幼なじみは異世界の王子様でした。

茂栖 もす

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国民的アイドル!?いえいえ、ゆるキャラ大臣です。

14.国民的アイドル②

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 フロイラというのは、簡単に言うと国民的アイドルだと説明したけれど、実はこれ、れっきとした国政を司る重要官職らしいのだ。日本でいうところの官僚、又は大臣。すごいねー。

 ただ、このフロイラという官職はまだ歴史が浅く、初代フロイラはなんと隆兄ちゃんのおばあちゃん、敏子さんだったりする。っというか、この官職は敏子さんの為に作られたものだったのだ。

 西崎家のロイヤルストーリーは隆兄ちゃんのおじいちゃんである、アスガルト王の一目ぼれから始まったことは記憶に新しい。けれど、結婚までの経緯は色々大変だったようで───

 リデュースヴェンサルフィン国の家臣たちは、コミュ障の王様にお相手が見つかったと大喜びしていたのも束の間、いきなり異世界の女性を妻に娶るのは、多少なりとも障害があることに気付いてしまったのだ。なにせ腐っても王様だし、異世界の女性を王妃にした前例がない。

 ということで、アスガルト王と家臣達は考えた。
 そして考えに考えた末に、まず異世界の女性である敏子さんに揺るがない地位を与えることにしたのだ。その地位というのがフロイラ。最初は官職というより称号のようなもにだったらしい。そして次にフロイラという名を国中に浸透させるため国内のさまざまなイベントに迎賓として敏子さんを招いたそうだ。

 幸いにも敏子さんは、才色兼備の大和撫子だった。そして腹を括った大和撫子は無敵である。さまざまな国内イベントに花を添えていき、あっという間に【フロイラ=国民的アイドル】の地位を獲得した。

 そして頃合いを見計らって、王様がプロポーズ。そしてめでたく結婚という運びになったのだ。ただ、今思えば、国内中にアスガルト王のコミュ障は知れ渡っていたので、どとらかというと国外に向けての政策だったみたい。

 でもね、ただ一つ問題が残ってしまった。
 このフロイラという存在が、予想以上に国民に受け入れられてしまったのだ。

 今更、異世界の女性を娶る為に、無理やり作った官職ですなんて、国民に口が裂けても言えるわけがない。
 そういう訳で、フロイラは一代では終わらず、2代目、3代目と受け継がれていくようになったのだ。

 まぁその後は、政治あるあるなんだけど、このフロイラは十代後半の未婚の女性から選ばれる。任期は3年から最長で5年。その間、フロイラは他の官職に比べればごく僅かだけど政治の発言権と国家予算を与えられるのだ。
 
 ぶっちゃけ十代の女の子が政治への発言権を与えられてもあんまり嬉しくない。お菓子のほうがよっぽど嬉しい。けれどフロイラの親にとったら娘の政治への発言権は喉から手が出るほど欲しいものなのだ。どんな汚い手を使ってでも欲しいものらしい。
 
 そう、今回私がフロイラに選ばれたのは、そういうこと。談合や賄賂が横行しているこの官職を私の代で見直しをしたい、ということだったのだ。

 で、なんで急に呼び出されたかと言うと、それはおじさんの売り言葉に買い言葉から始まったのだ。

 事の発端は先週、現在のフロイラが任務を放り出して駆け落ちしたのが始まりだった。任期が満了になるまで、まだまだ先だった為、次代は候補すら決まってない。けれど、スケジュールは詰まっている状態で、さてどうしたものかと王様以下全員が頭を抱える状況になったらしい。

 そこにダルファ家が自分の娘が次代のフロイラに適任だと、いけしゃあしゃあと主張してきたのだ。けれどこの、ダルファ家はかなり厄介な一族らしい。所謂、常に黒い噂が付き纏う一族で、これ以上このダルファ家に権力を渡す訳にはいかないと、おじさんは咄嗟にこう宣言した。 

