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◆◇第一幕◇◆ 時空の監視者の愛情は伝わらない
★それは俗に言う一目惚れというもの(バルドゥール目線)
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花畑で彼女を見た瞬間、天使だと思った。
風になびく長い黒髪は、陽の光を浴びてキラキラと輝き、不安そうに揺れる瞳は零れ落ちそうな程大きく、吸い込まれてしまいそうだった。
そして、その華奢な身体は、自分が抱きしめたら壊れてしまうのかと不安を覚えるほど、繊細な彫刻のようなそれだった。
但し、瀕死の状態で喘ぐ彼女は、翼を捥がれた天使でもあり、無残な程、痛ましい姿だった。けれど、それと同時に美しいと感じた。
自分を見上げながら、小さく震える唇に触れたいと思った。青ざめる頬に手を添えたいと思った。そして、この天使を誰にも奪われたくないという支配欲が、全身を駆け巡った。
唐突に湧き出たその感情は、俗に言う一目惚れということ。あの瞬間、自分はこの身体が恋に落ちるのを はっきりと感じてしまった。
丘の上に白亜の城がある通り、このイスガルドの街は王都でもある。そしてその麓には、広大な花畑が広がっている。
王都の広大な敷地を無駄に遊ばせるなど、愚行でしかないが、これには理由がある。
数年、又は数十年に一度、この花畑に異世界の人間が突如として降臨してしまうのだ。しかも必ず女性が。
そして異世界から現れた女性は、総じて儚い存在で、この地に降り立った途端、命を落としてしまう弱い弱い生き物だった。ただし、これには【何もしなければ】という前置きが付く。
異世界の女性を、この地に留める方法は一つだけある。
それは、この国で一部の限られた人間と深くつながる事。もっと言うなれば、定期的に深く繋がりをもてば、この世界の人間と同じ寿命を持つことができる。その一部の限られた人間とは、時空の監視者と呼ばれるものであった。
そして自分───バルドゥール・ガネーシュもその一人。時空の監視者であった。
「いらっしゃいませ………って、ちょうど良かった。今、出来上がりましたよ」
扉を開けた途端、初老の店主が自分を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「細部まで注文つけるもんで、随分苦労したよ。ま、出来上がりは我ながら上出来だけどね。で、お前さん、彼女さんはこれを受け取ってもらえそうなのかい?」
この店主は、顔を会わす度に、やれ腰が痛い、やれ目が霞むとあいさつ代わりに体の不調を訴えてくるが、口だけは元気だ。そして、一旦口を開くと、とにかく話が長くなる。
自他共に寡黙と認めている自分に喋りかける店主に、いつも首を傾げてしまうが、それもまた老人の楽しみなのだろう。ただ、今日は年寄りの道楽に付き合う程、時間に余裕がない。
「御託は良い。さっさと見せろ」
用件のみを伝え、カウンターにもたれ掛かり腕を組む。
ここは街の一角にある宝飾店。店主の長話だけが玉に瑕だが、それ以外の技術、納期、扱う素材の良さにおいては申し分ない。
扱う商品は全てオーダーメイドだけあって、店内はショーケースなど無く、カウンターのみ。けれど、奥の工房の広さはかなりのものだ。
見るともなしに店内をぐるりと一瞥すれば、すぐに店主が化粧箱を手にして、こちらに戻って来た。
「はいよ。これが注文の品。ご注文通り仕上げたはずだけど、ま、確認してくれや」
そう言って店主は、化粧箱の蓋をそっと開けた。
中には繊細なレースのように、細い銀の糸を編み込んだチョーカーが収められていた。中央には見てるだけで吸い込まれそうな、混ざりけの無い、純粋な蒼色の宝石がはめ込まれている。
