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不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しい私の話
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面倒くさい……。
私、クリスティナ第一王女は貴族院の臨時会議に呼び出されました。
理由の見当は付きます。
先日、王太子の兄が婚約者に冤罪をかけて婚約破棄して、寵愛する男爵令嬢と結婚しようなんて浅はかな計画をやらかした事でしょう。
指定の時間に貴族院の公議室に入ると、議員たちの注目の中
「貴族院は王太子の王位継承権の剥奪を決定した。従って、クリスティナ第一王女を次の王太子にするものとする」
と、父王がもったいつけて宣言しました。
「お断りします」
「何!?」
「私は何度も、次々と言い寄る女性に手を出す兄上の女癖の悪さを、女性たちと戯れて学びを疎かにする兄上の態度を諌めるように父上に申し上げておりました。でも、父上の返事は『王太子たる者、それくらい人を惹きつけるようでなくてはならない』でした。それが王太子のあるべき姿でしたら、私には無理です」
「それは……」
一礼してさっさと出ていこうとする私に、父は本気だと気付いたようです。
「ま、待て」
待てと言うのなら待ちましょう。国王陛下の御命令ですから。
「いや、その……」
待つだけです。こちらから話す事なんてありません。
いえ、話していいのなら話しますよ? 子供の頃からお前は不器量だと言われて、愛想の良い兄や妹と違って可愛げがないと言われて、異性を侍らす兄や妹に嫌悪感を感じることを『僻むな』と言われてきたと。
「クリスティナ王女には色々思う事がおありと存じますが、王族の義務としてお引き受け願いたい」
議長のコーランド侯爵が助け船を出しましたけど、それくらい予想してました。
「王族なら、妹のジュリエッタがいますわ。私とは違って、貴族や平民からの人気がとても高い」
まあ、「貴族や平民」の前に「男性の」と注意書きが付きますけど。
公議室に沈黙が落ちました。
私費と公費の区別も付かない頭の中が軽い王女を王太子にすることを想像してますね。
でも、皆さん今までは「王女はそれくらいで可愛げがあると言うものだ。不細工で小賢しい女など政略結婚にも使えない」とジュリエッタを褒めたたえてましたわよね。
実際は、愛らしいだけで無能すぎて政略結婚に使えない、降嫁するにも贅沢に慣れ切ってるので誰にも引き取ってもらえない王女が出来上がっただけでしたが。
「では、失礼いたします」
「クリスティナ!」
「……何でしょう」
さすがにうんざりです。
「条件があるのなら飲もう」
「……ええ? 本気だったのですか? 不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しくて何の役にも立たない王女を王太子にするのですか?」
すみません、一応第一王女に話を通したという形式美だと思ってましたわ。
「四大公爵家に優秀な男性がいくらでもいるじゃないですか」
「実子が三人もいるのに、よその男に継がせられるか!」
「ああ、三人とも教育失敗したのだとバレますわね。なるほど」
「……」
「あ、すみません、小賢しいもので」
「あはははは! クリスティナって最高!」
笑い転げているのは、兄の婚約者だったマリーベル様です。
王子に婚約破棄を宣言された悲劇の令嬢、とされてますが、実際は愚かな兄を誘導して婚約破棄させた策士なのです。
貴族院で何があったか話をしようと、あらかじめお茶に招いていたのでした。
「で? 何て条件を付けたの?」
「私の結婚相手は私が選ぶ、ですわ」
「それは簡単に認めなかったでしょう」
「いいえ? 私を『国の恥のブサイク王女』と呼んでいた男と結婚などしたくない、と言ったら認めてくださいましたわ」
「ぶぶっ!」
マリーベル様はひとしきり笑い転げた後、
「全くこの国の男は女性をアクセサリーにしか見てないわね。クリスティナが女王になったら、今まで大人しくしていた国中の女性が立ち上がるわよ」
と、楽しそうに言いました。
「でも、クリスティナが王太子になると発表されたら、結婚を狙って既成事実を作ろうとする男に気をつけてね?」
「……実は、それを期待してますの」
私はきっと悪い笑みを浮かべていた事でしょう。
数か月後のある夜、第一王女の寝室に忍び込もうとした男性が捕まりました。
男は、国家反逆罪で一族郎党処刑されるか、王女と結婚するかを迫られ、結婚を選びました。
私が王太子の部屋に移ってから第一王女の部屋に入ったジュリエッタの嫁ぎ先が、無事に決まりました。
