~エシックスギア~

海音²

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1章 模擬戦そしてチーム

20話

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(レイ!! 模擬戦なんだから、今のはやり過ぎよ!!)

(俺はクリスに全力でやるって約束したんだ!)

(そうだとしても限度が!)

 姉さんに注意されてるのを無視して、一瞬でクリスに近づき急激に上がったスピードで力任せに攻撃し続けた。クリスは、更にスピードが上がって、手数を増やしてきた俺に驚きながらも、必死に守り続けた。しかし、徐々にクリスも疲れが出てきて、奥歯を噛み締めながら、尚も必死に守りに徹した。

「くっ……! これぐらい!」

 だが、とうとう防御が間に合わず右肩に切り傷が入った。俺はこれで勝負がついたと思い距離をとった。

「はぁ…はぁ……はぁ……これで勝負あったな?」

 俺も急激な身体能力の上昇に体がついて来れず、正直もう限界が来てた。

「まだだ! 僕はまだ戦える!」

 クリスはそう言ってまだ戦おうと分裂させてた剣をくっつけ、それを片手で持ち武器を構えた。俺自身もう動けなかったし、勝負ももうついてると思い、説得しようとした。

「もう勝負は着いただろ!!」

「まだだぁー!!」

 そう言ってクリスは俺に迫り片手で持った両刃剣ダブルセイバーで斬りかかってきた。俺は再び武器を構え引き金を引こうとした。

(レイもうやめて!! それ以上は本当にどっちかが大怪我する!)

 姉さんが、俺を必死に止めようとしたが、それを受け入れれるほど、今の俺には余裕がなかった。

「そこまでだ!! お前達一体何をしている!!」

 突然先生が間に入り叫んだ。俺とクリスは、いきなり間に入ってきた先生に驚き動きを止めた。

「お前達! 一体何をしてるんだ! グローレイン、貴様にはこの前模擬戦と殺し合いは、違うと言ったばかりだな!」

「ですから一撃入れたので「口答えするな!」……っ!」

「それからリーヴァル! 一撃受けてなぜまだ続けようとした!」

「先生これは模擬戦じゃないんですよ。正式なやり取りの上での、由緒ある決闘です!」

「由緒ある決闘だと? リーヴァル!! ふざけるのも大概にしろ! フェニクス帝国では、由緒ある決闘と言えば、殺し合いをするのか!」

「そっ、それは……」

「お前たち2人は今後2週間は模擬戦禁止! もし破れば即刻退学だ! わかったか!」

「「……」」

 先生はそう言って、俺達を睨みつけてどこかに行ってしまった。俺とクリスは接続を解除だけして、ただその場から動かず周りには、不穏な空気だけが広がってた。

「レイジ!! 大概にしいや!! いくらなんでもやりすぎや!」

「クリス!! 貴方はなんでいつもいつもそうなんですか!」

 そんな空気を壊すかのように、ユーリとエマが俺とクリスに怒りながら駆け寄ってきた。

「あのまま先生が来んかったら、レイジどうするつもりやったん!! 頭に血が上っとったんは、しゃーないにしろ限度があんねん!!」

「悪かった。気がついたら負けるわけにはいかないと思って……これからは気をつけるから…本当にごめん」

「わかってくれたらええねん。でもな、次は許さへんからな?」

「わかった…」

 そう言ったユーリは、俺が反省してるのを見てホッとしていた。

(姉さんもごめん…必死に俺に注意してくれてたのに…)

(私の事はもういいの。その代わり、これからは傍に居る人の気持ちも考えてあげてよ?)

(わかった……もうユーリに心配かけないようにするよ)

(あら? 私は別にユーリちゃんだけの話をしてないんだけど?)

(ただの言葉の綾だよ。 姉さんもわかってるだろ?)

(はいはい♪ でも…ムリだけはしないでね)

(わかったよ姉さん)

(それじゃ、罰としてパンナコッタと別に、他のスイーツも今日は追加ね♪)

 それだけ俺に伝え姉さんは、静かに微笑んでくれた。

「レイジ……その、すまなかった。 少し……いや、かなり頭に血が上ってたみたいだ」

 エマに怒られたからか、クリスは罰が悪そうな顔で、俺に謝罪してきた。

「いや、俺もかなり血が上ってた。俺の方こそ悪かった……腕大丈夫か?」

「あぁ……これぐらいすぐ治るよ」

 そう言いって、痛みで苦痛な顔を見せながらも、ふっと笑みを見せた。

「それにしても、クリスのあの武器は凄すぎるだろ?」

「それを言ったらレイジのスピードも異常だろ? あのスピードはやっぱ能力なのか?」

「能力と言えばそうかもだけど、アレは俺自身じゃなくて、武器の能力だな」

「あれと別にあるのか!? なんだ……反射速度か…」

 クリスは、ぶつぶつ言いながら考え始めた。その姿を見てエマはため息をついてた。

「クリスったら、またそうやって気になる事があったら、いきなり考え込む」

「そういえば、これ返したらいいのか?」

 俺は叩きつけられた手袋を見せ聞いた。

「……ん? そうだな僕が負けたし持っててくれ」

「ちょっとクリス!? 貴方その意味わかって言ってるの!?」

「意味? そもそも俺は負けた時どうなるか知らないんだが?」

 ただでさえクリスの言動に慌ててるエマは、俺の言葉を聞いた事により、驚き出した。

「も……もしかして意味もわからずに、クリスの決闘を受け入れたの!?」

「まぁ、そうなるな?」

「フェニクス帝国では、決闘に負けた者は勝者の盾や剣となるのよ。と言っても、それは昔の事と言って気にしない人もいるけど、身分が上がるにつれて、まだその古い考えの人が未だに多いの。ましてクリスは……」

 そう言ってクリスを一瞬見たエマは、事の重大さに興味もなく、ひたすら思考を巡らせてる姿に肩を落とした。
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