【R-15】【二章完結】世界最強の爆乳魔術師のお姉さんは今後生涯、最愛の少年ご主人様の奴隷です

こころ さづき

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第一章:世界最強の魔術師と隷属の首輪

012 花飾りの射手

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 帝国の東方、国境付近の森の中。帝国軍の一隊が、鬱蒼と生い茂る木々の間を、重苦しい足取りで進んでいた。彼らは、先の戦争により獲得した、新たな領土の視察と調査を任されている部隊の一つであり、かつてとある狩猟民族の集落の殲滅作戦にも参加していた。

「この辺りに来るとあの時の任務を思い出すな…しっかし、あの狩猟民族の抵抗は、凄まじかったな…」

 兵士の一人が、吐き捨てるように言った。冗談目かして話してはいるが、その顔には、うっすらと未だ消えない恐怖の色が浮かんでいる。

「ああ、特にあの女…族長の娘だとか言ったか?矢を射る度に、俺たちの仲間が、面白いぐらいに、バタバタと倒れていきやがった」

 別の兵士が、軽く身震いしながら答えた。あの狩猟民族との戦いは、数多くの戦闘に参加した経験のある、彼らにとっても、で強く記憶に残る任務であった。

「隊長も、あの女には、ずいぶんと苦戦していましたな」

「バカ言え、最後はちゃんとオレが仕留めただろうが!…それよりお前、あれだけの上玉はイルミナの娼館でもそうそう見かけなかったぜ、こう言っちゃあ死んだ奴らには悪いが、あそこで処分してしまったのは正直もったいなかったぜ」

 兵士たちが戦闘終了後に訪れた、のことを思い出し、下卑た笑いを漏らした、その時だった。

 ひゅん…!

 どこからか、一本の矢が飛来し、先頭を歩いていた兵士の喉を、正確に貫いた。

「…え…?」

 矢を受けた兵士は、信じられないといった表情で、自らの喉を押さえた。声にならない声が漏れ、血の気が失せていき、その場に崩れ落ちる。

「な、何だ…!?」

 兵士たちは、突然の出来事に、一瞬、何が起こったのか理解できなかった。しかし、次の瞬間、彼らは、その答えを目の当たりにする。

 木々の陰から、静かに姿を現したのは、青白い肌をした、美しい女だった。頭には青白い肌とは対照的な赤い花飾り、その手には、黒く輝く弓が握られ、虚ろな瞳には、深い絶望と憎悪が宿っているように見えた。

「貴様…!まさか…!?」

 兵士の一人が、恐怖に引き攣った声で叫んだ。その顔は、先ほどまでとは打って変わり、青ざめている。

「…ジールの…族長の娘…!?」

 彼らは、その女に見覚えがあった。いや、忘れられるはずがなかった。ジールで最も激しく抵抗し、そして、自分たちが手にかけた、あの狩猟民族の女…。

「死んだはずじゃ…、まさか死霊…」

 誰かが、震える声で呟いた。しかし、その言葉は、次の瞬間には、女が放った二本目の矢によって遮られた。矢は、呟いた兵士の心臓を正確に貫き、即死させた。

「う、うわああああ!」

「バ、バケモノだ!バケモノが出るぞ!!」

 帝国軍の兵士たちは、パニックに陥った。彼らは、ジールでの戦いで、多くの命を奪ってきた。しかし、死の恐怖を、これほどまでに強く感じたことはなかった。

「取り乱すなっ!殺せ…!殺せ…!」

 隊長が、狂ったように叫ぶ。しかし、兵士たちは、恐怖に竦み上がり、まともに戦うことができない。

 女は、表情一つ変えずに、次々と矢を放つ。その矢は、正確無比に、兵士たちの急所を貫いていく。

「う…そだ…こん…な…」

「い、いやだ、痛い、助け…」

 兵士たちの断末魔の叫びが、森の中に響き渡る。それは、かつてジールの村に響き渡った悲鳴と、どこか重なって聞こえた。

 女は、まるで死神のように、冷酷に、そして無慈悲に、帝国軍の兵士たちを屠っていく。

 その瞳の奥には、復讐の紅い炎が、激しく燃え盛っていた。この世から全ての帝国兵が滅びるまで、その炎が消えることはないだろう…。


 ---


 イルミナの冒険者ギルドに、いつもとは違う、緊張した空気が流れていた。屈強な冒険者たちが、固唾を飲んで、掲示板に貼り出された一枚の依頼書を見つめている。

「…帝国からの、依頼だと…?」

「ああ…それも、Aランク指定だ…」

「…いったい、何が起こっているんだ…?」

 冒険者たちの間に、困惑と不安が広がっていく。

 イルミナの街は、確かに帝国領に属してはいる。しかし、冒険者ギルドは、基本的に、どの国にも属さない、中立的な組織だ。依頼の斡旋に、国境や国際情勢が影響することは、ほとんどない。そのギルドに、帝国が、直接依頼を出してきた。それだけでも、異例の事態だった。

