76 / 89
終焉の始まり
★彼女に向かう気持ち(レナザード視点)①
しおりを挟む
かつて自分に光を灯してくれた少女の為に、強い自分になる。そう誓いを立て、レナザードはティリア王女ことスラリスの元を去った。
誰よりも強くなりたい。そう心に刻み、鍛錬に明け暮れているある日のことだった。まだ存命だった父親が、レナザードに声を掛けた。【会わせたい人がいる】と言って。
そして手を引かれ連れていかれたのは、屋敷の一室だった。そこに一人の少女がいた。
灰色がかった紫色の髪と同じ色の瞳。同じ紫の色を持つ少女は、自分にとって近親者であることはわかった。けれど───。
『ティリアより、少し年上か』
それが少女に対するレナザードの第一印象で、それ以上なにも思うものはなかった。けれど、いつのまにか父親は姿を消し、部屋で二人っきりになれば、戸惑いは隠せない。そんな居心地悪さが少女にも伝わってしまったのだろう。
少女は少し怯えた顔をして、何か口にしようとしたが、それは声にする前に消えていく。そして何度かそれを繰り返した後───。
『初めまして、お兄様。私、ユズリと申します』
ぎこちない笑みを浮かべ、少女はスカートの裾を少し摘まんで、貴婦人のまねごとのような礼を取った。
その瞬間、持て余していた少女の存在がすとんと胸に収まった。【自分の妹】という一生変わることのない、けれど、大切な場所に収まったのだ。
それからしばらくして、ユズリは自分の異母兄弟ということを知った。そうなった経緯は、耳にしたはずだが、深く覚えてはいない。
もう既にどうでも良いことだったから。レナザードにとって半分しか血がつながらなくても、ユズリが妹であることは変わりがなかったから。
それ程までに、レナザードはユズリのことを深く愛していた。けれど、その気持ちはかつてのティリア王女に向かうものでも、スラリスに向かうものでもない。言葉にするならば、親愛というものだった。
だから年月を重ね、ユズリが美しい女性となっても、レナザードに向けるユズリの視線に親愛以外の何かが含まれていることにも気付くことができなかった。
そして、その妹が自分を裏切ったという事実を目の当たりにしても、レナザードのユズリに向かう気持ちは変わらなかった。
「主さま……このままだと、ユズリがスラリスを.........お……お願いです、お願いですっ。姫さまを……スラリスを助けて下さい!!」
リオンの叫び声が、追想していたレナザードを現に呼び戻した。
ゆるゆると視線を下せば、リオンの小さな手がレナザードの腕を掴み、目を潤ませている。
必死に懇願するリオンに、スラリスの身にどれほどの危険が迫っているかが伝わってくる。けれど、そんなはずはないと、レナザードは自分に言い聞かせるように、拳を強く握りしめた。
なぜなら、スラリスの渡る《路》は、ケイノフが創り上げた強力な結界なのだから。
スラリスが約束を守ってさえいれば、決してバイドライル国の兵に見つかることなく、安全な場所へ移動できるはずだ。絶対に、大丈夫なはず───だった。
しかしそれは相手が人間なら、のこと。異形のものが相手となれば話は違う。そして、リオンがユズリの手により傷つけられ、スラリスが危険に晒されている。これは嘘偽りのない現実なのだ。その証拠にレナザードの手が自分の意思とは関係なく震えている。
「ケイノフ……《路》はどうなっている?」
「…………………」
《路》という名の結界は、創り上げた者なら状況をすぐさま見通すことができる。けれど、ケイノフは自分の主に応えることができない。
ケイノフはきつく唇を噛み締め俯いた。罪責感からレナザードを直視することができない。
なぜならケイノフは少し前から気付いていたから。人間には決して見つけることができないはずのこの屋敷が襲撃されたということは、一族の誰かがバイドライル国に手を貸したということ。その誰かは.........思い当たる人物は一人しかいない。
しかもそれが、レナザードを挟んでの痴情のもつれから来るものだと知った当の本人が受ける衝撃は、計り知れないものだから。側近として、そして同じ男として、それを伝えることはあまりに酷なこと。
