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「わざわざマリア殿が派遣されたという事は、何が起きそうかという事はご存知だと考えてよろしいですか?」
それは細かな事前説明は必要なく、同じ目的の為に行動している事の確認だった。
「はい、端的に結論だけで結構です」
本来ならすぐにでも報告に戻りたいだろう任務中の者を、これ以上留めておく訳にもいかないのでマリアはそう答えた。
「分かりました。一番近くの拠点にて溢れの状態を確認し、現在も増加中と思われます。リサ様は現在、最奥のゴブリン最大拠点の状況調査に向かわれました。私はこのまま地上に戻りますがマリア殿はどうなさいますか?」
この情報だけでも戻ってレイラに報告すれば任務としては完了とも言えただろう。だが敵の規模がはっきりしない状況での報告に意味があるのかという想いもあった。
「僕がまずギルド長に報告してきます。その為の連絡要員ですよね」ティムが迷っているマリアの気持ちを察したようにそう言ってきた。
「お願いしますねティムさん。リサ殿の報告待ちになるでしょうが、敵の規模が知りたいですね……それに溢れの兆候があるという拠点の様子も気になります」
タリアの報告で現在も増加中というゴブリンの拠点の状況も気になっていたのだ。
「ゴブリンの拠点に今から向かわれるのは、あまりお勧め出来ません。ですが私も放置してきた拠点の状況が気になるのも事実です。もしどうしても十一層に向かわれるのでしたらユーリ殿の作られた防壁の拠点で調査隊を待たれるのが良いかもしれません」
タリアはリサの依頼で作られた土壁を利用した防衛拠点についてマリアに説明した。
「なるほど、ある意味、監視場所としては最適かもしれませんね。それにせっかく作った防衛拠点に誰も居ないのは現在の状況から考えて不味いかもしれません。すぐにでも向かう必要がありそうですね」
有事に於いて最前線にと準備された場所が人員不足で放置されている現状は決して好ましいものとは言えなかった。
「リサ様も追加の部隊が来る前提で調査の続行を決断されたのでしょう。マリア殿が先行していただけるなら私も安心できます……そろそろ行きませんと」
タリアはそう言うと、急ぎ報告の為に転移魔法陣の元に向かった。ティムもレイラへの報告の為に同行する事になった。
「我々も急ぎ向かいましょう」
マリアは残った三人に声を掛けるとユーリの作った防衛拠点に向け出発したのだった。
◻ ◼ ◻
マリアと三人がユーリの作った防衛拠点に到着した。かなり急いだ四人だったが拠点は特に変わった様子もなく無事なようだった。
「凄いね! 階段まであるよ!」
キャロが土壁の上に登れるようとユーリが作った、高さの違う土壁を重ねて階段のようにした物に登り周囲の様子を確認している。そのような階段が壁沿いに何ヵ所か設置されてる。
「キャロ、大丈夫? 落ちないように足下に気をつけて!」
壁に登っているキャロを見上げて心配そうにしていたルナだったが、見ていられなくなったのだろう自分も階段を登りキャロの側に立った。
「下から見ているより足場は広いのね」ルナは上に登ってみて下から見ているよりは落ちる危険が少ないので安心した。
「あそこにも少し大きな建物があるし、ニースちゃんとユーリの土魔法は凄いね! これなら魔物が来ても平気なんじゃない?」下からリーゼの感心したような声が響いた。
「問題があるすれば、この人が二人並んで通過できる広さのある隙間でしょうか? 恐らく溢れが発生した段階でユーリさんが土魔法で閉じるつもりなのでしょうね」
ユーリが通行用に残して行った土壁の隙間を見ながらマリアが呟いた。
「私達の何時も使っている盾で塞げないかな……二枚並べればなんとか」リーゼが孤児院製の盾を取り出して隙間に宛てて確認している。
「いっそのこと、侵入してくる敵ごと凍らせてしまいましょうか」
マリアがさらりと顎を撫でながら物騒な台詞を呟いた時――
「遠くから何か沢山やってくるよ!」壁の上からキャロの声が響いたのだった。
それは細かな事前説明は必要なく、同じ目的の為に行動している事の確認だった。
「はい、端的に結論だけで結構です」
本来ならすぐにでも報告に戻りたいだろう任務中の者を、これ以上留めておく訳にもいかないのでマリアはそう答えた。
「分かりました。一番近くの拠点にて溢れの状態を確認し、現在も増加中と思われます。リサ様は現在、最奥のゴブリン最大拠点の状況調査に向かわれました。私はこのまま地上に戻りますがマリア殿はどうなさいますか?」
この情報だけでも戻ってレイラに報告すれば任務としては完了とも言えただろう。だが敵の規模がはっきりしない状況での報告に意味があるのかという想いもあった。
「僕がまずギルド長に報告してきます。その為の連絡要員ですよね」ティムが迷っているマリアの気持ちを察したようにそう言ってきた。
「お願いしますねティムさん。リサ殿の報告待ちになるでしょうが、敵の規模が知りたいですね……それに溢れの兆候があるという拠点の様子も気になります」
タリアの報告で現在も増加中というゴブリンの拠点の状況も気になっていたのだ。
「ゴブリンの拠点に今から向かわれるのは、あまりお勧め出来ません。ですが私も放置してきた拠点の状況が気になるのも事実です。もしどうしても十一層に向かわれるのでしたらユーリ殿の作られた防壁の拠点で調査隊を待たれるのが良いかもしれません」
タリアはリサの依頼で作られた土壁を利用した防衛拠点についてマリアに説明した。
「なるほど、ある意味、監視場所としては最適かもしれませんね。それにせっかく作った防衛拠点に誰も居ないのは現在の状況から考えて不味いかもしれません。すぐにでも向かう必要がありそうですね」
有事に於いて最前線にと準備された場所が人員不足で放置されている現状は決して好ましいものとは言えなかった。
「リサ様も追加の部隊が来る前提で調査の続行を決断されたのでしょう。マリア殿が先行していただけるなら私も安心できます……そろそろ行きませんと」
タリアはそう言うと、急ぎ報告の為に転移魔法陣の元に向かった。ティムもレイラへの報告の為に同行する事になった。
「我々も急ぎ向かいましょう」
マリアは残った三人に声を掛けるとユーリの作った防衛拠点に向け出発したのだった。
◻ ◼ ◻
マリアと三人がユーリの作った防衛拠点に到着した。かなり急いだ四人だったが拠点は特に変わった様子もなく無事なようだった。
「凄いね! 階段まであるよ!」
キャロが土壁の上に登れるようとユーリが作った、高さの違う土壁を重ねて階段のようにした物に登り周囲の様子を確認している。そのような階段が壁沿いに何ヵ所か設置されてる。
「キャロ、大丈夫? 落ちないように足下に気をつけて!」
壁に登っているキャロを見上げて心配そうにしていたルナだったが、見ていられなくなったのだろう自分も階段を登りキャロの側に立った。
「下から見ているより足場は広いのね」ルナは上に登ってみて下から見ているよりは落ちる危険が少ないので安心した。
「あそこにも少し大きな建物があるし、ニースちゃんとユーリの土魔法は凄いね! これなら魔物が来ても平気なんじゃない?」下からリーゼの感心したような声が響いた。
「問題があるすれば、この人が二人並んで通過できる広さのある隙間でしょうか? 恐らく溢れが発生した段階でユーリさんが土魔法で閉じるつもりなのでしょうね」
ユーリが通行用に残して行った土壁の隙間を見ながらマリアが呟いた。
「私達の何時も使っている盾で塞げないかな……二枚並べればなんとか」リーゼが孤児院製の盾を取り出して隙間に宛てて確認している。
「いっそのこと、侵入してくる敵ごと凍らせてしまいましょうか」
マリアがさらりと顎を撫でながら物騒な台詞を呟いた時――
「遠くから何か沢山やってくるよ!」壁の上からキャロの声が響いたのだった。
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