3 / 26
1.水澄む
3
しおりを挟む
「失礼します、小和です。碧水屋のお遣いなのですが……」
資料室の中は、本が散乱していた。
日差し避けのカーテンが引かれた薄暗い部屋の中に、本の塔が四、五個見える。備え付けられた机を無視して床に広げられた資料を、やはり床に座りこんで、本の塔に埋もれるようにして読んでいるのが、この学校の社会科講師、笹岡智徳だった。還暦も近い歳で、薄い髪の毛にはところどころ白髪が交じっている。四角い黒ぶち眼鏡を一度、指先で持ち上げたかと思うと、笹岡は、はっとしたような顔で小和を見上げた。
「あ、碧水屋の、」
「小和です。お仕事中にすみません」
小和が頭を下げると、いやいや、と笹岡は笑った。本の山を乗り越えて、小和のもとまでやってくる。
「仕事という訳じゃあないですから……、お遣いですか?」
「はい、おかみさんから、先生と職員寮の皆さんに、お菓子を届けに来ました。山水の葛というお菓子で、さっき中井さんに預けてきたんですが」
「そうですか。いつもありがとうございます、こんな山の中まで」
「いえ、りくのところへ、様子伺いに行く用事もありましたから」
小和がそう首を横に振ると、笹岡はぐるりと資料室を見渡して、それじゃあ一旦戻りましょうかねぇ、と諦めたように呟いた。
「小和さんがいらしたということは、もうおやつ時のようですし」
小和も同じように資料室を見渡して、先生は、と口を開く。
「今日は、何をなさってたんですか?」
笹岡は、歴史学の教授である。大学からの出向で、日本史の教師としてここに来ていた。本来の専門は郷土史で、尾羽の町の歴史にも興味を持ち、よく町に顔を出すうちに、碧水屋の常連客となったのだった。職員寮に住んでいるのもそのためで、よく資料室でこの町の民俗資料や町史などを、教材探しがてらに読んでいる。その内、それに没頭して、今日のように時間を忘れてしまうこともしばしばだった。
問われて、笹岡はばつが悪そうに顔を顰めて頭を掻いた。
「いや、面目ない、今日は新しく入った資料の整理をね、やってるうちに読みふけってしまって……」
言葉が尻すぼみになっていく。叱られた子供のような顔をしている笹岡に、小和は思わず笑った。
「じゃあ、整理は私がしばらく代わります。どうぞ、休憩して来てください」
「いやいや、いつも手伝ってもらっているのに、そんな、」
「いいえ、おかみさんも、そのつもりで私にお遣いを頼んでいますから」
恐縮する笹岡に、大丈夫ですよと答えて、小和は山になった本の一冊を手に取った。笹岡がよく資料室に籠もるので、こうしてお遣いに来る小和も、片付けや資料の探し出しを手伝うようになった。どういう本がどういう関連で棚に並んでいるのか、もうだいぶ覚えてしまっている。
「益々申し訳ない……あ、でも、そういえば小和さん」
「はい?」
本を棚に戻しながら、呼ばれて小和は振り返った。
笹岡は、少し目を細めるようにして、小和を見ている。
「小和さんは、学校に行ったことはないんでしたよね」
「はい。小さい頃にりくに拾われましたから。りくとおかみさんが、読み書きを教えてくださいましたけど」
「せっかくここに来ているんです、ここの本、興味がおありでしたら、どうぞ好きに読んでいって下さい」
「えっ」
笹岡の言葉に、小和は、いいんですか、と問い返した。
頬が上気するのが分かる。思わず手で頬を押さえた。
「学校のご本なんじゃ」
「構いませんよ。半分は僕の私物ですし、小和さんには、いつも手伝っていただいていますから」
「……でも、私、あんまり難しい本はまだ読めなくて」
家事やお店の手伝いの合間に、少しずつ読み書きを習っていた小和には、簡単な物語ならともかく、難しい言葉の多い本は、まだ理解できないものも多かった。ましてや、大学教授が使う学術書など。
笹岡はしかし、微笑んだ。
「そんなに小難しい本ばかりではありませんよ。地域の物語を集めたような本もあります。勿論、小和さんが、この部屋の本に興味があればなのですが」
僕の授業は生徒たちには人気がなくてと、笹岡が苦笑いをするのに、小和は首を振る。そして、ありがとうございますと頭を下げた。
「嬉しいです」
「それは良かった。では、ちょっと外しますね」
笹岡は微笑んで、体を翻す。
と、そこでふと、「そうだ、もう一つ」と立ち止まった。
資料室の戸を開けようとする、その途中の姿勢で体を止めたまま、笹岡は真剣そうに首を傾げる。
