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真実の愛には敵いませんもの
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侯爵令嬢が同年代の少女たちを招いたガーデンパーティーは、快晴に恵まれて盛況だった。
「楽しんでいただけてますかしら?」
主催者の侯爵令嬢が、私たちのグループに挨拶にまわってきた。
「はい! 素晴らしい庭園ですね」
「気持ちの良いパーティーですわ」
皆、口々に褒める。実際、気配り心配りの行き届いたパーティーだ。
今日は嫌な事を忘れて楽しむぞー!
なんて思ってたら、侯爵令嬢に地雷を踏まれた。
「そういえばご縁談がお決まりだとか」
なんで知ってるの!?、と焦るけど、下手に誤魔化すことは出来ない。
「お、お耳が早い……。でも、破談になりましたの」
私の返事に、友人たちも驚いている。
「まあ! 失礼いたしました」
「いいえ」
曖昧に微笑んで話題を終わらせようとしたが、ふと、それでいいのかと思う。
デリケートな話題だ。誰も踏み込んで詳しい事情を尋ねないだろう。
それより、私から一切合切を話して笑い飛ばしてもらった方がいいのかも。
うん、決めた!
私は笑顔を作って
「真実の愛には敵いませんわ」
と、言った。
「真実の愛……」
年頃の少女なら誰でも食いつくパワーワードだ。皆、興味深々の顔になる。
「縁談のお相手には、真実の愛のお相手がいましたの。私とは結婚できないのですって」
「まあ!」
「本当にそんな事をおっしゃる方が?」
「まるで恋愛小説かレオン座の歌劇ですわ」
本当、現実でそんな事を言う人がいるなんて思わなかった。
こっちはもう結婚するつもりで顔合わせに行ったのに。
少しでも好感を持ってもらおうと、ダイエットして、髪とお肌の手入れも頑張って、髪型と化粧の研究もして、相手の家についても勉強して、モテコーデで臨んだのに……。
着いて三分後には帰宅の途についていた。
私と顔合わせする前に親を説得しとけよ!、と心の中では毒づくがここでは微笑みを絶やさない。
「それで……。その方、お相手とはどうして結婚できませんの?」
「家が敵対してるとか?」
「お相手の女性に、断れない身分の高い婚約者がいるとか!」
うん、皆食いついたね。
「いいえ……。お相手は平民なんです」
「「「「 まあ! 身分違いの恋! 」」」」
皆がハモった。
他のグループの人たちも、何事かと集まって来る。
「あら、真実の愛ですって?」
「どなたが? ああ、あの伯爵家の御令息」
「地味と言うか、堅実な感じの方ですわよね」
「そういう方に限って、恋をすると直向きなのですわ」
「「「 キャー!! 」」」
あちこちで盛り上がっている。
こんなに楽しんでもらえたなら、破談した甲斐があるな。気分はお焚き上げだ。
「お相手が平民では、当主が結婚を許すわけありませんよね」
「でも、家の決めた縁談の相手を断ってますのよ。きっと、生涯彼女以外とは結婚しない覚悟ですわ」
「まあ、情熱的!」
私は吹っ切れたのだが、話はどんどん広がって行く。少女たちの妄想力、すごい。
「それでは、いずれ伯爵家を捨てて……」
「二人、手に手を取って、追っ手のかからない所へ逃げて行くのですわ」
「なんて一途なのでしょう!」
何で決定事項になってます?
ー ー ー ー ー ー
「お前、真実の愛の相手と駆け落ちしろ」
「はあ?!」
いきなり何を言っているのだ父は。
「社交界ではもう、いつお前が真実の愛の相手と駆け落ちするんだろうともっぱらの噂だ」
「な、何でそんな噂が」
「お前が『真実の愛だ』とか言って縁談を断ったからだ」
「あ……」
「実は『真実の愛』はお前の片思いで、相手には既に旦那がいました、なんて知られたら我が家は笑いものだ! 今更、駆け落ちしませんという訳にはいかない。出来るだけ可及的速やかに真実の愛の相手を見繕って駆け落ちしてくれ」
「駆け落ちってそういうものじゃないでしょうーーー!!」
私の叫び声が屋敷中に響き渡った。
「楽しんでいただけてますかしら?」
主催者の侯爵令嬢が、私たちのグループに挨拶にまわってきた。
「はい! 素晴らしい庭園ですね」
「気持ちの良いパーティーですわ」
皆、口々に褒める。実際、気配り心配りの行き届いたパーティーだ。
今日は嫌な事を忘れて楽しむぞー!
