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幸せになりますので 後編
「これは大したものだな」
「本当?」
「狭いスペースに的確な種類が的確な場所に植えてあるよ。これなんか、陽の当たりすぎは悪いのを知って木の下に植えたんだろう?」
「はい!」
ルイスさんは本当に詳しかった。細々としたアドバイスをしてくれる。
話がはずんで、僕は思わず今まで誰にも言わなかった夢を語ってしまった。
「僕、いずれ大きな薬草園を作って、安い薬を作りたいんです」
「それは…既存の薬品と軋轢が起きそうだな」
「そうなんです……。でも、安かったら皆痛いのを我慢せずに薬を買えると思うんです!」
僕は痛さや苦しさをたくさん知ってる。高価な薬のありがたさも。そして、誰でも高価な薬を買えるわけじゃないことも知っている。
家を継がなくていいと決まった時から、ずっと考えていた「自分のやりたい事」だ。
と、思ってたら空気を読まない元気な声が響く。
「大丈夫ですよ! クラウディア様とアンドリュー様が、誰にも不利益にならないように何とかしてくれます!」
レイチェル、姉様を信頼しすぎ。
「そうだな、あの二人なら国だって引っくり返せるな」
ルイスさんまで…え……本気?
「しかし、その覚悟があるなら…」
「はい?」
「なぁぼっちゃま。薬は薬草だけじゃなく、動物や魚や土からも作られるって知ってるか?」
「…はい。全然勉強不足ですが」
「リバーシュ領の隣、隣って言ってももう別の国なんだけど、最新の医学の学校があるんだ。そこの薬学コースに行ってみないか?」
「え?」
そんな学校があるのか。行きたい!
「よく薬草を納品に行くんだが、その学校は授業料が子供の小遣い程度だそうだ。だから、身分や財力に関係なく国中の秀才が受験する。もし合格できても、みっちり授業があるのでついていくのが大変なんだそうだ」
……ううっ、そう簡単では無いか。でも……。
「挑戦してみたいです!」
リバーシュ子爵とルイスさんを見送って、レイチェルと薬草園に夕方の水やりをする。
「レイチェルがルイスさんを呼んでくれたんだね」
花には水を掛けないでね、と注意しつつ水桶から柄杓で水を撒きながら尋ねる。
「ルイス様から、こちらにご挨拶に行くのにアドバイスをくれって頼まれたんです。なので、来るならついでに薬草園を見てもらおうかって思っただけで、まさか他の国の学校に行く話になるなんて……」
困ったことになったという顔だ。悪いけど、僕はあの学校に行くのを諦めないから。
「でも、最初見たときレイチェルとルイスさんがお似合いだと思ってしまったよ」
「私、もう結婚してますよ?」
「ええっ!?」
「あの、何というか、クラウディア様に貴族学院を卒業したら侍女にならないかって誘われて、でも私は家を継がなくちゃいけなくて……。そしたら同級生が、結婚したら自分がレーモン家のことをするから私は自由にしていいって言ってくれたもので……」
ん~? レイチェルにしては歯切れの悪い言い方だ。
「……その、好きじゃないの?」
レイチェルが好きでもない人と結婚するとは思えないけど。
「むしろ相手がって言うか……、男の方って、お胸が大きい人が好きですよね?」
は?
なんかピンときた。これは
「自分にクラウディアを愛する権利があるというのを見せびらかしたいんだよ」
というアンドリュー義兄様の逆だ。自分は愛する権利が無いと思ってるんだ。
「ねえ、レイチェルは姉様のお胸が大きい方がいいと思う?」
「お胸の大きいクラウディア様ですか! それはステキ…ですが、そっちがいいかというと……?」
「レイチェルだって同じだよ」
「そう…でしょう……か?」
「僕が言ったからって簡単に納得できないよね。旦那さんに確認するのが一番だよ。ドーンとぶつかったら? レイチェルなら得意でしょ?」
「……二階からクラウディア様たちの上に落っこちた事をご存じでしたか」
初耳だよ!? 何やってんの!
