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カーライルの婚活
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「ようこそクラリッサ嬢。私はカーライル、ここではカールと名乗っています。ベータムの国王の三番目の弟です。五人兄弟の末っ子なので自由にしていいと言われてきたので、婚約者はいなかったのですが、今回の終戦を機にアルファスの方と縁を結ぼうと考えました」
私は今、王宮の小さな客間でクラリッサ・アルノー伯爵令嬢と顔合わせをしている。俗に言う「お見合い」だ。
「このような場所ですみません。あまり人目を引かない方があなたの名誉を守れると思っての事です」
私も目立たぬよう、王族の服ではなく、いつもの騎士服に眼鏡だ。
「私のため…ですか?」
「あなたの婚約者は先の戦で亡くなったと聞きました。その原因のベータムの王族との縁談など、あなたの名誉を傷つけるかもしれません。この縁談を断っても、あなたの家に咎はありませんので」
「よろしいのですか?」
「ええ」
貴族なら、好きでもない王子からの縁談でも「光栄です」って言うものだと教えられたからなぁ…。
シモンズ伯爵を捕らえ、アイリスの家に報告に行ったのは、あの騒ぎの二日後だった。
護衛騎士二人と三人で馬でアイリスの家に行くと、庭の惨状と人の気配の無い家に、最悪の状態を想像して血の気が引いた。近くの家々にアイリスの事を聞いても、皆言葉を濁す。絶望に包まれた時
「あれっ? カーラっ、カール様!」
と、アイリスの声が聞こえた。村の人たちに「この人たちは大丈夫」と話しているのを見ると、私たちは怪しまれてアイリスの居場所を教えてもらえなかったのか。その中の一人がアイリスに連絡に走ったようだ。
「もうっ! 皆さんのせいで庭がグチャグチャですからね!」
と、家に連れて行かれて、スコップや箒などの道具を渡され、庭の後片付けをさせられた。
あらかた片付いた頃、アイリスがお茶とクッキーを振る舞ってくれた。やたらと固いクッキーがこの国の流行なのかと思ったら、あっさりと失礼な返しをされた。
「いえ、それ失敗作です。ジェイクには食べさせられないから」
「女性は皆菓子作りが得意なのだと思っていたのだが、こういう犠牲があってのことだったのだな……」
と言うと、傍の騎士たちは吹き出し、アイリスは「言い方!」と怒った。あの男なら失敗作でも私には食べさせたくないだろうと思ったが、それは言わない。
ちょっとだけジェイクに優越感を感じていたが、アイリスの
「あ、私とジェイク、結婚しました」
という報告に撃沈した。
「結婚!? あれからまだ二日しか!」
「平民には国王の許可も要らないし、結婚準備が無いから婚約期間も要らないんですよ。二人で教会に行くだけです。それで来週結婚パーティをするので、今回の迷惑料代わりにごちそうを届けてくださいね!」
落ち込んだが、「おめでとう」と言った自分を褒めたい。
「ごちそうの代わりに、私の結婚相手を紹介しろ」
「どういう理屈ですか!」
「王妃にと望んだ女性が他の男と結婚したんだ、責任もって次を紹介しろ!」
「何の責任ですか~!」
アイリスが推薦したのが、今、目の前にいるクラリッサ・アルノー伯爵令嬢だった。
「もう五年も会っていないので、独身かどうか分かりませんが」
と言うので調べたら、婚約者が先の戦で戦死して未だ独身だった。これは運がいいのか悪いのか。
「私の婚約者が亡くなったのは、ベータムのせいではありません」
「え?」
「婚約者の心と命はシモンズ伯爵のものでした。私や彼の両親や友人たちが何を言っても、シモンズ伯爵の言葉を覆す事はできず……婚約者は志願兵として前線に行きました。剣の腕も体力も無いのに……。私たちの心は、亡くなる前から離れていたのです。私がベータムに縁付いても、不名誉な事はありません」
見た目のたおやかさとは違って芯がある令嬢のようだ。
「アイリスさんと同じ思いをされたのですね」
「アイリス? アイリス・コンウォール様ですか!? ご無事だったのですね! 五年前の処遇が非公開だったのでずっと心配していたんです。ベータムに匿われていたのですね」
よほどアイリスが好きだったようで、なんだか私の評価が爆上がりだ。でも、匿われるどころか王都で自活してましたよ…。
この女性は、今の、口が悪く、使用人がいないので自分で動き回って、ドレスも化粧もしない平民の生活のアイリスを見たらどう思うだろう。
「きっと、『幸せそう』って言うんだろうな」
「はい?」
彼女なら、アイリスが農民と結婚したと知っても「農民なんかと」とは言わない。そんな気がする。
「アイリスさんは王都にいます。もしよければ、次に二人で会う時はアイリスさんに会いにいきませんか?」
人をダシにするなー! うちをデートスポットにするなー!、とアイリスが怒鳴るのが目に浮かぶ。が、クラリッサ嬢を逃したく無いのだ。
「よ、喜んで!」
「良かった。あなたとなら、アルファスを良い国に治められる気がします」
「は? 治める? ……あの、三番目で末っ子では……?」
あれ? もしかして私、一番重要な事を言って無かった……?