この国では、求愛の証として自分の髪や瞳と同じ色の宝飾品を贈る習慣がある。だから、本来、この銀のチョーカーには朱色か金のものをはめ込むのが正しい。
けれど、敢えて違う色────初めて彼女が、この世界で見た同じ空の色の宝石を贈ることにした。
これを身に付けた彼女を想像して、自然と口元が綻ぶ。あの透けるような白い肌に、良く映えるだろう。
失望も淋しさも人間には必要な感情だ。けれど、それだけでは心が死んでしまう。
同じように喜びや嬉しさ、楽しさだって必要なものだ。けれど自分は、彼女の恐怖に満ちて蒼くこわばった顔ばかり目にしている。………そうさせてしまった責は自分にあるのだが。
だからこそ、これを贈ることで少しは喜んでもらえたら、こんな嬉しいことはない。
そして、ずっとずっと自分は待ち望んでいる。彼女の表情が和らぐことを。自分に微笑みかけてくれることを。
「満足のようだね」
「ああ、上出来だ」
素直に感想を口にすれば、店主はあからさまに驚き、こりゃ雨が降るなどと真顔で言った。
随分なことを言われ、代金と一緒に文句の一つでも渡してやろうかと思った。
だが、そうすれば、店主は待ってましたと言わんばかりに、だらだらと中身のない長話を始めてしまうだろう。
喉まで出かかった言葉は、そのまま無理矢理、飲み込むことにした。
そして箱を手にして店を出た途端、ほぼ毎日耳にしている馴染みのある声が、飛んできた。
「あーこんなところにいたんですか。探しましたよ」
声のする方に視線をむければ、そこには部下のルークがいた。
時空の監視者の制服ではなく、なぜか普段着で自分に向かって軽く手を挙げている。
おかしい。火急の要件を伝えに来たわけでもないのに、わざわざ自分を探すなど、どんな風の吹き回しだろうか。
「こんなところで何をしている?」
「へぇー、随分、手際が良いですねー。先輩」
「………………」
無駄に語尾を伸ばしながら、自分の手元を覗き込む部下に、肩を竦ませる。目ざとい奴だ。
「でも、これ彼女は受け取るかなぁ?」
あっけらかんとした言葉とは裏腹の含みがある言葉に、軽い苛立ちが生まれた。
「何が言いたいんだ?」
「いやー。純粋な疑問ですよ。先輩」
純粋さなど微塵も感じられない物言いに、じろりと睨みつけながら口を開いた。
「受け取るに決まっているだろう」
さあどうですかね?と意味ありげに笑みを浮かべるルークに、無意識に歩幅を詰める。
普段なら、こうすれば大概のことはぺろりと胸の内を白状する奴だが、今日に限っては違った。
「だって彼女屋敷から逃げたし」
「逃げた……だと?」
随分、間の抜けた声だ。頭の隅でそんなことを考えていたら、ルークが笑いながら再び口を開いた。
「あーごめんごめん。僕が扉を開けたんでした」
それを聞いた瞬間、気付いたらルークを殴り飛ばしていた。
「……お前、今日が10日目ってわかっててやったのか!?」
「もちろん、知ってますよ」
石畳に尻もちをついたまま、手の甲で唇の血を拭いながら、ルークは飄々とそう言った。
そして、その事実を受け止めきれなず呆然とする自分に、更に言葉を重ねた。
「こっちの気も知らないお嬢さんに、僕、ちょっとイラついてるんです。あのお嬢さん、名前すら言わない。やる事成すこと全部反発するし、自分だけ不幸だと思っている。そんなお嬢さんには、ちょっと痛い思いをしてわからせないといけないかなって思いましてさ」
「余計なことをするなっ」
我に返ってそう怒鳴りながらも、これ以上、ルークを強く叱責できない。
なぜなら、目の前の部下はこちら側の気持ちを代弁しているからだ。
一度も口にすることはなかった。でも、苛立ちのあまりいっそ、そうしてみようかと思ったことを、ルークは自分の代わりに実行したのだ。けれどそれは、やり過ぎだ。
