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修学旅行の英雄譚 Ⅱ

File.XX2 Last passage in the massage

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「結斗……また会えるのか……」
一度別れ二度と会うことは無いと思っていた親友に会えると思うと心が弾む。しかしそれもすぐに冷めてしまった。
俺はあいつを置いて逃げ出した身、そんな俺があいつと会う権利があるのだろうか?
「あいつは俺を許してくれるだろうか……」
部屋の窓から空を眺めながら、彼の隣に並んで歩く自分を想像する、それだけで口元が緩む。
窓を閉めてカーテンも閉じる。眠りにつくためにベットに入り、携帯を開いてメールを確認する。
普段は一度読んだメールはすぐに消去するがあるメールにだけピンがとめられている。このメールを読むたびに自分も人のことが言えないなと思う。
今日は誰からもメールは来ていない。あるのはそのメールだけ。

『最後に、娘にすまなかったと伝えておいてくれ──』

「ダメですよ氷翠さん。あんた達は家族なんだ、俺が持ってないもの持っておいてそれを無駄にするんですか?伝えたいことは、自分の口からですよ……」
携帯の電源を落として布団を被る。
明日からは今日より覚悟を持たなければいけない。でも、今くらいはゆっくりしてもいいのかもな……。
おやすみ───。
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