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後編
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だ、だって、きっと身分の低い子爵家令嬢のシャノン様がシリル様をお慕いして、一発逆転を狙って立候補したのだと思うじゃない。定期的にあるシリル様と候補者とのお茶会でも、シャノン様の時はいつも予定時間をオーバーするって聞いたのに。
するとシリル様がシャノン様に話しかけた。
「そうだ。シャノン嬢の『優秀な子息子女を無料で王立学園に入学させる』という提案が貴族議会で認可されたよ。来年度から施行予定だ」
「やった! これで下の弟も王立学園に通えます!」
盛り上がってる。
「議会では色々突っ込まれたけど、シャノン嬢とお茶会のたびに法律や予算捻出について針の穴ほども越度を作らぬように一年間検討してきたからね、楽勝だったよ」
「これも、王太子妃候補が無料で学べるのと同じようにお金の無い子供に王立学園に通えるチャンスを、と言った私にシリル殿下が耳を傾けてくださったからです!」
「いや、優秀でも学費が無ければ入学できないのは盲点だったよ。貴族は見栄の生き物だから、『経済的に無理』とは言わないから」
「ふふっ、うちは自他共に認める貧乏子爵家ですから」
シリル様とシャノン様がお茶会の時間をオーバーして話してた事って、これ……?
私なんて、お茶会でした事と言えば、シリル様がお疲れのようなので香りの良いお茶を用意したり、シリル様に甘すぎないお菓子を探したり……。
シャノン様が領民や家族の事を考えて王太子妃教育を受けていたのに、私って自分が楽しい事ばかり。
「レスター教授、私の弟は文学好きで教授のファンなんです。『古代詩の解釈が詩よりも詩的だ』だそうですわ」
「それは光栄だな。入学が楽しみだ」
「シャノン嬢の弟君は数学は好きかね?」
「シャノン嬢の弟なら、歴史学は得意なのだろう?」
シャノン様と皆が和気あいあいとしているのを見てたら、ポロっと言葉が零れた。
「私、婚約破棄します」
「大変! シリル殿下が死んだ目に!」
「だから紳士ぶってカッコつけてないでちゃんと告白しなさいってあれほど!」
周りが騒がしいわね。人が重大決心してるところなのに。
おずおずとシャノン様が
「なぜ婚約を破棄するのですか……?」
と聞いてきたので、
「私はシリル様にふさわしくないわ。シャノン様の方がずっとふさわしくてよ」
と、きっぱり言った。言ってしまった!
きょとんとしていたシャノン様だが
「……これは、マリッジブルーですわ! 姉もなりました!」
と結論付ける。いや、そうじゃなくて。
「ああ、サフィラ様は責任感がお強いから、このパーティーで王太子妃の重責を自覚なさったのね」
「いえ、王太子がヘタレなのに気づいたのかも」
と皆が納得する。
三人して暖かい目で見ないでよ! 私は本気よ!
「あの、サフィラ様が婚約なさらないなら、シリル様は結婚相手がいなくなりますけど、よろしいのですか?」
「……いない?」
何でよ。あなたが婚約すればいいでしょう。
「マリーローズ様もフランソワーズ様ももう他に良いご縁があったようですし、私はグレン教授と発掘に行きますから」
え?
「発掘!?」
「はい!」
グレン教授も助手の息子さんも頷いてる。
「な、何故……? シャノン様にも良い縁談が来たでしょう?」
「来ましたけど、うちは貧乏子爵家なもので持参金も嫁入り道具も用意できないんです。姉の分がやっとで」
結婚する気が無い王太子妃候補ってのも失礼ですよね、と笑うシャノン様。
「だったら、好きな歴史学の道に進もうとグレン教授にお願いしたんです」
超展開に言葉が出ない。
「あ、でも結婚を諦めたんじゃなくて、持参金無しでいいって言う人なら相手が平民でも結婚していいって親の言質を取ってます!」
平民!?、って、私より、シャノン様の後ろでグレン教授の息子さんが驚いてますけど?
これって……と、ローズマリー様とフランソワーズ様に目配せすると、うんうんという反応。
お二人とも気づいてらしたのね。私ったら鈍いわ。
「でも、貴族籍を抜いて平民になったら、もう皆さんと気軽にお会いできなくなりますよね。サフィラ様なんて王族になられるので、二度と会えないかも……。それが残念です」
「そんなことないわ!」
しょんぼりするシャノン様に、反射的に言ってしまった。
「わ、私たちの息子が17歳になった時、シャノン様が王太子妃候補教育の歴史学の教授になっているかもしれませんわ」
「……素敵! ローズマリー様やフランソワーズ様の御令嬢が候補になっていたりして!」
「きっとそこでも友情が生まれるのですわ」
「友情…」と頬を赤らめるシャノン様にほのぼのする。
「私たちの息子!?」
「あ、殿下が復活した」
「ほっときましょう」
とかなんとか騒いでたのは気にしない。
ハッピーラブラブウェディングはこれからだ!
