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国民的アイドル!?いえいえ、ゆるキャラ大臣です。
22.嬉し、恥ずかし、城内デート②
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突然、隆兄ちゃんの唇を腕に感じて、私の心臓はバクバクしすぎて臨終間近である。ちょっとかさついた隆兄ちゃんの唇は、ひんやりと冷たくて、火照った私には気持ちが良い。───・・・じゃなくって!
「りゅ、りゅ、りゅ、隆兄ちゃん!?」
空いてる方の手で隆兄ちゃんを付き飛ばそうとしたけれど、反対に隆兄ちゃんは、私の腕を引いて抱きしめた。
「お前な、ちょっとは演技しろよ」
「え、演技??」
小声で囁く隆兄ちゃんに、私も小声で返す。
隆兄ちゃんを見上げれば、小さく顎であっちだと示す。そこに視線を移せば、先日、王座の間で【意義あり!】と物申したおじさんが、ぎりぎり歯ぎしりをせんばかりにこちらを睨みつけていた。
────あーそういうことですか。
どうやら、これは反対勢力への牽制らしい。それに気付いた途端、臨終間近の心臓が復活した。
なんだなんだ、つまりデートとか婚約者というワードをライラさんの前でチラつかせていたのは、そういう人達の耳に入れるためだったのだ。
きっとライラさんは、今頃メイド仲間に先程の出来事を身振り手振り大袈裟に伝えていることだろう。絶対にそうだ。なぜなら女子というものはそういうものだから。世界が違えどやることは同じはず。
そうとわかれば、私だって演技ぐらいしてみせる。
「あーら。リュー王子ったらっ。あなたも好きねぇー。ちょっとだけよー」
むふふ、と作り笑いをして、私は隆兄ちゃんに囁く。
我ながらなかなかの演技力だ。ちなみにこのセリフ、おじさんのお気に入りのコントのDVDから拝借したものだ。
けれど、隆兄ちゃんは死んだ魚のような目になった。
「……水樹、お前はしゃべるな」
なんでよ!
半目になって睨んだけれど、隆兄ちゃんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるだけだった。
とりあえず、私の演技力に問題があったのか、セリフに問題があったのだかだけでも教えてほしい。
不貞腐れたまま隆兄ちゃんに手を引かれて、城内をてくてくと歩く。無言のままてくてくと歩く。けれど───。
「水樹、なんかしゃべろよ」
「はぁ!?さっきしゃべるなって言ったじゃん」
「ああいうセリフはいらねぇ。っていうか、余計に怪しまれる。もっと自然な会話をしろ」
「………………はぁ」
急に自然な会話をしろなんて、なかなかの難題だ。
そもそも、この状況が不自然だというのに、会話だけ自然にしろと言われたって無茶ぶりだ。
「ほら、険悪のまま歩いてたって、意味がないだろ」
「あー……えっと、今日のご飯はなんだろうね」
「唐揚げじゃないことだけは、確かだ」
「……そっかぁ。マジ凹む」
「お前、そこでリアルにしょげるなよ。他のヤツから見たら、俺がお前を凹ませているように見えるだろっ」
くわっと目を見開いて叫んだ隆兄ちゃんに、私は確かにと頷くことしかできない。
額に手を当て、天を仰ぐ隆兄ちゃんに、申し訳なさが込み上げる。でも、最近、おばさんが忙しいくて大好物の唐揚げが食べれないのは本当のこと。
結局、新しいゲームの情報を隆兄ちゃんが降ってくれて盛り上がる。色気ゼロ、甘い雰囲気とは程遠いけれど、私は大変満足なのだ。
それから、取り留めのない話をしながら、再び城内を意味もなくてくてくと歩き、そのままの流れで庭に出る。左右に花壇がある遊歩道を進み。噴水まで歩くと、隆兄ちゃんは立ち止まった。
「ここが、母さんが言ってた噴水だ」
「へぇー……すごいねー」
「水樹、頼むから口を閉じてくれ」
想像を超えた噴水に、あんぐりと口を開けている私に、隆兄ちゃんは呆れながら口を開いた。だけど、私は口をぱくぱくしたまま、閉じることができない。