けれど答えを探しあぐね口を噤むケイノフに、レナザードは容赦ない言葉を浴びせる。
「ケイノフ答えろっ」
剥き出しの感情のまま、そう叫ぶレナザードに、ケイノフはあらがう事が出ない。しばしの間の後、もっとも重要なことだけを口にした。
「………ユズリが、堕ちたみたいです」
ケイノフのその言葉を耳にした途端、レナザードの瞳に絶望の色が広がった。そして彼はこの瞬間、初めて本当の恐怖を覚えた。大切な者の命が指先からすり抜けていくような、そんなとてつもない恐怖を。そしてもう一人の大切な妹と二度と会えないという絶望を。
ユズリは禁忌を犯してしまった。そして身の内に潜むものに、体を奪取されたものは、二度と元には戻らない。そんな罪人に課せられる制裁は【死】のみ。その鉄槌を下すのは、一族の長の役目。
それは一族の者なら、誰しもが知ることで、一族の長はその覚悟を持って、長となる。
けれど、レナザードはユズリの兄でもある。長としての憤りもあるが、それとはまた別の激しい後悔に打ちのめされていた。どうして、気付くことができなかったのだろう、と。
しかしどれだけ考えても、レナザードはきっとその答えにたどり着くことはできないだろう。
ユズリがどれだけレナザードに対して生意気な態度をとっても、どれだけ無礼なことを言おうとも、腹の底から怒りを覚えることはない。結局は許してしまう。それは、妹だから。言い換えれば、ユズリはどうあってもレナザードの妹でしかない。ユズリは一生、他の何かにはなれないのだ。
レナザードはぐっと拳を強く握り締め、喘ぐように天を仰いだ。ユズリにとってただの兄であるならば、大切な妹を連れて逃げることも、無いとは知っていても救う術を探す悪あがきもできる。
けれど、レナザードは一族の長。決断をしなければならない。悲しく辛い決断を。
そして、迷いを振り切るように自分の拳を地面に叩き付けた後、レナザードは勢い良く立ち上がった。
「ダーナとケイノフ。茶番は終わりだ。さっさと片付けるぞ」
愛する人を護りたい。愛する人をこの手で殺さなければならない。
願望と責務に挟まれたレナザードだったが、今、自分が取るべき行動を見失うことはなかった。
誰よりも強くなりたい。そう心に刻み、鍛錬に明け暮れているある日のことだった。まだ存命だった父親が、レナザードに声を掛けた。【会わせたい人がいる】と言って。
そして手を引かれ連れていかれたのは、屋敷の一室だった。そこに一人の少女がいた。
灰色がかった紫色の髪と同じ色の瞳。同じ紫の色を持つ少女は、自分にとって近親者であることはわかった。けれど───。
『ティリアより、少し年上か』
それが少女に対するレナザードの第一印象で、それ以上なにも思うものはなかった。けれど、いつのまにか父親は姿を消し、部屋で二人っきりになれば、戸惑いは隠せない。そんな居心地悪さが少女にも伝わってしまったのだろう。
少女は少し怯えた顔をして、何か口にしようとしたが、それは声にする前に消えていく。そして何度かそれを繰り返した後───。
『初めまして、お兄様。私、ユズリと申します』
ぎこちない笑みを浮かべ、少女はスカートの裾を少し摘まんで、貴婦人のまねごとのような礼を取った。
その瞬間、持て余していた少女の存在がすとんと胸に収まった。【自分の妹】という一生変わることのない、けれど、大切な場所に収まったのだ。
それからしばらくして、ユズリは自分の異母兄弟ということを知った。そうなった経緯は、耳にしたはずだが、深く覚えてはいない。
もう既にどうでも良いことだったから。レナザードにとって半分しか血がつながらなくても、ユズリが妹であることは変わりがなかったから。
それ程までに、レナザードはユズリのことを深く愛していた。けれど、その気持ちはかつてのティリア王女に向かうものでも、スラリスに向かうものでもない。言葉にするならば、親愛というものだった。
だから年月を重ね、ユズリが美しい女性となっても、レナザードに向けるユズリの視線に親愛以外の何かが含まれていることにも気付くことができなかった。
そして、その妹が自分を裏切ったという事実を目の当たりにしても、レナザードのユズリに向かう気持ちは変わらなかった。
