~エシックスギア~

海音²

文字の大きさ
18 / 22
1章 模擬戦そしてチーム

18話

しおりを挟む
 模擬戦をしてから1週間、俺は座学で悩み、基礎訓練で汗を流す日々を送ってた。その間エマからは、チームを組むという話はしてこなかった。かなり説得に時間がかかってるのか、それとも諦めたかな?

 それより今日はいよいよユーリが、接続コネクションする日だ。朝いつも通り[方舟の休息]で、朝ごはんを食べてた時にユーリが嬉しそうに、デバイスを俺に見せてきた。それで午後からは、ユーリと第1訓練場の観戦スペースに来ていた。

「ウチもこれでやっと調律師チューナーとして、1歩踏み出せるっちゅうわけやな♪」

「おめでとうユーリ」

「あんがとな♪ この一週間は琥珀こはくといっぱい話したり、チップあげたり色々しとったから、今じゃもう大切なウチの相棒や♪」

「俺も見てて、いきなり慌てたり、真っ赤になってたりと、見てて面白かったぞ?」

「そっ……それは、琥珀が変な事言ってきとったからや!」

 ユーリは白い虎の事を琥珀と呼んでいる。名前の理由を聞いたが、内緒と言われた。

「ほな、やってみるから、そこで見とってや♪」

 そう言ってユーリは、小さく深呼吸をして目を閉じた。突如ユーリの左手に白い鞘に収まった刀が現れた。どうやら他人には光の粒子が見えないらしい。

「でっ……できたで! レイジ、ウチできたんやでな?」

「ああ、もちろん成功だ。おめでとうユーリ」

「えへへ♪ あんがとな♪ それに、うちの武器は刀や♪ それに普通の刀より、めっちゃ軽いねん♪」

 武器が刀と、使い慣れてる事もあるのか、すごく嬉しそうにしてた。ユーリはゆっくりと刀を鞘から抜いた。––刀身は淡い瑞色で、武器と言うより芸術品と思えてしまうほど美しかった。

「綺麗やな……」

「だな。まるで吸い込まれそうなほど、綺麗だ…」

 俺達は暫くその刀に見とれてた。鞘にしまった後、ユーリは俺に思いついたように提案してきた。

「せや! 良かったらウチと模擬戦やらへん?」

「俺で良ければやろうか」

「簡単には、レイジに負けへんからね♪」

「俺も久々にできるから、全力でやらせてもらうよ」

 ユーリは早速武器を使って体を動かしたくて、ウズウズしてたみたいだ。俺もこの一週間相手が居なくて模擬戦出来なかったから、正直ありがたい申し出だった。

「ちょっと待って貰えるかな?」

 俺達が下に降りようとしたら、クリスに呼び止められた。

「なんや? 今からウチら模擬戦やんねん!」

「その前にレイジ俺と模擬戦してくれないか?」

「は? 俺がクリスと?」

「なんでレイジがアンタと模擬戦せなあかんねん! しかも先にウチがレイジを誘ったんや! 横槍いれんといてくれるか?」

 まぁ、ユーリが怒るのも仕方ないな……それにしてもいきなり俺に模擬戦申し込んで来るって、どういう風の吹き回しだ?

「とりあえず理由を教えてくれるか?」

「俺も今日接続出来たから、レイジに勝って俺が強いって、証明するためさ!」

「なんだよその理由……」

「仕方ないだろ! エマがこの一週間ずっとレイジの方が強いと言ってくるだから! 俺の方が強いと証明してやるんだよ!」

「そんな事に俺を巻き込まないでくれ。ユーリ行こうか」

「せやな、そんなアホな理由に、つきおうたる必要ないしな」

 俺とユーリはそう言ってクリスの横を通り過ぎた。その時クリスは奥歯を噛み締め悔しがってた。

「まっ! 待ってくれ!」

 そう言ってクリスは制服のポケットから白い手袋を俺に叩きつけてきた。俺達のやり取りを、遠くから見ていた何人かの生徒は、クリスの行動に驚いてた。

「いきなり手袋を叩きつけてきて、なんのつもりだ?」

「フェニクス帝国では、決闘を申し込む時、自分の白い手袋を相手に叩きつける習慣があるんだ。」

「決闘って、なんでエマさんに言われたからって、そこまで俺にこだわるんだよ?」

「それは……」

 クリスは、歯切れが悪そうに、なかなか言い出せずにいた。

(レイ、もしかしてクリス君はエマちゃんの事が、好きなんじゃない?)

(なんでそれで俺に、決闘申し込むになるんだ?)

(さっき言ってたじゃない、1週間レイジが強いとか言われ続けたって、きっと、好きな子が他の男の子の事を褒めてるから、ヤキモチ妬いたのかもね)

(それ完全に俺が被害者じゃないか……)

(それにクリス君が今してきた決闘の申し込みだけど、フェニクスでアレをするって事は、相当な覚悟が必要なの…)

(はぁ……わかったよ。受けるよ)

(やるからには本気でやってあげなさいよ? クリス君の誇りと名誉も全て賭けて申し込んできてるんだからね?)

「わかった。そこまでの覚悟で俺に申し込んでくるなら、俺はそれを受け取るよ」

「レイジ!?」

「悪いなユーリ、流石にここまでの覚悟で挑んでくるなら、俺も受けなきゃいけない」

「もう! これやから男は! 今回はアイツに譲ったる。 その代わりレイジ、負けたらウチが許さへんからな!」

「最高の応援期待してるよ」

 ユーリにそう言って、俺はクリスの方に振り向いた。

「この決闘の意味を、理解してくれてるみたいで、感謝する」

「俺も全力でやらせてもらう」

「そうしてくれなきゃ、僕が怒るからな?」

 それだけ言って俺達は下に降りていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...