引きこもりってダメですか?~転生して強いけど私は引きこもりたいのです~

砂糖漬け

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1章

8話 師との対決と再会

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…とは言ったものの、どうしたらいいのか全くわからない。
目の前の人を倒すために私はどう動けばいいのか。
ここで必要なのは恐らく経験。
私はそれが全くない。
対してあちらは賢者であるから戦闘…戦闘…するのだろうか…?
いや、勝ったら名前教えてあげると言っていた。
それは自信なのではないか?
自分が勝てるという絶対的な自信。
それがあるから…って、今考えている場合じゃない。
賢者さ…もういいや、先生って呼ぼ。
先生を倒すイメージ…うーん…まあ、やんないとわかんないし。
教えてもらったことを最大限活かせれば、多分勝てる。
多分ね。

「かかっておいで。僕に君の強さを見せて…!」

まずは…刀をどう扱えばいいんだろう。
刀なんてゲームの中でしか…。
それを思い出せばいいのか。
だからといってうまくできる気がしないが。
…よし、やってみよう。

「ふぅ…っ…いきます!」

先生との距離は3m程。
それを一気に蹴るように走る。
そして真正面から刀を振るう。
…だが、それは空を切るだけだった。
先生は音もなく刀を避け、距離をとった。

「そんなもの?…転生者ってこんなもの?」

がっかりってこと…か。
そりゃあ刀なんて握ったことがないもの。
ゲームの中では現実での経験も何も必要ないから。
なら、今、私が勝つために使えるものを、この力を──。

「先生…あなたがどれほど強いのか、それは今はまだわからない」

「先生…?えっ?…」

「だけど、私にも意地があるんだ。…もう、弱い自分でいたくない。なにか見えないものに恐れる自分でいたくない…!」

「………わかった。僕もやるからには本気でいくよ」

魔法もそうだけど、とっておきがあるんだよ、先生。
幻想の力──《水簾華すいれんか

幻想の力は思いを形にする。
つまり、思えばいい。
イメージできればいい。
それなら、少し得意だ。

幻想の力を発動した。
先生の真上から水が、滝が現れた。
その滝には大小様々な華が流れる。
その華は普通の華ではない。
見た目は同じだが、硬いのだ、すごく。
その花びらも同様だ。

「な…!?…んんん!?」

「水簾は滝の異称。滝は水が落ちているところのことをいう。その滝の勢いをイメージすればいい」

そして、その滝の勢いの中に華は身を任せる。
流れにのって。
私の力、水簾華の華は滝の中では凶器となる。
滝にのまれればそこを出ない限り、華が対象を痛め続ける。
既に先生の頬や体には線状の傷がある。
血が出ているのがなんだかあまり良い気はしない。

「んんっ…」

水中では呼吸ができない。
確か息を止めて約2分が普通の人の限界だったかな。

先生は滝の中で色々な魔法を使い、出ようとしている。
こんな状況で冷静に判断できる方がすごいと思うが。
…結界、張ってみようかな。
出られないように。
念には念を、ってこういうことじゃないのか?
…やってみよう。
先生に結界の張り方も教わった。
耐久には自信がある。

この結界は防御結界などではなく、封印結界に近い。
違いは張る側が入っているかとか、その状況による。

「先生。まいったって言えばいいんです。そうすれば終わります。…終わるんです」

先生に声をかける。
先生は小さく笑って頷いた。
それと同時に結界を解き、水簾華は私の意思によって消えていった。

「ゴホッ……いやぁ、弟子に負けるとか師匠である以前に賢者として顔が立たないよ。それにしても、すごいね、今の」

「ありがとうございます。シルがくれた力なんです。…まあ結局刀使ってないですけど」

「いや、何を使うかなんて関係ないんだよ。自分のできることをどうすればいいのか、それを考えられるだけで意味はあった」

『………』

確かに。
それを考えないのと考えるのはだいぶ違う。
なるほど、先生はそれを教えるために…賢者である理由もわかる気がする。
今更感あるけど。

「先生、なにか私に言うことがあるんじゃありませんでしたっけ…?」

「えっ?…あっ…うん…名前ね」

名前を教えるとか言いながら教えなかったら嫌いになりますので。
ええ。

「……僕の名前は…」

ーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、レイカ!どうだった?」

隣を見るとメリスがいた。
だが、過ごした時間が違う。
こちらは1ヶ月過ごし、メリス達は一瞬…か。
すごいな…先生。

先生が元の場所へ戻すよと言っていたので私も覚えたからやってみたいと言ったが、
これは僕が発動した結界だから実力差がそっちの方が高くて幅広くないと無理、と言われた。
なんか腹立つ。
だが、あの戦った時のは本当は先生の本気ではないのだと思う。
いつか、先生の本気を見てみたい。
…一応刀は返しておいた。
律儀だねと言われた。

「なかなかあれだった…ね」

「なにそれ…賢者様?レイカに酷いこと…あれ?なにそのひどい傷!?」

あ…と、まるで忘れていたかのように反応した先生。
見る限りでは痛そうだ。
早く治療をしなくては。

「先生。経験って大事ですよね…?」

「え…?う、うん…」

「では…その傷、治療させてください。というか、魔法使わせてください」

「そうか!…教えたんですよね?ならやらせてあげたらいいんじゃないですか?賢者様?」

「はあ…姫様はこれだから…」

『傷をつけた本人がその傷を治す…か~。なんだか面白いね』

なんやかんやで了承してもらい、治癒魔法を使う。
集中しようと目を閉じる。
魔力が体全体から手へ流れていく。
手を先生へ向け、傷が治っていくイメージをする。
結局は魔法もイメージが大事なんだ。

「すごいよ、レイカ。賢者様の傷が治っていく」

そして治りきったという感覚がして魔法を解き、目を開ける。
服はそのままだが、体の傷は治っている。
成功したとわかり、体の力が抜け、ソファーに座る。

「ありがとう。こんなに早く治せるならすぐに、僕、追い越されちゃうなぁ」

そう言って苦笑いする先生。
だがその顔はなんだか嬉しそうだ。

「………」

「あっ!ルリア、どこに行くの?」

ルリアさんの方を見ると出口の扉を開けようとドアノブに手をかけていた。

「いえ、私はいなくてもいいと判断しました。ここは片付きましたし…」

行ってしまうのか。
でも、ルリアさんに対して疑問に思うことがある。
それを晴らしたい。
前の私はそれすら躊躇っていた。
聞いたらこう思われるのでは、とか思って。
思うこと自体悪いことではないのかもしれないが。
でも、ほんの少しだけ、先生に勝って変われた気がするから。

「あの…!ルリアさんって、何者なんですか…?」

「…よく、気づきましたね。人とは違うと。私は、精霊ですよ。レイカ様」

「精霊…精霊!?この世界には精霊がいるんですか!?」

「は、はい…」

精霊か。
さすが異世界だ。
こういうところもしっかりしてる。

「よければ精霊の里へご案内いたしましょうか?」

「…?ルリア、精霊の里ってそんな簡単に招いちゃダメなんじゃなかった?」

「ええ、左様でございます。ですが、賢者様と幾日か過ごされたのでしょう?それで賢者様が警戒を解いている。なれば信用しないというのも失礼ではありませんか」

へえ…信用してくれていると…。
ありがたやー、せんせー。

「あ、でも今は行きたいところができたから…そっちを先にしたいです」

あ…失礼だったかな…。
やばい、失敗したかもしれない。
私は慌てて「いえ!行きたくない訳ではなく、後々行かせてください!…楽しみなので…」と訂正する。

「そうですか…なら…里長様には私から伝えておきましょう。それでいつでも都合がいい時に行けますし…どうですか?」

「はい…!お願いします!」

よかった。
怒ってる感じじゃなかった。
だけど悲しそうな顔をさせてしまった。
美人の顔に。
…美人の顔に。

「ねえ…次に行くところ決まってるみたいだけど…どこに行くの?」

メリスが聞いてきた。
それは…

「それは、和国だよ」

ーーーーーーーーーーーーーーー

「目立ちたくないからって…いいの?裏口からお別れなんて」

今いるここは白の裏口。
メリスが言った通り、目立ちたくないから少し無理を言った。
でも堂々と王女様と一緒に出てくると目立つだろう。
とても。

「ここにして欲しかったから。…ありがとう、メリス。私、メリスに会えてよかった」

前の世界では私を信じてくれた人はあまりいなかったから、嬉しいんだ。
ああ、泣きそ。
せっかく会えたのに。
でも、ここにいたらどうせ何も始まらない。
それに当分は住むための家が必要だろうし。
この国はいい国だと思う。
でも、いくら前の世界では休日引きこもってばっかりだったとしても、ここは居場所ではないから、住むことは…まだできないかな。
もう迷惑かけたくないし。

「もう…そういうこと言っちゃえば…離れたくなくなる…」

「あはは…」

メリスが抱きしめてきた。
こんなに可愛いのに、王家だから威厳見せなくちゃならないんだろうな。
そこはルリアさんに任せよう。
今までやってきたんだろうし…得意そう。
慰めたりなんだりするのが。

「他の国でも、頑張ってください」

「ありがとうございます。ルリアさん」

メリスはゆっくり離れて、ルリアさんの方へ寄った。

「重荷になると思って言わないようにしてたけど、言う。また、会いに来て。私、1日しか…その半分しか話したりしてないんだよ?」

「そう、だね。会いに行くよ。きっと」

先生の方を向く。

「先生…いえ、今くらいは、こう呼ばせてください」

耳元に近づき、「ロイエ先生」と言った。
すると先生は顔を逸らして、耳が赤いのがわかった。

「っ!…不意打ちは…ずるい…」

気を取り直して…と顔をこちらに向けた。

「レイカ。僕からは…1つ、お節介かもしれないけど…」

先生は、裏口の扉を見た。
そういえば先生はここに来る途中、「用事があるから先に行ってて、追いかけるから」とか言ってどこかへ行っていた。
その時にシルも元の体の方に戻って、ついて行っていた。
今はピアスの方に入っているが。
なんだろうか?

扉はギィーとなり、そこにいたのは。
青髪で、黒の瞳をした──

「え……どうし、て……」

「…レイカにとっては…久しぶり、なのかな。いやー、レイカも死んじゃってるとは思わなかっ…」

「………」

その人を抱きしめると、温かかった。
今はそれしか浮かばない。
色々言うことはあるんだろうけど…まず、

「ごめん…ごめんね…」



──ユキ
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