「…ギルドマスターが、お呼びだ…」

 一人の冒険者が、重々しく言った。

「…至急、Aランク以上の冒険者は、会議室に集合とのことだ…」

「…何が、始まるんだ…」

 冒険者たちは、互いに顔を見合わせながら、会議室へと向かった。

 会議室には、ギルドマスターと、イルミナ支部に所属するAランク以上の冒険者たちが集まっていた。その中には、ガイルとセレスティアの姿もあった。

「…皆、集まったな…」

 ギルドマスターは、冒険者たちを見回しながら、重々しく口を開いた。

「…早速だが、今回の依頼について、説明する…」

 ギルドマスターは、一枚の羊皮紙を、テーブルの上に広げた。そこには、帝国の紋章が、はっきりと刻印されていた。

「…依頼主は、帝国…」

「…内容は、最近、帝国軍を脅かしている、謎の死霊の討伐だ…」

「…死霊…?」

 冒険者たちが、ざわつき始めた。

「…ああ。その死霊は、異常なまでの力を持っているらしい…」

 ギルドマスターは、冒険者たちの反応には構わず、話を続けた。

「…すでに、多くの帝国兵が、犠牲になっている…」

「…!」

 その言葉に、冒険者たちは、息を呑んだ。帝国は強大な軍事力を背景に、この大陸で最大の領土を支配している。帝国軍といえば、精強な兵士を数多く擁することで有名だ。その帝国軍が、無視できないレベルの被害を受けているとなると、相手は、相当な強敵であることは間違いない。

「…その死霊は、『花飾りの射手』と呼ばれている…」

「…花飾りの射手…?」

 ガイルは、その名前を聞いて、かすかな違和感を覚えた。

「…ああ。その名の通り、驚異的な弓の使い手らしい…」

「…弓の使い手…」

 ガイルは、さらに深い、嫌な予感を覚えた。

「…そして、これが、その死霊の、討伐依頼書だ…」

 ギルドマスターは、そう言いながら、もう一枚の羊皮紙を、テーブルの上に広げた。そこには、不気味な雰囲気を纏った、女が黒い弓を構えている、抽象的な絵が描かれていた。顔立ちも、一切分からないが頭には赤い花飾りが描かれていた。

「…!」

 この絵を見た瞬間、ガイルの脳裏に、遠い記憶が蘇った。

 ―…『ふふ、この花、綺麗でしょ?これはカヤって言うんだよ、そう、私と同じ名前なんだ…』…

 幼き頃のガイルの憧憬の眼差しに優しく微笑む、幼き少女。その両手には、鮮やかな赤い花。

 ガイルは、その絵を見て、強い衝撃を受けた。具体的な姿は描かれていないにも関わらず、それが、自分の探すべき存在だと、理解した。

「…この…存在に、心当たりがある者はいるか…?」

 ギルドマスターが、冒険者たちに、問いかける。しかし、誰も、答える者はいなかった。

「…まあ、当然か…」

 ギルドマスターは、そう言いながら、ため息をついた。

「…この『花飾りの射手』に関する情報は、ほとんどない。こちら側で現状分かっているのは、生者ではなく死霊であることと、驚異的な弓の使い手である、ということだけだ…」