後で、さりげな~く姉様にレイチェルとお胸に何があったのか聞いたのだけど、結果、さりげなくどころか全てを姉様に話すことになり、姉様の
「クリストファー……潰す」
という地の底から響くような声が聞こえて、レイチェルの過去を聞くのはやめにした。
「アンドリュー様と相談するからあなたは心配しないで」
と笑う姉様。その笑顔は、寝込んでた僕に「それは甘えだ」と言った家庭教師に向けたやつですね。別な意味で心配になりますが。あれ以来、先生とお目にかかれないのですけど。
(ちなみに、その後ルイスさんから「ところでレイチェルの婚約破棄の話を知ってる? 大丈夫大丈夫、全っ然秘密とかじゃ無いから!」と全貌を教えてもらった。レイチェルの旦那さんは、「わたしと婚約したい人!」でプロポーズ覚悟で手を上げたのに、ノリだと思われたそうだ)
それから僕は頑張った。隣国の学校に行きたいと言って両親に叱られて熱を出し、それでも説得しながら隣国の学校の資料を読んでは寝込み、季節が変わって風邪を引き、受験対策のテキストを探し回って熱を出し、一人暮らしに備えてお茶とサンドイッチを作れるように練習して食べ過ぎでお腹をこわし、また季節が変わって風邪を引き…。
いつまでも進学の許可はもらえず、こうなったら身の回りの物を売り払って隣国に行くお金を作ろうと馬車に積み込んでるのが両親にバレて、「行くなら、侍女と護衛と馬車と御者と病人食の得意な料理人を連れて行ってくれ」と、折れてくれた。僕の「過保護すぎる!」の声は無視されたけど。
それから、僕の隣国での生活拠点作りが始まった。
「良かったですね。ぼっちゃま」
「ありがとう。レイチェルがルイスさんを紹介してくれたからだよ」
ルイスさんには本当にお世話になった。
隣国での家探しや使用人探しも、ルイスさんの伝手で助けてもらった。
「私は明日からしばらくおいとまをいただくので、お手伝い出来ませんが……」
レイチェルのお腹は大きく膨らんでいる。今日は、出産のお休みに入る挨拶に僕の部屋まで来てくれた。
「うん、レイチェルは自分の体を一番に考えて」
「ううっ、もうじきクラウディア様とアンドリュー様の結婚式があるのに!」
「どうせ結婚式に友人として呼ばれてるんでしょう?」
「準備!をしたかったんです。裏方にしか見れない景色を見たかった……! 結婚式まで新郎はウエディングドレスを見てはいけないのに仮縫いに付いて行きたがるアンドリュー様とか、ヘッドドレスを白い薔薇にしたいクラウディア様と赤い薔薇にしたいアンドリュー様とか、『もう夫婦になるんだから私を呼び捨てにしてくれないか?』なんて言われて赤くなるクラウディア様とか!」
……レイチェルには何が見えてるの? 怖いんですけど。
姉様たちの結婚式が終わったら、僕は家族から離れて隣国に旅立つ。15歳にならないと受験できないけど、長距離移動で寝込み、慣れない環境に寝込み、受験のプレッシャーで寝込むだろうから、今のうちから隣国に住んで慣れるんだ。
新しい世界に不安もあるけど、期待がもっと大きい。姉様が貴族学院でレイチェルやルイスさんと出会ったように、きっと僕にも新しい出会いがあるはずだから。
「本当?」
「狭いスペースに的確な種類が的確な場所に植えてあるよ。これなんか、陽の当たりすぎは悪いのを知って木の下に植えたんだろう?」
「はい!」
ルイスさんは本当に詳しかった。細々としたアドバイスをしてくれる。
話がはずんで、僕は思わず今まで誰にも言わなかった夢を語ってしまった。
「僕、いずれ大きな薬草園を作って、安い薬を作りたいんです」
「それは…既存の薬品と軋轢が起きそうだな」
「そうなんです……。でも、安かったら皆痛いのを我慢せずに薬を買えると思うんです!」
僕は痛さや苦しさをたくさん知ってる。高価な薬のありがたさも。そして、誰でも高価な薬を買えるわけじゃないことも知っている。
家を継がなくていいと決まった時から、ずっと考えていた「自分のやりたい事」だ。
と、思ってたら空気を読まない元気な声が響く。
「大丈夫ですよ! クラウディア様とアンドリュー様が、誰にも不利益にならないように何とかしてくれます!」
レイチェル、姉様を信頼しすぎ。
「そうだな、あの二人なら国だって引っくり返せるな」
ルイスさんまで…え……本気?
「しかし、その覚悟があるなら…」
「はい?」
「なぁぼっちゃま。薬は薬草だけじゃなく、動物や魚や土からも作られるって知ってるか?」
「…はい。全然勉強不足ですが」
「リバーシュ領の隣、隣って言ってももう別の国なんだけど、最新の医学の学校があるんだ。そこの薬学コースに行ってみないか?」
「え?」
そんな学校があるのか。行きたい!