するとシリル様がシャノン様に話しかけた。
「そうだ。シャノン嬢の『優秀な子息子女を無料で王立学園に入学させる』という提案が貴族議会で認可されたよ。来年度から施行予定だ」
「やった! これで下の弟も王立学園に通えます!」
盛り上がってる。
「議会では色々突っ込まれたけど、シャノン嬢とお茶会のたびに法律や予算捻出について針の穴ほども越度を作らぬように一年間検討してきたからね、楽勝だったよ」
「これも、王太子妃候補が無料で学べるのと同じようにお金の無い子供に王立学園に通えるチャンスを、と言った私にシリル殿下が耳を傾けてくださったからです!」
「いや、優秀でも学費が無ければ入学できないのは盲点だったよ。貴族は見栄の生き物だから、『経済的に無理』とは言わないから」
「ふふっ、うちは自他共に認める貧乏子爵家ですから」
シリル様とシャノン様がお茶会の時間をオーバーして話してた事って、これ……?
私なんて、お茶会でした事と言えば、シリル様がお疲れのようなので香りの良いお茶を用意したり、シリル様に甘すぎないお菓子を探したり……。
シャノン様が領民や家族の事を考えて王太子妃教育を受けていたのに、私って自分が楽しい事ばかり。
「レスター教授、私の弟は文学好きで教授のファンなんです。『古代詩の解釈が詩よりも詩的だ』だそうですわ」
「それは光栄だな。入学が楽しみだ」
「シャノン嬢の弟君は数学は好きかね?」
「シャノン嬢の弟なら、歴史学は得意なのだろう?」
シャノン様と皆が和気あいあいとしているのを見てたら、ポロっと言葉が零れた。
「私、婚約破棄します」
「大変! シリル殿下が死んだ目に!」
「だから紳士ぶってカッコつけてないでちゃんと告白しなさいってあれほど!」
周りが騒がしいわね。人が重大決心してるところなのに。
おずおずとシャノン様が
「なぜ婚約を破棄するのですか……?」
と聞いてきたので、
「私はシリル様にふさわしくないわ。シャノン様の方がずっとふさわしくてよ」
と、きっぱり言った。言ってしまった!
きょとんとしていたシャノン様だが
「……これは、マリッジブルーですわ! 姉もなりました!」
と結論付ける。いや、そうじゃなくて。
「ああ、サフィラ様は責任感がお強いから、このパーティーで王太子妃の重責を自覚なさったのね」
「いえ、王太子がヘタレなのに気づいたのかも」
と皆が納得する。
三人して暖かい目で見ないでよ! 私は本気よ!
「あの、サフィラ様が婚約なさらないなら、シリル様は結婚相手がいなくなりますけど、よろしいのですか?」
「……いない?」
何でよ。あなたが婚約すればいいでしょう。
「マリーローズ様もフランソワーズ様ももう他に良いご縁があったようですし、私はグレン教授と発掘に行きますから」
え?
「発掘!?」
「はい!」
グレン教授も助手の息子さんも頷いてる。
「な、何故……? シャノン様にも良い縁談が来たでしょう?」
「来ましたけど、うちは貧乏子爵家なもので持参金も嫁入り道具も用意できないんです。姉の分がやっとで」
結婚する気が無い王太子妃候補ってのも失礼ですよね、と笑うシャノン様。
「だったら、好きな歴史学の道に進もうとグレン教授にお願いしたんです」
超展開に言葉が出ない。
「あ、でも結婚を諦めたんじゃなくて、持参金無しでいいって言う人なら相手が平民でも結婚していいって親の言質を取ってます!」
平民!?、って、私より、シャノン様の後ろでグレン教授の息子さんが驚いてますけど?
これって……と、ローズマリー様とフランソワーズ様に目配せすると、うんうんという反応。
お二人とも気づいてらしたのね。私ったら鈍いわ。
「でも、貴族籍を抜いて平民になったら、もう皆さんと気軽にお会いできなくなりますよね。サフィラ様なんて王族になられるので、二度と会えないかも……。それが残念です」
「そんなことないわ!」
しょんぼりするシャノン様に、反射的に言ってしまった。
「わ、私たちの息子が17歳になった時、シャノン様が王太子妃候補教育の歴史学の教授になっているかもしれませんわ」
「……素敵! ローズマリー様やフランソワーズ様の御令嬢が候補になっていたりして!」
「きっとそこでも友情が生まれるのですわ」
「友情…」と頬を赤らめるシャノン様にほのぼのする。
「私たちの息子!?」
「あ、殿下が復活した」
「ほっときましょう」
とかなんとか騒いでたのは気にしない。
ハッピーラブラブウェディングはこれからだ!
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