「………」

 ガイルは、何も言えなかった。

「…この依頼、危険すぎる…」

「…ああ、報酬は莫大だが、命の保証はないぞ…」

 冒険者たちは、口々に、そう言い始めた。

「…しかし、このまま放置しておくわけにはいかない…」

 ギルドマスターは、冒険者たちの不安の声を、遮るように、そう言った。

「…誰か、この依頼を受ける者はいるか…?」

 会議室は、重苦しい沈黙に包まれた。誰もが、危険な任務に、尻込みしていた。

「…俺が、やります…」

 その時、静寂を切り裂くように、一人の男の声が響いた。

「…ガイル…?」

 セレスティアは、驚いた表情で、ガイルを見つめた。

「…お前、本気か…?」

 ギルドマスターが、ガイルに、問いかける。

「…はい。この依頼、俺が、引き受けます…」

 ガイルは、真っ直ぐに、ギルドマスターの目を見つめながら、そう答えた。

「…しかし、これは、Aランク任務だぞ…?お前は、まだ、Bランクに上がったばかりだろう…」

「…それでも、俺が、やってみたいんです…」

 ガイルは、そう言いながら、拳を固く握りしめた。

「…分かった。お前の覚悟、見届けたぞ…セレスティア様と一緒であれば問題ないかも知れないが、気を付けろよ、必要なサポートがあれば遠慮なく相談してくれ」

 ギルドマスターは、そう言うと、ガイルに、依頼書を手渡した。

 ガイルは、手を震えているのを感じながら依頼書を受け取った。

「…ご主人様、本気なのですか…?」

 会議室を出た後、セレスティアが、心配そうな表情で、ガイルに尋ねた。

 ガイルからの返事はない。

「…ご主人様、どうかされましたか?」

 セレスティアが、心配そうにガイルの顔を覗き込む。

「…いや…」

 ガイルは、首を横に振り、意識を現実へと引き戻した。

 ガイルの脳裏には、あの抽象的な絵が、はっきりと焼き付いていた。そして、その絵から感じた、強烈なものが、彼の心を、ざわつかせていた。


 ---


 依頼を受けたガイルとセレスティアは、二人きりで、今後の対策を練るために、いつもの宿屋の一室へと戻ってきた。

「…しかし、本当に、手がかりが少なすぎますわね…」

 二人は討伐依頼書を眺めながら、難しい表情を浮かべた。依頼書には、『花飾りの射手』と呼ばれる、謎の死霊の討伐が命じられているだけで、ギルドマスターの話にもあった通り、具体的な情報といえば、弓の使い手であるということと、頭に赤い花の髪飾りをつけているという、外見的な特徴、その存在を現す絵のみ。それ以外のことは、一切書かれていなかった。

「…ええ。具体的な姿も死霊としての特性も分からない。これでは、討伐はおろか、探し出すこと自体も、容易ではありませんわね…」

「…」

 ガイルは、深く考え込むように、腕を組んだ。

「…帝国軍といえば、精強な兵士を数多く擁することで有名です。その帝国軍が、太刀打ちできないとなると、相手は、よほどの使い手ですわね…しかし、なぜ、帝国は、わざわざ冒険者ギルドに、このような依頼を…?帝国にも死霊対策に長けた魔術師は居るでしょうし」

 セレスティアが、疑問を投げかける。

「…それは、おそらく…」

 ガイルは、そこで言葉を切り、複雑な表情を浮かべた。

「…この『花飾りの射手』は、帝国にとって特別な脅威なんだろう…」

「…特別な脅威、ですか…?確かに死霊は生前の怨念や憎悪などを動力源にすることが多く、帝国への強い恨みがあったのであれば…帝国にも何か心当たりがあるのかも知れませんわね」

「…ああ」

 ガイルは、そう言いながら、窓の外を見つめた。その瞳には、不安と疑念の色が浮かんでいた。

「…なあ、セレスティア」

 しばらくの沈黙の後、ガイルは、意を決したように、セレスティアに話しかけた。

「…はい、なんでしょう、ご主人様」

 セレスティアは、ガイルの方を向き、彼の言葉を待った。

「…確かに、この『花飾りの射手』は、危険な存在だ。多くの人々を、脅かしている…」

「…ええ」

「…だが、その『花飾りの射手』を討伐することが、本当に、正しいことなのか…」

「…」

「…俺には、分からないんだ…」

 ガイルは、苦悩に満ちた表情で、そう言った。

「…ご主人様は、『花飾りの射手』に、何か、特別な感情を抱いているのですか…?」

 セレスティアが、静かに尋ねた。

「…赤い花の髪飾り…あれには、覚えがあるんだ」

「覚え…?」

「ああ。俺の故郷…ジールでは、赤い花を、特別なものとして扱っていたんだ…」

 ガイルは、懐かしむように、遠くを見つめた。

「その中でも、特に鮮やかな赤色をした花は…『カヤ』と呼ばれていた」

「カヤ…」

「ああ。そして…」

 ガイルは、そこで言葉を切り、セレスティアの顔を見つめた。

「…俺の姉の名前も、『カヤ』っていうんだ…」

「…!」

 セレスティアは、驚いた表情で、ガイルを見つめた。

「…まだ、確証はない。でも、あの絵の雰囲気、赤い花飾り、尋常ではない弓の腕…もしかしたら、姉さんなんじゃないかって、思っているんだ…」

「…」

「…もし、本当に、姉さんだったら…俺は…」

 ガイルは、それ以上、言葉を続けることができなかった。

「…ご主人様…」

 セレスティアは、ガイルの気持ちを、痛いほど理解できた。

「…わたくしは、あなたの、忠実なる奴隷です。あなたに従うのが、わたくしの、全てですわ…」

 セレスティアは、そう言いながら、ガイルの手を、優しく握った。

「…しかし…」

「…?」

「…もし、『花飾りの射手』が、本当に、あなたの、お姉様だったとしたら…」

 セレスティアは、そこで言葉を切り、ガイルの瞳を、真っ直ぐに見つめた。

「…あなたは、お姉様と、戦うことができますか…?」

「…」

 ガイルは、セレスティアの言葉に、答えることができなかった。

「…わたくしには、分かりません。それが、正しいことなのか、どうか…」

「…」

「…でも、一つだけ、確かなことがあります…」

「…なんだ…?」

「…わたくしは、どんな時でも、あなたの味方ですわ。あなたが、どのような決断をしようとも、わたくしは、持てる知識、使える技術、それらを駆使して全身全霊を持って、ご主人様の願いが叶うよう、支えます…」

「…セレスティア…」

 ガイルは、セレスティアの言葉に、胸が締め付けられるような思いがした。

「…ありがとう、セレスティア…」

 ガイルは、そう言って、セレスティアの手を、力強く握り返した。

「…今はまだ、どうすればいいのか、分からない。でも、必ず、答えを見つけ出す…」

「…ええ、ご主人様。わたくしも、あなたと共に…」

 二人は、固く、誓い合った。
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