急いで彼女を見付けなければ、間に合わない。そう思った時には、馬を駆け、街を走り抜けていた。
待ち行く市井の者に尋ねれば、容易に足取りがつかめる。けれど、そんな必要はない。彼女が向かう場所は一つしかないだろう。
彼女はきっと元の世界に戻ろうと、あそこへ向かったのだ。二度と戻ることはできないという自分の言葉を信じることはせず、己の目で確かめに行ったはず。
屋敷から花畑までは、かなりの距離がある。あの細い身体で徒歩で向かったなど、考えにくい………と、一瞬思ったが、きっと彼女なら意地でもあそこにたどり着くだろうと確信しる。
彼女はいつもそうだ。意志が強く、時には突拍子もないことをする。見た目の儚さとは裏腹に、その行動力に舌を巻く。
けれど、もし仮に彼女を見付けることができなければ、彼女のあの漆黒の髪も、気の強い眼差しも、組み敷いたときの柔らかい身体も、自分だけが知る彼女の中の熱さも 全部消えて無くなるのだろうか。跡形もなく、まるで幻だったかのように。
ただの骸となった彼女を想像した途端、刺すような戦慄が身体中を駆け巡った。
頼む、頼むから、間に合ってくれ。そう心の中で叫びながら、がむしゃらに馬を走らせ、太陽が沈む直前に花畑に辿り着くことができた。
馬を降りて、視線を少し彷徨わせば、花の色の中に漆黒がちらりと見えた。そしてまっすぐそこに足を向ければ、仰向けに倒れている彼女が居た。
「気が済んだか?」
息も絶え絶えになっている彼女に、そう問いかけてみる。そうすれば、天使はくしゃりと顔を歪めた。
そして彼女が声にならない声で自分を拒んでいるのを、痛い程に感じる。
それでも自分は、彼女に手を伸ばす。これは自分が絶対に手離してはいけないもの。
たとえ彼女の生まれ育った世界がここではないとしても、自分の命を削り、魂を捧げた人間が最後に辿り着く場所が、こんなところなんかであってたまるものか。
だから、この手を振り払われようとも、今の望みは一つだけだ。
彼女が生きてくれれば良い。───……もう、それだけで良い。
風になびく長い黒髪は、陽の光を浴びてキラキラと輝き、不安そうに揺れる瞳は零れ落ちそうな程大きく、吸い込まれてしまいそうだった。
そして、その華奢な身体は、自分が抱きしめたら壊れてしまうのかと不安を覚えるほど、繊細な彫刻のようなそれだった。
但し、瀕死の状態で喘ぐ彼女は、翼を捥がれた天使でもあり、無残な程、痛ましい姿だった。けれど、それと同時に美しいと感じた。
自分を見上げながら、小さく震える唇に触れたいと思った。青ざめる頬に手を添えたいと思った。そして、この天使を誰にも奪われたくないという支配欲が、全身を駆け巡った。
唐突に湧き出たその感情は、俗に言う一目惚れということ。あの瞬間、自分はこの身体が恋に落ちるのを はっきりと感じてしまった。
丘の上に白亜の城がある通り、このイスガルドの街は王都でもある。そしてその麓には、広大な花畑が広がっている。
王都の広大な敷地を無駄に遊ばせるなど、愚行でしかないが、これには理由がある。
数年、又は数十年に一度、この花畑に異世界の人間が突如として降臨してしまうのだ。しかも必ず女性が。
そして異世界から現れた女性は、総じて儚い存在で、この地に降り立った途端、命を落としてしまう弱い弱い生き物だった。ただし、これには【何もしなければ】という前置きが付く。
異世界の女性を、この地に留める方法は一つだけある。
それは、この国で一部の限られた人間と深くつながる事。もっと言うなれば、定期的に深く繋がりをもてば、この世界の人間と同じ寿命を持つことができる。その一部の限られた人間とは、時空の監視者と呼ばれるものであった。
そして自分───バルドゥール・ガネーシュもその一人。時空の監視者であった。
