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中編
「貸していたお金を返してくださいな。先日貸した1万ルーペですわ」
それはグレアム様のサインの入った借用書です。
「そ、それは! ……返すのはいつでもいいと言っていたではないか!」
「書面をよく読んでください。『両名が婚約・婚姻中は、返済期限を設けないものとする』です。グレアム様が婚約破棄してもう他人になったんですから、さっさと返してくださいな」
「いや……」
「まさか、もうお小遣いを全部使ってしまったとか? 婚約者交遊費も? 私、お茶の一杯もご馳走されていませんわ。一体何に使いましたの?」
皆の目がリンダ様のドレスに注がれる。目を逸らした何人かは、何の予算か知らずにグレアム様に奢られたのでしょうね。好きな人にはとても気前がいい人ですから。
そう、グレアム様の金遣いは「奢侈」のレベル。
普通、貴族の買い物はサインによる後払いだが、グレアム様は浪費が酷くてお小遣い制にされた。遣える金額の上限を見えるようにしたのだ。
でも、欲しい物を我慢するという事が出来ないグレアム様は、欲しい物を見つけるとご自分の持ち物や上着を売ってでもお金を得て手に入れずにはいられない。
困り果てたブルーム伯爵は、彼の王立学園入学前に、質素をモットーとしたグーランド家の私と婚約させることにしたのだ。私の影響を受けてグレアム様が変わることを期待して……。無駄でしたが。
私は、借用書を封筒に入れてグレアム様に渡した。
「これは差し上げますわ。婚約のお祝いです」
ほっとした顔のグレアム様が、封筒を握り潰して上着のポケットの突っ込む。
もったいない。クシャクシャにしなかったら、その封筒は何度も使えますのに。
「まだまだ沢山ありますわ」
私は再びポケットから沢山の封筒を取り出し、カードのように両手で目の前に並べた。皆が驚愕の顔になる。
皆がグレアム様と遊び回った時、グレアム様が支払うお金が誰から出ていたのか気付いたようですね。
「しめて70万ルーペですわ。私は明日領地に帰りますので、今日中に支払ってくださいね」
「今日中なんて無理だ!」
「ご自分が婚約破棄をしたからでしょう? まさか、私に借金してる事を忘れてたのですか?」
「う……」
忘れてたのでしょうね。私が子供の頃からこつこつと貯めたお金ですのに。
何も言えなくなったグレアム様と対照的に、リンダ様が怒りました。
「アナベル様ひどいです! 婚約者なのに、お金の貸し借りなんて!」
「……ふう。婚約者 だ か ら、お金を貸したんです。もし私がお金を貸さなかったら、グレアム様はもっと危ない所から借用書もろくに読まずにお金を借りてますわ。今ごろは、利息が膨らんで払いきれなくなり、変わり果てた姿になっていたかも……」
ブルーム伯爵が恐れたのは、その事だった。婚約時にお願いされたのは、グレアムが他から借金しないように目を光らせて欲しいという事。
『いくらでも用立てますわ。返済の心配はなさらないで、婚約者ですもの。けじめとして、借用書にサインをしてくださいね』
私の甘い言葉に、グレアム様は市中の金貸しには行かず、私からお金を借りまくってくれた。
それはグレアム様のサインの入った借用書です。
「そ、それは! ……返すのはいつでもいいと言っていたではないか!」
「書面をよく読んでください。『両名が婚約・婚姻中は、返済期限を設けないものとする』です。グレアム様が婚約破棄してもう他人になったんですから、さっさと返してくださいな」
「いや……」
「まさか、もうお小遣いを全部使ってしまったとか? 婚約者交遊費も? 私、お茶の一杯もご馳走されていませんわ。一体何に使いましたの?」
皆の目がリンダ様のドレスに注がれる。目を逸らした何人かは、何の予算か知らずにグレアム様に奢られたのでしょうね。好きな人にはとても気前がいい人ですから。
そう、グレアム様の金遣いは「奢侈」のレベル。
普通、貴族の買い物はサインによる後払いだが、グレアム様は浪費が酷くてお小遣い制にされた。遣える金額の上限を見えるようにしたのだ。
でも、欲しい物を我慢するという事が出来ないグレアム様は、欲しい物を見つけるとご自分の持ち物や上着を売ってでもお金を得て手に入れずにはいられない。
困り果てたブルーム伯爵は、彼の王立学園入学前に、質素をモットーとしたグーランド家の私と婚約させることにしたのだ。私の影響を受けてグレアム様が変わることを期待して……。無駄でしたが。
私は、借用書を封筒に入れてグレアム様に渡した。
「これは差し上げますわ。婚約のお祝いです」
ほっとした顔のグレアム様が、封筒を握り潰して上着のポケットの突っ込む。
もったいない。クシャクシャにしなかったら、その封筒は何度も使えますのに。
「まだまだ沢山ありますわ」
私は再びポケットから沢山の封筒を取り出し、カードのように両手で目の前に並べた。皆が驚愕の顔になる。
皆がグレアム様と遊び回った時、グレアム様が支払うお金が誰から出ていたのか気付いたようですね。
「しめて70万ルーペですわ。私は明日領地に帰りますので、今日中に支払ってくださいね」
「今日中なんて無理だ!」
「ご自分が婚約破棄をしたからでしょう? まさか、私に借金してる事を忘れてたのですか?」
「う……」
忘れてたのでしょうね。私が子供の頃からこつこつと貯めたお金ですのに。
何も言えなくなったグレアム様と対照的に、リンダ様が怒りました。
「アナベル様ひどいです! 婚約者なのに、お金の貸し借りなんて!」
「……ふう。婚約者 だ か ら、お金を貸したんです。もし私がお金を貸さなかったら、グレアム様はもっと危ない所から借用書もろくに読まずにお金を借りてますわ。今ごろは、利息が膨らんで払いきれなくなり、変わり果てた姿になっていたかも……」
ブルーム伯爵が恐れたのは、その事だった。婚約時にお願いされたのは、グレアムが他から借金しないように目を光らせて欲しいという事。
『いくらでも用立てますわ。返済の心配はなさらないで、婚約者ですもの。けじめとして、借用書にサインをしてくださいね』
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○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?