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スエル・ドバードの酒場
#3.紅い髪
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異世界にある大都市イルモニカ
その街から随分離れた場所に、スエル・ドバードと呼ばれる小さい田舎町があった。
その町には、紳士の街とされるイルモニカと違い、荒くれ者が多く住み着き、毎晩のように飲み更けては暴れたり、乱闘騒ぎを起こすことでも知られている。
あんな下品に酒を喰らい、顔を真っ赤にした野蛮な者たちの宴など誰も見たくは無い!
...この世界にある音楽の都イルモニカに住む紳士たちは、その町について問われると、いつもそういった風に答えていた。
──────
────
──
「ほらよ! 500ギルド...ちゃんと集金してきたぜ?」
そう言い放ってセシリアは、ドンっと酒場のカウンターの上に金貨の入った黄ばんで所々に穴が開いた布袋を乗せた。
「...猫ババはしておらんだろうな?」
店主の二ズルは、その置いた者を如何にも悪いことをしたような目で見る。
「あのなぁ...私がそんなことする訳ないだろう? ..小銭ごときにさ?」
セシリアは、ため息をつく手前、右手を紅い髪に手をやり、ちょうど右耳の上を人差し指でコリコリとかく。
「..ふん! その小銭ごときをまだ払い終えていないのだぞ?
そんな偉そうに言える立場か? えぇー?」
二ズルは、口をニヤリとさせながらセシリアに目を向ける。
「分かってるよ? 私は、あんたに借金を返し切るまで
あんたの有り金には、一切手をつけないって決めてるのさ?
納得したかい? お爺さんよ?」
セシリアもそんな嫌らしい二ズルに負けじと言葉を返す。
「...誰が納得などするか! その前にその店主に対する言葉使いに気をつけろ? 俺はここの主であって、お前はここの
奴隷だと言うことを忘れるな!」
酒場の店主ニズルはいつも、セシリアが口答え等をする度に、奴隷という言葉を使い、セシリアの置かれてる立場を言い表す。
「はいはい...分かりました? そう頭に血を上らすなよ?
もうお年だろ...体に悪いぜ?」
「黙らんか! 全く可愛いげのない奴め...
黙っていれば周りも驚く美人なものを...喋ると直ぐこれだ...いいか? 二度と疑われるようなことは..するなよ? ..分かったな!」
このまるで人を物のように扱う二ズルの言葉にセシリアは、腹の底から沸き起こる感情を押し殺して息を呑む。
「分かったよ...じゃあ、悪いけど..ちょっと出掛けて来るわ?」
余りの唐突なセシリアに二ズルは表情変えて..
「..おお、おい! 何処へ行くんだ?」
彼女は、振り向かずに大きな声で..
「スエル・ドバードの外!」
セシリアが開き戸の右取っ手を掴み、それを押そうとした時、二ズルはカウンターから身を乗り出して更に声を上げた。
「おおい!? 今日の20時までにはちゃんと帰って来るんだぞ?
分かってるんだろうな?」
「はいはい! そんなこと言われなくても分かってるよ!」
「今日は、あのアルダ・ラズム帝国の団長のズバル様が久方ぶりにお前を指名しているんだぞ? 分かってんな?
絶対に遅刻するなよ!」
この二ズルの忠告にセシリアは足を止め、鼻息荒くして一瞬だけ語気を強める。
「ふん...くどいよ..分かってるって言ってるじゃんかよ...
自分の立場を...」
セシリア・ルージュ
彼女は紅い髪をしており、その紅い髪とその風貌から町を歩けば振り返らない男性は、そういない存在でもあり、
とてもこの酒場には似つかわしく無かった。
それでもセシリアは、この酒場で背負った借金の為に毎日毎晩を奴隷のように働くしかなかったのだ。
その街から随分離れた場所に、スエル・ドバードと呼ばれる小さい田舎町があった。
その町には、紳士の街とされるイルモニカと違い、荒くれ者が多く住み着き、毎晩のように飲み更けては暴れたり、乱闘騒ぎを起こすことでも知られている。
あんな下品に酒を喰らい、顔を真っ赤にした野蛮な者たちの宴など誰も見たくは無い!
...この世界にある音楽の都イルモニカに住む紳士たちは、その町について問われると、いつもそういった風に答えていた。
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「ほらよ! 500ギルド...ちゃんと集金してきたぜ?」
そう言い放ってセシリアは、ドンっと酒場のカウンターの上に金貨の入った黄ばんで所々に穴が開いた布袋を乗せた。
「...猫ババはしておらんだろうな?」
店主の二ズルは、その置いた者を如何にも悪いことをしたような目で見る。
「あのなぁ...私がそんなことする訳ないだろう? ..小銭ごときにさ?」
セシリアは、ため息をつく手前、右手を紅い髪に手をやり、ちょうど右耳の上を人差し指でコリコリとかく。
「..ふん! その小銭ごときをまだ払い終えていないのだぞ?
そんな偉そうに言える立場か? えぇー?」
二ズルは、口をニヤリとさせながらセシリアに目を向ける。
「分かってるよ? 私は、あんたに借金を返し切るまで
あんたの有り金には、一切手をつけないって決めてるのさ?
納得したかい? お爺さんよ?」
セシリアもそんな嫌らしい二ズルに負けじと言葉を返す。
「...誰が納得などするか! その前にその店主に対する言葉使いに気をつけろ? 俺はここの主であって、お前はここの
奴隷だと言うことを忘れるな!」
酒場の店主ニズルはいつも、セシリアが口答え等をする度に、奴隷という言葉を使い、セシリアの置かれてる立場を言い表す。
「はいはい...分かりました? そう頭に血を上らすなよ?
もうお年だろ...体に悪いぜ?」
「黙らんか! 全く可愛いげのない奴め...
黙っていれば周りも驚く美人なものを...喋ると直ぐこれだ...いいか? 二度と疑われるようなことは..するなよ? ..分かったな!」
このまるで人を物のように扱う二ズルの言葉にセシリアは、腹の底から沸き起こる感情を押し殺して息を呑む。
「分かったよ...じゃあ、悪いけど..ちょっと出掛けて来るわ?」
余りの唐突なセシリアに二ズルは表情変えて..
「..おお、おい! 何処へ行くんだ?」
彼女は、振り向かずに大きな声で..
「スエル・ドバードの外!」
セシリアが開き戸の右取っ手を掴み、それを押そうとした時、二ズルはカウンターから身を乗り出して更に声を上げた。
「おおい!? 今日の20時までにはちゃんと帰って来るんだぞ?
分かってるんだろうな?」
「はいはい! そんなこと言われなくても分かってるよ!」
「今日は、あのアルダ・ラズム帝国の団長のズバル様が久方ぶりにお前を指名しているんだぞ? 分かってんな?
絶対に遅刻するなよ!」
この二ズルの忠告にセシリアは足を止め、鼻息荒くして一瞬だけ語気を強める。
「ふん...くどいよ..分かってるって言ってるじゃんかよ...
自分の立場を...」
セシリア・ルージュ
彼女は紅い髪をしており、その紅い髪とその風貌から町を歩けば振り返らない男性は、そういない存在でもあり、
とてもこの酒場には似つかわしく無かった。
それでもセシリアは、この酒場で背負った借金の為に毎日毎晩を奴隷のように働くしかなかったのだ。
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