幼なじみは異世界の王子様でした。

茂栖 もす

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ゆるキャラ大臣奮闘しますっ

40.…………キレて良いっすよね?

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 私が勝手にチェコ産アイスがどんな味なのかを想像しているうちに話はどんどん進んでいく。

 今度は、ひょろひょろの髭のおじさんが、すっと立ち上がった。なんかその髭の感じがピエールっぽい。あっ、瀧ではなくて、偉人さんの方ね。そんな男爵っぽい人は、存在感が無いのか、立ち上がったことにすら気付かれてなかったけれど、そんなことはお構いなく静かに口を開いた。

「我ら四貴族は、この上申書の通りフロイラの再選抜を要請致します」

 ええええええええ!?マジですか!?

 思わず目を見開いて仰け反った瞬間、ピエールさんには向けられなかった視線が一斉に私に集まる。悪意とか可哀そうとか、お前も運が悪かったなぁという同情の眼差し。そんな明け透けなその視線に耐え切れず、俯いた瞬間、ぞっとするほど低い声が会議室に響いた。

「それはどういう意味かわかっての物言いか?戯言で済む話ではないぞ」

 その声の主がおじさんだと気付くのに、数秒かかってしまった。王様が言った。っていうのはすぐにわかった。でも、おじさんと王様がイコールにならなかったのだ。

 それぐらいおじさんは別人のように怖くて、全てを跳ね付けるような冷たい声音だった。私が追試になっても、うっかり蹴躓いて脇腹にパンチしちゃっても、苦手なピーマンをこっそり避けても、慰めてくれたり困った顔をすることはあっても、絶対に怒らなかったおじさんなのに。

 ただ、その声を聞いてガチでビビったのは私だけ。ここにいる人達は軽く息を呑んだけれど、すぐに取って付けたような笑みを浮かべた。

 そして一番嘘くさい笑みを浮かべたお馴染みのでっぷり太ったおじさんは、立ち上がったまま緩やかに首を振りながらこう言った。

「王は大変素晴らしい賢王でございます。視野も広く知識も豊富。そして我々には想像もつかない斬新な発想で、このリデュースヴェンサルフィン国を押しも押されぬ大国へと導いてくださいました」

 ん?おじさんのことを褒めているはずなのに、何か引っかかる。首を捻りながら続きの言葉を待つ。

「ですが、再び王族の血に異世界の人間のものを入れる訳にはいけません」

 そう太ったおじさんが口にした途端、王様であるおじさんは痛みを堪えるような顔をした。

 ………おじさんのそんな顔を見るのは、私、二回目だった。

 最初にその顔を見たのは、私が小学4年生の時の父兄参観日の直前だった。

 お父さんがいない私に、おじさんが出席してくれると言ってくれたのだ。………でも、駄目だった。担任の先生から『血縁関係が無い人は、参加できません』と言われてしまったのだ。 

 あの頃の私は、今よりもっと無知で【血縁関係】なんて言葉は知らなかった。ただ、おじさんがお父さんの代わりに出席しちゃ駄目と言われたことがとてもショックだった。そして西崎家のことを他人と言われたことが悔しくて、私はワンワン泣いた。

 そんな私に、おじさんは今みたいな顔をして『ごめんね』と言った。おじさんは何も悪いことなんかしていないのに。それが余計辛くて、悲しくて、悔しくて、もっともっとワンワン泣いてしまった。年月が経った今でも私は、あの時のおじさんの顔が脳裏に焼き付いている。そして、それは一生、忘れることはないだろう。

 でも、今なら担任の先生が駄目だと言った理由は何となくわかる。先生は線引きをしたかっただけ。そこに悪意はなかった。でも、今、ここに居る人達は悪意を持っている。

 ちらりと隆兄ちゃんとおじさんを見れば、二人はとても悔しそうな顔をしていた。けれど反論はしない。いや、できないのだろう。

 だっておじさんが私と同じ生粋の日本人なのも事実。そして隆兄ちゃんが、異世界と日本人のハーフというのも事実。

 でも………嫌だ。王様と王子様なのに、そんな顔なんかしちゃいけない。 

 王族の血が大事なのは、漫画の世界で私は十分に知っている。だけど私がフロイラでいることが不満なのに、こんなふうに隆兄ちゃん達の力ではどうしようもないことを責めるのは、とてもズルいと思う。

 もちろん毎度、赤点ギリギリの私が純潔と乙女の象徴なんていう看板を背負う資格はないのはわかる。ただ、どうしようもないことを上げ連ねて、攻撃するのは、とてもとても良くない。

 それにそもそも、私がフロイラになったのは、西崎家の恩返しの為なのだ。だから、隆兄ちゃん達を苦しめる人がいるなら、私にとってそいつらは全部、敵だ。

 …………キレて良いっすよね?そう自分に問いかける。そうすれば、もう一人の自分は満面の笑みでGOサインを出してくれた。

 瞬間、私は、勢い良く椅子を蹴倒して立ち上がった。

 しんとした会議室に響く椅子が倒れる音。そして何事かと不審そうに私に集まる視線。そんな視線を全身に浴びながら、私はわざとゆっくり口を開いた。

「ぱぁーどぅぅーんっ?」

 鼻で笑いながら、口元を歪めて、全身全霊でこいつ等を小馬鹿にするように。

 でも、ちらりと隆兄ちゃんを見たら『お前のほうが、ぱーどぅん、だ』という顔をしている。

 ………………お願い、隆兄ちゃん。水樹の一世一代の演技を邪魔しないで欲しい。
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感想 14

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みんなの感想(14件)

泉
2022.07.03

やっぱり可愛いなぁ

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2020.09.22 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

解除
泉
2019.05.19

今寝る前にリフレッシュを…と思ったらやったぜ( ^ω^)更新されてるじゃねえか
「ぱーどぅん?」( ˙꒳˙ )にっこりGOサイン出すよ!

2019.05.23 茂栖 もす

泉海 晃 さま

この度は感想ありがとうございました&返信が遅くなり申し訳ありません(o*。_。)oペコッ

本当に私が「ぱーどぅん?」( ˙꒳˙ )状態でした( ノД`)シクシク…

体調不良&私事が重なり、なかなか更新が遅くなり申し訳ありません(o*。_。)oペコッ

脳内では書き進めていますので、お暇な時にでも覗いてみてください。

それでは本当に今回の返信が遅くなり、申し訳ありませんでしたm(_ _"m)

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