婚約パーティーで婚約破棄を

あんど もあ

文字の大きさ
2 / 3

中編

しおりを挟む
 もっとも、「公募」なんて言っても誰も負け戦に応募なんてしないので、必然的に候補に選ばれるのは王太子と身分や年齢が釣り合う者で、落伍しそうにない教養を持ち、派閥などを考慮して選ばれた者だ。
 今回は、王太子の二歳年下の侯爵令嬢の私と、王太子と同じ歳の伯爵令嬢のローズマリー様、三歳年下の伯爵令嬢のフランソワーズ様の三人が争う事になるだろうと誰もが思っていた。

 しかし、実際に候補に選ばれてみると、ローズマリー様には思い人がいて
「候補になったのは、自分に『元王太子妃候補』って箔をつけて彼と婚約したかったの」
と、王太子など目に入っていない。

 フランソワーズ様は、お母様が国王陛下の妹君で王太子とは従姉妹になる。
「あんまり血が近いのも……って、我が家ではあまり歓迎していないのよ。私も、『親戚のお兄さん』としか思えないし」

 となると、必然的に選ばれるのは私だ。

 どうしよう、嬉しい。
 二歳年上のシリル様は、お転婆だった私と違って幼い頃から紳士的で、こっそり憧れていたのだ。
 これから一年間頑張れば、私がシリル様の妃に選ばれる……! そして、シリル様とハッピーラブラブウェディング……!!

 と、思っていたらシャノン様が自薦で応募したと知って「誰?」となった。
 


「本当にサフィラ様の聡明なこと! サフィラ様以上に王太子妃にふさわしい方はいらっしゃいませんわ。私も家庭教師に『とても優秀』と言われてちょっと自信をもっていたのに、この一年は自分の未熟さを実感するばかりでした」
と、シャノン様が恥じらう。
 どこが未熟よ。ハッピーラブラブウェディングのためにあなたに上に行かれないよう、この一年私がどれほど必死に勉強したか。

 シャノン様は、思わぬ伏兵だった。
 フランソワーズ様と同じ歳のシャノン様はあらゆる学問を苦も無く習得し、むしろ積極的に掘り下げていく。社交をあまりしていなかったので、ダンスやマナーに弱いのが救いだった。

 私が内心を隠して微笑んでいると、シャノン様はシリル様にもお祝いを言う。
 選ばれなくて辛くないのだろうか……と心配している私と対照的に上機嫌だ。
「本当に、シリル殿下には感謝しています。こんな一流の教師陣の講義を無料で!受けられるなんて」
 ん? 「!」を付ける場所がおかしくない?

「地学のアンドロ教授の、高低差を計算して貯水池の貯水量を決めるべきという説を知って、父は慌てて新しい貯水池の設計の見直しを検討しましたわ。服飾学のライファ教授が教えてくださった、先だっての戦で絶えたイルーナ織は、畑を失った人たちの新たな生きがいになっています」
 まだまだ売り物にはならないレベルですが、と笑うシャノン様に
「研究が実生活で役立つのは、学者冥利に尽きます」
と、教授たちも笑顔だ。
「こんな貴重な知識を無料で!教えていただけるなんて……!」

 ……そうだわ、確かシャノン様の子爵領は二、三年前に大きな水害があった。
 え? それでシャノン様は無料で学べる王太子妃候補になったの? 「無料」だから? シリル様はどこ行った?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

甘そうな話は甘くない

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」 言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。 「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」 「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」 先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。 彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。 だけど顔は普通。 10人に1人くらいは見かける顔である。 そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。 前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。 そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。 「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」 彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。 (漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう) この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。  カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。

本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?

もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。 政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。 王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。 王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。 オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手

ラララキヲ
ファンタジー
 卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。  反論する婚約者の侯爵令嬢。  そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。 そこへ……… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...