「さんかく、というのは何ですか?」
「さんかく、ですか?」
小和も首を傾げた。
「ええ、事務員の中井さんに、この時期はさんかくになりやすいから、気を付けてと言われまして……」
笹岡の言葉に、ああ、と小和は得心する。
「三角ですね。この時期にかかる風邪みたいなものなんですけど。頭がぐるぐるして、お腹が痛くなるんです」
「この辺りに昔からある病気ですか?」
「ええ。でも、人には滅多に罹らないんですよ。お山の動物や草木が罹るんです。草木に罹ると、葉に三角形の斑ができて」
「草木にですか」
興味深そうに笹岡が目を見開いた。小和は、尻尾を丸めて唸っていた栢を思い出しながら、苦笑して見せる。
「はい。人にはあまり罹らないから、お山の村がなくなった今では、三角のことを知らない人もいるみたいです。中井さんは昔からここに住んでる方だから、ご心配なされたんじゃないでしょうか」
「なるほど」
うんうんと頷きながら、笹岡はしきりに瞬きをする。小和はそれに小さく笑って、作業に戻った。少しして思考がまとまったのか、それとも中途半端な姿勢を思い出したのか、笹岡が、あ、では、よろしくお願いしますと、慌てたように資料室を出て行く。とたとたと廊下を踏む靴音が、遠のいていった。
資料室の空気は僅かに埃っぽい。午後の光が壁に並ぶ本棚をゆっくりと暖めて、乾いた匂いを放っている。まるで部屋が、静かに息づいているような気がする。
手にした本を、つい開きたくなるのを堪えながら、小和は棚に納めていった。開けば、笹岡のように読みふけってしまうのが分かっていたからだ。
――読ませてもらうのは、この部屋の整理が一段落してからにしなくちゃ。
窓の外から、笑い合うような高く明るい声が聞こえる。生徒のものだろうか、小和はそっとカーテンの隙間から外を見やる。特別棟の裏庭からほど近い、学生寮の中庭で、女生徒が数人、テニスを始めるところだった。髪をお下げに垂らした女の子たちの、白いワンピースが陽射しに映える。
ぱこん、と、球がラケットにあたる小気味よい音がした。
小和は、その音に少しだけ耳を傾けてから、再び、本の山へと手を伸ばした。
資料室の中は、本が散乱していた。
日差し避けのカーテンが引かれた薄暗い部屋の中に、本の塔が四、五個見える。備え付けられた机を無視して床に広げられた資料を、やはり床に座りこんで、本の塔に埋もれるようにして読んでいるのが、この学校の社会科講師、笹岡智徳だった。還暦も近い歳で、薄い髪の毛にはところどころ白髪が交じっている。四角い黒ぶち眼鏡を一度、指先で持ち上げたかと思うと、笹岡は、はっとしたような顔で小和を見上げた。
「あ、碧水屋の、」
「小和です。お仕事中にすみません」
小和が頭を下げると、いやいや、と笹岡は笑った。本の山を乗り越えて、小和のもとまでやってくる。
「仕事という訳じゃあないですから……、お遣いですか?」
「はい、おかみさんから、先生と職員寮の皆さんに、お菓子を届けに来ました。山水の葛というお菓子で、さっき中井さんに預けてきたんですが」
「そうですか。いつもありがとうございます、こんな山の中まで」
「いえ、りくのところへ、様子伺いに行く用事もありましたから」
小和がそう首を横に振ると、笹岡はぐるりと資料室を見渡して、それじゃあ一旦戻りましょうかねぇ、と諦めたように呟いた。
「小和さんがいらしたということは、もうおやつ時のようですし」
小和も同じように資料室を見渡して、先生は、と口を開く。
「今日は、何をなさってたんですか?」
笹岡は、歴史学の教授である。大学からの出向で、日本史の教師としてここに来ていた。本来の専門は郷土史で、尾羽の町の歴史にも興味を持ち、よく町に顔を出すうちに、碧水屋の常連客となったのだった。職員寮に住んでいるのもそのためで、よく資料室でこの町の民俗資料や町史などを、教材探しがてらに読んでいる。その内、それに没頭して、今日のように時間を忘れてしまうこともしばしばだった。
問われて、笹岡はばつが悪そうに顔を顰めて頭を掻いた。
「いや、面目ない、今日は新しく入った資料の整理をね、やってるうちに読みふけってしまって……」
言葉が尻すぼみになっていく。叱られた子供のような顔をしている笹岡に、小和は思わず笑った。
「じゃあ、整理は私がしばらく代わります。どうぞ、休憩して来てください」
