【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
201 / 233

200:ヒルダの生い立ち~後編~

しおりを挟む
 ヒルダは、その後母親フランカとクヌートに抗議した。だが、それは無駄に終わってしまった。いやむしろ状況は悪化してしまったのだ。抗議はしたが、二人の態度は開き直っていた。ヒルダはこれ以上二人の為に、娼婦を続けるなどまっぴらごめんだと、二人の元から去ろうとしたのだが、結局クヌートの仲間である屈強で粗暴な男たちに捕らわれてしまった。
 ヒルダが逃げるくらいならばと、スラム街にあるギャングの一味に専属の娼婦にと売り飛ばされてしまったのだ。そして足首には脱走できないように鎖で繋がれ、逃げることは適わず、来る日も来る日も、男たちの慰み者になる日々を送ることになってしまったのだ。
 ヒルダも最初の頃は脱走を試みるも、鎖を繋がれていては結局逃げることは適わず、次第に心が折れてしまい、ヒルダは生きる気力をすっかりなくしていた。

 (もう・・・どうでもいい・・・早く・・・早く死にたい・・・こんなこんな世界・・・どうして私がこんなめに!嫌だ・・・早く・・・死にたい・・・・)

  そんな時に声がしたのだ。それは悪魔のささやきだった。

 「一緒にこんな世界壊しませんか?」

 「え?」

 突然声をかけられた。窓も施錠され、ドアにも鍵がかかっていたはずなのに、突如イリスは、ヒルダが閉じ込められている部屋に現れたのだ。 

 「な・・・あなたは?」

 ヒルダは混乱していた。なぜ急にこの男が自分のところに現れたのか?あの男たちの仲間?いやこの男は見た感じ洗練されていて、見目もよかった。粗暴な奴らとは明らかに違いすぎる。だけどその顔立ちに似合わず放った言葉は物騒だった。

 「お初にお目にかかります。私はイリスと言います。どうですか?こんな不平等な世界、壊してみませんか?」

 イリスと名乗った男は、とてもいい笑顔でまた物騒な言葉が形のいい唇から発せられていた。普通ならこんなことを言われればまともに取り合うことなどしないであろうが、ヒルダの精神はこの頃は既に荒んでおり普通の状態ではなかった。

 ・・・本当に?ソレが適う?こんな不条理な世界を壊せるの?

 「貴方ならできますよ。微力ながら私もお手伝いさせていただきます。それに貴方には竜の加護があるのですから。」

 加護?竜?一体何のこと?

 「まだ出会ってはおられませんが、貴方は『竜の祖』である竜の番です。だから私が竜のところまで案内いたします。」

 番?何のこと?『竜の祖』・・・伝承にある、あの?どうしてそんなのが出てくるの? 

 「私にはわかるんです。貴方は、竜の『番』。特別な人なんですよ。」

 『番』?特別な人?だったら私はなぜこんな目にあってるの?

 「可哀想に。貴方は竜と出会えるのが遅かった。ですが、もうこんなことは終わりです。ここから抜け出しましょう。」

 出会いが遅かったから、こんな目にあったっていうの?ここから出られる?本当に?

 「はい、私を信じてください。」

 イリスと名乗ったその男は、曇りのない目でそう言った。しかし・・・
 その時、ヒルダが閉じ込められているドアが乱暴に開いた。

 「あぁ?!誰だてめぇ?誰の許可もらってここにいるんだぁ?あぁ?!」

 その厳つい男は私を慰み者にしている一人であった。

 「クズが。」

 「あぁ!!なんだぁ?誰にモノ言ってんだ!ぶっ殺すぞ!!」

 男は持っていた剣をすぐさま抜いて、脅しのつもりでイリスの顔を切る付けるつもりであったが・・・

 「がっ・・?」

 「目ざわりだ。」

 それは一瞬のことで、粗暴な男はイリスに首を掻っ切られ床に沈んでいった。

 「!!!」

 ヒルダは本来であれば、悲鳴を上げる場面であっただろうが、既に彼女の心は疲弊していた。自分を慰み者にしていた男が呆気なく目の前で死んでしまったことにむしろ喜びを感じていたのだ。もうこの男に触れられることはないと。

 「まずは、軽い前哨戦です。私はこの屋敷にいる者を皆殺しにしますよ。」

 やはり言っていることがは物騒ではあったが、それを何てことのないように笑顔で言うイリスに、むしろヒルダは安堵したのだ。やっとこの地獄から抜け出せることに。

 「貴方をこんな目に合わせたんですからね。当然の報いです。」




 これがイリスとの出会いだった。ヒルダは絶望的な状況の中、自分を救い出してくれるイリスに暗闇から光を見いだしていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...