「よく薬草を納品に行くんだが、その学校は授業料が子供の小遣い程度だそうだ。だから、身分や財力に関係なく国中の秀才が受験する。もし合格できても、みっちり授業があるのでついていくのが大変なんだそうだ」
……ううっ、そう簡単では無いか。でも……。
「挑戦してみたいです!」
リバーシュ子爵とルイスさんを見送って、レイチェルと薬草園に夕方の水やりをする。
「レイチェルがルイスさんを呼んでくれたんだね」
花には水を掛けないでね、と注意しつつ水桶から柄杓で水を撒きながら尋ねる。
「ルイス様から、こちらにご挨拶に行くのにアドバイスをくれって頼まれたんです。なので、来るならついでに薬草園を見てもらおうかって思っただけで、まさか他の国の学校に行く話になるなんて……」
困ったことになったという顔だ。悪いけど、僕はあの学校に行くのを諦めないから。
「でも、最初見たときレイチェルとルイスさんがお似合いだと思ってしまったよ」
「私、もう結婚してますよ?」
「ええっ!?」
「あの、何というか、クラウディア様に貴族学院を卒業したら侍女にならないかって誘われて、でも私は家を継がなくちゃいけなくて……。そしたら同級生が、結婚したら自分がレーモン家のことをするから私は自由にしていいって言ってくれたもので……」
ん~? レイチェルにしては歯切れの悪い言い方だ。
「……その、好きじゃないの?」
レイチェルが好きでもない人と結婚するとは思えないけど。
「むしろ相手がって言うか……、男の方って、お胸が大きい人が好きですよね?」
は?
なんかピンときた。これは
「自分にクラウディアを愛する権利があるというのを見せびらかしたいんだよ」
というアンドリュー義兄様の逆だ。自分は愛する権利が無いと思ってるんだ。
「ねえ、レイチェルは姉様のお胸が大きい方がいいと思う?」
「お胸の大きいクラウディア様ですか! それはステキ…ですが、そっちがいいかというと……?」
「レイチェルだって同じだよ」
「そう…でしょう……か?」
「僕が言ったからって簡単に納得できないよね。旦那さんに確認するのが一番だよ。ドーンとぶつかったら? レイチェルなら得意でしょ?」
「……二階からクラウディア様たちの上に落っこちた事をご存じでしたか」
初耳だよ!? 何やってんの!
後で、さりげな~く姉様にレイチェルとお胸に何があったのか聞いたのだけど、結果、さりげなくどころか全てを姉様に話すことになり、姉様の
「クリストファー……潰す」
という地の底から響くような声が聞こえて、レイチェルの過去を聞くのはやめにした。
「アンドリュー様と相談するからあなたは心配しないで」
と笑う姉様。その笑顔は、寝込んでた僕に「それは甘えだ」と言った家庭教師に向けたやつですね。別な意味で心配になりますが。あれ以来、先生とお目にかかれないのですけど。
(ちなみに、その後ルイスさんから「ところでレイチェルの婚約破棄の話を知ってる? 大丈夫大丈夫、全っ然秘密とかじゃ無いから!」と全貌を教えてもらった。レイチェルの旦那さんは、「わたしと婚約したい人!」でプロポーズ覚悟で手を上げたのに、ノリだと思われたそうだ)
それから僕は頑張った。隣国の学校に行きたいと言って両親に叱られて熱を出し、それでも説得しながら隣国の学校の資料を読んでは寝込み、季節が変わって風邪を引き、受験対策のテキストを探し回って熱を出し、一人暮らしに備えてお茶とサンドイッチを作れるように練習して食べ過ぎでお腹をこわし、また季節が変わって風邪を引き…。
いつまでも進学の許可はもらえず、こうなったら身の回りの物を売り払って隣国に行くお金を作ろうと馬車に積み込んでるのが両親にバレて、「行くなら、侍女と護衛と馬車と御者と病人食の得意な料理人を連れて行ってくれ」と、折れてくれた。僕の「過保護すぎる!」の声は無視されたけど。
それから、僕の隣国での生活拠点作りが始まった。
「良かったですね。ぼっちゃま」
「ありがとう。レイチェルがルイスさんを紹介してくれたからだよ」
ルイスさんには本当にお世話になった。
隣国での家探しや使用人探しも、ルイスさんの伝手で助けてもらった。
「私は明日からしばらくおいとまをいただくので、お手伝い出来ませんが……」
レイチェルのお腹は大きく膨らんでいる。今日は、出産のお休みに入る挨拶に僕の部屋まで来てくれた。
「うん、レイチェルは自分の体を一番に考えて」
「ううっ、もうじきクラウディア様とアンドリュー様の結婚式があるのに!」
「どうせ結婚式に友人として呼ばれてるんでしょう?」
「準備!をしたかったんです。裏方にしか見れない景色を見たかった……! 結婚式まで新郎はウエディングドレスを見てはいけないのに仮縫いに付いて行きたがるアンドリュー様とか、ヘッドドレスを白い薔薇にしたいクラウディア様と赤い薔薇にしたいアンドリュー様とか、『もう夫婦になるんだから私を呼び捨てにしてくれないか?』なんて言われて赤くなるクラウディア様とか!」
……レイチェルには何が見えてるの? 怖いんですけど。
姉様たちの結婚式が終わったら、僕は家族から離れて隣国に旅立つ。15歳にならないと受験できないけど、長距離移動で寝込み、慣れない環境に寝込み、受験のプレッシャーで寝込むだろうから、今のうちから隣国に住んで慣れるんだ。
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