* * * * * *
ジュリエッタ「まあ! 深夜に忍んで部屋に来るほど私を恋い慕っていたなんて!」
めでたしめでたし
私、クリスティナ第一王女は貴族院の臨時会議に呼び出されました。
理由の見当は付きます。
先日、王太子の兄が婚約者に冤罪をかけて婚約破棄して、寵愛する男爵令嬢と結婚しようなんて浅はかな計画をやらかした事でしょう。
指定の時間に貴族院の公議室に入ると、議員たちの注目の中
「貴族院は王太子の王位継承権の剥奪を決定した。従って、クリスティナ第一王女を次の王太子にするものとする」
と、父王がもったいつけて宣言しました。
「お断りします」
「何!?」
「私は何度も、次々と言い寄る女性に手を出す兄上の女癖の悪さを、女性たちと戯れて学びを疎かにする兄上の態度を諌めるように父上に申し上げておりました。でも、父上の返事は『王太子たる者、それくらい人を惹きつけるようでなくてはならない』でした。それが王太子のあるべき姿でしたら、私には無理です」
「それは……」
一礼してさっさと出ていこうとする私に、父は本気だと気付いたようです。
「ま、待て」
待てと言うのなら待ちましょう。国王陛下の御命令ですから。
「いや、その……」
待つだけです。こちらから話す事なんてありません。
いえ、話していいのなら話しますよ? 子供の頃からお前は不器量だと言われて、愛想の良い兄や妹と違って可愛げがないと言われて、異性を侍らす兄や妹に嫌悪感を感じることを『僻むな』と言われてきたと。
「クリスティナ王女には色々思う事がおありと存じますが、王族の義務としてお引き受け願いたい」
議長のコーランド侯爵が助け船を出しましたけど、それくらい予想してました。
「王族なら、妹のジュリエッタがいますわ。私とは違って、貴族や平民からの人気がとても高い」
まあ、「貴族や平民」の前に「男性の」と注意書きが付きますけど。
公議室に沈黙が落ちました。
私費と公費の区別も付かない頭の中が軽い王女を王太子にすることを想像してますね。
でも、皆さん今までは「王女はそれくらいで可愛げがあると言うものだ。不細工で小賢しい女など政略結婚にも使えない」とジュリエッタを褒めたたえてましたわよね。
実際は、愛らしいだけで無能すぎて政略結婚に使えない、降嫁するにも贅沢に慣れ切ってるので誰にも引き取ってもらえない王女が出来上がっただけでしたが。
「では、失礼いたします」
「クリスティナ!」
「……何でしょう」
さすがにうんざりです。
「条件があるのなら飲もう」
「……ええ? 本気だったのですか? 不器量で可愛げが無くて僻みっぽくて小賢しくて何の役にも立たない王女を王太子にするのですか?」
すみません、一応第一王女に話を通したという形式美だと思ってましたわ。
「四大公爵家に優秀な男性がいくらでもいるじゃないですか」
「実子が三人もいるのに、よその男に継がせられるか!」
「ああ、三人とも教育失敗したのだとバレますわね。なるほど」
「……」
「あ、すみません、小賢しいもので」
「あはははは! クリスティナって最高!」
笑い転げているのは、兄の婚約者だったマリーベル様です。
王子に婚約破棄を宣言された悲劇の令嬢、とされてますが、実際は愚かな兄を誘導して婚約破棄させた策士なのです。
貴族院で何があったか話をしようと、あらかじめお茶に招いていたのでした。
「で? 何て条件を付けたの?」
「私の結婚相手は私が選ぶ、ですわ」
「それは簡単に認めなかったでしょう」
「いいえ? 私を『国の恥のブサイク王女』と呼んでいた男と結婚などしたくない、と言ったら認めてくださいましたわ」
「ぶぶっ!」
マリーベル様はひとしきり笑い転げた後、
「全くこの国の男は女性をアクセサリーにしか見てないわね。クリスティナが女王になったら、今まで大人しくしていた国中の女性が立ち上がるわよ」
と、楽しそうに言いました。
「でも、クリスティナが王太子になると発表されたら、結婚を狙って既成事実を作ろうとする男に気をつけてね?」
「……実は、それを期待してますの」
私はきっと悪い笑みを浮かべていた事でしょう。
数か月後のある夜、第一王女の寝室に忍び込もうとした男性が捕まりました。
男は、国家反逆罪で一族郎党処刑されるか、王女と結婚するかを迫られ、結婚を選びました。
私が王太子の部屋に移ってから第一王女の部屋に入ったジュリエッタの嫁ぎ先が、無事に決まりました。
* * * * * *
ジュリエッタ「まあ! 深夜に忍んで部屋に来るほど私を恋い慕っていたなんて!」
めでたしめでたし
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