私は今、王宮の小さな客間でクラリッサ・アルノー伯爵令嬢と顔合わせをしている。俗に言う「お見合い」だ。
「このような場所ですみません。あまり人目を引かない方があなたの名誉を守れると思っての事です」
私も目立たぬよう、王族の服ではなく、いつもの騎士服に眼鏡だ。
「私のため…ですか?」
「あなたの婚約者は先の戦で亡くなったと聞きました。その原因のベータムの王族との縁談など、あなたの名誉を傷つけるかもしれません。この縁談を断っても、あなたの家に咎はありませんので」
「よろしいのですか?」
「ええ」
貴族なら、好きでもない王子からの縁談でも「光栄です」って言うものだと教えられたからなぁ…。
シモンズ伯爵を捕らえ、アイリスの家に報告に行ったのは、あの騒ぎの二日後だった。
護衛騎士二人と三人で馬でアイリスの家に行くと、庭の惨状と人の気配の無い家に、最悪の状態を想像して血の気が引いた。近くの家々にアイリスの事を聞いても、皆言葉を濁す。絶望に包まれた時
「あれっ? カーラっ、カール様!」
と、アイリスの声が聞こえた。村の人たちに「この人たちは大丈夫」と話しているのを見ると、私たちは怪しまれてアイリスの居場所を教えてもらえなかったのか。その中の一人がアイリスに連絡に走ったようだ。
「もうっ! 皆さんのせいで庭がグチャグチャですからね!」
と、家に連れて行かれて、スコップや箒などの道具を渡され、庭の後片付けをさせられた。
あらかた片付いた頃、アイリスがお茶とクッキーを振る舞ってくれた。やたらと固いクッキーがこの国の流行なのかと思ったら、あっさりと失礼な返しをされた。
「いえ、それ失敗作です。ジェイクには食べさせられないから」
「女性は皆菓子作りが得意なのだと思っていたのだが、こういう犠牲があってのことだったのだな……」
と言うと、傍の騎士たちは吹き出し、アイリスは「言い方!」と怒った。あの男なら失敗作でも私には食べさせたくないだろうと思ったが、それは言わない。
ちょっとだけジェイクに優越感を感じていたが、アイリスの
「あ、私とジェイク、結婚しました」
という報告に撃沈した。
「結婚!? あれからまだ二日しか!」
「平民には国王の許可も要らないし、結婚準備が無いから婚約期間も要らないんですよ。二人で教会に行くだけです。それで来週結婚パーティをするので、今回の迷惑料代わりにごちそうを届けてくださいね!」
落ち込んだが、「おめでとう」と言った自分を褒めたい。
「ごちそうの代わりに、私の結婚相手を紹介しろ」
「どういう理屈ですか!」
「王妃にと望んだ女性が他の男と結婚したんだ、責任もって次を紹介しろ!」
「何の責任ですか~!」
アイリスが推薦したのが、今、目の前にいるクラリッサ・アルノー伯爵令嬢だった。
「もう五年も会っていないので、独身かどうか分かりませんが」
と言うので調べたら、婚約者が先の戦で戦死して未だ独身だった。これは運がいいのか悪いのか。
「私の婚約者が亡くなったのは、ベータムのせいではありません」
「え?」
「婚約者の心と命はシモンズ伯爵のものでした。私や彼の両親や友人たちが何を言っても、シモンズ伯爵の言葉を覆す事はできず……婚約者は志願兵として前線に行きました。剣の腕も体力も無いのに……。私たちの心は、亡くなる前から離れていたのです。私がベータムに縁付いても、不名誉な事はありません」
見た目のたおやかさとは違って芯がある令嬢のようだ。
「アイリスさんと同じ思いをされたのですね」
「アイリス? アイリス・コンウォール様ですか!? ご無事だったのですね! 五年前の処遇が非公開だったのでずっと心配していたんです。ベータムに匿われていたのですね」
よほどアイリスが好きだったようで、なんだか私の評価が爆上がりだ。でも、匿われるどころか王都で自活してましたよ…。
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「きっと、『幸せそう』って言うんだろうな」
「はい?」
彼女なら、アイリスが農民と結婚したと知っても「農民なんかと」とは言わない。そんな気がする。
「アイリスさんは王都にいます。もしよければ、次に二人で会う時はアイリスさんに会いにいきませんか?」
人をダシにするなー! うちをデートスポットにするなー!、とアイリスが怒鳴るのが目に浮かぶ。が、クラリッサ嬢を逃したく無いのだ。
「よ、喜んで!」
「良かった。あなたとなら、アルファスを良い国に治められる気がします」
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あれ? もしかして私、一番重要な事を言って無かった……?
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