令嬢失格な私なので

あんど もあ

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 襲撃に失敗した女と男が、衛兵に連れて行かれる。
 それを見送って、ディアナはアーロンに問い詰める。
「一体、何をして命を狙われてるんです!」
「何もしてないよ~! ただ、ディアナの病気を治す為に色々勉強して、井戸水を安全に浄化する器具とか、流行り病が蔓延しない区画整理とか考えたら、『次期国王には王太子より第三王子がふさわしい』って思いこんだ一派ができただけ。そしたら、『第三王子が王位を狙ってるから排除せねば』って一派もできて……」
「何ですかそれ……」
「でももう大丈夫だよ! 第三王子は赤の女神と婚約中!って公表するから! 二人でアンデラス騎士団に行こう! 僕は医療部で働くよ」

「……無理ですよ」
「嫌なの?」
「嫌……じゃないですけど、あたし、五年前に令嬢を捨ててるんですよ。こんな状態の女が王子様の婚約者です、なんて横に立ったらアーロン様まで笑われます」
 確かに、今では容姿にも仕草にも、優美さのカケラも無い。
「本当ねぇ。侍女頭のハントン夫人が今のディアナを見たら、侍女軍団を率いて寮に突撃するわ」
「やめて! また病気になるから」

「……あの、よろしいでしょうか」
 恐る恐る声をかけてきたのはロッティ。後ろに寮の女生徒たちが並んでいる。
「それ、私たち寮生に任せていただけないでしょうか。私、ロッティ・モートンと言います」

「モートン……と言うと、あの『完璧な淑女』と言われたイライザ様の嫁いだ?」
「はい。母に教えられたマナーと立ち居振る舞いを伝えられれば、と思います。こちらの黒髪の女生徒は、ライラ・ルクジェ様。領地の標高が高いのを利用して、希少な植物から化粧水や化粧品を作っているルクジェ男爵家の令嬢です。そして、こちらの女生徒は、『音楽の聖地』と言われるイング領の令嬢エリー様です。ご本人もピアノと声楽の名手ですわ。他にもディアナ様の役に立てる者がそろっています。きっと、ディアナ様をアーロン様に相応しい、美しく強い赤の女神にしてみせます。……そうですね、来年のアーロン様の卒業パーティーまでには」
「ロッティ……ありがとう!」
「それはいい考えね。もちろん、かかった経費や報酬は遠慮無く公爵家に請求なさって」
「いえ、これは私たちの友情からの行為なので、金品の介入は無しでお願いいたします」

 感動で涙ぐんでいるディアナに、ライラは冷たく告げる。
「人が良すぎですわ。私たちはあなたを利用してますのよ」
 公爵令嬢の指南役で友人、となれば、寮生だからって見下される心配は無くなるのだ。

「どんどん利用して!」

 笑いが巻き起こった。



 
 一年後、第三王子の学園卒業と共に婚約者がお披露目された。
 お相手が、美しい公爵令嬢でありながら『赤の女神』と呼ばれる女性騎士と知った民衆は熱狂的に歓迎した。
 
 優雅にダンスを踊り、ピアノを弾き、詩を暗唱する姿が貴族たちにも好意的に受け入れられているディアナに、同級生たちは

「公爵家の生活が天国に思える日が来るとは思わなかったよ……」
「思いませんでしたわ、です!」
「はい……」
「ティーカップのハンドルには指を入れない! 摘むだけです」
「なんか、安定しないから飲みにくいんだ、です」
「剣よりずっと軽いでしょうに……」
「ぶっ! 苦っ!」
「肌を整えるハーブティーです。残さないで飲んでくださいね」
「………」

と、ビシバシ鍛えられていた一年間に思いを馳せたのだった。

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