【完結】魔導師様と夢魔に囚われた少年 ─ファンジェレル大陸・男恋譚─

星谷芽樂(井上詩楓)

文字の大きさ
64 / 85
第四章

第24話「祭壇の間」①

しおりを挟む
 階段は見たこともない群青の石壁で出来ていた。デュボイズが杖から小さな炎を灯して周囲を照らすと、限りなく透明度が高い床や壁面の中は、内包される金の粒によって星の様にキラキラと輝き始めた。

「すごい……キレイィ……」

 それはまるで夜空の中を舞っている様だった。いや、デュボイズは空の更に上に存在するという、星々の世界、宇宙というものを想像していた。

「この石は地上で見たことのない素材で出来ている。恐らく、これらも天上界にしか存在しない代物なのだろう」
「天上界……そうか、ボク達の上の世界に存在する人達なら、きっと夜空の星も手に届くような場所にいるのかもしれないですね……」
「そうだな……うむ。そうに違いない。だからこそ、星を埋めたような石を造れるのだろう……」

 二人はゆっくり階段を降りながら、幻想的な光景に酔いしれていた。タキオンが傍に寄り添い、それをデュボイズも受け入れて、そっと細い腰に腕を回す。

 二人だけの特別な景色は誰もが見れる訳ではない。そしてこの場所に来れるのも、これが最初で最後なのだろう。

(こんな素敵な思い出を共有してるのに、先生ともうすぐお別れしなくちゃならないなんて……この時間が永遠に続けばいいのに……神さま……どうして……!!)

 タキオンは遠くまで見える光の粒を仰ぎ見て、心の中で訴えていた。想いが募るほど胸が痛く苦しくなり、この甘く切ない空間にいつまでも浸っていたくなる。

 しかし、出来るだけ長く一緒にいようと一歩ずつ踏み締めて降りてきたものの、とうとう終わりが見え始めた。
 五分ほど降りると階段の先から青い光が見え始め、特別な空間の終点を告げる。

「――いよいよだな」

 デュボイズは夢魔との最後の対峙に向け、身が引き締まる思いだった。その証拠にタキオンを抱き締める腕に力が入り、細い腰をグッと引き寄せた。

「せ、せんせぇ……」
「……大丈夫だ。絶対にお前を元の体に戻す。私の身が裂けてでも、何の不安も無い未来を約束する」
「そんなのイヤです! 先生にも何事もなく、一緒に故郷へ帰りましょう?」
「……善処しよう」

 二人で降りた最下層は部屋全体が青い光を纏い、現世とは思えない幻想的な空間だった。
 デュボイズの家よりも狭く小さな空間の正面に、神々しく輝く虹色の珊瑚が植えられ、その手前に石棚の祭壇が置かれている。床と壁一面には大きな魔法陣が何重にも重ねられ描かれている。
 見上げれば、天井は大図書館の様に遥か頭上高く、外に繋がる陽光が粒になって見えた。

「わぁぁ! 正に神様が居そうなお部屋!!」
「実際見るとやはり迫力が違うな。それに一面に刻まれている魔法陣、こんなに大小さまざまな円を幾重にも組まれたものは今まで見た事がない。まるで何かの設計図のようだ」

 部屋の雰囲気に感動するタキオンとは対照的に、デュボイズは床に刻まれた魔法陣を丹念に読み解いていく。
 二人は思い思いのまま、その狭い空間の中を暫し見て回った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...