「主さま……このままだと、ユズリがスラリスを.........お……お願いです、お願いですっ。姫さまを……スラリスを助けて下さい!!」
リオンの叫び声が、追想していたレナザードを現に呼び戻した。
ゆるゆると視線を下せば、リオンの小さな手がレナザードの腕を掴み、目を潤ませている。
必死に懇願するリオンに、スラリスの身にどれほどの危険が迫っているかが伝わってくる。けれど、そんなはずはないと、レナザードは自分に言い聞かせるように、拳を強く握りしめた。
なぜなら、スラリスの渡る《路》は、ケイノフが創り上げた強力な結界なのだから。
スラリスが約束を守ってさえいれば、決してバイドライル国の兵に見つかることなく、安全な場所へ移動できるはずだ。絶対に、大丈夫なはず───だった。
しかしそれは相手が人間なら、のこと。異形のものが相手となれば話は違う。そして、リオンがユズリの手により傷つけられ、スラリスが危険に晒されている。これは嘘偽りのない現実なのだ。その証拠にレナザードの手が自分の意思とは関係なく震えている。
「ケイノフ……《路》はどうなっている?」
「…………………」
《路》という名の結界は、創り上げた者なら状況をすぐさま見通すことができる。けれど、ケイノフは自分の主に応えることができない。
ケイノフはきつく唇を噛み締め俯いた。罪責感からレナザードを直視することができない。
なぜならケイノフは少し前から気付いていたから。人間には決して見つけることができないはずのこの屋敷が襲撃されたということは、一族の誰かがバイドライル国に手を貸したということ。その誰かは.........思い当たる人物は一人しかいない。
しかもそれが、レナザードを挟んでの痴情のもつれから来るものだと知った当の本人が受ける衝撃は、計り知れないものだから。側近として、そして同じ男として、それを伝えることはあまりに酷なこと。
けれど答えを探しあぐね口を噤むケイノフに、レナザードは容赦ない言葉を浴びせる。
「ケイノフ答えろっ」
剥き出しの感情のまま、そう叫ぶレナザードに、ケイノフはあらがう事が出ない。しばしの間の後、もっとも重要なことだけを口にした。
「………ユズリが、堕ちたみたいです」
ケイノフのその言葉を耳にした途端、レナザードの瞳に絶望の色が広がった。そして彼はこの瞬間、初めて本当の恐怖を覚えた。大切な者の命が指先からすり抜けていくような、そんなとてつもない恐怖を。そしてもう一人の大切な妹と二度と会えないという絶望を。
ユズリは禁忌を犯してしまった。そして身の内に潜むものに、体を奪取されたものは、二度と元には戻らない。そんな罪人に課せられる制裁は【死】のみ。その鉄槌を下すのは、一族の長の役目。
それは一族の者なら、誰しもが知ることで、一族の長はその覚悟を持って、長となる。
けれど、レナザードはユズリの兄でもある。長としての憤りもあるが、それとはまた別の激しい後悔に打ちのめされていた。どうして、気付くことができなかったのだろう、と。
しかしどれだけ考えても、レナザードはきっとその答えにたどり着くことはできないだろう。
ユズリがどれだけレナザードに対して生意気な態度をとっても、どれだけ無礼なことを言おうとも、腹の底から怒りを覚えることはない。結局は許してしまう。それは、妹だから。言い換えれば、ユズリはどうあってもレナザードの妹でしかない。ユズリは一生、他の何かにはなれないのだ。
レナザードはぐっと拳を強く握り締め、喘ぐように天を仰いだ。ユズリにとってただの兄であるならば、大切な妹を連れて逃げることも、無いとは知っていても救う術を探す悪あがきもできる。
けれど、レナザードは一族の長。決断をしなければならない。悲しく辛い決断を。
そして、迷いを振り切るように自分の拳を地面に叩き付けた後、レナザードは勢い良く立ち上がった。
「ダーナとケイノフ。茶番は終わりだ。さっさと片付けるぞ」
愛する人を護りたい。愛する人をこの手で殺さなければならない。
願望と責務に挟まれたレナザードだったが、今、自分が取るべき行動を見失うことはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる