お前には敵わねぇよ」

 そう言いつつ、彼は近くに落ちていた木の棒を拾い上げる。

(竹刀にしては脆い……だが)

 彼は迷わず振り下ろした。

「ハッ!」

 軽い音と共に、木の棒はあっさりと折れた。

「…………やっぱりな」

 スドウは苦笑するしかない。

 そんな彼を見て、マキは無邪気に拍手を送った。

(賞賛か?いや……バカにされてるよな、これ)

「こんなんじゃダメだ」

「でも、腕は鈍ってない。いい感じだったよ」

「……まぁな」

 少し照れ臭そうに、スドウは頭を掻く。

「ここってどの辺りなんだろうね」

「分からねぇ。今までの世界とは違う。……何かがおかしい」

 彼はふと、足元を見た。  
 草木は枯れ、空気は澱んでいる。まるで世界そのものが狂っているかのようだった。

(理が反転しているかも……だなんて、マキには言えねぇな)

「とにかく、じっとしてても仕方ねぇ。行くぞ、マキ」

「どこに?」

「……誰かいないか、とか」

「なるほど。人探しだね」

 二人は並んで歩き出した。

 足元を踏みしめる音だけが、静寂に響く。

 無力で、頼りない旅。それでも、止まる理由はなかった。

---

 やがて、彼らは辿り着く。

「……これって」

「どうしたの、スドウくん」

 スドウの前に現れたそれは、どこか見覚えのある光景だった。

「…………ミスタリス城じゃねぇか」

 二人の眼前にそびえ立っていたのは──  
 どこかの魔王嬢が創り上げた、本物に酷似した偽物の城だった。

 しかし偽物であろうと、その威容は圧倒的だった。  
 異様な存在感が、二人を無言のまま立ち尽くさせる。

(本当に……どうなってやがる)

 スドウは心の中で呟いた。

 マキとスドウ。  
 二人の小さな歩みは、否応なくこの世界の核心へと踏み込んでいく──。
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