2 / 44
スエル・ドバードの酒場
#2.酒場の使用人
しおりを挟む
この世界が魔法を便利な道具として扱う様になってから80年以上が過ぎると...
人はあれこれと考え笑っては、いつの間にか過去の事など...
余り見ることの無い太い歴史書として図書館に仕舞うものである"
──────
────
──
「おーい? 誰も居ないのか?」
朝早く、酒場ボルカから酒を頼んでいた客たちから集金する為にそのボルカから少し離れた町レパタにまでやって来ていたセシリアは、その客である1人の家の前に立っていた。
「..はぁー、呼び鈴も付けてないのかよ...貧乏人め...
おーい! 早く出て来いよ! こっちは集金で来てんの!
..ねぇーってば!
..本当に居ないのか? ...もぉー! あとでまた..」
セシリアは、叫ぶだけ叫んで、その客の集金をあと回しにしようとした時、家の扉が開いた。
「...何だ? 大声で叫んでよ..さっきから」
「居るのかよ? ..じゃあ返事くらいしろよ!?」
「..悪いな、寝てたよ?」
「もう11時前だぞ?」
「そんなもん関係あるか...俺の起きたい時に起きる」
「..ああ分かったよ。酒の集金だ。金を払ってくれ?」
「..ちょっと待っとけ...金を持ってくる」
漸く出て来た客に酒代を請求したセシリアは、手元に持った料金表からその客の請求書を探す。
「...で、幾らだ?」
「..えー、あんたは...全部で10本の..85ギルドだ?」
「はぁ? ..何を言ってやがる。あのじいさんは、1本サービスだって言ってやがったぞ!」
「知るかよ? そんな事...さあ早く、10本分の85ギルド..払え?」
「..ったく、あのクソじじい! いい加減な事を言いやがって!」
「そうそう? あのクソじじいは、もう歳で問題があるんだよ? ..気をつけるんだな?」
「..二度と頼まん! そんな安酒...」
「そうしろ? 身体に毒だぜ? うちの安酒はさ?」
客は、納得出来ないままセシリアに85ギルドを投げ渡し、家に戻ろうと背を向ける。が、直ぐに踵を返しセシリアの片手を掴んだ。
「おい? お前、ちょっと寄ってけよ? こっちはイライラしてんだよ..なあ? 少しでいいから..」
セシリアは、その自分の片手を掴む相手の手に、
もう片方の手を添えてから相手の目を見、言葉を乗せる。
「図に乗るな?」
その冷ややかな目と言葉を見た相手は、掴む手から自然と力が抜けて距離を置いた。
「..クソったれが! さっさと帰れ!」
その声に背を向け立ち去ろうとするセシリアに、その男は、まだ収まらない声を上げる。
「次に金が出来た時は、てめぇ覚悟しとけよ! 今度は噛み付いてやるからな!」
品のない声等、彼女には届かなかった。もうその声には飽き飽きしていたのだから。それに毎日毎晩、下品な声に囲まれ生きて来たセシリアには、どうでもいい響きだった。ただ声は届かなくとも、その声を相手にしなければならない生活には何度も涙が出そうになった。
「..反吐が出るよ? てめぇらの存在には...」
その度にセシリアは、それを誤魔化そうと同じように汚い単語を混ぜてそれを吐く。
人はあれこれと考え笑っては、いつの間にか過去の事など...
余り見ることの無い太い歴史書として図書館に仕舞うものである"
──────
────
──
「おーい? 誰も居ないのか?」
朝早く、酒場ボルカから酒を頼んでいた客たちから集金する為にそのボルカから少し離れた町レパタにまでやって来ていたセシリアは、その客である1人の家の前に立っていた。
「..はぁー、呼び鈴も付けてないのかよ...貧乏人め...
おーい! 早く出て来いよ! こっちは集金で来てんの!
..ねぇーってば!
..本当に居ないのか? ...もぉー! あとでまた..」
セシリアは、叫ぶだけ叫んで、その客の集金をあと回しにしようとした時、家の扉が開いた。
「...何だ? 大声で叫んでよ..さっきから」
「居るのかよ? ..じゃあ返事くらいしろよ!?」
「..悪いな、寝てたよ?」
「もう11時前だぞ?」
「そんなもん関係あるか...俺の起きたい時に起きる」
「..ああ分かったよ。酒の集金だ。金を払ってくれ?」
「..ちょっと待っとけ...金を持ってくる」
漸く出て来た客に酒代を請求したセシリアは、手元に持った料金表からその客の請求書を探す。
「...で、幾らだ?」
「..えー、あんたは...全部で10本の..85ギルドだ?」
「はぁ? ..何を言ってやがる。あのじいさんは、1本サービスだって言ってやがったぞ!」
「知るかよ? そんな事...さあ早く、10本分の85ギルド..払え?」
「..ったく、あのクソじじい! いい加減な事を言いやがって!」
「そうそう? あのクソじじいは、もう歳で問題があるんだよ? ..気をつけるんだな?」
「..二度と頼まん! そんな安酒...」
「そうしろ? 身体に毒だぜ? うちの安酒はさ?」
客は、納得出来ないままセシリアに85ギルドを投げ渡し、家に戻ろうと背を向ける。が、直ぐに踵を返しセシリアの片手を掴んだ。
「おい? お前、ちょっと寄ってけよ? こっちはイライラしてんだよ..なあ? 少しでいいから..」
セシリアは、その自分の片手を掴む相手の手に、
もう片方の手を添えてから相手の目を見、言葉を乗せる。
「図に乗るな?」
その冷ややかな目と言葉を見た相手は、掴む手から自然と力が抜けて距離を置いた。
「..クソったれが! さっさと帰れ!」
その声に背を向け立ち去ろうとするセシリアに、その男は、まだ収まらない声を上げる。
「次に金が出来た時は、てめぇ覚悟しとけよ! 今度は噛み付いてやるからな!」
品のない声等、彼女には届かなかった。もうその声には飽き飽きしていたのだから。それに毎日毎晩、下品な声に囲まれ生きて来たセシリアには、どうでもいい響きだった。ただ声は届かなくとも、その声を相手にしなければならない生活には何度も涙が出そうになった。
「..反吐が出るよ? てめぇらの存在には...」
その度にセシリアは、それを誤魔化そうと同じように汚い単語を混ぜてそれを吐く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる