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099:ギルド長1
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倉庫に並べられたレッサーウルフを確認したゼンさんは、他の担当者に買い取り査定の作業を任せると上司に報告する為、倉庫を出ていった。
「いや~、突然この数だとちょっと処理が間に合わないですよ~」
ゼンさんの代わりにレッサーウルフの状態を査定していた、若い女性職員が困ったように呟いた。
「臨時のお手伝いさん増やしたいんだけど、安定してお仕事出せないからなかなか応募もないんですよね~」なんだか、徐々に仕事の愚痴になってきている。
「臨時のお手伝いさんって、誰でも構わないんですか?」査定の様子を興味深げに眺めていたティムが尋ねた。
「皮の処理経験があれば特に条件とかは無いですね」女性職員のその言葉を聞いたティムは、「ルナ、ポーチに処理済みのレッサーラビットの革を持ってたよね?」
ルナは最近の狩りで倒した獲物の革をポーチに預かっていたらしく、慌てて取り出すとティムに手渡した。
「これ、うちの孤児院の者が処理したんですけど、もし問題無ければレッサーウルフの処理の手伝いに連れて来たいんですけど?」
どうやらティムは、孤児院の子達に現場での経験を積ませたいようだ。
「へえ~、上手く処理出来てますね……何人くらい頼めますか?」どうやら見込みが有りそうらしい。
「四人は同じレベルの処理が出来ます」と勢い込んで答えた。
「今日から動けるなら助かりますね~、可能です?」彼女も相当困っていたのかもしれない即決で採用するつもりらしい。
「すぐ呼んできます、ユーリさんすいません! リーゼ、後の事はお願い」それだけ言うと凄い勢いで走っていってしまった。
取り残された形になってその必死さに驚いてしまった僕達だったが、ティムが一生懸命になる気持ちも理解できた。
孤児院の子達は皆、生きる力を身に付けたくて必死なのだ、ティムは年長者として責任感から何とかしようと頑張っているのだ。
「ユーリ! 一緒に来てくれギルド長が直接話したいらしい」現れたゼンさんがそう告げたのだった。
◻ ◼ ◻
案内された部屋はギルドの二階にある豪華な応接室だった。中で待っていたのは、四十代くらいの美しい女性ともう一人は受付のマリアさんだった。
「案内ありがとう、ゼン、職務に戻って貰って構わないわ」そう女性が指示を出したので、ゼンさんは黙って一礼しその場を去っていった。
「初めまして、私がガザフ探索者ギルドのギルド長をしているレイラよ、よろしく」
僕達は前のソファーを勧められ並んで座った。この場には僕とルナそしてキャロもいる。
リーゼは残って納品作業をしながら、ティムを待つらしい。厄介な話し合いより、他の孤児達の作業が気になるようだ。
本当はルナやキャロも一緒に居たかったようだが、シルフィーがギルド長との話に参加したいとキャロに伝えたのだ。それで、キャロも一緒に来ることになりルナはキャロの付き添いでここにいる。
「ユーリです。この子達はルナとキャロです。実はキャロの契約精霊のシルフィーが参加したいと言ったので、付き添いのルナと一緒に連れて来ました」
呼ばれたのは僕だけだったので、付いてきた二人の理由ついて手短に説明した。
「そう、当事者なら構いません。状況の確認の意味でも証言は多いに越したことはありませんから……それにエルフィーデが絡んでいるのでしょう? なら精霊の意見を聞けるのは有難いですから」
(シルフィーはエルフィーデ出身の精霊じゃないんだけどね)
「では、改めて状況を説明して貰えますか? あなた方が確認した大群を率いているという魔物について」
僕は頷き、狩り場での状況を出来るだけ正確に説明したのだった。
「いや~、突然この数だとちょっと処理が間に合わないですよ~」
ゼンさんの代わりにレッサーウルフの状態を査定していた、若い女性職員が困ったように呟いた。
「臨時のお手伝いさん増やしたいんだけど、安定してお仕事出せないからなかなか応募もないんですよね~」なんだか、徐々に仕事の愚痴になってきている。
「臨時のお手伝いさんって、誰でも構わないんですか?」査定の様子を興味深げに眺めていたティムが尋ねた。
「皮の処理経験があれば特に条件とかは無いですね」女性職員のその言葉を聞いたティムは、「ルナ、ポーチに処理済みのレッサーラビットの革を持ってたよね?」
ルナは最近の狩りで倒した獲物の革をポーチに預かっていたらしく、慌てて取り出すとティムに手渡した。
「これ、うちの孤児院の者が処理したんですけど、もし問題無ければレッサーウルフの処理の手伝いに連れて来たいんですけど?」
どうやらティムは、孤児院の子達に現場での経験を積ませたいようだ。
「へえ~、上手く処理出来てますね……何人くらい頼めますか?」どうやら見込みが有りそうらしい。
「四人は同じレベルの処理が出来ます」と勢い込んで答えた。
「今日から動けるなら助かりますね~、可能です?」彼女も相当困っていたのかもしれない即決で採用するつもりらしい。
「すぐ呼んできます、ユーリさんすいません! リーゼ、後の事はお願い」それだけ言うと凄い勢いで走っていってしまった。
取り残された形になってその必死さに驚いてしまった僕達だったが、ティムが一生懸命になる気持ちも理解できた。
孤児院の子達は皆、生きる力を身に付けたくて必死なのだ、ティムは年長者として責任感から何とかしようと頑張っているのだ。
「ユーリ! 一緒に来てくれギルド長が直接話したいらしい」現れたゼンさんがそう告げたのだった。
◻ ◼ ◻
案内された部屋はギルドの二階にある豪華な応接室だった。中で待っていたのは、四十代くらいの美しい女性ともう一人は受付のマリアさんだった。
「案内ありがとう、ゼン、職務に戻って貰って構わないわ」そう女性が指示を出したので、ゼンさんは黙って一礼しその場を去っていった。
「初めまして、私がガザフ探索者ギルドのギルド長をしているレイラよ、よろしく」
僕達は前のソファーを勧められ並んで座った。この場には僕とルナそしてキャロもいる。
リーゼは残って納品作業をしながら、ティムを待つらしい。厄介な話し合いより、他の孤児達の作業が気になるようだ。
本当はルナやキャロも一緒に居たかったようだが、シルフィーがギルド長との話に参加したいとキャロに伝えたのだ。それで、キャロも一緒に来ることになりルナはキャロの付き添いでここにいる。
「ユーリです。この子達はルナとキャロです。実はキャロの契約精霊のシルフィーが参加したいと言ったので、付き添いのルナと一緒に連れて来ました」
呼ばれたのは僕だけだったので、付いてきた二人の理由ついて手短に説明した。
「そう、当事者なら構いません。状況の確認の意味でも証言は多いに越したことはありませんから……それにエルフィーデが絡んでいるのでしょう? なら精霊の意見を聞けるのは有難いですから」
(シルフィーはエルフィーデ出身の精霊じゃないんだけどね)
「では、改めて状況を説明して貰えますか? あなた方が確認した大群を率いているという魔物について」
僕は頷き、狩り場での状況を出来るだけ正確に説明したのだった。
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