みんなが嬉しい婚約破棄

あんど もあ

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みんなが嬉しい婚約破棄

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「ローズ・ハドル伯爵令嬢! 貴様とは婚約破棄だ!」
「はいっ! 喜んで!」

 王立学園の卒業パーティで響き渡った宣言に、思わず淑女らしからぬ元気さで返してしまいました。
 あら、自分から婚約破棄を告げたくせに、エンリケ第三王子とジョセファ男爵令嬢が驚いています。

「そ、そして私はこの」
「真実の愛のジョセファ様と婚約なさるのですね! おめでとうございます!」
 わあっ!と会場中の人たちが盛り上がります。皆の祝福に嬉しそうな殿下とジョセファ様。

「ご安心ください。私との婚約は暫定的な物で口約束。今頃は、国王陛下に殿下が真実の愛の相手を見つけたと連絡が行ってますわ」
「そ、そうか。準備がいいな」
「当然ですわ。殿下が真実の愛の相手を見つける事は、臣下全ての悲願でしたもの」

「ちょっとおかしくない?」
 さすがにジョセファ様が不自然な事に気が付きましたわ。
 そうでしょうね。ジョセファ様は昨年王立学園に編入してきた男爵家の庶子。そんな自分と王子との愛はきっと反対されると思っていたのでしょう。

「ジョセファ様。反対するつもりなら、とっくにお二人の仲を引き裂いていたと思いません? 私たちは本当に、殿下が真実の愛の相手を見つけるのを切望してましたの。エレーナ様カタリナ様マリカ様など、殿下が見初みそめてもその愛を受け入れられない女性ばかりでしたので」
「誰よその女!」
「エレーナか! 懐かしい名だな。健勝か」

「エレーナ様でしたら、とっくに学園を辞めてご結婚されてますわ。今はお腹に赤ちゃんが」
「いつの間に?!」
「殿下の興味がカタリナ様に移った隙に姿を消しましたの。エレーナ様の婚約者が七歳ほど歳上でしたので、結婚してしまえば殿下も手を出してこないと思いまして」
 ジョセファ様が殿下を睨みつけている。

「ちなみにカタリナ様は現在婚約者の方と隣国に留学中です」
「い、いつの間に……」
「殿下の興味がマリカ様に移った時です。よそを見ている間に逃げましたの」

「マリカ様、アンヌ様、セフィーラ様は、ある修道院でかくまってもらっています」
 同じく殿下が次の女性に目移りした隙に逃げた女性たち。
 マリカ様たちは、他国に逃げる資金も王子から守り切れる婚約者もいなかったので、修道院に匿っていただきました。

「でも良かった。殿下に真実の愛のお相手が現れて」
 おめでとうございます、と言えば、皆がおめでとうの声と共に盛大な拍手をします。
 これで、自分の婚約者や恋人が王子に目を付けられる心配が無くなった! 王子にセクハラパワハラストーカーされる心配が無くなった!
 皆、心から祝福しています。
 納得いかない顔をした殿下と、初めて知った女性遍歴(と言うか「逃げられ歴」?)に「もしかして事故物件?」と不安げな顔のジョセファ様以外は。


 
 私の本当の役目は、自分を拒む女性などいるはずないと無駄にポジティブに育った王子に目を付けられた女性の駆け込み寺。王子より身分の高い者がいない学園で王子をいさめる事ができる立場となるために、「婚約者」という地位をいただいたのでした。
 あの王子、気が多いくせしていちいち本気だから始末におえない。そこそこ優秀なんだからそのエネルギーを政務に使えばいいものを、なんて不敬な事を思ってしまうくらい。

 王子に迫られても上手くかわす事が出来ない身分の女性は、王子の婚約者に助けを求めろ!、という旗印が私の役目でした。
 被害者から相談を受けたら、状況を判断して王子とエンカウントしないように配慮し、それでも王子が強引に会おうとしてきたら私が邪魔をする。どこかに行こうという計画は王族の協力で予定を入れてもらって潰す。それでも諦めないなら女性を逃がす。それも王子が追いかけないようにタイミングを計って。
 そして、次に興味を持たれた女性が、最初は憧れの王子様からのアプローチに喜んでいたものの「私に愛されるなんて嬉しいだろう?」とこちらの意志などはなっから考えてない王子に耐え切なくなって私に相談してくる……という繰り返し。
 まさか、そのループがジョセファ様で断ち切られる事になるとは!

 私たちの婚約はどっちみち王立学園卒業と同時に解消される予定でしたが、王子にお互いに愛し合う真実の愛の相手が現れるなんて。ああっ、お二人が卒業まで持つかどれほど心配だったか。
 国民一同、ジョセファ様には感謝です。
 どうぞ二人で国の端の領地の立て直しに励んで末永くお幸せに!


 そして、見事に三年間役目を果たした私は、宰相補佐室への登用が約束されています。
 王子のようなセクハラパワハラ男に泣く女性がいなくなるよう、女性官僚目指して頑張ります!
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