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193:侵略者の落とし子
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鈍い音が響いたと思ったら、轟音と共に全面に設置していた土壁が砕けて倒された。
そして中から進み出て来たのは、黒い人のような姿をした者だった。だが形は人に似てはいたが、それは獣人族とも違う何か得体のしれない物を僕に感じさせた。
角や尻尾、黒い鱗に覆われたような皮膚もちろん其だけでも人間ではないと言えたのだが、何か根本的に相容れない物を目の前の存在からは発せられていたのだ。
『現在の人間どもを少々侮り過ぎたようだ。ゴブリンの群れを使って屍の山を築き、もう二つほど進化する予定であったのだが』
驚いた事に流暢に言葉を話し始めた。その雰囲気は僕の知る魔物とは違っていて上位精霊の威圧的な雰囲気さえあった。
その証拠に周囲には義勇軍やガザフの騎士達が居たのだが身動きもせず発せられる言葉に聞き入っている。
『敵対していたとはいえ、その姿も懐かしいものがあるな。ゴブリンの王から進化したにしては下級魔人止まりとはな。侵略者の落とし子……いや憐れな魔素の残滓とでも呼べば良いかな?』
ラルフさんの姿をした闇夜の精霊は、相対する相手の事を良く知っているようだ。そして強烈に皮肉っている事も、事の成り行きに動揺している僕にも理解出来た。
『ふん、貴様その憐れな姿からはすぐに分からなかったが、闇夜の精霊フェンリルの末裔か……貴様こそ、残滓と呼ぶべき憐れな存在よ』
話は終わったのだと分かった。闇夜の精霊がラルフさんの両手斧を取り出した。それも二本だった。
『落とし子よ、逃げ帰った憐れな侵略者どもの後を追わせてくれる。魔族の劣化品らしくな……』
(魔族? 劣化品?)
『その劣化品とやらにこの場で始末されるお前達はなんだ?』
そう言うとまた身体から黒い魔素が吹き出した。だがそれは防御膜を作る様子はなくて魔人の少し上空に黒い魔法陣のような物を描き、その魔法陣に魔素が吸い込まれていった。
そして魔法陣に手を突っ込んだ魔人が強引に何かを引きずり出した。
『ほー、魔人剣か……相変わらず不気味な姿だな』
確かに不気味な巨大な両手剣が姿を現した。その不吉な雰囲気の意匠だけでなく本当の意味で不気味だと感じたのは、その剣が生き物のように脈打っていたからだった。
『ちょっと古き同胞よ、魔人をこれ以上刺激するのはお止しなさい。あれが油断している間に倒すという考えはないのですか?』
この舌戦に割って入ったのはセルフィーナだった。上位精霊がまるでフィーネのような事を言っているのに驚いたが、相手は得体のしれない物なのだ油断している間に、少しでもダメージを与え有利に事を運ぶのは卑怯とは思わなかった。
『魔人とはいえ、奴は最下級の先触れに過ぎないのだぞ……その全力を退ける事も出来なければ、この先の敵の相手は務まるまいよ。それに……』
言葉を切って周囲にいる者達をみまわした。
『我が早々に警告してやらねば、この戦いは地上で起きておったであろうな……今の者達は危機感が足りぬようだ』
ラルフさんに囁いていた警告の事を言っているのだろう。僕もその事に関しては同意するしかなかった。
「確かに尤もな言い分ですじゃのう。ならばまずはワシが人間の代表として一太刀先鋒を務めさせていだきますわい」
そう言って両手剣を振りかぶると、恐るべき駿足の踏み込みで魔人に向かっていったのは、ニールセン老騎士だった。
そして中から進み出て来たのは、黒い人のような姿をした者だった。だが形は人に似てはいたが、それは獣人族とも違う何か得体のしれない物を僕に感じさせた。
角や尻尾、黒い鱗に覆われたような皮膚もちろん其だけでも人間ではないと言えたのだが、何か根本的に相容れない物を目の前の存在からは発せられていたのだ。
『現在の人間どもを少々侮り過ぎたようだ。ゴブリンの群れを使って屍の山を築き、もう二つほど進化する予定であったのだが』
驚いた事に流暢に言葉を話し始めた。その雰囲気は僕の知る魔物とは違っていて上位精霊の威圧的な雰囲気さえあった。
その証拠に周囲には義勇軍やガザフの騎士達が居たのだが身動きもせず発せられる言葉に聞き入っている。
『敵対していたとはいえ、その姿も懐かしいものがあるな。ゴブリンの王から進化したにしては下級魔人止まりとはな。侵略者の落とし子……いや憐れな魔素の残滓とでも呼べば良いかな?』
ラルフさんの姿をした闇夜の精霊は、相対する相手の事を良く知っているようだ。そして強烈に皮肉っている事も、事の成り行きに動揺している僕にも理解出来た。
『ふん、貴様その憐れな姿からはすぐに分からなかったが、闇夜の精霊フェンリルの末裔か……貴様こそ、残滓と呼ぶべき憐れな存在よ』
話は終わったのだと分かった。闇夜の精霊がラルフさんの両手斧を取り出した。それも二本だった。
『落とし子よ、逃げ帰った憐れな侵略者どもの後を追わせてくれる。魔族の劣化品らしくな……』
(魔族? 劣化品?)
『その劣化品とやらにこの場で始末されるお前達はなんだ?』
そう言うとまた身体から黒い魔素が吹き出した。だがそれは防御膜を作る様子はなくて魔人の少し上空に黒い魔法陣のような物を描き、その魔法陣に魔素が吸い込まれていった。
そして魔法陣に手を突っ込んだ魔人が強引に何かを引きずり出した。
『ほー、魔人剣か……相変わらず不気味な姿だな』
確かに不気味な巨大な両手剣が姿を現した。その不吉な雰囲気の意匠だけでなく本当の意味で不気味だと感じたのは、その剣が生き物のように脈打っていたからだった。
『ちょっと古き同胞よ、魔人をこれ以上刺激するのはお止しなさい。あれが油断している間に倒すという考えはないのですか?』
この舌戦に割って入ったのはセルフィーナだった。上位精霊がまるでフィーネのような事を言っているのに驚いたが、相手は得体のしれない物なのだ油断している間に、少しでもダメージを与え有利に事を運ぶのは卑怯とは思わなかった。
『魔人とはいえ、奴は最下級の先触れに過ぎないのだぞ……その全力を退ける事も出来なければ、この先の敵の相手は務まるまいよ。それに……』
言葉を切って周囲にいる者達をみまわした。
『我が早々に警告してやらねば、この戦いは地上で起きておったであろうな……今の者達は危機感が足りぬようだ』
ラルフさんに囁いていた警告の事を言っているのだろう。僕もその事に関しては同意するしかなかった。
「確かに尤もな言い分ですじゃのう。ならばまずはワシが人間の代表として一太刀先鋒を務めさせていだきますわい」
そう言って両手剣を振りかぶると、恐るべき駿足の踏み込みで魔人に向かっていったのは、ニールセン老騎士だった。
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