「既に次代のフロイラは決まっている!」

 と、啖呵を切ってしまったらしい。そうしたら、ダルファ家が【じゃあ連れて来い。今すぐ見せて見ろっ】という流れになってしまい……。
 
「ああ、上等だ!今すぐ連れてきてやる!!」

 と、おじさんは怒鳴り返したそうだ。そしてその直後、おじさんの代わりに隆兄ちゃんが私の部屋に飛び込んで来た───と、いう訳だ。

 言いたい事は色々あるど、おじさんもそのダルファさんも大人げないなぁ、とだけ言わせてほしい。

 それにしても、私が国民アイドル!?大臣!?そんなの無理無理って一度は怖じけづいてしまったけど、全面的に西崎家がバックアップしてくれるそうなので、ほっと胸を撫で下ろす。私は西崎家の恩返しをしたいだけで、アイドルなりたい訳ではない。もちろん、なれるわけないことも知っている。

 
 お茶をお代わりしながら、思いのほか長かった説明を聞き終える。それから私は、おずおずと挙手をしてみた。


「……最後に一つだけ質問していいですか?」
「何だい?わからないことは、一つといわず何個でも聞いていいよ」

 おじさんは柔らかい笑みを浮かべて、質問を促してくれる。私はその言葉に甘えて口を開く。

「私、いつからそのフロイラってのをやれば良いんですか?」

 その質問に西崎家三人は同時に顔を見合わせながら、いつにしようと首を捻りだす。あぁ、決まってなかったようですね。

 いきなり始まった緊急会議の邪魔をしてはいけないので、私はお茶を飲みながら通達を待つ事にする。───3つめのお菓子に手を伸ばしたところで、今後の方針が決まった。
 

「とりあえず、来週からで良いかな?平日は学校終わってから夕飯まで隆と一緒にこっちに来てもらって、週末は昼過ぎぐらいから来てもらえるとありがたいね。あ、まだイベント前だから、こっちに来るのは一日置きで良いよ」

 予想外に早い召集命令だった。
 二つ返事で引き受けたいところだったけど、そうできない事情が私にはある。

「おじさん、ごめん無理。悪いけど再来週からにしてくれる?」
「え?どうしてだい、水樹ちゃん」

 おじさんは目を丸くして、私に問うた。
 
「……来週から、テストなの。……ただ補習になるかもしれないから、もしかしたらフロイラをするのはもっと先になっちゃうかもしれない」
「………………………………」

 そう言った瞬間、おじさんが無言で項垂れてしまった。
 私の残念な学力は、西崎家全員が熟知している。それに私は知っている。西崎家の3人が、私の頭の悪さを心配して家族会議をしていることを。

 そして隆兄ちゃんとおじさんは国立大学をパスした学力を持つのに、私のテスト勉強をみてくれると必ず頭を抱えてしまう。

 部屋中に絶望に近い空気が充満する。が、おじさんはそんな空気を打ち破るように、ガシッと私の肩を掴んだ

「水樹ちゃん!絶対に、絶対に、赤点取らないでね!!」

 こんな真剣なおじさんの表情を見たことがない。っていうか王様に赤点取るなと懇願される女子高生なんて私ぐらいだろう。あと、手が肩に食い込んでめちゃくちゃ痛い。
 そしておじさんは、痛みで顔をしかめる私を無視して、今度は隆兄ちゃんに向かって声を張り上げた。

「隆、何が何でも、水樹ちゃんの試験パスさせろっ。これは国王命令だ!!」

 いや、ちょっとまっておじさん。この前の小テストの結果が散々だった時、【勉強が全てじゃない】って慰めてくれてたじゃん。あれ、嘘にするの!?

 でも、参考書がどうとか、模試がどうとか話し合ってるおじさんと隆兄ちゃんの表情は真剣だ。
 どうしよう、私のテストが国家事業になってしまった。

 本当にどうしよう……私、試験を無事パスできる自信ないです。
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