聖女じゃない私たち

あんど もあ

文字の大きさ
2 / 3

中編

 そろそろ、リイナを始め皆が計算の答えにおかしいと感じたようだ。
「分かりましたか? リンゴは10個買った方が1個の値段が高くなります。3個買った方が安いんです」
 えー?、と納得できない声が上がる。

「『こっちの方が得だ』と言われても本当に得なのか。騙されないように自分でちゃんと計算するようにしましょう。大切なお金を損しないように」
 私は、こちらを気にしないふりで耳を澄ませている周りの大人たちにも聞こえるように言った。勉強する事は無駄にはなりませんよ、と伝わるように。

 王太子が男爵に何か言っている。「計算だけでなく、こんな事まで教えるのか」とでも言ってるんだろうな。男爵も最初、「私のいた世界では、詐欺に引っかからないように詐欺の手口を教えていました」と言ったら驚いていたものね。


 授業を終えて、石板を抱えて王太子と男爵の元へ行く。
 私の挨拶に王太子がばつが悪そうなのは、私を「聖女じゃない」と追い出したのにそこそこ優秀だと知ったからだろうか。
「ところで、聖女と判断された美悠夏みゆかはどうしてますか?」

 私の同級生、佐野美悠夏。一緒に駅に向かっていた時に事故に遭って、一緒にこの世界に転移した。
 可愛くて明るくて人当たりが良くって、誰からも愛されるキャラだ。

「ミユカは、……頑張っていてくれる。『こういう物があった』とか『こういう物が便利だ』とか……」
 ぷぷっ、無理矢理良く言ってますね。美悠夏が何の成果も上げないから、忘れていた私の様子を見に来たのでしょう?
「そうですか、頑張ってますか。でも、成果は期待されない方がいいですよ。美悠夏は向こうの世界では有名な低能でしたから」
「そうなのか!」
「はい」
 スマホとAIで宿題をやってましたからねー。それが無い世界で何が出来るのやら。

「聖女で無いなら、お城に住む権利は無いんですよね」
 そう言って私を追い出しましたよね。
「なら、彼女もここに送ってください。旧交を温めたいですわ」
 まさか、可愛いから愛玩用に城に置くとか言いませんよね?



 一週間後、質素な馬車で美悠夏が男爵家に着いた。
 玄関で待つ男爵家の皆と私の前に、派手なドレスを引きずって美悠夏が馬車から降りて来る。ちょっと引いてる私に、美悠夏が思いっきり抱きついて来た。
「うわぁぁん苑子ぉ、会いたかったー!」
 泣きじゃくる美悠夏に、私も声を上げて泣いた。そうだ。私だってずっと泣きたかったんだ。ひとりぼっちで、怖くて寂しかったんだよ。

あなたにおすすめの小説

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

私が偽聖女ですって? そもそも聖女なんて名乗ってないわよ!

Mag_Mel
恋愛
「聖女」として国を支えてきたミレイユは、突如現れた"真の聖女"にその座を奪われ、「偽聖女」として王子との婚約破棄を言い渡される。だが当の本人は――「やっとお役御免!」とばかりに、清々しい笑顔を浮かべていた。 なにせ彼女は、異世界からやってきた強大な魔力を持つ『魔女』にすぎないのだから。自ら聖女を名乗った覚えなど、一度たりともない。 そんな彼女に振り回されながらも、ひたむきに寄り添い続けた一人の少年。投獄されたミレイユと共に、ふたりが見届けた国の末路とは――? *小説家になろうにも投稿しています

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

ラウリーは夢を見ない

ひづき
ファンタジー
公爵家に生まれたラウリーは失敗作だと両親に評価された。 ラウリーの婚約者は男爵家の跡取り息子で、不良物件を押し付けられたとご立腹。お前に使わせる金は一切ないと言う。 父である公爵は、ラウリーの婚約者の言い分を汲んで清貧を覚えさせるためにラウリーへの予算を半分に削れと言い出した。 「───お嬢様を餓死でもさせるおつもりですか?」 ないものを削れだなんて無理難題、大変ね。と、ラウリーは他人事である。

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。

よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

常識的に考えて

章槻雅希
ファンタジー
アッヘンヴァル王国に聖女が現れた。王国の第一王子とその側近は彼女の世話係に選ばれた。女神教正教会の依頼を国王が了承したためだ。 しかし、これに第一王女が異を唱えた。なぜ未婚の少女の世話係を同年代の異性が行うのかと。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

【完結】ある二人の皇女

つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。 姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。 成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。 最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。 何故か? それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。 皇后には息子が一人いた。 ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。 不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。 我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。 他のサイトにも公開中。

妹ちゃんは激おこです

よもぎ
ファンタジー
頭からっぽにして読める、「可愛い男爵令嬢ちゃんに惚れ込んで婚約者を蔑ろにした兄が、妹に下剋上されて追い出されるお話」です。妹視点のトークでお話が進みます。ある意味全編ざまぁ仕様。