なんて思ってたら、侯爵令嬢に地雷を踏まれた。
「そういえばご縁談がお決まりだとか」
なんで知ってるの!?、と焦るけど、下手に誤魔化すことは出来ない。
「お、お耳が早い……。でも、破談になりましたの」
私の返事に、友人たちも驚いている。
「まあ! 失礼いたしました」
「いいえ」
曖昧に微笑んで話題を終わらせようとしたが、ふと、それでいいのかと思う。
デリケートな話題だ。誰も踏み込んで詳しい事情を尋ねないだろう。
それより、私から一切合切を話して笑い飛ばしてもらった方がいいのかも。
うん、決めた!
私は笑顔を作って
「真実の愛には敵いませんわ」
と、言った。
「真実の愛……」
年頃の少女なら誰でも食いつくパワーワードだ。皆、興味深々の顔になる。
「縁談のお相手には、真実の愛のお相手がいましたの。私とは結婚できないのですって」
「まあ!」
「本当にそんな事をおっしゃる方が?」
「まるで恋愛小説かレオン座の歌劇ですわ」
本当、現実でそんな事を言う人がいるなんて思わなかった。
こっちはもう結婚するつもりで顔合わせに行ったのに。
少しでも好感を持ってもらおうと、ダイエットして、髪とお肌の手入れも頑張って、髪型と化粧の研究もして、相手の家についても勉強して、モテコーデで臨んだのに……。
着いて三分後には帰宅の途についていた。
私と顔合わせする前に親を説得しとけよ!、と心の中では毒づくがここでは微笑みを絶やさない。
「それで……。その方、お相手とはどうして結婚できませんの?」
「家が敵対してるとか?」
「お相手の女性に、断れない身分の高い婚約者がいるとか!」
うん、皆食いついたね。
「いいえ……。お相手は平民なんです」
「「「「 まあ! 身分違いの恋! 」」」」
皆がハモった。
他のグループの人たちも、何事かと集まって来る。
「あら、真実の愛ですって?」
「どなたが? ああ、あの伯爵家の御令息」
「地味と言うか、堅実な感じの方ですわよね」
「そういう方に限って、恋をすると直向きなのですわ」
「「「 キャー!! 」」」
あちこちで盛り上がっている。
こんなに楽しんでもらえたなら、破談した甲斐があるな。気分はお焚き上げだ。
「お相手が平民では、当主が結婚を許すわけありませんよね」
「でも、家の決めた縁談の相手を断ってますのよ。きっと、生涯彼女以外とは結婚しない覚悟ですわ」
「まあ、情熱的!」
私は吹っ切れたのだが、話はどんどん広がって行く。少女たちの妄想力、すごい。
「それでは、いずれ伯爵家を捨てて……」
「二人、手に手を取って、追っ手のかからない所へ逃げて行くのですわ」
「なんて一途なのでしょう!」
何で決定事項になってます?
ー ー ー ー ー ー
「お前、真実の愛の相手と駆け落ちしろ」
「はあ?!」
いきなり何を言っているのだ父は。
「社交界ではもう、いつお前が真実の愛の相手と駆け落ちするんだろうともっぱらの噂だ」
「な、何でそんな噂が」
「お前が『真実の愛だ』とか言って縁談を断ったからだ」
「あ……」
「実は『真実の愛』はお前の片思いで、相手には既に旦那がいました、なんて知られたら我が家は笑いものだ! 今更、駆け落ちしませんという訳にはいかない。出来るだけ可及的速やかに真実の愛の相手を見繕って駆け落ちしてくれ」
「駆け落ちってそういうものじゃないでしょうーーー!!」
私の叫び声が屋敷中に響き渡った。
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