「いやいや、いつも手伝ってもらっているのに、そんな、」
「いいえ、おかみさんも、そのつもりで私にお遣いを頼んでいますから」
恐縮する笹岡に、大丈夫ですよと答えて、小和は山になった本の一冊を手に取った。笹岡がよく資料室に籠もるので、こうしてお遣いに来る小和も、片付けや資料の探し出しを手伝うようになった。どういう本がどういう関連で棚に並んでいるのか、もうだいぶ覚えてしまっている。
「益々申し訳ない……あ、でも、そういえば小和さん」
「はい?」
本を棚に戻しながら、呼ばれて小和は振り返った。
笹岡は、少し目を細めるようにして、小和を見ている。
「小和さんは、学校に行ったことはないんでしたよね」
「はい。小さい頃にりくに拾われましたから。りくとおかみさんが、読み書きを教えてくださいましたけど」
「せっかくここに来ているんです、ここの本、興味がおありでしたら、どうぞ好きに読んでいって下さい」
「えっ」
笹岡の言葉に、小和は、いいんですか、と問い返した。
頬が上気するのが分かる。思わず手で頬を押さえた。
「学校のご本なんじゃ」
「構いませんよ。半分は僕の私物ですし、小和さんには、いつも手伝っていただいていますから」
「……でも、私、あんまり難しい本はまだ読めなくて」
家事やお店の手伝いの合間に、少しずつ読み書きを習っていた小和には、簡単な物語ならともかく、難しい言葉の多い本は、まだ理解できないものも多かった。ましてや、大学教授が使う学術書など。
笹岡はしかし、微笑んだ。
「そんなに小難しい本ばかりではありませんよ。地域の物語を集めたような本もあります。勿論、小和さんが、この部屋の本に興味があればなのですが」
僕の授業は生徒たちには人気がなくてと、笹岡が苦笑いをするのに、小和は首を振る。そして、ありがとうございますと頭を下げた。
「嬉しいです」
「それは良かった。では、ちょっと外しますね」
笹岡は微笑んで、体を翻す。
と、そこでふと、「そうだ、もう一つ」と立ち止まった。
資料室の戸を開けようとする、その途中の姿勢で体を止めたまま、笹岡は真剣そうに首を傾げる。
「さんかく、というのは何ですか?」
「さんかく、ですか?」
小和も首を傾げた。
「ええ、事務員の中井さんに、この時期はさんかくになりやすいから、気を付けてと言われまして……」
笹岡の言葉に、ああ、と小和は得心する。
「三角ですね。この時期にかかる風邪みたいなものなんですけど。頭がぐるぐるして、お腹が痛くなるんです」
「この辺りに昔からある病気ですか?」
「ええ。でも、人には滅多に罹らないんですよ。お山の動物や草木が罹るんです。草木に罹ると、葉に三角形の斑ができて」
「草木にですか」
興味深そうに笹岡が目を見開いた。小和は、尻尾を丸めて唸っていた栢を思い出しながら、苦笑して見せる。
「はい。人にはあまり罹らないから、お山の村がなくなった今では、三角のことを知らない人もいるみたいです。中井さんは昔からここに住んでる方だから、ご心配なされたんじゃないでしょうか」
「なるほど」
うんうんと頷きながら、笹岡はしきりに瞬きをする。小和はそれに小さく笑って、作業に戻った。少しして思考がまとまったのか、それとも中途半端な姿勢を思い出したのか、笹岡が、あ、では、よろしくお願いしますと、慌てたように資料室を出て行く。とたとたと廊下を踏む靴音が、遠のいていった。
資料室の空気は僅かに埃っぽい。午後の光が壁に並ぶ本棚をゆっくりと暖めて、乾いた匂いを放っている。まるで部屋が、静かに息づいているような気がする。
手にした本を、つい開きたくなるのを堪えながら、小和は棚に納めていった。開けば、笹岡のように読みふけってしまうのが分かっていたからだ。
――読ませてもらうのは、この部屋の整理が一段落してからにしなくちゃ。
窓の外から、笑い合うような高く明るい声が聞こえる。生徒のものだろうか、小和はそっとカーテンの隙間から外を見やる。特別棟の裏庭からほど近い、学生寮の中庭で、女生徒が数人、テニスを始めるところだった。髪をお下げに垂らした女の子たちの、白いワンピースが陽射しに映える。
ぱこん、と、球がラケットにあたる小気味よい音がした。
小和は、その音に少しだけ耳を傾けてから、再び、本の山へと手を伸ばした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる