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農協の平和は世界の幸せ 中編
「メラニー嬢は、来年王立学園に入学するんでしたよね」
「そうだ! だから学園で必要な物をオーダーに来たんだ」
早過ぎませんか? いや、オーダーなら余裕を持たないとかな。
「メラニー様に、何をオーダーされますの?」
と言うミモザの問いに、返事は
「鍬だ!」
だった。
……えーと、あの長い木の柄にL字に刃がついて、畑をザックザックと掘り返す、あの鍬でしょうか。
「部室の鍬では、メラニーの可愛い手に合わないからな!」
やっぱりあの鍬ですか。
「それから、手袋と日よけの帽子と……」
全部『学園で必要な物』じゃなくて、『農協で必要な物』です。
「それでな、メラニーの所有印として全部に豚のモチーフを付けようと思うんだ」
豚? メラニー嬢も驚いている。
「部長……何で豚なんです?」
「可愛いからだ!」
あーー、これ、絶対人の話を聞かないやつ。
部長にデリカシーは期待出来ないけど、お年頃のぽちゃ体形の女の子のトレードマークに豚って……。
「部長。豚が子孫繁栄の象徴である事はご存知ですわよね」
ミモザが冷たい声で言う。
「もちろんだ」
「婚約者から豚を贈られれば、それは『子作りしましょう』という意味になりますが、よろしくて?」
「子っ……!」
いやいやそんな意味にはならないが、部長は信じた。
「学園にも入学していない子供に劣情をもよおすだなんて、なんて汚らわしい。メラニー様、この男はケダモノですわ」
ミモザがわざとらしく蔑む。
「劣っ、そっ、……そんな意味では……」
メラニー嬢に嫌われたと、しょんぼりモードになる部長。
「なら、豚はおやめあそばせ。そうですわね、花のモチーフはいかがかしら?」
勝負ついたー! さすがは部長が密かに「キックラビット」と怯える猛者。メラニー嬢が救世主を見る目になってる。
「花か! それもいいな!」
「この場合の『花』には、ネギボウスやじゃがいもの花は入りませんからね」
「え?」
……入れる気だったか……。あだ名が「ネギ」か「じゃがいも」になるぞ。
「……部長。何の花にするかは女性陣にまかせて、ちょっと外に出ませんか。男同士の話が」
思うところがあって、部長を部屋の外に連れ出す。
ドアを閉めると、
「部長! 書類の不備があるたびお兄様に『セージなら知ってる』って言わないでください!」
と、迫った。
卒業パーティーの後、
「兄上! ミモザの婚約者にこんな事を言われたので抗議してください!」
「分かった。どこの家の者だ?」
「それは知りません!」
というやり取りがあったそうだ。
「あ、セージなら知ってるはず」
そしてこの一言が生まれた。
それ以来、書類の不備があると「セージが知ってる」「セージなら分かる」と言うので、兄上からの問い合わせの手紙が僕の実家に定期便のように届くようになった。
「分かった。兄上に手紙を出さないように言っておく」
「じゃなくって! 部長がちゃんと書類を仕上げろと!」
と、言って慌てて声を潜める。中に聞こえなかっただろうか。
「ミモザ様はウォルター様をお好きだったのでしょう?」
静かにしたら、中からとんでもない話が聞こえた!
「そうだ! だから学園で必要な物をオーダーに来たんだ」
早過ぎませんか? いや、オーダーなら余裕を持たないとかな。
「メラニー様に、何をオーダーされますの?」
と言うミモザの問いに、返事は
「鍬だ!」
だった。
……えーと、あの長い木の柄にL字に刃がついて、畑をザックザックと掘り返す、あの鍬でしょうか。
「部室の鍬では、メラニーの可愛い手に合わないからな!」
やっぱりあの鍬ですか。
「それから、手袋と日よけの帽子と……」
全部『学園で必要な物』じゃなくて、『農協で必要な物』です。
「それでな、メラニーの所有印として全部に豚のモチーフを付けようと思うんだ」
豚? メラニー嬢も驚いている。
「部長……何で豚なんです?」
「可愛いからだ!」
あーー、これ、絶対人の話を聞かないやつ。
部長にデリカシーは期待出来ないけど、お年頃のぽちゃ体形の女の子のトレードマークに豚って……。
「部長。豚が子孫繁栄の象徴である事はご存知ですわよね」
ミモザが冷たい声で言う。
「もちろんだ」
「婚約者から豚を贈られれば、それは『子作りしましょう』という意味になりますが、よろしくて?」
「子っ……!」
いやいやそんな意味にはならないが、部長は信じた。
「学園にも入学していない子供に劣情をもよおすだなんて、なんて汚らわしい。メラニー様、この男はケダモノですわ」
ミモザがわざとらしく蔑む。
「劣っ、そっ、……そんな意味では……」
メラニー嬢に嫌われたと、しょんぼりモードになる部長。
「なら、豚はおやめあそばせ。そうですわね、花のモチーフはいかがかしら?」
勝負ついたー! さすがは部長が密かに「キックラビット」と怯える猛者。メラニー嬢が救世主を見る目になってる。
「花か! それもいいな!」
「この場合の『花』には、ネギボウスやじゃがいもの花は入りませんからね」
「え?」
……入れる気だったか……。あだ名が「ネギ」か「じゃがいも」になるぞ。
「……部長。何の花にするかは女性陣にまかせて、ちょっと外に出ませんか。男同士の話が」
思うところがあって、部長を部屋の外に連れ出す。
ドアを閉めると、
「部長! 書類の不備があるたびお兄様に『セージなら知ってる』って言わないでください!」
と、迫った。
卒業パーティーの後、
「兄上! ミモザの婚約者にこんな事を言われたので抗議してください!」
「分かった。どこの家の者だ?」
「それは知りません!」
というやり取りがあったそうだ。
「あ、セージなら知ってるはず」
そしてこの一言が生まれた。
それ以来、書類の不備があると「セージが知ってる」「セージなら分かる」と言うので、兄上からの問い合わせの手紙が僕の実家に定期便のように届くようになった。
「分かった。兄上に手紙を出さないように言っておく」
「じゃなくって! 部長がちゃんと書類を仕上げろと!」
と、言って慌てて声を潜める。中に聞こえなかっただろうか。
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静かにしたら、中からとんでもない話が聞こえた!
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