「いらっしゃいませ………って、ちょうど良かった。今、出来上がりましたよ」
扉を開けた途端、初老の店主が自分を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「細部まで注文つけるもんで、随分苦労したよ。ま、出来上がりは我ながら上出来だけどね。で、お前さん、彼女さんはこれを受け取ってもらえそうなのかい?」
この店主は、顔を会わす度に、やれ腰が痛い、やれ目が霞むとあいさつ代わりに体の不調を訴えてくるが、口だけは元気だ。そして、一旦口を開くと、とにかく話が長くなる。
自他共に寡黙と認めている自分に喋りかける店主に、いつも首を傾げてしまうが、それもまた老人の楽しみなのだろう。ただ、今日は年寄りの道楽に付き合う程、時間に余裕がない。
「御託は良い。さっさと見せろ」
用件のみを伝え、カウンターにもたれ掛かり腕を組む。
ここは街の一角にある宝飾店。店主の長話だけが玉に瑕だが、それ以外の技術、納期、扱う素材の良さにおいては申し分ない。
扱う商品は全てオーダーメイドだけあって、店内はショーケースなど無く、カウンターのみ。けれど、奥の工房の広さはかなりのものだ。
見るともなしに店内をぐるりと一瞥すれば、すぐに店主が化粧箱を手にして、こちらに戻って来た。
「はいよ。これが注文の品。ご注文通り仕上げたはずだけど、ま、確認してくれや」
そう言って店主は、化粧箱の蓋をそっと開けた。
中には繊細なレースのように、細い銀の糸を編み込んだチョーカーが収められていた。中央には見てるだけで吸い込まれそうな、混ざりけの無い、純粋な蒼色の宝石がはめ込まれている。
この国では、求愛の証として自分の髪や瞳と同じ色の宝飾品を贈る習慣がある。だから、本来、この銀のチョーカーには朱色か金のものをはめ込むのが正しい。
けれど、敢えて違う色────初めて彼女が、この世界で見た同じ空の色の宝石を贈ることにした。
これを身に付けた彼女を想像して、自然と口元が綻ぶ。あの透けるような白い肌に、良く映えるだろう。
失望も淋しさも人間には必要な感情だ。けれど、それだけでは心が死んでしまう。
同じように喜びや嬉しさ、楽しさだって必要なものだ。けれど自分は、彼女の恐怖に満ちて蒼くこわばった顔ばかり目にしている。………そうさせてしまった責は自分にあるのだが。
だからこそ、これを贈ることで少しは喜んでもらえたら、こんな嬉しいことはない。
そして、ずっとずっと自分は待ち望んでいる。彼女の表情が和らぐことを。自分に微笑みかけてくれることを。
「満足のようだね」
「ああ、上出来だ」
素直に感想を口にすれば、店主はあからさまに驚き、こりゃ雨が降るなどと真顔で言った。
随分なことを言われ、代金と一緒に文句の一つでも渡してやろうかと思った。
だが、そうすれば、店主は待ってましたと言わんばかりに、だらだらと中身のない長話を始めてしまうだろう。
喉まで出かかった言葉は、そのまま無理矢理、飲み込むことにした。
そして箱を手にして店を出た途端、ほぼ毎日耳にしている馴染みのある声が、飛んできた。
「あーこんなところにいたんですか。探しましたよ」
声のする方に視線をむければ、そこには部下のルークがいた。
時空の監視者の制服ではなく、なぜか普段着で自分に向かって軽く手を挙げている。
おかしい。火急の要件を伝えに来たわけでもないのに、わざわざ自分を探すなど、どんな風の吹き回しだろうか。
「こんなところで何をしている?」
「へぇー、随分、手際が良いですねー。先輩」
「………………」
無駄に語尾を伸ばしながら、自分の手元を覗き込む部下に、肩を竦ませる。目ざとい奴だ。
「でも、これ彼女は受け取るかなぁ?」
あっけらかんとした言葉とは裏腹の含みがある言葉に、軽い苛立ちが生まれた。