楕円形の泉水に浮かんでいる噴水は私の想像よりも3倍は大きかった。そして中央の大噴水に女神像が設置されていて、それを取り囲むように水が吹きだしていて、辺りは虹ができている。それから一段下の縁石にもウサギやリスなどの小動物の銅像が設置されていて、そこから細く水が吹き出ている。
夕方の柔らかい陽を受けて噴水がキラキラ反射して、そこだけ格別にファンタジーの世界だった。それに、何よりこのロケーションが素晴らしい。噴水の周りには花壇で美しく飾っているし、少し離れたところには雨宿りができそうな大きな樹が植えられている。
「ちょうどいい、この辺で見せ付けておくか」
言うが早いが隆兄ちゃんは、私を引き寄せ強く抱きしめた。演技とわかっていても、全身が隆兄ちゃんの香りに包まれて、頭がクラクラする。
ぎゅっと隆兄ちゃんの胸に頬を押し付けられて、胸板の厚さと心臓の鼓動が伝わってきて、気を抜くと発狂してしまいそうになる。
それにしても───。
恋愛の神様は本当に意地悪だ。諦めようとした瞬間に、急に隆兄ちゃんとの距離を縮めてくるなんて。
【水樹は、訳のわからない自分だけのルールを持っている】
不意に隆兄ちゃんの言葉が甦る。でも、なぜこんなときにそんなことを思い出してしまうのだろう。
そう思った瞬間、視界の端にオリヴィアがいた。
悔しそうに顔を歪めていても、私よりはるかに美人でスタイルが良い。きっと隆兄ちゃんと並んだら、それこそ一枚の絵になるだろう。
綺麗なオリヴィアは、フロイラに相応しいリデュースヴェンサルフィン国の住人。私は所詮、この世界からみれば、ただの異世界の住人。絶対的に埋められない溝がある。それは認めたくないけど事実。
そして、私がフロイラになることを反対している人もたくさんいる。だからもし仮に、私がフロイラをちゃんとこなせなかったら、ヴィアが隆兄ちゃんの隣に立つのかもしれない。そんな不安な考えがよぎる。それは頭の隅でよぎっただけなのに、モヤモヤが体中に広がっていく。
───そんなの絶対に嫌だ!!
そう思った瞬間、私は隆兄ちゃんの背中に手を回していた。その行動こそが答えだった。
そうだ、そうだったんだ。ずっと苦しかったのは、隆兄ちゃんをまだ好きなのに、無理に諦めようとしたからだ。自分で決めたルールに縛られているだけなら、自分で取っ払えばいい。
オリヴィエの顔が醜く歪み、唇がゆっくりと動き言葉を刻む。そして私も声に出さず、唇だけを動かす。
「絶対に許さない」
「どうぞ、ご勝手に」
声の無い会話をしながら、意地悪な恋愛の神様とオリヴィエに向けて敢えてドヤ顔を決めてやる。
これは私の宣戦布告だ。ぜったいにフロイラは譲らない。隆兄ちゃんの隣に立つのは、私しかいない。
それは、再びお終いにしたはずの恋が始まった瞬間、そしてそれは波乱の幕開けでもあった。
「りゅ、りゅ、りゅ、隆兄ちゃん!?」
空いてる方の手で隆兄ちゃんを付き飛ばそうとしたけれど、反対に隆兄ちゃんは、私の腕を引いて抱きしめた。
「お前な、ちょっとは演技しろよ」
「え、演技??」
小声で囁く隆兄ちゃんに、私も小声で返す。
隆兄ちゃんを見上げれば、小さく顎であっちだと示す。そこに視線を移せば、先日、王座の間で【意義あり!】と物申したおじさんが、ぎりぎり歯ぎしりをせんばかりにこちらを睨みつけていた。
────あーそういうことですか。
どうやら、これは反対勢力への牽制らしい。それに気付いた途端、臨終間近の心臓が復活した。
なんだなんだ、つまりデートとか婚約者というワードをライラさんの前でチラつかせていたのは、そういう人達の耳に入れるためだったのだ。
きっとライラさんは、今頃メイド仲間に先程の出来事を身振り手振り大袈裟に伝えていることだろう。絶対にそうだ。なぜなら女子というものはそういうものだから。世界が違えどやることは同じはず。
そうとわかれば、私だって演技ぐらいしてみせる。
「あーら。リュー王子ったらっ。あなたも好きねぇー。ちょっとだけよー」
むふふ、と作り笑いをして、私は隆兄ちゃんに囁く。
我ながらなかなかの演技力だ。ちなみにこのセリフ、おじさんのお気に入りのコントのDVDから拝借したものだ。
けれど、隆兄ちゃんは死んだ魚のような目になった。
「……水樹、お前はしゃべるな」
なんでよ!
半目になって睨んだけれど、隆兄ちゃんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるだけだった。
とりあえず、私の演技力に問題があったのか、セリフに問題があったのだかだけでも教えてほしい。
不貞腐れたまま隆兄ちゃんに手を引かれて、城内をてくてくと歩く。無言のままてくてくと歩く。けれど───。
「水樹、なんかしゃべろよ」
「はぁ!?さっきしゃべるなって言ったじゃん」
「ああいうセリフはいらねぇ。っていうか、余計に怪しまれる。もっと自然な会話をしろ」
「………………はぁ」
急に自然な会話をしろなんて、なかなかの難題だ。
そもそも、この状況が不自然だというのに、会話だけ自然にしろと言われたって無茶ぶりだ。
「ほら、険悪のまま歩いてたって、意味がないだろ」
「あー……えっと、今日のご飯はなんだろうね」
「唐揚げじゃないことだけは、確かだ」
「……そっかぁ。マジ凹む」
「お前、そこでリアルにしょげるなよ。他のヤツから見たら、俺がお前を凹ませているように見えるだろっ」
くわっと目を見開いて叫んだ隆兄ちゃんに、私は確かにと頷くことしかできない。
額に手を当て、天を仰ぐ隆兄ちゃんに、申し訳なさが込み上げる。でも、最近、おばさんが忙しいくて大好物の唐揚げが食べれないのは本当のこと。
結局、新しいゲームの情報を隆兄ちゃんが降ってくれて盛り上がる。色気ゼロ、甘い雰囲気とは程遠いけれど、私は大変満足なのだ。
それから、取り留めのない話をしながら、再び城内を意味もなくてくてくと歩き、そのままの流れで庭に出る。左右に花壇がある遊歩道を進み。噴水まで歩くと、隆兄ちゃんは立ち止まった。
「ここが、母さんが言ってた噴水だ」
「へぇー……すごいねー」
「水樹、頼むから口を閉じてくれ」
想像を超えた噴水に、あんぐりと口を開けている私に、隆兄ちゃんは呆れながら口を開いた。だけど、私は口をぱくぱくしたまま、閉じることができない。
楕円形の泉水に浮かんでいる噴水は私の想像よりも3倍は大きかった。そして中央の大噴水に女神像が設置されていて、それを取り囲むように水が吹きだしていて、辺りは虹ができている。それから一段下の縁石にもウサギやリスなどの小動物の銅像が設置されていて、そこから細く水が吹き出ている。
夕方の柔らかい陽を受けて噴水がキラキラ反射して、そこだけ格別にファンタジーの世界だった。それに、何よりこのロケーションが素晴らしい。噴水の周りには花壇で美しく飾っているし、少し離れたところには雨宿りができそうな大きな樹が植えられている。
「ちょうどいい、この辺で見せ付けておくか」
言うが早いが隆兄ちゃんは、私を引き寄せ強く抱きしめた。演技とわかっていても、全身が隆兄ちゃんの香りに包まれて、頭がクラクラする。
ぎゅっと隆兄ちゃんの胸に頬を押し付けられて、胸板の厚さと心臓の鼓動が伝わってきて、気を抜くと発狂してしまいそうになる。
それにしても───。
恋愛の神様は本当に意地悪だ。諦めようとした瞬間に、急に隆兄ちゃんとの距離を縮めてくるなんて。
【水樹は、訳のわからない自分だけのルールを持っている】
不意に隆兄ちゃんの言葉が甦る。でも、なぜこんなときにそんなことを思い出してしまうのだろう。
そう思った瞬間、視界の端にオリヴィアがいた。
悔しそうに顔を歪めていても、私よりはるかに美人でスタイルが良い。きっと隆兄ちゃんと並んだら、それこそ一枚の絵になるだろう。
綺麗なオリヴィアは、フロイラに相応しいリデュースヴェンサルフィン国の住人。私は所詮、この世界からみれば、ただの異世界の住人。絶対的に埋められない溝がある。それは認めたくないけど事実。
そして、私がフロイラになることを反対している人もたくさんいる。だからもし仮に、私がフロイラをちゃんとこなせなかったら、ヴィアが隆兄ちゃんの隣に立つのかもしれない。そんな不安な考えがよぎる。それは頭の隅でよぎっただけなのに、モヤモヤが体中に広がっていく。
───そんなの絶対に嫌だ!!
そう思った瞬間、私は隆兄ちゃんの背中に手を回していた。その行動こそが答えだった。
そうだ、そうだったんだ。ずっと苦しかったのは、隆兄ちゃんをまだ好きなのに、無理に諦めようとしたからだ。自分で決めたルールに縛られているだけなら、自分で取っ払えばいい。
オリヴィエの顔が醜く歪み、唇がゆっくりと動き言葉を刻む。そして私も声に出さず、唇だけを動かす。
「絶対に許さない」
「どうぞ、ご勝手に」
声の無い会話をしながら、意地悪な恋愛の神様とオリヴィエに向けて敢えてドヤ顔を決めてやる。
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