贄の神子と月明かりの神様

木島

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変調の兆し

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 二つの手紙が届いてから十日後。今日は待ちに待った友人たちが帰ってくる日だ。
 すばるは朝から気もそぞろで分け身を何枚も書き損じた。午前中で今日の勤めを終えて後は彼らの到着を待つだけとなってからはじっとしていられずに片付けをしてみたり、掃除をしてみたり皓月が呆れるほど屋敷中をうろついていた。
 そうして本殿を無心に掃除していた時、皓月から二人の帰還を告げられたのである。

「篝ちゃん!蛍!」
「すばる殿!お久しゅうございます」
「ただいま戻りました、神子さん」

 期待に胸を躍らせながら拝殿へと駆け戻り、待ち構えていた二人に笑顔で出迎えられた。約一年ぶりの再会だ。すばるはその星空の瞳をきらきらと輝かせて二人に駆け寄った。

「二人ともお帰りなさい!わあ……篝ちゃん、きれいになったねぇ」
「うふふ、ありがとう存じまする!ね、ね、見てくださいませ。われ、すばる殿や蛍よりも大きくなったのですよ」
「本当ですね。参ったな、僕が一番小さくなっちゃいました」

 再会に悦び手を繋ぎ合ったすばるは篝を見上げて笑う。
 成体へと成った篝は子供だった姿を脱ぎ捨て、美しい炎の女神に生まれ変わっていた。
 顔立ちは幼さを消し去り、面影は残るものの知性と気品溢れる大人の顔立ちに。手足はすらりと長く本人が言うようにすばるや蛍よりも背が高くなっていた。元来持っていた茜色の髪は鮮やかさを増し、その毛先は炎が揺れるように緩やかに揺らめいている。同じ色をした瞳は瞬きをするたびに火花が散るように煌めいて一度見てしまうと離せなくなるような、惹き込まれる魅力があった。自分より背が高くなってしまったことは少し複雑だったが、自分の成長を誇りくるくると回りながら笑う姿は以前と変わりがなくてすばるは嬉しくなってしまう。

「ねえ、篝ちゃん。火の神の郷での話を聞かせてください。成体に成るまでの間どんな風に過ごしていたんですか?」
「ええ!良いですとも。われもすばる殿と皓月殿がどのように過ごされていたかお聞きしとうございます!」
「もちろん!たくさん話しましょう」

 手に手を取り合って再開を喜び合う二人。弾けるような笑顔は若々しい瑞々しさに溢れていて、微笑ましい光景に年嵩の二人は眩しさに目を細めた。

「そちらは変わりなかったか」
「んー、まあ俺達はね。でも状況は悪くなってるっすよ。あいつもだいぶ弱ってきてはいるようっすけどね」
「そうか……」

 きゃらきゃらと楽しげに言葉を交わしているすばるたちとは裏腹に皓月達の話題は明るいものではない。喜ばしい場で聞く話ではなさそうだと皓月は溜息を吐いてひらりと手を振った。

「後で話を聞く」
「はいよ」

 蛍も軽く応じると話は終わりと手に持っていた火の神の郷から持ってきた土産物をすばるに見せに行く。興味深くそれを覗き込むすばるを嬉しそうに見ている篝と蛍。
 外出を禁止した辺りから彼は目に見えて退屈そうにしていることが増えていた。待ちに待った再開に弾けるような笑顔を見せるすばるにつられるように皓月も柔らかく笑みを刷き、三人の輪の中に混ざっていった。
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