「何が言いたいんだ?」
「いやー。純粋な疑問ですよ。先輩」
純粋さなど微塵も感じられない物言いに、じろりと睨みつけながら口を開いた。
「受け取るに決まっているだろう」
さあどうですかね?と意味ありげに笑みを浮かべるルークに、無意識に歩幅を詰める。
普段なら、こうすれば大概のことはぺろりと胸の内を白状する奴だが、今日に限っては違った。
「だって彼女屋敷から逃げたし」
「逃げた……だと?」
随分、間の抜けた声だ。頭の隅でそんなことを考えていたら、ルークが笑いながら再び口を開いた。
「あーごめんごめん。僕が扉を開けたんでした」
それを聞いた瞬間、気付いたらルークを殴り飛ばしていた。
「……お前、今日が10日目ってわかっててやったのか!?」
「もちろん、知ってますよ」
石畳に尻もちをついたまま、手の甲で唇の血を拭いながら、ルークは飄々とそう言った。
そして、その事実を受け止めきれなず呆然とする自分に、更に言葉を重ねた。
「こっちの気も知らないお嬢さんに、僕、ちょっとイラついてるんです。あのお嬢さん、名前すら言わない。やる事成すこと全部反発するし、自分だけ不幸だと思っている。そんなお嬢さんには、ちょっと痛い思いをしてわからせないといけないかなって思いましてさ」
「余計なことをするなっ」
我に返ってそう怒鳴りながらも、これ以上、ルークを強く叱責できない。
なぜなら、目の前の部下はこちら側の気持ちを代弁しているからだ。
一度も口にすることはなかった。でも、苛立ちのあまりいっそ、そうしてみようかと思ったことを、ルークは自分の代わりに実行したのだ。けれどそれは、やり過ぎだ。
急いで彼女を見付けなければ、間に合わない。そう思った時には、馬を駆け、街を走り抜けていた。
待ち行く市井の者に尋ねれば、容易に足取りがつかめる。けれど、そんな必要はない。彼女が向かう場所は一つしかないだろう。
彼女はきっと元の世界に戻ろうと、あそこへ向かったのだ。二度と戻ることはできないという自分の言葉を信じることはせず、己の目で確かめに行ったはず。
屋敷から花畑までは、かなりの距離がある。あの細い身体で徒歩で向かったなど、考えにくい………と、一瞬思ったが、きっと彼女なら意地でもあそこにたどり着くだろうと確信しる。
彼女はいつもそうだ。意志が強く、時には突拍子もないことをする。見た目の儚さとは裏腹に、その行動力に舌を巻く。
けれど、もし仮に彼女を見付けることができなければ、彼女のあの漆黒の髪も、気の強い眼差しも、組み敷いたときの柔らかい身体も、自分だけが知る彼女の中の熱さも 全部消えて無くなるのだろうか。跡形もなく、まるで幻だったかのように。
ただの骸となった彼女を想像した途端、刺すような戦慄が身体中を駆け巡った。
頼む、頼むから、間に合ってくれ。そう心の中で叫びながら、がむしゃらに馬を走らせ、太陽が沈む直前に花畑に辿り着くことができた。
馬を降りて、視線を少し彷徨わせば、花の色の中に漆黒がちらりと見えた。そしてまっすぐそこに足を向ければ、仰向けに倒れている彼女が居た。
「気が済んだか?」
息も絶え絶えになっている彼女に、そう問いかけてみる。そうすれば、天使はくしゃりと顔を歪めた。
そして彼女が声にならない声で自分を拒んでいるのを、痛い程に感じる。
それでも自分は、彼女に手を伸ばす。これは自分が絶対に手離してはいけないもの。
たとえ彼女の生まれ育った世界がここではないとしても、自分の命を削り、魂を捧げた人間が最後に辿り着く場所が、こんなところなんかであってたまるものか。
だから、この手を振り払われようとも、今の望みは一つだけだ。
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